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私のことが好きなのかしら?
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『キャッ』と声が喉元まで出かかったが、クレアは自分の手で咄嗟に口を塞ぎ、なんとか堪えた。
こんな下着姿でエドガーのベッドにいるところを使用人に目撃されたら、大変なことになってしまう。
まずは落ち着かないと……。
とりあえず人間には戻れたようね。
自分の体を確認してみるが、うさぎに変身する前のクレアの体と相違無い。
何故かワンピースだけ脱いだ状態なので、コルセットにドロワーズという心許ない格好ではあるが。
どうして下着だけは残ったのかしら?
まあ、エドに下着が落ちているのを見られなくて済んだのだから、むしろ助かったのだけど。
そんなことより、問題は変身した原因よね。
でもどう考えてみたってーー。
下着姿でいたからだろうか、肌寒さを感じてまたもやくしゃみが出てしまった。
「ックシュン!!」
……やっぱりね。
そうだとは思ったわよ。
クレアはまたしてもモフモフのうさぎの姿に変わっていた。
はぁ。
くしゃみが原因なのは確実だろうけれど、この変身は一体いつまで続くのかしらね。
ーーま、戻れるならいいか。
前向きなクレアは考えるのを止めると、花瓶に飾ってあった花の葉っぱをブチッと1枚拝借した。
この葉で鼻をモゾモゾすれば、いつでもくしゃみが出来て、戻れるという魂胆である。
ふっふっふ、これで自由自在に人間とうさぎを行ったり来たり出来るってわけよ。
私って天才!
しかし、使用人には見つかりたくない為、トイレの時以外はしばらくの間うさぎの姿で過ごすことにした。
うさぎに変身した理由はわからないままだが、戻す方法がわかったことに気を良くしたクレアは、退屈凌ぎに屋敷内を探検することにした。
ピョコピョコと移動していると、クレアを目にしたマクレーン家の侍女や庭師などが寄ってきて、すぐに囲まれてしまった。
白いうさぎのクレアは、あっという間にマクレーンの人気者である。
「『うさ様』と言うのですって!モフモフで可愛らしいわ~」
「赤い瞳だからか、クレア様にソックリなうさぎだな。これはエドガー様も放っておけないわけだ」
「それはそうよ。クレア様をずっと大切に思っていらっしゃるんだから。早く見つかるといいんだけど」
「大丈夫だ。クレア様を無事に発見して、若奥様としてお迎えする日が待ち遠しいな」
はい?
私、エドに大切に思われているの?
いつも揶揄われては、言い返しての繰り返しだけれど。
まあ、幼馴染みとしては少しは気を遣われているかもしれないわね。
それにしても、屋敷の人達まで妥協して、幼馴染みの私と結婚させようとしてるとは……。
クレアは勝手に解釈すると、またエドガーの部屋に戻ってきた。
やはりいつクシャミが出るかと思うと気が気でなく、外は緊張してしまったのだ。
ふぅ~。
しばらくはエドの部屋でのんびりしましょうか。
……ん?
あのカーテンは何かしら?
ふと、デスクの後ろ、部屋の奥の片隅にカーテンで不自然に目隠しをされ、仕切られた箇所を発見した。
あんなところに、隠し部屋?
エドってば、変な趣味とか収集癖があって、こっそり隠しているに違いないわ。
こんなの見るしかないじゃない。
そして、これをネタにエドを揶揄うのよ!
好奇心から心が弾み、実際ピョンピョン弾みながらカーテンの下に潜り込む。
口に咥えて横に移動すれば、カーテンが開いて隠されていた物が露わになった。
そこはガラスがはめられた飾り棚になっていて、クレアの目の前の1番下の段には、綺麗に畳まれた包装紙とリボンがいくつも重ねてある。
特別な物が仕舞われた棚なのかしら?
この包装紙とリボンは見覚えがあるわね。
下の方の包装紙もかなり昔に見たことがあるような……。
少し棚と距離をとり、上の方を眺めると、棚の中身が確認出来た。
あ!
あのくまのぬいぐるみは、私達がまだ子供の時に誕生日プレゼントに私が贈ったもの?
その下の似顔絵は、昔ふざけてエドを描いてあげたものだと思うし、図鑑は街でお揃いで買った記憶が……。
あれもこれも、クレアの思い出にも残る、見知った物ばかりだった。
なんでこんなところに思い出の品をまとめて仕舞ってあるのかしら?
古い物まで綺麗にとってあるし。
エドはああ見えて物持ちがいいのよね。
プレゼントした包装紙まで律儀に保管してあるなんて。
しかし、自分が関わった物を大事に扱っていることは単純に嬉しかった。
エドガーはクレアが考えている以上に、クレアのことを大切に思ってくれているのかもしれない。
もうっ、少しは私自身にもわかりやすい優しさを見せてくれたらいいのに。
そしたら私だってときめいちゃって、エドを結婚相手として見てたかもしれーーん?
もしかしてエド、少しは私のことが好きなのかしら?
…………キャーーーッ!!
白いモフモフの頭が、ボフンと一気に赤く染まった気がした。
湯気まで立っているかもしれない。
どうする?どうしたらいいの?
いやいや、落ち着いて!
あのエドだもの、私の妄想なだけでそんな訳がないじゃない。
でもお嫁に貰うって昨晩言ってたわよね?
もし本気だったとしたら?
ーーあら、なんだか心臓がドキドキして苦しいのだけど、私ったらどうしちゃったのかしら。
異性として見られているかもしれないという事実に、クレアは戸惑いつつも、嬉しく感じている自分がいることに気付いたのだった。
こんな下着姿でエドガーのベッドにいるところを使用人に目撃されたら、大変なことになってしまう。
まずは落ち着かないと……。
とりあえず人間には戻れたようね。
自分の体を確認してみるが、うさぎに変身する前のクレアの体と相違無い。
何故かワンピースだけ脱いだ状態なので、コルセットにドロワーズという心許ない格好ではあるが。
どうして下着だけは残ったのかしら?
まあ、エドに下着が落ちているのを見られなくて済んだのだから、むしろ助かったのだけど。
そんなことより、問題は変身した原因よね。
でもどう考えてみたってーー。
下着姿でいたからだろうか、肌寒さを感じてまたもやくしゃみが出てしまった。
「ックシュン!!」
……やっぱりね。
そうだとは思ったわよ。
クレアはまたしてもモフモフのうさぎの姿に変わっていた。
はぁ。
くしゃみが原因なのは確実だろうけれど、この変身は一体いつまで続くのかしらね。
ーーま、戻れるならいいか。
前向きなクレアは考えるのを止めると、花瓶に飾ってあった花の葉っぱをブチッと1枚拝借した。
この葉で鼻をモゾモゾすれば、いつでもくしゃみが出来て、戻れるという魂胆である。
ふっふっふ、これで自由自在に人間とうさぎを行ったり来たり出来るってわけよ。
私って天才!
しかし、使用人には見つかりたくない為、トイレの時以外はしばらくの間うさぎの姿で過ごすことにした。
うさぎに変身した理由はわからないままだが、戻す方法がわかったことに気を良くしたクレアは、退屈凌ぎに屋敷内を探検することにした。
ピョコピョコと移動していると、クレアを目にしたマクレーン家の侍女や庭師などが寄ってきて、すぐに囲まれてしまった。
白いうさぎのクレアは、あっという間にマクレーンの人気者である。
「『うさ様』と言うのですって!モフモフで可愛らしいわ~」
「赤い瞳だからか、クレア様にソックリなうさぎだな。これはエドガー様も放っておけないわけだ」
「それはそうよ。クレア様をずっと大切に思っていらっしゃるんだから。早く見つかるといいんだけど」
「大丈夫だ。クレア様を無事に発見して、若奥様としてお迎えする日が待ち遠しいな」
はい?
私、エドに大切に思われているの?
いつも揶揄われては、言い返しての繰り返しだけれど。
まあ、幼馴染みとしては少しは気を遣われているかもしれないわね。
それにしても、屋敷の人達まで妥協して、幼馴染みの私と結婚させようとしてるとは……。
クレアは勝手に解釈すると、またエドガーの部屋に戻ってきた。
やはりいつクシャミが出るかと思うと気が気でなく、外は緊張してしまったのだ。
ふぅ~。
しばらくはエドの部屋でのんびりしましょうか。
……ん?
あのカーテンは何かしら?
ふと、デスクの後ろ、部屋の奥の片隅にカーテンで不自然に目隠しをされ、仕切られた箇所を発見した。
あんなところに、隠し部屋?
エドってば、変な趣味とか収集癖があって、こっそり隠しているに違いないわ。
こんなの見るしかないじゃない。
そして、これをネタにエドを揶揄うのよ!
好奇心から心が弾み、実際ピョンピョン弾みながらカーテンの下に潜り込む。
口に咥えて横に移動すれば、カーテンが開いて隠されていた物が露わになった。
そこはガラスがはめられた飾り棚になっていて、クレアの目の前の1番下の段には、綺麗に畳まれた包装紙とリボンがいくつも重ねてある。
特別な物が仕舞われた棚なのかしら?
この包装紙とリボンは見覚えがあるわね。
下の方の包装紙もかなり昔に見たことがあるような……。
少し棚と距離をとり、上の方を眺めると、棚の中身が確認出来た。
あ!
あのくまのぬいぐるみは、私達がまだ子供の時に誕生日プレゼントに私が贈ったもの?
その下の似顔絵は、昔ふざけてエドを描いてあげたものだと思うし、図鑑は街でお揃いで買った記憶が……。
あれもこれも、クレアの思い出にも残る、見知った物ばかりだった。
なんでこんなところに思い出の品をまとめて仕舞ってあるのかしら?
古い物まで綺麗にとってあるし。
エドはああ見えて物持ちがいいのよね。
プレゼントした包装紙まで律儀に保管してあるなんて。
しかし、自分が関わった物を大事に扱っていることは単純に嬉しかった。
エドガーはクレアが考えている以上に、クレアのことを大切に思ってくれているのかもしれない。
もうっ、少しは私自身にもわかりやすい優しさを見せてくれたらいいのに。
そしたら私だってときめいちゃって、エドを結婚相手として見てたかもしれーーん?
もしかしてエド、少しは私のことが好きなのかしら?
…………キャーーーッ!!
白いモフモフの頭が、ボフンと一気に赤く染まった気がした。
湯気まで立っているかもしれない。
どうする?どうしたらいいの?
いやいや、落ち着いて!
あのエドだもの、私の妄想なだけでそんな訳がないじゃない。
でもお嫁に貰うって昨晩言ってたわよね?
もし本気だったとしたら?
ーーあら、なんだか心臓がドキドキして苦しいのだけど、私ったらどうしちゃったのかしら。
異性として見られているかもしれないという事実に、クレアは戸惑いつつも、嬉しく感じている自分がいることに気付いたのだった。
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