【完結】この婚約破棄はお芝居なのですが···。乱入してきた勘違い男を成敗します!

櫻野くるみ

文字の大きさ
上 下
8 / 23

断罪劇をプレゼンしてみました

しおりを挟む

放課後、生徒会室にはいつもの6人が集まっていた。

クロードには体調を心配され、早く帰ることを勧められたが、今日は劇の演目について決めることになっている。
自分がいない間にクロードが格好良い役に決まり、更にモテモテになられては堪らない。
断固阻止しなければ。


「昨日の続きだが、卒業パーティーの劇の演目について意見がある者は述べて欲しい。」

クロードが皆を見回しながら話しかける。

するとセレンがすかさず手を挙げた。

「はいはーい、王子さまと他国の姫の」「却下。」「それは駄目!」

セレンの提案を、クロードと私が即座に退ける。

セレンは不満そうにしていたが、次にフレディが、

「この国の歴史や、学院の歴史を・・」

と話し出したら、すかさず

「却下!」

と反対していた。

1年生の二人は、先輩方が決めるべき、と最初から案を出す気はないらしい。


クロードが困りながら、

「アメリア、何かいい案はないかい?」

と私に訊いてきた。

もともとアメリアが劇が良いと言ったのだ。
私が何も発言しないわけにはいかない気がする。

高速で頭を悩ませ、この国の小説、前世の日本のお伽噺など、劇になりそうなものを色々思い浮かべてみた。
そして思い付いてしまった。

いっそのこと、断罪劇を演じてみたら面白い気がする!
うってつけの卒業パーティーだし、世界観もピッタリ!

しかし、この国の人は断罪劇を知らない。
公の場で婚約破棄するような非常識な人間など、見たことがない。
ましてや新しい恋人を作って婚約者を裏切り、挙げ句の果てに婚約者に罰を与えようとするなんて、受け入れられるだろうか。

私は遠慮がちに提案してみることにした。

「他の国のお話なのですが・・・」

と前置きをし、まずは定番の断罪劇について説明を試みる。

婚約者のいる王子や貴族令息が、婚約者がいるのに恋人を作ること、婚約者だった令嬢がその新しい恋人を嫉妬で虐めて悪役令嬢と言われること、卒業パーティーで悪役令嬢が婚約破棄と断罪をされること。

皆の反応を伺いつつ、更に悪役令嬢が自分が虐めていない証拠を提出する断罪返しバージョンも話しておく。

そして、何故か新しい恋人=ヒロインはピンク髪で、男爵令嬢が多いと付け加えておいた。


荒唐無稽な話だと引かれるんじゃないかと思っていると、セレンが真っ先に反応した。

「私、絶対ヒロインね!私の髪、ピンクじゃないけど、婚約者のいる男性を奪う役なんて刺激的だわぁ。」

え、まさかのヒロイン希望?
あざといし、結構おバカが多いんだけど。

呆気にとられながらセレンを眺めていると、

「そうなるともちろん、浮気者がクロード様で、悪役令嬢がアメリア様ですね。」

カイルが嬉しそうに言い、隣でエレーナがうんうんと頷いている。

浮気者って・・・
確かにそうだけど、呼び方・・・

何より、決定みたいになってるじゃない。
皆それでいいの?
言い出したのは私だけど。

心配になってクロードを見れば、

「なるほど。僕たちは実際、婚約者同士だし、配役は問題ないな。」

いやいや、問題はあるんじゃ。
婚約破棄するお話なんだけど・・・

「卒業後に社交界で生きていく卒業生に、いい教訓と心構えになるかと。」

フレディが真面目な顔をして言う。

なるかーっ!!

さっきから私の心の中は、突っ込みの嵐である。


もしかして、早まった提案をしちゃったかな・・・?

しかし時すでに遅し。
余興は断罪劇に決まってしまったのだった。


私ってば、前世の記憶を生かす方法を絶対に間違えてるよね。

と思いつつ、期待に胸を弾ませた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

氷の公爵の婚姻試験

恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

【完結】エンディングのその後~ヒロインはエンディング後に翻弄される~

かのん
恋愛
 え?これは、悪役令嬢がその後ざまぁする系のゲームですか?それとも小説ですか?  明らかに乙女ゲームのような小説のような世界観に生まれ変わったヒロインポジションらしきソフィア。けれどそれはやったことも、読んだこともない物語だった。  ソフィアは予想し、回避し、やっと平和なエンディングにたどり着いたと思われたが・・・  実は攻略対象者や悪役令嬢の好感度を総上げしてしまっていたヒロインが、翻弄される物語。最後は誰に捕まるのか。  頭をからっぽにして、時間あるし読んでもいいよーという方は読んでいただけたらと思います。ヒロインはアホの子ですし、コメディタッチです。それでもよければ、楽しんでいただければ幸いです。  初めの土日は二話ずつ更新。それから毎日12時更新です。完結しています。短めのお話となります。  感想欄はお返事が出来ないのが心苦しいので閉じてあります。豆腐メンタルの作者です。

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

転生したのに平凡な少女は呪いを解く旅に出る

冬野月子
恋愛
前世、日本人だった記憶を持つミア。 転生した時に何かしらのチート能力を貰えたはずなのだが、現実は田舎町で馬方として働いているミアは、ある日公爵子息の呪いを解くために神殿まで運んで欲しいという依頼を受ける。 「これって〝しんとく丸〟みたいじゃん!」 前世で芝居好きだった血が騒ぐミアが同行して旅が始まるものの、思わぬ事態が発生して——— 神殿にはたどり着けるのか、そして無事呪いを解く事が出来るのか。 そしてミアの隠された真実は明かされるのか。 ※1日1〜2回更新予定です。 ※「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

処理中です...