ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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ディランの夢の中

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ディランは夢を見ていた。
アンリに自分の想いをどう伝えるべきか悩んでいる内に、いつの間にか眠ってしまったらしい。

ここは何処だ……?

ディランは見知らぬ場所に立っていた。
不思議と夢であることは自覚していて、ゆっくり辺りを見回すと、小さな木造の家と納屋らしきもの、こじんまりとした畑が確認出来た。
見渡す限り長閑な風景が広がっている。
心当たりの全く無い土地をしばらく観察していると、帽子を被った、まだ若干幼さが残る青年がやって来るのが見えた。
15、6歳位だろうか。
まだ身長も伸びきっておらず、小柄で華奢な体格だ。

この家の者か?

少年は畑までやって来ると、手をかざして水を撒き、土を触り始めた。

なんだと?
この青年も、アンリのように魔法が使えるのか?
いや、もしかしてここは……。

青年はディランの視線に気付いたのか、ふと顔を上げるとそのまま固まった。
人がいるとは思っていなかったようで、目を見開いたまま身体を強ばらせている。

「驚かせて悪い。怪しいものではない」

言いながら、説得力が無いと自分でもわかっていた。
ディランは「顔が怖い」とよく言われるからだ。
尤も、顔が整いすぎているのも怖い理由の一つなのだが。

「あなたは誰ですか?いつこの村に?あっ!まさかアンリを連れ去ったのはあなたですか!?」

青年は更に警戒し、ディランを睨み付けてくる。

アンリ?
この青年はアンリを知っているのか?

「君はアンリを知っているのか?連れ去られたというのはどういうことだ?」

「あなたこそアンリを知っているのですか?アンリは少し前から行方不明なんです。何か知っているのなら教えてください!!」

ディランはアンリの生い立ちに興味があった。
しかし、アンリ自身が積極的に話したがらないので、今まで深くは聞けずにいたのである。

きっとここはアンリが育った場所なのだろう。
夢を見ているはずの自分が何故アンリの故郷にいるのかはわからない。
全ては幻かもしれない。
そう思いつつも、ディランは青年を誘って畑の脇に腰を下ろすと、彼に尋ねた。

「俺はディランだ。アンリのことは知っている。俺もアンリについて知りたいんだ。教えてくれるか?」

真面目な表情で瞳を見つめると、今まで身構えていた青年の態度が柔らかく変化したのを感じた。

「ああ、なんだ。治安庁の方ですね?アンリの家の件で調べにいらっしゃったんでしょう?僕はマイクと言います。アンリとは同い年の幼馴染みです」

マイクは勝手にディランを治安庁の役人だと判断したようだ。
ディランの身なりが良かったせいもあるが、ディランはその勘違いに乗っかることにした。
もちろん治安庁が何かも知らないが、この国の治安を守る機関だとは想像がついた。

「ああ、悪いが確認したいこともあるから、アンリについて知っている事を全部話して欲しい」

そうディランが言うと、マイクは納得したように頷くと、アンリの性格、家族、失踪についてなどを順に話してくれた。

「なるほどな。アンリは家族に虐待されていて、その日は納屋に閉じ込められていたはずなのに、いつの間にか姿が消えていたと」

「はい。しかも頬を叩かれたようで、濡れたハンカチだけが残されていたんです」

繋がったな。
やはりアンリのあの赤くなった頬は叩かれた跡だったか。
まさか本当に家族の仕打ちだったとは……。

ディランはアンリの悲しみを思うと胸が締め付けられ、仕方の無いことだが、その場にいてやれなかったことに歯痒さを感じずにはいられなかった。

「その後は?」

「もちろん村人総出でアンリを捜索しました。でもどこにもいないし、あいつらは捜索にも参加しなくて……。だからやつらがアンリに何かしたに違いないと考え、神父様が治安庁に報告したんです」

あいつらというのはアンリの家族か。
アンリが召喚されて、姿を消しても捜そうともしなかったとは。

「とんでもないやつらだな。それで?そいつらは今どうしてるんだ?」

「あれ?治安庁の取り調べで連れていかれましたよ?父親と母親と兄の3人が」

不思議そうな顔をされたので、「俺は部署が違うんでな」と誤魔化しておいた。

しかし、すでに連れて行かれていて良かったかもしれない。
もしその3人が今目の前にいたら、ディランは確実に斬っていただろう。
例えアンリがそれを望んでいなかったとしても……。


夢の世界ではあるが、これはただの夢ではないらしい。
ディランは、小さな事でも嬉しそうに笑うアンリの笑顔を心に浮かべると、アンリの全ての憂いを晴らすべく、マイクに更に質問を重ねたのだった。





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