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メリットとデメリット。
しおりを挟むライアン様にとってのメリット・・・
はて?
私と結婚して、ライアン様にプラスになることなんてあるのかしら?
これは思い付くまでに時間稼ぎが必要だと考え、ソフィーは苦し紛れを隠すように、あえて余裕のあるような素振りで訊いてみた。
「ちなみに、ライアン様が結婚したくない理由をお聞かせ願えますか?」
「何故そんな必要が?」
「デメリットを潰していくことは、メリットに繋がりますもの。」
しれーっと自信ありげに答えてみたが、時間稼ぎだとバレているのだろう。
ライアンは溜め息を吐くと、急に移動を始めた。
「時間がかかりそうだな。喉が乾いたから、付いてくるといい。」
やったわ!考える時間が出来たみたいね。
それにしても、ライアン様は後ろ姿も素敵だわー。
コートはもう少し丈が長い方が似合うと思うのだけど。
そもそもタイの色はもっと明るいほうが、今の流行りなのよね。
それを言ったら、靴だって・・・
ソフィーは頭の中で、ライアンの服装の改善点について考えるのが楽しくて仕方ない。
本当は一から全部、今すぐ作りたくてウズウズしていた。
気付けばライアンからかなり遅れをとっていた。
「付いて来ないのか?」
「もちろん行きます!」
ソフィーが走って追い付くと、ライアンは温室に入っていった。
温室の中は暖かく、様々な植物が植えられていた。
ソフィーが見たことのない、大きな実や、花がついている植物もある。
温室の真ん中には白い木製のテーブルと椅子が用意されていた。
いつか布を作る為に、植物を育て、繊維を作ろうと考えていたソフィーは、温室と、今までに目にしたことのない植物に興奮を隠せなかった。
「凄いです!知らない木や花がたくさん。ライアン様が育てているのですか?」
「いや、普段は家を空けることが多いから、庭師に頼んでいる。苗や種は私が持ち帰ったものだが。」
持ち帰る?
絶対この国の植物じゃないわよね?
「国外から持ち帰ったのですか?ライアン様はそういったお仕事を?」
目を輝かせながら問いかけるソフィーを、ライアンが呆れたように見つめた。
「君は私のことや、この家のことについて何も知らないと見える。」
それはそうだ。
断る為だけに来たので、ソフィーにはローゼン家やライアンに対する下準備や予備知識など、何もありはしない。
「君は私についてどれくらい知っている?」
まさか「何も」とも言えず、ソフィーはかろうじて知っていることを思い切って答えた。
「独身主義で、令嬢に靡かない冷徹な男の人・・・」
プッと笑い声が聞こえた。
紅茶を注いでくれていた、メイドの格好をした女性だ。
50歳くらいだろうか、ソフィーの母より年上のようだ。
「ジェーン、笑うな。ソフィー嬢、君は思っていた以上に率直な物言いをする女性らしい。」
どうやら、「何も」と答えていたほうがまだ良かったみたいだ。
ソフィーはテヘッと肩を竦めて誤魔化した。
「まあまあ、ソフィー様のおっしゃる通りではありませんか。わざとそう見せているのですから、ソフィー様のせいではないでしょう。」
ジェーンがソフィーを庇うように口を挟んだ。
わざと冷徹なフリをしているってことかしら?
首を傾げるソフィーに、紅茶を一口含み、一息ついたライアンが言った。
「私が結婚したくない理由について話そう。」
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