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第6話 不安な思い
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雪が指差した方向を見て、晴と雨は絶句した。
丘から見下ろした景色に見慣れた三人の家は無かった。
代わりに雨の中にまるで城壁が囲んだ、街があったのだった。
「絵本に出てきた、街……?」
雨が首を傾げて言う。そしてハッとしたように雪に向かって
「雪ちゃん! これって絵本の中じゃない⁉」
と叫んだ。
「んな馬鹿な事があるか。なあ雪。……雪?」
と完全否定した晴だったが同意を求めた雪の返事がない。
雪は真っ青な顔で城壁で囲まれた街の様な光景を必死で見ていた。
そして呟いた。
「嘘……」
雪の様子に晴も今の状況がただ事じゃないのが分かった。
兄妹の中で一番賢い雪が何かを察したのだ。
「雪、落ち着こう。な」
「落ち着けるわけがないじゃない‼」
肩に置かれた晴の手を振り払って雪が叫ぶのが辺りに響いた。
「どこからどうみても違う場所よ、一体何処なの此処は⁉」
叫ぶと雪はその場に膝を付いて大声で泣き始めた。
つられてか雨までぐすぐすと泣き出した。
晴も泣きたかった。不安でたまらなかったが、男は自分ただ一人だ。
泣き出すわけにはいかなかった。
が、そんなプライドも二人が泣き始めてから二分と持たなかった。
「わあー、母ちゃん~、父ちゃん~」
とうとう三人は大声で揃って泣いたのだった。
丘から見下ろした景色に見慣れた三人の家は無かった。
代わりに雨の中にまるで城壁が囲んだ、街があったのだった。
「絵本に出てきた、街……?」
雨が首を傾げて言う。そしてハッとしたように雪に向かって
「雪ちゃん! これって絵本の中じゃない⁉」
と叫んだ。
「んな馬鹿な事があるか。なあ雪。……雪?」
と完全否定した晴だったが同意を求めた雪の返事がない。
雪は真っ青な顔で城壁で囲まれた街の様な光景を必死で見ていた。
そして呟いた。
「嘘……」
雪の様子に晴も今の状況がただ事じゃないのが分かった。
兄妹の中で一番賢い雪が何かを察したのだ。
「雪、落ち着こう。な」
「落ち着けるわけがないじゃない‼」
肩に置かれた晴の手を振り払って雪が叫ぶのが辺りに響いた。
「どこからどうみても違う場所よ、一体何処なの此処は⁉」
叫ぶと雪はその場に膝を付いて大声で泣き始めた。
つられてか雨までぐすぐすと泣き出した。
晴も泣きたかった。不安でたまらなかったが、男は自分ただ一人だ。
泣き出すわけにはいかなかった。
が、そんなプライドも二人が泣き始めてから二分と持たなかった。
「わあー、母ちゃん~、父ちゃん~」
とうとう三人は大声で揃って泣いたのだった。
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