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マッスルハラスメントは最高です

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怒涛の展開でマッチョな『パパ』が出来てしまった私。
前世の日本人の父に未練がないわけではないが、それはそれ。
マチョ村は欲望に忠実な人間なのである。
家族ならば、もはや父の筋肉は私の筋肉も同じ――だと思いたい。
いや、思おう。

さて、いつまでも寝ているわけにはいかない。
重病人か、はたまた大怪我でもしたかのような騒ぎになってしまったが、実際はたんこぶ一つこさえただけで、あとは前世の記憶を取り戻したことによる浮かれポンチに他ならない。
興奮しすぎていまだおかしい自覚はあるが、筋肉熱中症を万年発症しているマチョ村にとっては、これがノーマルなのである。
さっさと仕事に戻らなければ。

洗濯はホセが続きを干してくれて、すでに乾いていた。
竿も新しくなっていた。
午後から仕事へ行った彼にはあとでお礼を言っておこう――などと思いつつ、あらかた母が作ってくれていた夕食の仕上げにとりかかったのだが。

ここは筋肉レストランなの?
焼肉レストランならよくあるけれども。

倒れた私を案じたのか、パパ(仮)である団長自らが調理場を手伝いだしたせいで、部下の騎士たちまでもが狭いキッチンへ流れ込んできた。
おしくらまんじゅうの夢はなんと予知夢だった!

「ここは私とカレンでやりますから、皆さんは休んでいらして。ね、カレン……って! 大丈夫? ぼーっとしちゃって全然進んでないじゃないの」
「……ああ、ごめんごめん。すぐにやるから」

母に怒られ、中断していたサラダの盛り付けに意識を向けるが、その手はすぐに止まってしまった。
なぜなら、お皿を手渡してくれたり、向こうでスープを混ぜていたり、オーブンの前でしゃがんでいる騎士たちの筋肉が目に入って作業に集中できないのだ。
前を横切られるだけで気を取られてしまう。

もう! これじゃあ全然仕事にならないじゃないの!
そうか、筋肉って業務妨害になるんだ。
マッスルハラスメント、略してマッハラ!

完全に自分が悪いにもかかわらず、馬鹿なことをつらつら考え、視線はキョロキョロと挙動不審な私。
こんなに様子がおかしい私に対しても、騎士のみんなの目は優しい。
どうやら団長の一言のせいか、本気で反抗期が終わったばかりの難しいお年頃だと解釈されたらしい。

いやいや、それは無理があるでしょうが。
反抗期が終わった途端に筋肉に反応し始める女子なんていないって。
でも本当のことも言えないからこのままでいいか。

ということで、筋肉嫌いだったはずのカレンから、マッチョ大好きマチョ村への移行は周囲に不信感を抱かれることも無くスムーズに終了した。
マチョ村の自我が受け入れられて一安心だが、翌日、さらにマッチョが増えることをこの時の私はまだ知らなかった。
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