22 / 23
最後の悪あがき
しおりを挟む卒業パーティーに出席していながら、単位が足りずに卒業は出来ないと学長に告げられたアーサー。
『あの方、確かに卒業式典ではお見かけしなかったものね。』
『あの様子だと、留年だって今知ったみたいですけれど、あんな目立つことまでした後にねぇ。』
『あのピンク髪の男爵令嬢も、パートナーに入場の権利がないのでは、そもそもパーティーに参加出来ないんじゃないのか?』
あらあら、二人ともすっかり噂の的じゃない。
あれだけ二人して悪目立ちしたんだから当たり前だけど。
アーサー、式典にもちゃんと出てればその場で留年に気づけたんだろうに、楽しいパーティーだけ出席しようとするからいけないのよ。
エリザベスは、信じられないといった表情で、跪くアーサーをただ見つめていた。
「エリザベス嬢、もうわかっていると思うが、君にはこのパーティーの参加資格がない。直ちにここから出ていきたまえ。男爵には君の言動を私から報告しておく。アメリア嬢への暴言は決して許されるものではない。覚悟しておくように。」
彼女に冷たく告げる学長。
しかし、エリザベスはキッと顔を上げると叫んだ。
「誤解ですわ!私の発言は、劇の台詞だったんです!劇を盛り上げる為に言っただけで、本心でも事実でもありません!!ね?アーサー様、そうですよね?」
「そ、そうだ!俺達は良かれと思ってやったことだ。断じて暴言などではない!!」
ええええええええ??????
いやいやいや、それは無理があるでしょ!
あれだけ私達の劇を邪魔しておいて、今更仲間の演者気取り?
さっきまで項垂れていた二人が、活路を見出だしたとばかりに生き生きと言い返してくる。
エリザベス、その頭の回転の速さとメンタルの強さ、他でうまく使えたら良かったのにね。
あまりの言い分に、ずっと観劇していた参加者もドン引きしている。
「お前達、いい加減にしないか!!これ以上私に恥をかかせないでくれ!!」
伯爵がキレた。
「そこの男爵令嬢、パーティーの参加資格がない君には劇の参加資格もない。くだらない言い訳をして罪を重ねる前に大人しく出ていくことだ。警備隊!彼女を早くこの場から連れ出してくれ!!」
「きゃっ、離して!!私は悪くないんだってば!!言わされただけなのー!!」
ズルズルと警備の男性に引きずられながらも、まだ叫び続けているエリザベス。
ようやく扉が閉まり、会場は静かになった。
最後まで悪あがきが凄かったわ。
全く反省してないし。
取り残されたアーサーが、一人気まずそうにキョロキョロしながら立っている。
「さて、アーサー。私はお前が卒業し、このパーティーでアメリア嬢と婚約をすると手紙に書いてあったから、わざわざ領地から戻ってきたのだが?何か釈明することはあるか?」
「いやー、その予定だったんですが。あ、大丈夫です!まだアメリアのことは諦めていません!!」
「愚か者がーーー!!」
あら、まだ私と婚約する気でいたの?
何が大丈夫なのか意味不明だし。
伯爵が現れたのも、まさかアーサーの手紙のせいだとは。
せっかく領地から出てきたのに、顔に泥を塗られて、伯爵の血管がブチ切れちゃわないか心配になってきたわ。
「アメリア嬢、愚息が迷惑をかけ続けて申し訳なかった。これも全て領地に籠り、息子の成長を見届けてこなかった私の責任だ。ご両親にも謝罪に伺うつもりだ。アーサーは領地に連れていき、厳しく躾直す。今後は近付かせないから安心して欲しい。」
伯爵から丁寧な謝罪を受け、私は戸惑ってしまう。
慌てて、「とんでもございません。恐れ入ります。」とだけ返事をし、頭を下げた。
後ろでセレンが『やった!同級生にならないで済んだわー。』と小声で喜んでいる。
ほんと、父親はまともなのに、なんで息子はあんな風になっちゃったんだか。
教育は受けてたはずだから、やっぱり性格の問題?
これから領地で伯爵に迷惑かけなきゃいいけど。
「クロード君、君にも息子が迷惑をかけた。許して欲しい。」
伯爵の真摯な態度に、
「大丈夫です。僕達二人にとってはいいスパイスになりましたよ。」
などと、軽い口調で返すクロード。
恥ずかしいから、ぺちっと腕を叩いて抗議しておいた。
その後、伯爵自らアーサーを引きずって会場をあとにし、残された参加者には伯爵からお詫びの飲み物が振る舞われた。
領地の名産品らしい。
アーサーは最後までアメリアの名前を呼んでいた。
「あの執着心には驚かされるな」とクロードがため息混じりに呟いていた。
パーティーが正常に戻りつつある中、学長が退席するようだ。
「諸君、今日のパーティーは色々あったが、きっといい思い出になるだろう。あと一つ、余興が残っているみたいだ。是非楽しんでくれたまえ。」
そう言って、左胸をトントンと叩くジェスチャーをし、クロードにウィンクをすると、静かに去っていった。
もう一つ余興なんてあったっけ?
クエスチョンを浮かべたアメリアに、最後の、そして最大のサプライズが待ち受けていた。
14
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。

実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

【完結】エンディングのその後~ヒロインはエンディング後に翻弄される~
かのん
恋愛
え?これは、悪役令嬢がその後ざまぁする系のゲームですか?それとも小説ですか?
明らかに乙女ゲームのような小説のような世界観に生まれ変わったヒロインポジションらしきソフィア。けれどそれはやったことも、読んだこともない物語だった。
ソフィアは予想し、回避し、やっと平和なエンディングにたどり着いたと思われたが・・・
実は攻略対象者や悪役令嬢の好感度を総上げしてしまっていたヒロインが、翻弄される物語。最後は誰に捕まるのか。
頭をからっぽにして、時間あるし読んでもいいよーという方は読んでいただけたらと思います。ヒロインはアホの子ですし、コメディタッチです。それでもよければ、楽しんでいただければ幸いです。
初めの土日は二話ずつ更新。それから毎日12時更新です。完結しています。短めのお話となります。
感想欄はお返事が出来ないのが心苦しいので閉じてあります。豆腐メンタルの作者です。

顔も知らない旦那さま
ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。
しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない
私の結婚相手は一体どんな人?
氷の公爵の婚姻試験
黎
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

転生したのに平凡な少女は呪いを解く旅に出る
冬野月子
恋愛
前世、日本人だった記憶を持つミア。
転生した時に何かしらのチート能力を貰えたはずなのだが、現実は田舎町で馬方として働いているミアは、ある日公爵子息の呪いを解くために神殿まで運んで欲しいという依頼を受ける。
「これって〝しんとく丸〟みたいじゃん!」
前世で芝居好きだった血が騒ぐミアが同行して旅が始まるものの、思わぬ事態が発生して———
神殿にはたどり着けるのか、そして無事呪いを解く事が出来るのか。
そしてミアの隠された真実は明かされるのか。
※1日1〜2回更新予定です。
※「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる