【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ

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空回る想い。

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突然ダニエルがエミリアの屋敷に現れた。
しかも、なんだか様子がおかしい。

なに、あの無駄に爽やかな笑顔!
話し方だって、この前はもっと普通の青年っぽかったハズ・・・
怪しい、そして気味が悪い。
絶対裏があるに違いないわ。
まさかうちのお金目当て!?

悲しいことに、ダニエルの純粋な好意は、実は人生経験が豊富で中身アラサーのエミリアには、邪推の対象にしかならず、大いに誤解されていた。
哀れなダニエル。


応接室に移動した途端、エミリアの父に他の来客が訪れた為、あっさりと父が席を外そうとする。

おいおい、父よ!
「パパがついているからなー。」って言ってたじゃないの。
可愛い年頃の娘を(まだ五歳だけど)、こんな怪しい青年(一応騎士だけど)と置いていくってどうなのよ?

「ダニエル殿、申し訳ない。ぜひ夕食は食べていって下さい。」

「お気遣い、感謝致します。ではお言葉に甘えて。」

食べていくんかーい!
それまで私が相手するのかな?

エミリアはムスッとした顔で父を送り出すと、メイド以外は二人きりになってしまった応接室で、警戒しながら話しかけた。

「だにえるさま、うさんくさいです。どうしてむりしてわらって、そんなあやしいくちょうなのですか?」

遠慮なくズバッと指摘をすると、ダニエルがたじろぎ、ショックを受けている。
しかし様子を観察していると、吹っ切れたように笑い出した。

「あはは!悪かった。そうだよな!エミリア嬢はそういう子だから気になるんだった。馬鹿だな、俺。」

三日前に公園で会った時のような自然体に戻ったダニエルに安心し、エミリアが安堵の笑みを浮かべると、ダニエルも嬉しそうに笑った。

なんだかよくわからないけど、状態異常は回復したみたいね。
世話が焼けるわ。

ダニエルの、『ルシアン直伝、好青年作戦』は、警戒心が強いエミリア相手に、空回りに終わった。
一応、単純なエミリアの父親には有効であった為、無駄では無かったと思いたい。


「だにえるさまは、ほんじつはどういったごようけんでいらしたのですか?」

エミリアに悪気は無いのだが、五歳児に言われると、妙に他人行儀に感じてしまう。
ダニエルは怯むことなく立ち向かった。

「あのさ、俺のことはダニーって呼んでくれないか?さすがに職場では呼ばれないけど、昔からの友達はそう呼ぶし、ダニエル様って言いにくいだろ?」

ダニー!?
なにゆえ、そんな親しげな呼び方を?
この青年は、私とお友達になりたいとか?
性別も年齢も違うのに、無謀じゃないかな。

しかし、子供の口だと確かにダニーの方が言いやすく、何よりダニエルが必死な様子なので断りづらい。
親戚の仲がいいお兄さんって感じで呼べばいいかと自分を納得させ、一度呼んでみる。

「だにーさま。どうですか?」

「うーん、様も敬語も要らないが、それはおいおい変えていくとして、俺もエミィって呼んでもいいか?」

エミィ!?
何がどうしてそうなった?
ダニーとエミィなんて、私達ってそんな近い間柄でしたっけ?
今日はやけにガツガツくるなぁ。

思うところはあったが、自分がダニーと呼んでしまった手前、呼ばせないというのも変な気がして、結局許してしまう。

「かまいませんが・・・」

「そうか!じゃあエミィ、これを。今日はこれを渡しに来たんだ。」

ようやく本題に入ったらしい。
エミリアは自分に差し出された物を受け取る。

「これはなんですか?」

「ハンカチだ。それでだ、借りたやつは貰ってもいいか?新しいの二枚入ってるから。」

「それはいいですけど・・・」

エミリアはダニエルに貸した総レースのハンカチを思い出した。

うん、全く未練がないから、あげるのはいいとして。
騎士があんなヒラヒラ、なんで欲しがるんだろ?

今日のダニエルは全体的に挙動不審な気がした。

「エミィからのハンカチは伯爵から受け取った。ありがとうな!大切に使う。ちょっと歪んでるのがエミィの手作りっぽくていいと思う。」

ダニエルは本心から言っているのだが、一言余計だった。
きっとルシアンが心配していたのはこういうところなのだが、エミリアが知る由もなく、拗ねた。

「ゆがんでいてすみませんね。まだこどものてなので。これからもっとうまくなるよていです。」

「あ、じゃあ、また作ってくれるか?上手くなったか判定してやるよ。」

なんで上から目線?

色々腑に落ちなかったが、確かにリベンジが必要だと感じたエミリアは、渋々話に乗ったのだった。






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