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変わり映えしないカップル
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夜会当日、私はローズピンクのドレスを身に纏い、開場時間の二時間も前に王宮へと向かった。
王宮へは馬車で二十分ほどだが、実行委員のメンバーで最終確認を行う予定だからだ。
ピンクって……。
可愛すぎて恥ずかしいけれど、この世界にしては低身長、のっぺり体型の私には選択肢が少ないから仕方ないか。
どうせ転生するなら、ボンキュッボンに生まれたかった……。
それでも無駄に腕の良い使用人たちのおかげで、毎回それなりの令嬢には見えるのだから凄いものだ。
もはやイリュージョンの域だと思う。
そんなくだらないことを考えているうちに、馬車は王宮へ着いていた。
夜会は本来はエスコート役の男性とペアで出席するものだが、今回は実行委員の仕事を効率的にこなせるという理由で、アレクシスがパートナーに名乗り出てくれた。
まあ、今までもなんだかんだでアレクシスがパートナーを務めることが多かったせいで、私たちは仲が良いと勘違いされているわけだけど。
同じくグレースのお相手はロイバーが務め、当たり前だが夫人らはそれぞれの旦那様がエスコートすることになっている。
ロイバーがパートナーという、降って湧いた幸運にグレースは小躍りしていたが、ふと疑問に思った私はその時アレクに尋ねたのだった。
「ねえ、別に私がロイバー様とペアでもいいんじゃないの?」
「ん? セラはロイバーのほうが良かったのかい? 僕よりも、彼が?」
いつになく圧を感じる聞き方と眼力に、私は少し驚きつつも思っていたことを話した。
「いえ、別に私はどっちでもいいんだけど、アレクはグレースのほうが良かったんじゃないかなって。私ばかりだと変わり映えしないでしょ? アレクもたまには新鮮な気分を味わ……いたいかなー……なんて……ちょっと思ったり……して?」
「ふーん。変わり映えねぇ」
全然笑ってなさそうな笑顔が怖くなり、私の言葉がどんどん尻つぼみになっていく。
え、何?
怖いんだけど!
なんで怒ってるのよ。
私、間違ったこと言った?
「まあ、もう決まったことだから。グレース嬢も喜んでいるのにいまさらパートナー変更なんてしないよね? セラ?」
「う、うん、もちろん! ……じゃあアレク、当日はエスコートよろしくね?」
「ああ、夜会が楽しみだな」
いかにも王子様然とした美しい微笑みなのに、何故か恐ろしく思えたのが不思議だった。
こんなアレクシスはあまり見たことがない。
うん、よくわからないけれど、変わり映えなんか必要ないってことだけはわかったわ。
大人しくエスコートされようではないか!
ーーなーんてことがあったなと思いながら、ホールへの廊下をてくてく歩いていたら、まさに今考えていたアレクシス本人が立っていた。
用事があって公爵家までは迎えに行けないと言われていたが、ここで待っていてくれたらしい。
きらきらしい夜会用の服が、イケメンアレクシスにはよく似合っている。
「セラ!」
「アレク! ごめんなさい、待たせちゃった?」
「いや、今来たところだよ。ドレス、似合っているな」
デートの待ち合わせのカップルのようなやり取りをしていると、他の実行委員もやってきた。
グレースはロイバーが屋敷まで迎えに来たらしく、うっとりと彼に腕を絡めている。
グレースってば、それじゃあロイバー様のことが好きなのがバレバレじゃないの。
まあ、私は結構そういうのに敏感だからね。
ニマニマとグレースを見ている私は、アレクシスが呆れたように溜め息を吐いたことや、彼が最近わざと甘く「セラ」と愛称で呼んでいることなどちっとも気付いてもいなかった。
王宮へは馬車で二十分ほどだが、実行委員のメンバーで最終確認を行う予定だからだ。
ピンクって……。
可愛すぎて恥ずかしいけれど、この世界にしては低身長、のっぺり体型の私には選択肢が少ないから仕方ないか。
どうせ転生するなら、ボンキュッボンに生まれたかった……。
それでも無駄に腕の良い使用人たちのおかげで、毎回それなりの令嬢には見えるのだから凄いものだ。
もはやイリュージョンの域だと思う。
そんなくだらないことを考えているうちに、馬車は王宮へ着いていた。
夜会は本来はエスコート役の男性とペアで出席するものだが、今回は実行委員の仕事を効率的にこなせるという理由で、アレクシスがパートナーに名乗り出てくれた。
まあ、今までもなんだかんだでアレクシスがパートナーを務めることが多かったせいで、私たちは仲が良いと勘違いされているわけだけど。
同じくグレースのお相手はロイバーが務め、当たり前だが夫人らはそれぞれの旦那様がエスコートすることになっている。
ロイバーがパートナーという、降って湧いた幸運にグレースは小躍りしていたが、ふと疑問に思った私はその時アレクに尋ねたのだった。
「ねえ、別に私がロイバー様とペアでもいいんじゃないの?」
「ん? セラはロイバーのほうが良かったのかい? 僕よりも、彼が?」
いつになく圧を感じる聞き方と眼力に、私は少し驚きつつも思っていたことを話した。
「いえ、別に私はどっちでもいいんだけど、アレクはグレースのほうが良かったんじゃないかなって。私ばかりだと変わり映えしないでしょ? アレクもたまには新鮮な気分を味わ……いたいかなー……なんて……ちょっと思ったり……して?」
「ふーん。変わり映えねぇ」
全然笑ってなさそうな笑顔が怖くなり、私の言葉がどんどん尻つぼみになっていく。
え、何?
怖いんだけど!
なんで怒ってるのよ。
私、間違ったこと言った?
「まあ、もう決まったことだから。グレース嬢も喜んでいるのにいまさらパートナー変更なんてしないよね? セラ?」
「う、うん、もちろん! ……じゃあアレク、当日はエスコートよろしくね?」
「ああ、夜会が楽しみだな」
いかにも王子様然とした美しい微笑みなのに、何故か恐ろしく思えたのが不思議だった。
こんなアレクシスはあまり見たことがない。
うん、よくわからないけれど、変わり映えなんか必要ないってことだけはわかったわ。
大人しくエスコートされようではないか!
ーーなーんてことがあったなと思いながら、ホールへの廊下をてくてく歩いていたら、まさに今考えていたアレクシス本人が立っていた。
用事があって公爵家までは迎えに行けないと言われていたが、ここで待っていてくれたらしい。
きらきらしい夜会用の服が、イケメンアレクシスにはよく似合っている。
「セラ!」
「アレク! ごめんなさい、待たせちゃった?」
「いや、今来たところだよ。ドレス、似合っているな」
デートの待ち合わせのカップルのようなやり取りをしていると、他の実行委員もやってきた。
グレースはロイバーが屋敷まで迎えに来たらしく、うっとりと彼に腕を絡めている。
グレースってば、それじゃあロイバー様のことが好きなのがバレバレじゃないの。
まあ、私は結構そういうのに敏感だからね。
ニマニマとグレースを見ている私は、アレクシスが呆れたように溜め息を吐いたことや、彼が最近わざと甘く「セラ」と愛称で呼んでいることなどちっとも気付いてもいなかった。
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