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恋愛禁止のルール
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会議終盤、今後の我が国の方針が決まった。
まずは禁忌魔法が使われた証拠を集めること、そして調査委員会が不正の隠蔽を行った証明と、不正に加担したメンバーの洗い出しである。
しかし、すべてがすぐに結果が出るものでもない上、上手くいく保証もない。
騎士団長は念の為、いつでも騎士を動かせるようにしておくと発言し、密偵が隣国の様子を逐一伝えてくれることになった。
「アイリスちゃん、何か言っておくことはあるかしら? チェスターズに関することで」
王妃様が私に話を振ってくれた。
少し悩んで、私は立ち上がる。
「あの、たいしたことではないのですが、チェスターズには恋愛禁止のルールがあるので、オズナリー王国の王女様たちにも守っていただきたいと……」
「は!? 恋愛禁止? なんで?」
なぜか騎士団長が慌てている。
「なんでとおっしゃられましても、アイドルとはそういうものですから」
「へ? アイドルって恋愛禁止なのか?」
「そうですね。ファンが恋人みたいなものなので」
「……そ、そうか。ちなみにうちの息子はそのことを知っているのかな?」
「もちろんお話しましたよ」
「納得はしていませんでしたが……」という言葉は省略しておく。
「ふーん、アイドルは恋愛禁止なのか……。ブハッ! なんだよ、キースのやつ不憫で笑えるな! ハハッ。いやー、アイリスちゃんってば可愛い顔して結構ドS……ブハハハ!」
またもや笑いが止まらなくなったのか、騎士団長は机を叩いて笑っている。
見れば、国王夫妻と魔術師団長は苦笑いをしているし、他の人は気の毒そうな顔をしていた。
お父様だけが勝ち誇ったように微笑んでいるのが気になるところだ。
この反応は一体……。
しかもドSって言われませんでした?
え、私ってドSだったの?
皆さん、国の一大事にチェスターズに恋愛をさせたかったのかしら。
私が付いていけずに困っていると、王妃様が助け舟を出してくれた。
「あの子たちには悪いけれど、ここは恋愛禁止のルールを上手く利用して王女からの婚約の打診を断りましょう。しばらくの間は使えるでしょう。いい口実になるわ」
皆が承諾すると、国王様が最後に立ち上がった。
「今回のこと、皆には苦労をかけて申し訳なく思っている。くれぐれもよろしく頼む。……アイリス嬢、今日君を呼んだのはプレッシャーをかけるつもりではなく、君意外にも動いている人間が多くいることを知ってもらいたかっただけなのだ。気負わずにやってほしい」
特に負担にも思っていないアイドル計画だったが、失敗しても責任を取らなくていいのはありがたい。
私の表情が綻んだことに気付いたのか、続々と声をかけられた。
「アイドル計画の成功は楽しみですが、その前に私が不正を暴くので安心してください」
「いざとなったら俺が一人でも隣国をぶっ潰すから大丈夫だって!」
「国としても動いていますから、出来る範囲で頑張っていただければ」
「もちろんアイドル計画にも協力は惜しみませんからご安心を」
魔術師団長、騎士団長を始めとするおじさま集団に激励されてしまった。
初めは緊張していた会議だったが、終わってみれば有意義で、ボッコボコにされるどころか背中を押されただけだった。
これはますますやる気が出ましたよ~!
「ありがとうございます! どうか皆様のお力を私とチェスターズにお貸しくださいませ!」
頭を下げると温かい拍手までいただいてしまった。
会議終了後、私の踊っている水晶を欲しがる大臣たちを、騎士団長が鬼の形相でつっぱねていたことを私は知らない。
まずは禁忌魔法が使われた証拠を集めること、そして調査委員会が不正の隠蔽を行った証明と、不正に加担したメンバーの洗い出しである。
しかし、すべてがすぐに結果が出るものでもない上、上手くいく保証もない。
騎士団長は念の為、いつでも騎士を動かせるようにしておくと発言し、密偵が隣国の様子を逐一伝えてくれることになった。
「アイリスちゃん、何か言っておくことはあるかしら? チェスターズに関することで」
王妃様が私に話を振ってくれた。
少し悩んで、私は立ち上がる。
「あの、たいしたことではないのですが、チェスターズには恋愛禁止のルールがあるので、オズナリー王国の王女様たちにも守っていただきたいと……」
「は!? 恋愛禁止? なんで?」
なぜか騎士団長が慌てている。
「なんでとおっしゃられましても、アイドルとはそういうものですから」
「へ? アイドルって恋愛禁止なのか?」
「そうですね。ファンが恋人みたいなものなので」
「……そ、そうか。ちなみにうちの息子はそのことを知っているのかな?」
「もちろんお話しましたよ」
「納得はしていませんでしたが……」という言葉は省略しておく。
「ふーん、アイドルは恋愛禁止なのか……。ブハッ! なんだよ、キースのやつ不憫で笑えるな! ハハッ。いやー、アイリスちゃんってば可愛い顔して結構ドS……ブハハハ!」
またもや笑いが止まらなくなったのか、騎士団長は机を叩いて笑っている。
見れば、国王夫妻と魔術師団長は苦笑いをしているし、他の人は気の毒そうな顔をしていた。
お父様だけが勝ち誇ったように微笑んでいるのが気になるところだ。
この反応は一体……。
しかもドSって言われませんでした?
え、私ってドSだったの?
皆さん、国の一大事にチェスターズに恋愛をさせたかったのかしら。
私が付いていけずに困っていると、王妃様が助け舟を出してくれた。
「あの子たちには悪いけれど、ここは恋愛禁止のルールを上手く利用して王女からの婚約の打診を断りましょう。しばらくの間は使えるでしょう。いい口実になるわ」
皆が承諾すると、国王様が最後に立ち上がった。
「今回のこと、皆には苦労をかけて申し訳なく思っている。くれぐれもよろしく頼む。……アイリス嬢、今日君を呼んだのはプレッシャーをかけるつもりではなく、君意外にも動いている人間が多くいることを知ってもらいたかっただけなのだ。気負わずにやってほしい」
特に負担にも思っていないアイドル計画だったが、失敗しても責任を取らなくていいのはありがたい。
私の表情が綻んだことに気付いたのか、続々と声をかけられた。
「アイドル計画の成功は楽しみですが、その前に私が不正を暴くので安心してください」
「いざとなったら俺が一人でも隣国をぶっ潰すから大丈夫だって!」
「国としても動いていますから、出来る範囲で頑張っていただければ」
「もちろんアイドル計画にも協力は惜しみませんからご安心を」
魔術師団長、騎士団長を始めとするおじさま集団に激励されてしまった。
初めは緊張していた会議だったが、終わってみれば有意義で、ボッコボコにされるどころか背中を押されただけだった。
これはますますやる気が出ましたよ~!
「ありがとうございます! どうか皆様のお力を私とチェスターズにお貸しくださいませ!」
頭を下げると温かい拍手までいただいてしまった。
会議終了後、私の踊っている水晶を欲しがる大臣たちを、騎士団長が鬼の形相でつっぱねていたことを私は知らない。
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