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まさかの告白と婚約者(仮)。

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ダニエルの宣言後、特に大きな変化もなく、エミリアは何を覚悟するのかわからないまま時が過ぎた。
ダニエルは以前より忙しそうで、騎士団の訓練や遠征で王都を離れることも多くなった。
騎士団の中で少し出世をしたらしいが、ダニエルはあまり仕事の話をエミリアにしない為、詳しくは知らない。
しかし、数日王都を離れる際は、エミリアの顔を必ず見に寄った。

「エミィ、明日からちょっと出かける。戻ってくるまで危険なことはするなよ?お土産買ってくるからな!」

いつもそう言って、エミリアの頭を撫でて去っていく。
遠くに行く時は、必ずエミリアの縫ったハンカチを持っていくらしい。
約束通り、毎年誕生日には前より上達したものを贈っている。

お土産はルシアンも同行した場合は、その土地の織物やボタンなど、エミリアが喜ぶ気の利いたものなのだが、ダニエルだけだと妙な置物や仮面などが多く、エミリアの部屋は民俗資料館のようになってしまった。
またこんなもの買ってきて・・・と思いつつ、元気に帰還したダニエルを見ると、笑って受け取ってしまうから不思議だ。

シーラの結婚式は、小規模ながら手の込んだ、温かいものになった。
お相手がエミリアの父の部下で、商会の運営に携わっている男性だった為、バートン家が中心となって準備をした。
賑やかなパーティーの中、ダニエルを見ると、楽しそうにルシアンとふざけている。

やっぱり、シーラさんを好きだった訳じゃないのか。
じゃあ、大切な人って誰なのかな?
このパーティーの中にいる人?

辺りを見回しても、エミリアには誰だかわからなかった。


◆◆◆

エミリアは十歳になった。
同じ年頃の貴族の令息や、令嬢とのお茶会が催されるようになり、エミリアの世界は徐々に広がり始めた。
しかしそれと同時に、すでに幼い実業家として貴族社会の中で名前が売れているエミリアに、魔の手はすぐに忍び寄った。

「うちの息子と結婚して、領地を盛りたてて欲しい。」

「優先的にドレスを都合してもらえないかしら?」

「養子に来なさい。悪いようにはしないから。」

エミリアの才能に目を付けた大人達が、子供のお茶会なのに、エミリアを取り巻いていた。
王家も王子の一人と婚約させるか、王妃の側近として宮仕えをさせたいと考えていたし、切羽詰まった貴族の中には誘拐を企てるものまで出てきた。

今までは割と屋敷に閉じ籠っていたのと、ダニエルやルシアンが側に居た為、自然と守られていたエミリアだったが、活動範囲が広がるにつれ、危険度も増してきた。
誘拐などの情報は騎士団にあがってくるので、ダニエルが目を光らせていたが、常に張り付いて守れる訳でもない。
いよいよダニエルが動いた。


「エミィ、話があるんだ。」

珍しくアポを取ってからバートン家に現れたダニエル。
いつもよりゴテゴテした騎士の制服を着て、手には可愛らしいブーケまで持っている。

何が始まるのかしら?
こんなダニー様、珍しいよね。

こちらまで伝わるような緊張感の中、応接室のソファーに座っていたダニエルが、エミリアの前に突然跪いた。

「エミィ、俺と婚約してくれ。俺にエミィを守らせて欲しい。」

ブーケを差し出しつつ、真摯な瞳で訴えかけてくる。
エミリアは驚きすぎて言葉が出なかった。

えっと、私とダニー様が婚約?
冗談だよね?
私、十歳だけど。

エミリアもソファーから立ち上がったが、まだ身長の低い彼女が立っても、膝を付くダニエルを少し見下ろすだけだ。

「ダニー様?私、まだ十歳なんですけど・・・」

動揺しながら言うと、それがどうしたと言わんばかりの表情でダニエルが頷く。

「ああ、知っている。五年待ったからな。」

は?
待ったって、ずっと婚約を考えていたってこと?
私が五歳の時から!?

いよいよ混乱を極め、エミリアは大事なことを確認した。

「あの、ダニー様は二十三歳ですよね?何も、十歳の私じゃなくても、素敵な女性がいると思うんですけど。ダニー様、有望株なんでしょ?」

エミリアの台詞にダニエルが苦笑する。

「有望かどうかはわからないが、いくつかあるグループの隊長に任命された。これからもっと忙しくなるから、せめて婚約をして安心したい。エミィを狙う奴らが多すぎる。」

エミリアの父が、婚約の打診等は軒並み丁重に断り、エミリアの耳には入れないようにしていたが、エミリア自身も自分の危うい立場には気付いていた。

変な人と婚約するくらいなら、断然ダニー様ではあるよね。
拐われるのも嫌だな。
でも好きな仕事はずっとしたいし。
私、そもそも結婚しなくてもいいと思ってたんだけど。

色々思案中のエミリアに、ダニエルがハッキリと想いを告げる。

「エミィ、初めて会った日から、エミィだけが特別なんだ。親父があの日、エミィと会わせてくれて、俺に『大切な者』を与えてくれたと思っている。俺がエミィを守っていきたい。エミィを愛しているから。今はまだ俺に恋愛感情が沸かなくても構わない。エミィが認めてくれるまで婚約者でいいから、側にいさせてくれ。」

前世でも言われたことのない情熱的な告白に、エミリアの胸は高鳴ってしまう。

「まだ子供だけど、いいの?」

「大人になるまで見守るし、中身は俺より大人だろ?」

正直十三歳差は大きいと思うし、何より十歳に告白って・・・とも思う。
エミリアに今後何が起きるかわからない上、ダニエルにももっと相応しい女性が現れるかもしれない。

「わかりました。とりあえず婚約はします。だけど、まだ仮で。婚約者(仮)です。」

「くくっ、相変わらず手厳しいな。ま、いいよ。とりあえず(仮)で。これから口説き落とせばいいんだから。」

今までと違う怪しい大人の雰囲気を纏うダニエルにドキッとしつつ、言い返す。

「私は子供なので、色気は通用しません!」

可愛くないことを言いながら、ダニエルに他に好きな人が出来なければいいと、少し願った。











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