【完結】この婚約破棄はお芝居なのですが···。乱入してきた勘違い男を成敗します!

櫻野くるみ

文字の大きさ
上 下
16 / 23

本番でまさかの邪魔が入りました

しおりを挟む

卒業パーティーが始まった。
会場内は、談笑をする出席者で賑やかな雰囲気だ。

もうすぐ私達の劇が幕を開ける。

さきほどの6人での円陣を思い出し、皆のぬくもりが残る手のひらを、ぎゅっと握りしめる。

うん、大丈夫。
私は一人じゃない。

喉を潤すために果実のジュースに口を付け、グラスを置いたと同時に会場中のライトが消えた。
辺りが驚きの声と悲鳴に包まれる。

いよいよ始まるのね。

ライトが会場前方のステージに当たり、光の中で寄り添う、私の婚約者のクロードと後輩のセレン。
こちらは影になっていて見えないはずだけど、私達の視線は交差し、お互いの健闘を祈り頷き合った。

さて、いっちょかましてやりますか!

会場の卒業生がざわめき、期待するような空気の中、クロードの声が響く。

「アメリア・ハワード、私は運命の女性と出会ってしまった。ここにいるセレンだ。君は副会長でありながら、セレンを嫉妬でいじめ抜いたそうだな。そんな女とは婚約破棄だ!」

こちらにもライトが当たり、私は台本通りに驚き、ショックを隠せない表情を作りながら立ち尽くす。
そんな私に、さらにクロードが追い打ちをかける。

「今から君の悪事を白日のもとに晒してやる。覚悟することだな。」

ピシッと私に指を指しつつ、クロードが台詞を言い切った。
セレンはクロードに腕を絡めながら、勝ち誇ったような表情を浮かべて私を見下ろしている。

うんうん、出だしは上々。
やるじゃない、さすがクロードとセレン。
みんなの視線が一気に惹き付けられたわ。

次は私の出番ね。
冤罪を着せられた哀れな悪役令嬢を演じきってみせましょう。

私は内心の沸き立つ闘志を隠しつつ、悲しみを込めた口調で話し始めた。

「そんな、わた」「では、アメリアは俺が貰ってやろう!」


あれ?
誰かが私の台詞に割り込んで来た。
声がした方向へ顔を向けると、そこに立っていたのは・・・

アーサー!!
またなの?
こんな時にまで絡んでくるの!?

抗議の手紙、ちゃんと読んでくれた?
やっぱりオブラートに包んだのは失敗だったか。
だいたい、なんでこれが余興の劇だって気付いてないの?

周囲の卒業生もざわざわしている。

「これって恒例の出し物の劇よね?」

はい、その通り。
普通は皆知っているはずなんですけどね。

「生徒会メンバーではないあの方も出演者なのかしら?」

いえいえ、あのお馬鹿さんはただの困った乱入者です。


アーサーは腕を組み、偉そうにライトを浴びて・・・って、カイル、彼にはライトはいらないから!!
思わず照明係のカイルのいる方角を睨み付ける。
絶対、この状況を楽しんでるな。

アーサーの方をよくよく見れば、彼の袖を一生懸命引っ張っている女の子がいる。
多分、エスコート中の彼女よね。
彼女を放って、堂々と他の女を貰ってやる発言とは・・・。
うん、控えめに言って、最低!!

周りが不審そうな目で見ているのを物ともせず、アーサーは一人で話し続けている。

「もともとお前には俺こそがふさわしい。子供の頃からお前は・・・」

さて、このお馬鹿さんをどうしましょうか。
私はチラッとクロードとセレンに視線をやった。

クロードは自分の脚本の邪魔をされたからか、はたまた私を貰う発言のせいか、怒りを隠しきれない表情をしている。
セレンは腐った生ゴミでも見るかのような目でアーサーを見ている。
あはは、セレンってば虫けらの時より数倍視線が怖いわ。

彼らが私の視線に気付くと、お互い目で会話を始める。

『アレ、どうします?』

『あの男はこれが余興だと知らないのか?それ以前に失礼なやつだ。』

『どっちみち邪魔だし、腹立つから排除しちゃえー。』

セレンから物騒な心の声が聴こえた気がするが、気配を感じて背後を見やると、寄ってきていたフレディとエミールがボソッと言った。

「排除に賛成です。」
「ようやく決着が付けられそうで、むしろ良かったかもしれませんね。」

みんなエスパーか!と思うほど、気持ちが通じていた。
一瞬ライトが瞬き、照明係のカイルも賛成だと伝えてくれているようだ。

では、決定です。

生徒会役員満場一致で、迷惑男アーサーを成敗します!






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

氷の公爵の婚姻試験

恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

【完結】エンディングのその後~ヒロインはエンディング後に翻弄される~

かのん
恋愛
 え?これは、悪役令嬢がその後ざまぁする系のゲームですか?それとも小説ですか?  明らかに乙女ゲームのような小説のような世界観に生まれ変わったヒロインポジションらしきソフィア。けれどそれはやったことも、読んだこともない物語だった。  ソフィアは予想し、回避し、やっと平和なエンディングにたどり着いたと思われたが・・・  実は攻略対象者や悪役令嬢の好感度を総上げしてしまっていたヒロインが、翻弄される物語。最後は誰に捕まるのか。  頭をからっぽにして、時間あるし読んでもいいよーという方は読んでいただけたらと思います。ヒロインはアホの子ですし、コメディタッチです。それでもよければ、楽しんでいただければ幸いです。  初めの土日は二話ずつ更新。それから毎日12時更新です。完結しています。短めのお話となります。  感想欄はお返事が出来ないのが心苦しいので閉じてあります。豆腐メンタルの作者です。

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

転生したのに平凡な少女は呪いを解く旅に出る

冬野月子
恋愛
前世、日本人だった記憶を持つミア。 転生した時に何かしらのチート能力を貰えたはずなのだが、現実は田舎町で馬方として働いているミアは、ある日公爵子息の呪いを解くために神殿まで運んで欲しいという依頼を受ける。 「これって〝しんとく丸〟みたいじゃん!」 前世で芝居好きだった血が騒ぐミアが同行して旅が始まるものの、思わぬ事態が発生して——— 神殿にはたどり着けるのか、そして無事呪いを解く事が出来るのか。 そしてミアの隠された真実は明かされるのか。 ※1日1〜2回更新予定です。 ※「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

処理中です...