【完結】マッチョ大好きマチョ村(松村)さん、異世界転生したらそこは筋肉パラダイスでした!

櫻野くるみ

文字の大きさ
上 下
5 / 9

マッチョな父、ゲットだぜ!

しおりを挟む
「カレン、痛かったよな? ああ、俺が変わってやれたら……」

ベッドを囲んでいた他の騎士をなぎ倒しながらやってくるレオナード。
二メートル近い巨体で周囲に構うことなくズンズン進むものだから、ぶつかられた騎士たちは半分涙目になっている。
彼らだって普段から鍛えているはずなのに、やはりレオナードは別格のようだ。

「団長、酷いっす」
「いてっ、体がすでに凶器なんだって!」

そんな彼らに構うことなく、側までやってきたレオナードは遠慮がちに私の頭を撫で始めた。
嫌がられたらすぐ止めるつもりなのか、私の反応を注視しているのがおかしい。

嫌がったりしませんよー。
ほらほら、その大きな手でもっと撫でたまえ。

むしろ私が愉悦に浸っているのがわかったのか、レオナードは厚い手のひらを頭に置いたまま、母の方へと振り返った。
母も笑みを浮かべて頷いている。

そういえば、この二人ってデキてるっぽいんだよね。
カレンは認めたくないみたいでずっと見て見ぬフリをしていたけど、私的には全然オッケー!
団長はお母さんのことがずっと好きで独身を貫いていたみたいだし。

カレンの父と親友だった縁で、この騎士団寮の家政婦へと推挙してくれたのがレオナードだった。
騎士に複雑な思いを抱いているカレンを慮って、ずっと気持ちを押し込めてきたレオナードだったが、最近ようやく母に想いを伝えたのだと噂では聞いていた。

いいじゃないの、騎士の純愛! 
むしろ応援しちゃうよ、私は。
カレンだって急に素直に接するのが恥ずかしかっただけで、団長のことは嫌いじゃないみたいだしね。
そんなことより、団長の筋肉が良過ぎる……。

ジャケットを脱いできたのか、レオナードは白いシャツ姿だった。
分厚い上着がなくなると、パツパツに見えるほどに筋肉が主張していてもはや眩しい。

「今日は急いで帰ったせいでカレンにお土産が買えなかったんだ。ごめんな」
「いえいえ、ご心配をおかけしてすみません。私にはお土産より筋肉の方がご褒美……」
「ん? 筋肉?」

それだ! 

私は名案を思い付いた。
相手の罪悪感に付け込んで筋肉を触る!
これしかない!

「団長、お土産の代わりにちょっとお願いが」
「なんだ? カレンが珍しいな。なんでも言ってくれ」

レオナードが弾む声で尋ねてくる。
貴重な隣国の宝石が欲しいなどと言おうものなら、攻め込んででも手に入れそうな気配だ。
もちろん言わないけど。

「大胸筋、三角筋、上腕二頭筋あたりを触らせてもらってもいいですか? あ、お腹と下半身の筋肉はまた今度でいいので。一遍にだとさすがに供給過多かなーって」
「は?」
「駄目ですか?」

必殺技、『手のひらを組んで上目遣い』でお願いすれば、団長は簡単に落ちた。
チョロいぜ。

「もちろんいいぞ。ほら、好きなだけ触ってみろ」
「わーい」

す、すごすぎる!!
ここまでのマッチョ、初めて見たよー。
やっぱりホセさんより更に厚い。
パンパンに見えるのに、触ると柔らかく感じるのが不思議だよね。
胸なんて私より大きいし、いやーん、楽しいー。

カレンに嫌われていると思っていたレオナードは恍惚の表情を浮かべているが、一見するととんでもない光景である。
現に一部の騎士は引いていた。

「カレンが俺に触っている……。これはもう俺を父と認めてくれたということではないか?」
「いやいや、さすがにそれは。どうみても興味があるのは団長の筋肉っしょ」
「そうそう、それだって今だけのカレンちゃんの気まぐれですよ」
「筋肉だって俺の一部だ! な、カレン? 俺のことをパパと呼んでもいいからな」
「あっはっは! 団長ってば何を言い出すんですか。カレンちゃんが呼ぶわけな――」
「パパ」

騎士の声が不自然に途切れ、部屋が静寂に包まれた。
それもそのはずである。
カレンがレオナードを「パパ」と呼んだのだから。

「「「うえええええっ!!」」」
「カレンー! そうか、俺の娘になってくれるのか! 俺たちの結婚を許してくれるんだな!!」

レオナードの隣に立った母も感動したのか、目に涙を溜めている。

私の中のカレンも不貞腐れつつも祝福しているのがわかった。
ついレオナードに対してツンケンしてしまったけれど、本当は母の幸せをずっと願っていたのである。


こうして、私は異世界でマッチョなパパをゲットしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の神は毎回思う。なんで悪役令嬢の身体に聖女級の良い子ちゃんの魂入れてんのに誰も気付かないの?

下菊みこと
恋愛
理不尽に身体を奪われた悪役令嬢が、その分他の身体をもらって好きにするお話。 異世界の神は思う。悪役令嬢に聖女級の魂入れたら普通に気づけよと。身体をなくした悪役令嬢は言う。貴族なんて相手のうわべしか見てないよと。よくある悪役令嬢転生モノで、ヒロインになるんだろう女の子に身体を奪われた(神が勝手に与えちゃった)悪役令嬢はその後他の身体をもらってなんだかんだ好きにする。 小説家になろう様でも投稿しています。

「俺が君を愛することはない」じゃあこの怖いくらい甘やかされてる状況はなんなんだ。そして一件落着すると、今度は家庭内ストーカーに発展した。

下菊みこと
恋愛
戦士の王の妻は、幼い頃から一緒にいた夫から深く溺愛されている。 リュシエンヌは政略結婚の末、夫となったジルベールにベッドの上で「俺が君を愛することはない」と宣言される。しかし、ベタベタに甘やかされているこの状況では彼の気持ちなど分かりきっていた。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜

松浦どれみ
恋愛
【読んで笑って! 詰め込みまくりのラブコメディ!】 (ああ、なんて素敵なのかしら! まさかリアム様があんなに逞しくなっているだなんて、反則だわ! そりゃ触るわよ。モロ好みなんだから!)『本編より抜粋』 ※カクヨムでも公開中ですが、若干お直しして移植しています! 【あらすじ】 架空の国、ジュエリトス王国。 人々は大なり小なり魔力を持つものが多く、魔法が身近な存在だった。 国内の辺境に領地を持つ伯爵家令嬢のオリビアはカフェの経営などで手腕を発揮していた。 そして、貴族の令息令嬢の大規模お見合い会場となっている「貴族学院」入学を二ヶ月後に控えていたある日、彼女の元に公爵家の次男リアムとの婚約話が舞い込む。 数年ぶりに再会したリアムは、王子様系イケメンとして令嬢たちに大人気だった頃とは別人で、オリビア好みの筋肉ムキムキのゴリマッチョになっていた! 仮の婚約者としてスタートしたオリビアとリアム。 さまざまなトラブルを乗り越えて、ふたりは正式な婚約を目指す! まさかの国にもトラブル発生!? だったらついでに救います! 恋愛偏差値底辺の変態令嬢と初恋拗らせマッチョ騎士のジョブ&ラブストーリー!(コメディありあり) 応援よろしくお願いします😊 2023.8.28 カテゴリー迷子になりファンタジーから恋愛に変更しました。 本作は恋愛をメインとした異世界ファンタジーです✨

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...