【完結】私だけがストーリーを知らない乙女ゲームの世界に転生しちゃいました。ヒロインなんて荷が重すぎます!!

櫻野くるみ

文字の大きさ
上 下
25 / 25

番外編①悪役令嬢オフィーリアのその後

しおりを挟む
悪役令嬢オフィーリアは、休暇中の自宅でほくそ笑んでいた。
婚約者の王太子ユリウスが生徒会の合宿へ出かけていたのだが、そろそろ帰ってくる頃合いなのだ。

オーホホホホ。
きっと合宿中に、ヒロインのアリスとユリウス殿下の距離はグッと縮まって、2人の仲はもう引き離せないほど強固なものになっているはずですわ。
より親しげに寄り添う2人を見て、嫉妬で一層酷くアリスを虐めるわたくしーー。
バッチリですわ!!

頭の中でのシミュレーションは完璧で、高笑いが止まらない。
侍女がユリウスからの手紙を持ってきたのは、そんな時だった。

まあ、何かしら?
えーと、お城のパティシエの新しいケーキを食べに来ないかというお誘いですわね。
こんなお誘い、初めてですわ。
あ!もしかして、アリスが好きだから身を引いて欲しいとお願いされるのではなくて?
ではここは思いっきり断って、殿下の敵にならないといけませんわね!!

「明日、お城へ参ります」

凛とした声で使用人に告げると、ユリウスへ返す台詞を考え始める。

きっと「婚約者をおりて欲しい」って言われますわよね?
「まあ、面白い冗談ですこと。わたくし以外にあなた様の婚約者が務まるとでも?」がいいかしら?
あ、でも「オホホホ、あの田舎娘のどこがそんなによろしいのかしら?わたくし、絶対に認めませんわよ!!」の方がインパクトがあるかしら?

『婚約者の座を譲ろうとしない悪役令嬢』をやり遂げると決めながらも、オフィーリアの心は何故か沈んでいた。



「オフィーリア、よく来てくれた。突然で悪かったね」

翌日、気合いを入れて城を訪ねたオフィーリアを、ユリウスがにこやかに微笑みながら歓迎してくれた。
その穏やかな様子に、つい力が抜けそうになってしまう。

あら?なんだか和やかムードですわ。
急に修羅場に豹変するパターンなのかしら?

居心地を悪く感じながらも庭園の椅子に座ると、美しいケーキや焼き菓子が並べられている。

「まぁ!綺麗なケーキ。こんな美しいケーキを初めて見ましたわ!!」

「君はお菓子が好きなんだってね。喜んでもらえたなら良かったよ」

誰から聞いたかわからないが、ユリウスの優しい言葉にも『気分を上げておいて、一気に落とす作戦ね』と考えるオフィーリアは、気を抜くことはない。
ケーキを食べ、一度紅茶を飲んで落ち着いたオフィーリアに、ユリウスが待ち構えていたように言った。

「実は君に言っておきたいことができてね。わざわざ来てもらったんだ」

はい、来ましたわ!!
いつでもよろしくてよ!!

「叔父上が婚約したんだよ!」

「……え?」

「ね、驚くだろう?なんと、相手はアリスなんだ!!」

「…………へっ?」

思わず間の抜けた返事になってしまったのは仕方ないと思う。
それほど予想外で、あり得ない話だったのだ。

「あはは!いいな、その反応!!その顔が見たかったんだよ」

いやいや、なぜ殿下がそんな楽しそうにヒロインの婚約話を?
嫉妬とか、邪魔するとか、そういうのはよろしいのですか?
わたくし、喜んでお手伝いいたしますけれど……。

「殿下、王弟殿下にアリスさんをとられてもよろしいのですか?あんなに仲が良かったではないですか!!」

「ん?そうだね、アリスは妹みたいなものだし、叔父上はいい方だから本当に良かったよ。あ、僕達とアリスは親戚になるんだね」

ユリウスに無理をしている様子はなく、本当に嬉しそうに話している。

おかしいですわ。
ハーレムルートから隠しルートに入って、王弟殿下が隠れキャラだったということは理解できましたわ。
でも、ユリウス殿下はヒロインをとられてしまっていいの?

「アリスがね、オフィーリアにパウンドケーキをもらったと話していてね。オフィーリアは優しいいい人だから、もっと時間を作って2人で過ごすべきだと言われてしまったよ。確かにそうだと思ってね」

ヒロインが?
あの子、やる気がなさそうでしたけれど、ちゃんと隠れキャラは攻略したんですのね。

「これからはもっとこういう時間を作っていこう。君は王太子妃教育が大変かもしれないけれど」

「わたくし、王太子妃になるのですか?」

「え、もしかして嫌になっちゃった?オフィーリアに断られても、僕には君しかいないから困っちゃうな」

眉を下げて笑うユリウスに、オフィーリアの胸がキュッと締め付けられた。
本当は好きで悪役令嬢になった訳ではないし、自分だって本当は推しのユリウスと幸せになりたかったのだ。

ヒロインのアリスが王弟殿下と幸せになるのなら、わたくしにもユリウス様と幸せになる未来があってもいいのかしら?

「今度、殿下にもわたくしの作ったパウンドケーキを差し上げますわね」

少しはにかみながら言ったオフィーリアに、ユリウスが嬉しそうに破顔したのだった。



しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

みかん
2023.05.17 みかん
ネタバレ含む
2023.05.22 櫻野くるみ

シスコンからこちらまで、ありがとうございます😊
まさにお節介なモブだらけですよね。
確かに同調圧力ですね!私もモブを頑張ってるんだから、あんたもモブで頑張れよ的な😅
いやな圧力ですね……。
ヒロインも、かなり不憫系ヒロインになってしまいました。

悪役令嬢の続編を考えてみたりもしたので、いつか書けたらいいのですが。
たくさん読んでいただき、ありがとうございました😊

解除
りんりん
2023.02.20 りんりん

たまたまタイトルをお見かけして、読ませていただきましたが、なかなかない設定で面白かったです!
主人公はかわいいし、終わり方も好きです。
他の作品も読ませていただきます!

2023.02.20 櫻野くるみ

ご感想ありがとうございます。
いつも設定を悩んでいるので、そう言っていただけると嬉しいです!
しかも、他の作品までなんて……感激です!!
創作意欲に繋がる素敵なご感想をありがとうございました😊

解除

あなたにおすすめの小説

知らなかったら…

水姫
恋愛
こんな話もありなはず……。 「…えっ?」 思い付きで書き始めたので、見るに耐えなくなったら引き返してください。裏を読まなければそんなにヤンデレにはならない予定です。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。

❄️冬は つとめて
恋愛
その日は国王主催の舞踏会で、アルテミスは兄のエスコートで会場入りをした。兄が離れたその隙に、とんでもない事が起こるとは彼女は思いもよらなかった。 それは、婚約破棄&女の戦い?

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。

黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜

出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。  令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。  彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。 「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。  しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。 「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」  少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。 ▼連載版、準備中。 ■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜

悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜 嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。 陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。 無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。 夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。 怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。