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ホットドッグを作ろう!

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無事にこの世界で『美幸のレシピの翻訳』という仕事を手に入れた春菜。
レシピの内容の読み上げと、パン屋のお手伝いをするかわりに、部屋と食事を用意してもらえることになった。

やったね!
寝る場所と3食ゲットだぜ!!
これで生きていけるわ。

ホクホクしている春菜の隣で、コリンも久々にパンに対する情熱が戻ってきたようだ。

「ハルナさんはパンは好きかな?明日から早速作ろうじゃないか」

うんうん、そうだよね。
パン屋を再開しなくちゃね。
レシピを再現した新作パンを並べて、一気に話題のパン屋さんに生まれ変わるのよ!!

「楽しみですね!私は甘いパンも好きですし、お惣菜系のお腹にたまる食事パンも好きです」

様々なパンを思い浮かべ、うっとりしながら春菜が答えるが、二人はキョトンとした顔をしている。

「甘いパン?パンに甘いも辛いもあるのかい?」

「お惣菜っていうのも不思議ね。パンとお料理は別物でしょう?」

コリンとメイサが首を傾げているが、春菜は二人の反応からある可能性に気付いてしまった。

まさか……。
こっちの世界って、パンの種類がとてつもなく少ないのでは?

「あの、ちなみにここで売っていたパンはどんなパンだったんですか?何種類くらいあったんですかね?」

二人が顔を見合わせて答えた。

「どんなパンって……。最近は丸パンと長パンだな」

「元気な頃はフランスパンと食パンがあったわね。クルミパンと塩パンも。みんなミユキさんが教えてくれたものなのよね?」

夫婦が頷きあっているが、春菜にとっては衝撃である。

え、それだけ?
レシピに色々なパンが載っていたから、てっきりクリームパンとか普通にあるのかと思ったんだけど。
ラスクも作ってるし。
大体、丸パンと長パンって、もしかして形状の違いだけなんじゃ?

思いっきり表情に出てしまっていたらしい。
コリンが笑いながら教えてくれた。

「ハルナさんの世界にはたくさんのパンの種類があるらしいね。こちらは元々丸パンと長パンしかなかったんだが、見かねたミユキさんがフランスパンと食パンの作り方や、クルミを入れるアレンジを祖父に教えてくれたんだ。でもそこまで教わった頃にいなくなってしまって。レシピを書き溜めていることは知らされていたんだが、まさか読めないとも思わず……」

美幸さん!!
もうちょっと教えておいて欲しかったよ。
レシピがあって助かるけどさ。

夫婦の話によると、美幸は一人で様々な変わったパンを作っていたが、全然マイクに教え終わらない内に、ジェイドといなくなってしまったらしい。
美幸から教わったフランスパンや食パンをマイクが作り続け、コリンも受け継いで作っていたが、体力も落ちてきた為、最近は丸パンと長パンだけに戻っていたそうだ。
そして、ラスクは売り物ではなく、あくまで余り物を消費するためだけに作られていたそうで、なんとも勿体ないことである。

「ちなみに、長パンってどんなパンですか?硬め?」

「いや、丸パンが長くなったものだから、そんなに硬くないな」

やっぱり形が違うだけだったか……。
長パンって、つまりはコッペパンだよね。
実質、一種類しか売ってなかったってことじゃない。
でもだったら……。

「あの、こっちってソーセージってあります?ケチャップとマスタードも」

「ん?あるが。どうするんだい?」

「ソーセージなら、仲の良いお向かいの夫婦がお肉屋さんなのよ」


まさにそんな会話をしていた時だった。
噂の肉屋の夫婦が、突然現れたのである。

「コリン!メイサ!大丈夫か!?」

「ああ、二人とも無事で良かった!橋で思い詰めた様子だったってお客さんに聞いたから……」

パン屋の二人と同じ年頃なのだろう。
肉屋の老夫婦は心配になって訪ねて来たらしいが、生き生きとしているコリンとメイサを見てビックリしている。
二人を紹介された春菜は、あまりのグッドタイミングに手を叩いた。

「じゃあ、明日はホットドッグを作りませんか?長パンに切り込みを入れて、ソーセージを乗せて、ケチャップとマスタードをかけるんです。美味しいですよ?」

「おおっ!ようわからんが、きっと美味しいんだろうな。ミユキさんの世界の食べ物だし」

「こんなにワクワクするのは久しぶりだわ!」

はしゃぐ3人を、肉屋の夫婦が不思議そうに眺めていた。


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