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番外編①悪役令嬢オフィーリアのその後
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悪役令嬢オフィーリアは、休暇中の自宅でほくそ笑んでいた。
婚約者の王太子ユリウスが生徒会の合宿へ出かけていたのだが、そろそろ帰ってくる頃合いなのだ。
オーホホホホ。
きっと合宿中に、ヒロインのアリスとユリウス殿下の距離はグッと縮まって、2人の仲はもう引き離せないほど強固なものになっているはずですわ。
より親しげに寄り添う2人を見て、嫉妬で一層酷くアリスを虐めるわたくしーー。
バッチリですわ!!
頭の中でのシミュレーションは完璧で、高笑いが止まらない。
侍女がユリウスからの手紙を持ってきたのは、そんな時だった。
まあ、何かしら?
えーと、お城のパティシエの新しいケーキを食べに来ないかというお誘いですわね。
こんなお誘い、初めてですわ。
あ!もしかして、アリスが好きだから身を引いて欲しいとお願いされるのではなくて?
ではここは思いっきり断って、殿下の敵にならないといけませんわね!!
「明日、お城へ参ります」
凛とした声で使用人に告げると、ユリウスへ返す台詞を考え始める。
きっと「婚約者をおりて欲しい」って言われますわよね?
「まあ、面白い冗談ですこと。わたくし以外にあなた様の婚約者が務まるとでも?」がいいかしら?
あ、でも「オホホホ、あの田舎娘のどこがそんなによろしいのかしら?わたくし、絶対に認めませんわよ!!」の方がインパクトがあるかしら?
『婚約者の座を譲ろうとしない悪役令嬢』をやり遂げると決めながらも、オフィーリアの心は何故か沈んでいた。
「オフィーリア、よく来てくれた。突然で悪かったね」
翌日、気合いを入れて城を訪ねたオフィーリアを、ユリウスがにこやかに微笑みながら歓迎してくれた。
その穏やかな様子に、つい力が抜けそうになってしまう。
あら?なんだか和やかムードですわ。
急に修羅場に豹変するパターンなのかしら?
居心地を悪く感じながらも庭園の椅子に座ると、美しいケーキや焼き菓子が並べられている。
「まぁ!綺麗なケーキ。こんな美しいケーキを初めて見ましたわ!!」
「君はお菓子が好きなんだってね。喜んでもらえたなら良かったよ」
誰から聞いたかわからないが、ユリウスの優しい言葉にも『気分を上げておいて、一気に落とす作戦ね』と考えるオフィーリアは、気を抜くことはない。
ケーキを食べ、一度紅茶を飲んで落ち着いたオフィーリアに、ユリウスが待ち構えていたように言った。
「実は君に言っておきたいことができてね。わざわざ来てもらったんだ」
はい、来ましたわ!!
いつでもよろしくてよ!!
「叔父上が婚約したんだよ!」
「……え?」
「ね、驚くだろう?なんと、相手はアリスなんだ!!」
「…………へっ?」
思わず間の抜けた返事になってしまったのは仕方ないと思う。
それほど予想外で、あり得ない話だったのだ。
「あはは!いいな、その反応!!その顔が見たかったんだよ」
いやいや、なぜ殿下がそんな楽しそうにヒロインの婚約話を?
嫉妬とか、邪魔するとか、そういうのはよろしいのですか?
わたくし、喜んでお手伝いいたしますけれど……。
「殿下、王弟殿下にアリスさんをとられてもよろしいのですか?あんなに仲が良かったではないですか!!」
「ん?そうだね、アリスは妹みたいなものだし、叔父上はいい方だから本当に良かったよ。あ、僕達とアリスは親戚になるんだね」
ユリウスに無理をしている様子はなく、本当に嬉しそうに話している。
おかしいですわ。
ハーレムルートから隠しルートに入って、王弟殿下が隠れキャラだったということは理解できましたわ。
でも、ユリウス殿下はヒロインをとられてしまっていいの?
「アリスがね、オフィーリアにパウンドケーキをもらったと話していてね。オフィーリアは優しいいい人だから、もっと時間を作って2人で過ごすべきだと言われてしまったよ。確かにそうだと思ってね」
ヒロインが?
あの子、やる気がなさそうでしたけれど、ちゃんと隠れキャラは攻略したんですのね。
「これからはもっとこういう時間を作っていこう。君は王太子妃教育が大変かもしれないけれど」
「わたくし、王太子妃になるのですか?」
「え、もしかして嫌になっちゃった?オフィーリアに断られても、僕には君しかいないから困っちゃうな」
眉を下げて笑うユリウスに、オフィーリアの胸がキュッと締め付けられた。
本当は好きで悪役令嬢になった訳ではないし、自分だって本当は推しのユリウスと幸せになりたかったのだ。
ヒロインのアリスが王弟殿下と幸せになるのなら、わたくしにもユリウス様と幸せになる未来があってもいいのかしら?
「今度、殿下にもわたくしの作ったパウンドケーキを差し上げますわね」
少しはにかみながら言ったオフィーリアに、ユリウスが嬉しそうに破顔したのだった。
婚約者の王太子ユリウスが生徒会の合宿へ出かけていたのだが、そろそろ帰ってくる頃合いなのだ。
オーホホホホ。
きっと合宿中に、ヒロインのアリスとユリウス殿下の距離はグッと縮まって、2人の仲はもう引き離せないほど強固なものになっているはずですわ。
より親しげに寄り添う2人を見て、嫉妬で一層酷くアリスを虐めるわたくしーー。
バッチリですわ!!
頭の中でのシミュレーションは完璧で、高笑いが止まらない。
侍女がユリウスからの手紙を持ってきたのは、そんな時だった。
まあ、何かしら?
えーと、お城のパティシエの新しいケーキを食べに来ないかというお誘いですわね。
こんなお誘い、初めてですわ。
あ!もしかして、アリスが好きだから身を引いて欲しいとお願いされるのではなくて?
ではここは思いっきり断って、殿下の敵にならないといけませんわね!!
「明日、お城へ参ります」
凛とした声で使用人に告げると、ユリウスへ返す台詞を考え始める。
きっと「婚約者をおりて欲しい」って言われますわよね?
「まあ、面白い冗談ですこと。わたくし以外にあなた様の婚約者が務まるとでも?」がいいかしら?
あ、でも「オホホホ、あの田舎娘のどこがそんなによろしいのかしら?わたくし、絶対に認めませんわよ!!」の方がインパクトがあるかしら?
『婚約者の座を譲ろうとしない悪役令嬢』をやり遂げると決めながらも、オフィーリアの心は何故か沈んでいた。
「オフィーリア、よく来てくれた。突然で悪かったね」
翌日、気合いを入れて城を訪ねたオフィーリアを、ユリウスがにこやかに微笑みながら歓迎してくれた。
その穏やかな様子に、つい力が抜けそうになってしまう。
あら?なんだか和やかムードですわ。
急に修羅場に豹変するパターンなのかしら?
居心地を悪く感じながらも庭園の椅子に座ると、美しいケーキや焼き菓子が並べられている。
「まぁ!綺麗なケーキ。こんな美しいケーキを初めて見ましたわ!!」
「君はお菓子が好きなんだってね。喜んでもらえたなら良かったよ」
誰から聞いたかわからないが、ユリウスの優しい言葉にも『気分を上げておいて、一気に落とす作戦ね』と考えるオフィーリアは、気を抜くことはない。
ケーキを食べ、一度紅茶を飲んで落ち着いたオフィーリアに、ユリウスが待ち構えていたように言った。
「実は君に言っておきたいことができてね。わざわざ来てもらったんだ」
はい、来ましたわ!!
いつでもよろしくてよ!!
「叔父上が婚約したんだよ!」
「……え?」
「ね、驚くだろう?なんと、相手はアリスなんだ!!」
「…………へっ?」
思わず間の抜けた返事になってしまったのは仕方ないと思う。
それほど予想外で、あり得ない話だったのだ。
「あはは!いいな、その反応!!その顔が見たかったんだよ」
いやいや、なぜ殿下がそんな楽しそうにヒロインの婚約話を?
嫉妬とか、邪魔するとか、そういうのはよろしいのですか?
わたくし、喜んでお手伝いいたしますけれど……。
「殿下、王弟殿下にアリスさんをとられてもよろしいのですか?あんなに仲が良かったではないですか!!」
「ん?そうだね、アリスは妹みたいなものだし、叔父上はいい方だから本当に良かったよ。あ、僕達とアリスは親戚になるんだね」
ユリウスに無理をしている様子はなく、本当に嬉しそうに話している。
おかしいですわ。
ハーレムルートから隠しルートに入って、王弟殿下が隠れキャラだったということは理解できましたわ。
でも、ユリウス殿下はヒロインをとられてしまっていいの?
「アリスがね、オフィーリアにパウンドケーキをもらったと話していてね。オフィーリアは優しいいい人だから、もっと時間を作って2人で過ごすべきだと言われてしまったよ。確かにそうだと思ってね」
ヒロインが?
あの子、やる気がなさそうでしたけれど、ちゃんと隠れキャラは攻略したんですのね。
「これからはもっとこういう時間を作っていこう。君は王太子妃教育が大変かもしれないけれど」
「わたくし、王太子妃になるのですか?」
「え、もしかして嫌になっちゃった?オフィーリアに断られても、僕には君しかいないから困っちゃうな」
眉を下げて笑うユリウスに、オフィーリアの胸がキュッと締め付けられた。
本当は好きで悪役令嬢になった訳ではないし、自分だって本当は推しのユリウスと幸せになりたかったのだ。
ヒロインのアリスが王弟殿下と幸せになるのなら、わたくしにもユリウス様と幸せになる未来があってもいいのかしら?
「今度、殿下にもわたくしの作ったパウンドケーキを差し上げますわね」
少しはにかみながら言ったオフィーリアに、ユリウスが嬉しそうに破顔したのだった。
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シスコンからこちらまで、ありがとうございます😊
まさにお節介なモブだらけですよね。
確かに同調圧力ですね!私もモブを頑張ってるんだから、あんたもモブで頑張れよ的な😅
いやな圧力ですね……。
ヒロインも、かなり不憫系ヒロインになってしまいました。
悪役令嬢の続編を考えてみたりもしたので、いつか書けたらいいのですが。
たくさん読んでいただき、ありがとうございました😊
たまたまタイトルをお見かけして、読ませていただきましたが、なかなかない設定で面白かったです!
主人公はかわいいし、終わり方も好きです。
他の作品も読ませていただきます!
ご感想ありがとうございます。
いつも設定を悩んでいるので、そう言っていただけると嬉しいです!
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創作意欲に繋がる素敵なご感想をありがとうございました😊