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プロローグ
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卒業パーティー当日、少しの緊張とそれを上回る高揚感。
生徒会副会長のアメリア・ハワードは、会場の様子を見渡しながら高まる気持ちを押さえ込んだ。
いよいよ私達の劇が幕を開けるのね。
この3ヶ月の苦労が走馬灯のように思い起こされる中、喉を潤すために果実のジュースに口を付ける。
アメリアがグラスを置いたと同時に会場中のライトが消え、辺りが驚きの声と悲鳴に包まれた。
始まったわ。
気付くとライトが会場前方のステージに当たり、光の中で寄り添う一組の男女が浮かび上がる。
明るいステージからは、暗いアメリアは見えにくいはずだったが、確かに一瞬彼らの視線は交差し、アメリアはお互いの健闘を祈りながら軽く頷いた。
さて、いっちょかましてやりますか!
会場の卒業生のざわめきと興味深げな視線の中、ライトを浴びた生徒会長で、アメリアの婚約者でもあるクロードが、よく響く声で言い放つ。
「アメリア・ハワード、私は運命の女性と出会ってしまった。ここにいるセレンだ。君は副会長でありながら、セレンを嫉妬でいじめ抜いたそうだな。そんな女とは婚約破棄だ!」
アメリアは驚き、ショックを隠せないという表情を作りながら立ち尽くす。
好奇心を隠そうともしない無遠慮な視線に囲まれるアメリアに、さらにクロードが追い打ちをかける。
「今から君の悪事を白日のもとに晒してやる。覚悟することだな。」
ピシッとアメリアに指を指しつつ、とりあえず台詞を言い切ったクロードは満足げだ。
彼に腕を絡めながら勝ち誇ったような表情を浮かべるセレン。
うんうん、出だしは上々ね。
やるじゃない、さすがクロードとセレン。
次は私の出番!
冤罪を着せられた哀れな悪役令嬢を演じてみせようじゃない。
アメリアは内心の沸き立つ闘志を隠しつつ、悲しみを込めた口調で話し始めた。
「そんな、わた・・」「では、アメリアは俺が貰ってやろう!」
・・・は?
何?何が起きたの?
誰かがアメリアの台詞に割り込んで来た。
台本にない台詞の登場に軽くパニックを起こしながら、アメリアは声がした方向へ顔を向けた。
そこに立っていたのは・・・
おーまーえーかー!!
何故かいつもチョロチョロと私の周りをうろつき邪魔をする男、アーサー!
彼が腕を組み、偉そうにふんぞりながらライトを浴びて立っている。
ちょっと待って!
もしかしてアーサーってば、この劇が生徒会メンバーによる、卒業パーティー恒例の余興だって気付いてないの?
それに、なんで彼にライトが当たっているのよ?
思わず照明係の方角を睨み付ける。
カイルってば、無駄にアクシデントに強いんだから。
きっとこの状況を楽しんでいるに決まってるわ。
照明係は、1年生のカイルが担当だった。
アーサーの方をよくよく見れば、彼の袖を一生懸命引っ張っている女の子がいる。
あらら、ライトから見切れちゃって。
多分、エスコート中の彼女よね。
彼女を放って、堂々と私を貰ってやる発言とは・・・
やっぱりあいつは、サイテーの男に違いない。
初台詞を邪魔され、出鼻をくじかれたアメリアは心の中で宣言した。
『アーサーのやつー!!劇を邪魔された恨みは必ず晴らすからね!!コテンパンにしてやるから覚えとけー!!』
こうして生徒会メンバー6人による余興の婚約破棄&断罪劇は、迷惑男アーサーの乱入により、始まって早々にアドリブを余儀なくされたのである。
生徒会副会長のアメリア・ハワードは、会場の様子を見渡しながら高まる気持ちを押さえ込んだ。
いよいよ私達の劇が幕を開けるのね。
この3ヶ月の苦労が走馬灯のように思い起こされる中、喉を潤すために果実のジュースに口を付ける。
アメリアがグラスを置いたと同時に会場中のライトが消え、辺りが驚きの声と悲鳴に包まれた。
始まったわ。
気付くとライトが会場前方のステージに当たり、光の中で寄り添う一組の男女が浮かび上がる。
明るいステージからは、暗いアメリアは見えにくいはずだったが、確かに一瞬彼らの視線は交差し、アメリアはお互いの健闘を祈りながら軽く頷いた。
さて、いっちょかましてやりますか!
会場の卒業生のざわめきと興味深げな視線の中、ライトを浴びた生徒会長で、アメリアの婚約者でもあるクロードが、よく響く声で言い放つ。
「アメリア・ハワード、私は運命の女性と出会ってしまった。ここにいるセレンだ。君は副会長でありながら、セレンを嫉妬でいじめ抜いたそうだな。そんな女とは婚約破棄だ!」
アメリアは驚き、ショックを隠せないという表情を作りながら立ち尽くす。
好奇心を隠そうともしない無遠慮な視線に囲まれるアメリアに、さらにクロードが追い打ちをかける。
「今から君の悪事を白日のもとに晒してやる。覚悟することだな。」
ピシッとアメリアに指を指しつつ、とりあえず台詞を言い切ったクロードは満足げだ。
彼に腕を絡めながら勝ち誇ったような表情を浮かべるセレン。
うんうん、出だしは上々ね。
やるじゃない、さすがクロードとセレン。
次は私の出番!
冤罪を着せられた哀れな悪役令嬢を演じてみせようじゃない。
アメリアは内心の沸き立つ闘志を隠しつつ、悲しみを込めた口調で話し始めた。
「そんな、わた・・」「では、アメリアは俺が貰ってやろう!」
・・・は?
何?何が起きたの?
誰かがアメリアの台詞に割り込んで来た。
台本にない台詞の登場に軽くパニックを起こしながら、アメリアは声がした方向へ顔を向けた。
そこに立っていたのは・・・
おーまーえーかー!!
何故かいつもチョロチョロと私の周りをうろつき邪魔をする男、アーサー!
彼が腕を組み、偉そうにふんぞりながらライトを浴びて立っている。
ちょっと待って!
もしかしてアーサーってば、この劇が生徒会メンバーによる、卒業パーティー恒例の余興だって気付いてないの?
それに、なんで彼にライトが当たっているのよ?
思わず照明係の方角を睨み付ける。
カイルってば、無駄にアクシデントに強いんだから。
きっとこの状況を楽しんでいるに決まってるわ。
照明係は、1年生のカイルが担当だった。
アーサーの方をよくよく見れば、彼の袖を一生懸命引っ張っている女の子がいる。
あらら、ライトから見切れちゃって。
多分、エスコート中の彼女よね。
彼女を放って、堂々と私を貰ってやる発言とは・・・
やっぱりあいつは、サイテーの男に違いない。
初台詞を邪魔され、出鼻をくじかれたアメリアは心の中で宣言した。
『アーサーのやつー!!劇を邪魔された恨みは必ず晴らすからね!!コテンパンにしてやるから覚えとけー!!』
こうして生徒会メンバー6人による余興の婚約破棄&断罪劇は、迷惑男アーサーの乱入により、始まって早々にアドリブを余儀なくされたのである。
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