上 下
9 / 9

第9話 不思議な感覚

しおりを挟む
 三つ子は同時に声を上げた。

 そこに立っていたのは三つ子と同じ背丈の子どもだった。
だが三人が声を上げたのはそれだけではなかった。

「……お前」

 晴が目を見開く。
目の前の子どもは男か女かが分からない顔立ちをしている。
服装はいかにもファンタジー漫画に出てくる様な恰好。
髪は灰色で目も同じ色をしていた。
 しかし、晴を急に襲ったのは何処かでこの子供に会ったような、そんな感覚だった。

……?)

 思わず胸を押さえて晴は眉根を寄せた。
横を見ると、全く同じ動作を雪も雨もしていた。
苦しそうな表情を浮かべている。

「あの、どうしたの苦しいの……?」

 沈黙に耐えきれなかったのか、子どもが声を発した。
その声に、さらに胸が苦しくなる。

「雪ちゃん……」

 雨が泣きそうな声で雪を呼んだ。
雪は下を向いて、両手で胸を押さえて何も言わない。
晴だって何か言わなきゃ胸が張り裂けそうな思いでいっぱいだった。
が言葉が不思議と出てこない。
いや、この感覚は本当に一体……?

 黙ったままの三つ子に対して子どもはオロオロとして左右を見る。
 
「あの、あの」

 戸惑う子どもが腰のベルトに付いている箱から何かを取り出した。
その拍子に何かが地面にポトリと落ちた。

「落ちたよ?」

 咄嗟に拾った雨が落とし物を子どもに差し出そうとする。

ガッ!

「待って雨‼」

 その手を雪がすごい勢いで掴む。
雪の手がブルブルと震えている。

「どうしたの雪ちゃん?」

 不思議そうに首を傾ける雨に対して雪が晴を振り返った。

「晴! 見て!」

 雨の手ごとこちらにむけられた落とし物に晴は本当に雷に打たれたかのような衝撃が体に走った。




しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

「花のカプセル ~私だけの花を咲かそう~ 」

時空 まほろ
児童書・童話
ある日、野原に建っていたテントには、不思議な不思議な「花のカプセル」のガチャガチャがあった……。これは、少女たちが"私だけの花"を咲かす物語です。 ❀「小説家になろう」でも投稿されています。

今日の夜。学校で

倉木元貴
児童書・童話
主人公・如月大輔は、隣の席になった羽山愛のことが気になっていた。ある日、いつも1人で本を読んでいる彼女に、何の本を読んでいるのか尋ねると「人体の本」と言われる。そんな彼女に夏休みが始まる前日の学校で「体育館裏に来て」と言われ、向かうと、今度は「倉庫横に」と言われる。倉庫横に向かうと「今日の夜。学校で」と誘われ、大輔は親に嘘をついて約束通り夜に学校に向かう。 如月大輔と羽山愛の学校探検が今始まる

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

少女が過去を取り戻すまで

tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。 玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。 初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。 恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。 『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』 玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく──── ※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです ※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります  内容を一部変更しています ※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです ※一部、事実を基にしたフィクションが入っています ※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます ※イラストは「画像生成AI」を使っています

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

処理中です...