王子妃セスから冒険者レノになった話

氷室 裕

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第8章 間違いだらけの恋人編

⑲カイルの側で

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 俺はレノを連れてギルドの宿から出る時、東の帝国マコラで準備したあの水色のワンビースをレノに着せた。ひらひらと裾が跳ねて本当に可愛い。

「ね、カイル、これ必要・・?」

 変身魔法まで解く必要があるのかって?だって可愛いじゃないか!
 まぁ、それに髪や肌の色でレノだとギルドの奴らにバレたら気まずいだろ?

「俺たちが、ふたりで部屋から出てくる所を見られてもいいのか?俺は願ったり叶ったりだが?」

 レノは「むーっ!」と唸りながら不服そうな顔をしたが、何となくそれはまずいと思ったようだ。

「良くない・・」
「だろ?可愛いよ、レノ」

 俺はレノをあんな風に傷付けた奴を許せない。心も、身体も!乱暴に扱いやがって!

 このまま家に帰せば、レノを傷付けたヤツがきっとまた会いに来る。そんな事、絶対にさせない!
 あの時、レノは媚薬を飲まされていた・・身体が疼く程、無理やり高められていた。
 愛するものを、身体を暴くために媚薬を使ってまで無理やり犯すなんて、俺には理解し難い。

「んー・・それで、俺は家までこの格好で帰らないと行けないの?」
「ははっ、そんな事させないよ。お前の家には帰さない。帰せばまた、会いに来るだろう?そいつがお前に・・乱暴になんかさせない。お前は、しばらく俺の家にいればいい」

 キョトンとした顔をしている。
  それは、そいつがレノに会いに来るのは想定内・・とでも思っている様な顔だ。
 怖くないのか?自分を乱暴に扱った奴のことを。

「え?でも・・」
「会いに来るかもしれないぞ?また乱暴にされてもいいのか?」

 迷ってるのか?レノもそいつに会いたいのだろうか。

「それは・・」
「俺の所に来るのが嫌か?」
「そんな事ない!分かった。行く、カイルの所に・・あ、そういえば行ったことなかった、カイルの家」

 その言葉がないと、俺が無理やり連れていくことになるんだよ、レノ。
 お前の意思で選べばいい・・ただ、俺はお前が心配なんだ。また身体を暴かれて、乱暴にされるかもしれないと思うと、放ってなんかいられないんだよ。

 俺はレノに新調したばかりの、 ホワイトラビットの毛皮で出来たフード付きの外套を着せると、フードを被せ顔を隠した。

「その可愛い顔を隠しておけよ?行けるか?」

 柔らかなホワイトラビットの毛並みを撫でながら、顔を寄せている・・本当に可愛い。
 こうして見つめていると、またスカートを捲りたくなるな。

「うん、行ける!カイル・・ありがとう」

 ギルドの冒険者には、顔を見られないようにレノを庇いながら外に出た。案の定、俺が女連れだと言う事を揶揄い、野次られたが。

「鬱陶しいやつらだ・・まったく」
「ふふっ。カイル、明日からしばらくは揶揄われちゃうね」
「・・まあ、お前の事がバレなくて良かったよ」

 俺は狭い路地を通って、遠回りをしながら中級階級のものが住む住宅街に出る。
 入り口がひとつしかない集合住宅の中に入ると、1階の角部屋に入った。

 ここには人を連れてきた事がない。
 むしろバレては困る。王族としての公務をするための書類が積まれているし、従者も行き来している。数名の従者以外に、この場所に来るものはいない。

「従者以外、お前しかここへ来たことがない」
「そうなんだ・・王子様の執務室、だね」

 まあそうなんだが、執務室なんて見た事ないだろう?・・ああ、王宮に遊びに行っていたと言っていたか・・

「まあな。くつろげ。お前の好きなように過ごせよ。あー、もしかすると、俺の従者が来るかもしれないが、気にするな。教育されたもの達ばかりだ、遠慮はいらない」

 寝台もその他の家具だってひと揃えしてあるし、何ならこのまま一緒に住むのもいいかも知れないな。

 テーブルの上に、ギルドで買ったジュースやお菓子の入った籠をおいてやると、レノはニコリと笑った。

 レノはソファーが気にいったようで、ゴロゴロと寝そべって伸びをしている。
 足を広げて・・本当に男らしい事だ・・こちらにとっては目のやり場に困るのだが。

 しかし、あんな事があって泣いて辛そうにしていたのに、今は普段と変わらない。

 レノが毛布に包まって俺の膝の上に現れた時、すぐに悪い予感がして怒りでどうにかなりそうだった。レノ、今は平気そうか?

 ただ、あの毛布・・あれは売り物ではない、最高品質のものだ。平民が手に入れるどころか、目にする事も難しいような代物だよな。
 レノは平民じゃなかったのか?
 いや、離婚して平民になった?ならば相手は貴族?それも公爵あたり・・?いったい相手は誰なんだ?

 一応、あの毛布の出処を従者に探らせてはあるが、人物特定は早めにしておきたい。

「あのね、カイル・・本当にありがとう」

 レノは、ソファーに座り直してこちらを向くと可愛く笑う。

 そのまなざしを見て、俺はやはりお前を離したくないと心からそう思ったんだ。








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