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マッチョな父、ゲットだぜ!
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「カレン、痛かったよな? ああ、俺が変わってやれたら……」
ベッドを囲んでいた他の騎士をなぎ倒しながらやってくるレオナード。
二メートル近い巨体で周囲に構うことなくズンズン進むものだから、ぶつかられた騎士たちは半分涙目になっている。
彼らだって普段から鍛えているはずなのに、やはりレオナードは別格のようだ。
「団長、酷いっす」
「いてっ、体がすでに凶器なんだって!」
そんな彼らに構うことなく、側までやってきたレオナードは遠慮がちに私の頭を撫で始めた。
嫌がられたらすぐ止めるつもりなのか、私の反応を注視しているのがおかしい。
嫌がったりしませんよー。
ほらほら、その大きな手でもっと撫でたまえ。
むしろ私が愉悦に浸っているのがわかったのか、レオナードは厚い手のひらを頭に置いたまま、母の方へと振り返った。
母も笑みを浮かべて頷いている。
そういえば、この二人ってデキてるっぽいんだよね。
カレンは認めたくないみたいでずっと見て見ぬフリをしていたけど、私的には全然オッケー!
団長はお母さんのことがずっと好きで独身を貫いていたみたいだし。
カレンの父と親友だった縁で、この騎士団寮の家政婦へと推挙してくれたのがレオナードだった。
騎士に複雑な思いを抱いているカレンを慮って、ずっと気持ちを押し込めてきたレオナードだったが、最近ようやく母に想いを伝えたのだと噂では聞いていた。
いいじゃないの、騎士の純愛!
むしろ応援しちゃうよ、私は。
カレンだって急に素直に接するのが恥ずかしかっただけで、団長のことは嫌いじゃないみたいだしね。
そんなことより、団長の筋肉が良過ぎる……。
ジャケットを脱いできたのか、レオナードは白いシャツ姿だった。
分厚い上着がなくなると、パツパツに見えるほどに筋肉が主張していてもはや眩しい。
「今日は急いで帰ったせいでカレンにお土産が買えなかったんだ。ごめんな」
「いえいえ、ご心配をおかけしてすみません。私にはお土産より筋肉の方がご褒美……」
「ん? 筋肉?」
それだ!
私は名案を思い付いた。
相手の罪悪感に付け込んで筋肉を触る!
これしかない!
「団長、お土産の代わりにちょっとお願いが」
「なんだ? カレンが珍しいな。なんでも言ってくれ」
レオナードが弾む声で尋ねてくる。
貴重な隣国の宝石が欲しいなどと言おうものなら、攻め込んででも手に入れそうな気配だ。
もちろん言わないけど。
「大胸筋、三角筋、上腕二頭筋あたりを触らせてもらってもいいですか? あ、お腹と下半身の筋肉はまた今度でいいので。一遍にだとさすがに供給過多かなーって」
「は?」
「駄目ですか?」
必殺技、『手のひらを組んで上目遣い』でお願いすれば、団長は簡単に落ちた。
チョロいぜ。
「もちろんいいぞ。ほら、好きなだけ触ってみろ」
「わーい」
す、すごすぎる!!
ここまでのマッチョ、初めて見たよー。
やっぱりホセさんより更に厚い。
パンパンに見えるのに、触ると柔らかく感じるのが不思議だよね。
胸なんて私より大きいし、いやーん、楽しいー。
カレンに嫌われていると思っていたレオナードは恍惚の表情を浮かべているが、一見するととんでもない光景である。
現に一部の騎士は引いていた。
「カレンが俺に触っている……。これはもう俺を父と認めてくれたということではないか?」
「いやいや、さすがにそれは。どうみても興味があるのは団長の筋肉っしょ」
「そうそう、それだって今だけのカレンちゃんの気まぐれですよ」
「筋肉だって俺の一部だ! な、カレン? 俺のことをパパと呼んでもいいからな」
「あっはっは! 団長ってば何を言い出すんですか。カレンちゃんが呼ぶわけな――」
「パパ」
騎士の声が不自然に途切れ、部屋が静寂に包まれた。
それもそのはずである。
カレンがレオナードを「パパ」と呼んだのだから。
「「「うえええええっ!!」」」
「カレンー! そうか、俺の娘になってくれるのか! 俺たちの結婚を許してくれるんだな!!」
レオナードの隣に立った母も感動したのか、目に涙を溜めている。
私の中のカレンも不貞腐れつつも祝福しているのがわかった。
ついレオナードに対してツンケンしてしまったけれど、本当は母の幸せをずっと願っていたのである。
こうして、私は異世界でマッチョなパパをゲットしたのだった。
ベッドを囲んでいた他の騎士をなぎ倒しながらやってくるレオナード。
二メートル近い巨体で周囲に構うことなくズンズン進むものだから、ぶつかられた騎士たちは半分涙目になっている。
彼らだって普段から鍛えているはずなのに、やはりレオナードは別格のようだ。
「団長、酷いっす」
「いてっ、体がすでに凶器なんだって!」
そんな彼らに構うことなく、側までやってきたレオナードは遠慮がちに私の頭を撫で始めた。
嫌がられたらすぐ止めるつもりなのか、私の反応を注視しているのがおかしい。
嫌がったりしませんよー。
ほらほら、その大きな手でもっと撫でたまえ。
むしろ私が愉悦に浸っているのがわかったのか、レオナードは厚い手のひらを頭に置いたまま、母の方へと振り返った。
母も笑みを浮かべて頷いている。
そういえば、この二人ってデキてるっぽいんだよね。
カレンは認めたくないみたいでずっと見て見ぬフリをしていたけど、私的には全然オッケー!
団長はお母さんのことがずっと好きで独身を貫いていたみたいだし。
カレンの父と親友だった縁で、この騎士団寮の家政婦へと推挙してくれたのがレオナードだった。
騎士に複雑な思いを抱いているカレンを慮って、ずっと気持ちを押し込めてきたレオナードだったが、最近ようやく母に想いを伝えたのだと噂では聞いていた。
いいじゃないの、騎士の純愛!
むしろ応援しちゃうよ、私は。
カレンだって急に素直に接するのが恥ずかしかっただけで、団長のことは嫌いじゃないみたいだしね。
そんなことより、団長の筋肉が良過ぎる……。
ジャケットを脱いできたのか、レオナードは白いシャツ姿だった。
分厚い上着がなくなると、パツパツに見えるほどに筋肉が主張していてもはや眩しい。
「今日は急いで帰ったせいでカレンにお土産が買えなかったんだ。ごめんな」
「いえいえ、ご心配をおかけしてすみません。私にはお土産より筋肉の方がご褒美……」
「ん? 筋肉?」
それだ!
私は名案を思い付いた。
相手の罪悪感に付け込んで筋肉を触る!
これしかない!
「団長、お土産の代わりにちょっとお願いが」
「なんだ? カレンが珍しいな。なんでも言ってくれ」
レオナードが弾む声で尋ねてくる。
貴重な隣国の宝石が欲しいなどと言おうものなら、攻め込んででも手に入れそうな気配だ。
もちろん言わないけど。
「大胸筋、三角筋、上腕二頭筋あたりを触らせてもらってもいいですか? あ、お腹と下半身の筋肉はまた今度でいいので。一遍にだとさすがに供給過多かなーって」
「は?」
「駄目ですか?」
必殺技、『手のひらを組んで上目遣い』でお願いすれば、団長は簡単に落ちた。
チョロいぜ。
「もちろんいいぞ。ほら、好きなだけ触ってみろ」
「わーい」
す、すごすぎる!!
ここまでのマッチョ、初めて見たよー。
やっぱりホセさんより更に厚い。
パンパンに見えるのに、触ると柔らかく感じるのが不思議だよね。
胸なんて私より大きいし、いやーん、楽しいー。
カレンに嫌われていると思っていたレオナードは恍惚の表情を浮かべているが、一見するととんでもない光景である。
現に一部の騎士は引いていた。
「カレンが俺に触っている……。これはもう俺を父と認めてくれたということではないか?」
「いやいや、さすがにそれは。どうみても興味があるのは団長の筋肉っしょ」
「そうそう、それだって今だけのカレンちゃんの気まぐれですよ」
「筋肉だって俺の一部だ! な、カレン? 俺のことをパパと呼んでもいいからな」
「あっはっは! 団長ってば何を言い出すんですか。カレンちゃんが呼ぶわけな――」
「パパ」
騎士の声が不自然に途切れ、部屋が静寂に包まれた。
それもそのはずである。
カレンがレオナードを「パパ」と呼んだのだから。
「「「うえええええっ!!」」」
「カレンー! そうか、俺の娘になってくれるのか! 俺たちの結婚を許してくれるんだな!!」
レオナードの隣に立った母も感動したのか、目に涙を溜めている。
私の中のカレンも不貞腐れつつも祝福しているのがわかった。
ついレオナードに対してツンケンしてしまったけれど、本当は母の幸せをずっと願っていたのである。
こうして、私は異世界でマッチョなパパをゲットしたのだった。
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