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『マチョ村』に乗っ取られました
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はぁぁ、マッチョ軍団とおしくらまんじゅうする夢を見ちゃった。
どこもかしこも筋肉だらけ……。
幸せだけど、命の危機も感じてダブルでハラハラドキドキしちゃったーーって!!
再び目覚めた私の目に入ってきたのは、騎士服姿の男たち。
なんと、夢から覚めてもマッチョ集団が視界を埋め尽くしていた。
さすがにおしくらまんじゅうはしていないが、五名ものマッチョが覗き込んでいればその存在感はなかなかのものである。
「お! カレンちゃんが目を覚ましたぞ!」
「心配したんだぞ。意味不明なことを叫んでまた倒れるから……」
「誰か団長を呼んで来い!」
失神していた時間が短かったのか、騎士たちはまだ私の部屋に残っていたようだ。
女の子の部屋なのにいかがなものかとも思うが、彼らにとっては私は妹のようなものだから仕方がない。
私は自分の置かれた状況について冷静に考えてみることにした。
確かに意識を失う前は、大好きな筋肉を前にして大いに取り乱していたけれど、そもそも自分はカレンなのだ。
いくら前世の記憶が戻ったからって、騎士やマッチョなんて見慣れているはず!!
落ち着いて周囲を見回してみると――
はわわわ、これが天国じゃなくて現実なんてことある!?
まるで筋肉ハーレムじゃん!!
え、天国に一番近い島なら聞いたことあるけれど、ここってニューカレドニアなの?
そっか、ニューカレドニアってマッチョの逆ハーレムだったんだ!!
冷静どころか余計に錯乱してしまった。
カレンとしての記憶はもちろん残っているのだから、ここが住み慣れた自分の部屋であることや、騎士たちの名前や普段のやりとりだってすべてを覚えている。
覚えてはいるのだが、今はそれらがどこかへ吹っ飛んでいた。
意識が松村香蓮……いや、『マチョ村』に乗っ取られたかのように筋肉のことしか頭に入って来ないのである。
カレンの筋肉嫌いを力技で押しのけ、大好きなマッチョ一色に染め上げる『マチョ村』恐るべし!
私は再び体を起こし、こちらを心配そうに見つめる騎士たちの顔を見回す――つもりで、完全に視線は彼らの胸元ばかりを見ていた。
仕事から戻ってきたまま駆けつけてくれたのか、彼らはまだ騎士服を着用しているが、ジャケットの上からでも筋肉の厚みを感じる。
うへへ……好みのマッチョがたくさん……堪らんのぅ。
もはや焦点の合わない目でニタニタし始めた私に慌てたのは騎士たちである。
「カレンちゃん! そんなに打ち所が悪かったのか?」
「しっかりしろ! 今、団長も来るから」
「いや、もしかして俺たちに囲まれているのが嫌なんじゃないか? 着替えてもいないし、また汗臭いって言われちまうぞ」
「それか!」
カレンのおかしな反応が筋肉への拒否反応によるものだと勘違いした騎士たちは、一回立ち去ろうとしたが、そんなことを私が許すはずもない。
「待って! 行かないで!」
筋肉を逃してたまるかと、私は必死に止めた。
うるうると瞳を潤ませながら。
その表情に胸を打たれる単純なマッチョ集団……。
「なんだ、心細くなったのか? カレンちゃんもまだまだ子供だな」
「女の子なのに、たんこぶなんて可哀そうにな」
『大丈夫だ、ここにいる』と意思表示するかのように、片膝を付きながら目線を合わせ、たんこぶを避けるように頭を撫でてくれる
や、優しい……。
しかもお姫様みたいに傅かれているこの状況が最高過ぎるのですが。
袖口からちらりとのぞく手首らへんがすでに男らしくてカッコイイってどういうこと?
普段構いたくても嫌がられていた騎士らは、チャンスとばかりに弱気になっているカレンを可愛がった。
気持ちよさそうにうっとりと頭を撫でられていると、ノックの音と共にレオナードが現れた。
母も後ろにいるみたいだが、団長の体が大きすぎてここからは見えない。
「ちょっ! お前らなんでカレンに触ってるんだ! 俺だって構いたいのに反抗期だからって我慢しているんだぞ!」
反抗期って……。
十歳から十七歳の今までずっと反抗期って長過ぎるでしょうが。
単に筋肉が嫌だっただけだって――今まではね。
「レオナード団長、お母さんも、心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
私がにっこりと微笑んでみせたら、団長の顔がパァァっと輝いた。
イケオジの笑顔は思ったより可愛くていいものである。
そして、それほどまでにカレンは今まで塩対応だったらしい。
ドカドカ近付いてくる団長は嬉しそうだが、それよりも私はその肩幅や大胸筋に目が釘付けになっていた。
どこもかしこも筋肉だらけ……。
幸せだけど、命の危機も感じてダブルでハラハラドキドキしちゃったーーって!!
再び目覚めた私の目に入ってきたのは、騎士服姿の男たち。
なんと、夢から覚めてもマッチョ集団が視界を埋め尽くしていた。
さすがにおしくらまんじゅうはしていないが、五名ものマッチョが覗き込んでいればその存在感はなかなかのものである。
「お! カレンちゃんが目を覚ましたぞ!」
「心配したんだぞ。意味不明なことを叫んでまた倒れるから……」
「誰か団長を呼んで来い!」
失神していた時間が短かったのか、騎士たちはまだ私の部屋に残っていたようだ。
女の子の部屋なのにいかがなものかとも思うが、彼らにとっては私は妹のようなものだから仕方がない。
私は自分の置かれた状況について冷静に考えてみることにした。
確かに意識を失う前は、大好きな筋肉を前にして大いに取り乱していたけれど、そもそも自分はカレンなのだ。
いくら前世の記憶が戻ったからって、騎士やマッチョなんて見慣れているはず!!
落ち着いて周囲を見回してみると――
はわわわ、これが天国じゃなくて現実なんてことある!?
まるで筋肉ハーレムじゃん!!
え、天国に一番近い島なら聞いたことあるけれど、ここってニューカレドニアなの?
そっか、ニューカレドニアってマッチョの逆ハーレムだったんだ!!
冷静どころか余計に錯乱してしまった。
カレンとしての記憶はもちろん残っているのだから、ここが住み慣れた自分の部屋であることや、騎士たちの名前や普段のやりとりだってすべてを覚えている。
覚えてはいるのだが、今はそれらがどこかへ吹っ飛んでいた。
意識が松村香蓮……いや、『マチョ村』に乗っ取られたかのように筋肉のことしか頭に入って来ないのである。
カレンの筋肉嫌いを力技で押しのけ、大好きなマッチョ一色に染め上げる『マチョ村』恐るべし!
私は再び体を起こし、こちらを心配そうに見つめる騎士たちの顔を見回す――つもりで、完全に視線は彼らの胸元ばかりを見ていた。
仕事から戻ってきたまま駆けつけてくれたのか、彼らはまだ騎士服を着用しているが、ジャケットの上からでも筋肉の厚みを感じる。
うへへ……好みのマッチョがたくさん……堪らんのぅ。
もはや焦点の合わない目でニタニタし始めた私に慌てたのは騎士たちである。
「カレンちゃん! そんなに打ち所が悪かったのか?」
「しっかりしろ! 今、団長も来るから」
「いや、もしかして俺たちに囲まれているのが嫌なんじゃないか? 着替えてもいないし、また汗臭いって言われちまうぞ」
「それか!」
カレンのおかしな反応が筋肉への拒否反応によるものだと勘違いした騎士たちは、一回立ち去ろうとしたが、そんなことを私が許すはずもない。
「待って! 行かないで!」
筋肉を逃してたまるかと、私は必死に止めた。
うるうると瞳を潤ませながら。
その表情に胸を打たれる単純なマッチョ集団……。
「なんだ、心細くなったのか? カレンちゃんもまだまだ子供だな」
「女の子なのに、たんこぶなんて可哀そうにな」
『大丈夫だ、ここにいる』と意思表示するかのように、片膝を付きながら目線を合わせ、たんこぶを避けるように頭を撫でてくれる
や、優しい……。
しかもお姫様みたいに傅かれているこの状況が最高過ぎるのですが。
袖口からちらりとのぞく手首らへんがすでに男らしくてカッコイイってどういうこと?
普段構いたくても嫌がられていた騎士らは、チャンスとばかりに弱気になっているカレンを可愛がった。
気持ちよさそうにうっとりと頭を撫でられていると、ノックの音と共にレオナードが現れた。
母も後ろにいるみたいだが、団長の体が大きすぎてここからは見えない。
「ちょっ! お前らなんでカレンに触ってるんだ! 俺だって構いたいのに反抗期だからって我慢しているんだぞ!」
反抗期って……。
十歳から十七歳の今までずっと反抗期って長過ぎるでしょうが。
単に筋肉が嫌だっただけだって――今まではね。
「レオナード団長、お母さんも、心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
私がにっこりと微笑んでみせたら、団長の顔がパァァっと輝いた。
イケオジの笑顔は思ったより可愛くていいものである。
そして、それほどまでにカレンは今まで塩対応だったらしい。
ドカドカ近付いてくる団長は嬉しそうだが、それよりも私はその肩幅や大胸筋に目が釘付けになっていた。
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