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まさかのピンク髪男爵令嬢の登場
しおりを挟む自分に酔っているのか、アーサーはいかに自分が優れた人間であるのかを語り続けていた。
もはや、趣旨が変わって来ている気がする。
メンタル、強いなぁ。
空気は全く読めてないけど。
呆れる私の回りで、他の卒業生達も困惑を隠しきれていない。
その時、クロードがアーサーの自分語りを遮るように声を上げた。
「ちょっといいかな。」
アーサーが話すのを止め、クロードを見た。
「確認なのだが、君はカーランド家の伯爵令息、アーサー君で合っているかな?」
「確かに。俺はカーランド伯爵家長男のアーサーだ。」
自信満々に、顎を上げながらアーサーが答えている。
だから、なんでそんなに偉そうなのよ。
クロードは公爵令息なんだってば。
しかも、こんな大勢の中で悪目立ちしているのに、堂々と名乗っちゃって。
カーランドの名前に傷が付かないといいけどね。
まあ、もう遅いか。
「君は、アメリアと婚約をするつもりなのか?」
「ああ、もちろんだ。むしろ、俺は元々アメリアの婚約者だったんだ。あるべき形に戻るだけさ。」
勝ち誇ったようにアーサーがのたまい、クロードが心底嫌そうに顔を歪めた。
これはマズイ。
否定しないと!!
「そんな話、全くないですけれど。」
思わず私が出ていくと、
「覚えてないのかい?うちの茶会で婚約者にしてやると言ったはずだが。」
さも呆れた様に、馬鹿だなぁと言わんばかりの言い方をされた。
はぁ?
いつの話よ?
全然記憶にないんですけど。
すると、会場に「あ!」「もしかして」「あの時の?」などの声が上がり、数名の令嬢が私の方に駆け寄ってきてくれた。
昔からの令嬢友達である。
「アメリア様、7歳の頃、私達が参加した子供のお茶会を覚えていらっしゃいますか?」
「同じ年頃の子供が親に連れられて。アメリア様と初めてお会いした日です。」
「確かカーランド家主催で、私達皆アメリア様と同じテーブルにおりましたわ。」
その記憶ならアメリアにもある。
初めて女の子のお友達がたくさん出来た、楽しい思い出だ。
「そのお茶会なら覚えておりますけれど。」
「あの時、アーサー様がやたらとアメリア様を気に入られて、私達におっしゃったのですわ。『お前達、よく聞け。俺はアメリアと婚約する。お前達はお呼びじゃないから邪魔をするな。』って。」
少しアーサーの声真似をしながら令嬢が教えてくれた。
そんなことがあったのね。
それにしても。
7歳とはいえ、なんて失礼な!!
しかもアメリアには直接伝えていない上、そもそも婚約とは口約束で成立するものでもない。
家も通さず、一方的に令嬢達に宣言しただけで、婚約者になったつもりでいたらしい。
なんだそれ。
会場にしらけたムードが漂う。
私にお茶会事件を教えてくれた令嬢達をエスコートしている男性達も、子供の頃のこととはいえ、自分のパートナーを馬鹿にされたとアーサーに対して怒っている。
この短時間に会場中の人から嫌われるって、なかなかの才能ね。
劇に入ってこなければ、学院生活の最後に変に目立つこともなかったのに。
これからが大変そう。
私が現実逃避をしていると、アーサーの隣の女の子が突然叫んだ。
「アーサー様は騙されています!!」
誰!?
今度はなんなの!?
「アーサー様、あのアメリアという女は、アーサー様お気に入りの私が邪魔で、身分を盾に私を苛めた性悪女です!アーサー様にふさわしくありません。私がここで断罪します!」
アーサーの隣で袖を引っ張っていた令嬢が、急にライトを浴びて語り出す。
え?
ここにきてまさかの台本に戻るパターン?
というか、ライトが当たるまでわからなかったけど、あの娘ピンクの髪をしてるじゃない。
アーサーの腕を取り、ピンク髪をした女の子が堂々と言った。
「私は男爵令嬢のエリザベスですわ。」
ピンク髪の男爵令嬢が断罪って・・・
ふふふふふふ、あはははは!!
ダメ、もう面白すぎるんだけど!!
まさか本物?
ここにきて本物の登場なの?
カオスじゃん!!
後ろから、
「うわー、本当にピンク髪っているんだ。」
「あ、最近男爵家に引き取られたっていう・・・」
フレディ、エミール、お願いだからこれ以上笑わせないでー。
なんとか顔に出さないようにしてるけど、お腹がよじれちゃうわ。
セレンはせっかくピンク色のドレスまで用意したのに、急に現れた令嬢にヒロイン役を奪われそうでムッとしている。
クロードは私が傷付かないか、心配そうにこちらを見ていた。
私なら大丈夫。
おかし過ぎて困るけど。
成敗対象が増えました。
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