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胸のモヤモヤ……

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「植えたんだね⁉」
私は、自分でもすごく興奮しているのが分かったがそれを抑えられずに言った。
「う、うん」
「香也、めっちゃ前のめりやね」
亜央佳が引き気味に肯き、蜜柑も普段の私から想像もしないリアクションに、目を丸くしている。
その反応を見ても胸の高鳴りは抑えられそうにない。
この二人の種からは、芽が出たのだろうか?
(だったらあの夢も……?)
胸の内の呟きは、やはり声に漏れてたらしい。
「「夢?」」
「……私、また」
「うん、独り言出てたよ」
見事にまたハモった二人の声に、ハッとして言うと、亜央佳が冷静に指摘してくれた。
「香也は独り言注意! やよ?」
蜜柑も苦笑している。
反省だ。
だが、これで分かった。
二人は夢を見ていないらしい。
そして、
「芽は出てないんだね……?」
「そうね」
「水もきちんとあげたんやけどなー」
確認すると花の種の芽も出てない。
何だか、自分だけが進んでいるみたいで嬉しかった。
「香也の種からは芽は出たの?」
「え、ああ、まだ……」
ここで自分で驚いた。
(私、何で、嘘を言ったんだろ……)
今度は、漏れてないはずだ。
急に黙った私を、
「香也?」
と亜央佳が怪訝に見遣る。
「亜央佳、そらまだ芽なんか出ないやろー。魔法じゃあるまいし」
「それもそうね」
「そうよ」
ここでまた私は、あれ? と思ってしまった。
亜央佳に同調してる私、何か、変……。
胸にモヤモヤした思いが広がる。
「そや、さっきの後ろの女子の話。みどりあかねの二人やよね?」
柳瀬やながせさんと明城みょうじょうさんね。あの二人も貰ったのかしら?」
「……」
「香也、聞いてるん?」
「う、うん。不思議なことあるんだね!」
急いで今度は言うと、蜜柑が「他の女子に探り入れたろ」と言い、「私は男子の方に少し聞いてみるわ」と亜央佳も言う。
二人はそれから誰から聞くか相談し合っていて、私が変なことに気付いていない様だった。
胸のモヤモヤは、消えずに、昼休みが終わろうとしていた。
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