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第5話 此処は……?
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晴は不思議な夢を見ていたと後に思った。
自分たちが食卓を囲んでいる夢だ。
両親の前には四つの椅子。
右から雨、雪、晴。
そして。
晴の隣には誰かが座っていた。
晴によく似た、男の子。
その顔はモザイクがかかったかのようによく見えない。
だがみんなが笑っていた。
晴自身も笑っていた。
楽しくて楽しくて、仕方ないという雰囲気。
ご飯が美味しくて、雨がラジオから聞こえる音楽に対してでたらめに変え歌を歌っている。
母親に「ちゃんとご飯を食べなさい」と苦笑されている。
その母親に、晴の隣の男の子が言葉を発した。
「お母さん、おかわり!」
すると母親は嬉しそうに言うのだった。
「あらあら、曇が沢山食べてくれてお母さん嬉しいわ」
晴はバッと隣を見て言葉を発しようとした。
が、声が出ない。
そして食卓の風景が遠のいていく。
「待って!」
晴はもう一度叫んだ。
「待って、みんなー!」
「みんな!」
その自分の声で晴は覚醒した。
雨粒が目に入り、思わず目を閉じる。
ぐしぐしと目を擦る。
晴は自分が倒れていることに気付いた。
「雨! 雪!」
がばり、と身を起こして叫ぶ。
二人は晴の脇に倒れていて、まだ気を失っていた。
「雨、起きろ! 雪、起きろよ!」
がくがくと大きく二人の体を揺らすと、二人の目蓋が痙攣する。
「何が……?」
「あれ……?」
のろのろと雪が起き上がって頭を振り、雨はまだ倒れた姿勢のまま上を見て首を傾げている。
「大丈夫か、二人とも」
「何だか、頭がくらくらするけれど……」
「わたし、変な夢見てたきがする」
雪に続いて雨がようやく起き上がって言う。
どきり、と晴の心臓が鳴った。
雨もあの夢を見ていたのだろうか。
「雨、どんな夢を見たんだ!」
「うーんとね」
「それよりも!」
雨の言葉は雪に遮られた。
「何だよ雪。大事な話だぞ。俺も夢見たんだって変な夢を!」
晴の剣幕に、ムッとした様に雪が眉間に皺を寄せて言い返す。
「私だって変な夢見たわよ! でも見てよこの景色! おかしいと思わないの!」
そこで晴と雨は周りを見渡した。
雪の言葉通りだった。
三つ子たちが居たのは大きな大きな樹の下。
そして何処かの丘の上らしき場所だった。
こんな大きな樹は家の裏手の神社の中には無い。
否、あったとしたら気付いて格好の遊びの種になっている。
丘があるのも変だ。
「確かに」
「へんだよね」
晴も不安になって来てしまった。雨も流石に不安そうだ。
「此処は一体、何処なの?」
雪が涙声で言った。
そして震える指である方向を差す。
「見てあっち」
自分たちが食卓を囲んでいる夢だ。
両親の前には四つの椅子。
右から雨、雪、晴。
そして。
晴の隣には誰かが座っていた。
晴によく似た、男の子。
その顔はモザイクがかかったかのようによく見えない。
だがみんなが笑っていた。
晴自身も笑っていた。
楽しくて楽しくて、仕方ないという雰囲気。
ご飯が美味しくて、雨がラジオから聞こえる音楽に対してでたらめに変え歌を歌っている。
母親に「ちゃんとご飯を食べなさい」と苦笑されている。
その母親に、晴の隣の男の子が言葉を発した。
「お母さん、おかわり!」
すると母親は嬉しそうに言うのだった。
「あらあら、曇が沢山食べてくれてお母さん嬉しいわ」
晴はバッと隣を見て言葉を発しようとした。
が、声が出ない。
そして食卓の風景が遠のいていく。
「待って!」
晴はもう一度叫んだ。
「待って、みんなー!」
「みんな!」
その自分の声で晴は覚醒した。
雨粒が目に入り、思わず目を閉じる。
ぐしぐしと目を擦る。
晴は自分が倒れていることに気付いた。
「雨! 雪!」
がばり、と身を起こして叫ぶ。
二人は晴の脇に倒れていて、まだ気を失っていた。
「雨、起きろ! 雪、起きろよ!」
がくがくと大きく二人の体を揺らすと、二人の目蓋が痙攣する。
「何が……?」
「あれ……?」
のろのろと雪が起き上がって頭を振り、雨はまだ倒れた姿勢のまま上を見て首を傾げている。
「大丈夫か、二人とも」
「何だか、頭がくらくらするけれど……」
「わたし、変な夢見てたきがする」
雪に続いて雨がようやく起き上がって言う。
どきり、と晴の心臓が鳴った。
雨もあの夢を見ていたのだろうか。
「雨、どんな夢を見たんだ!」
「うーんとね」
「それよりも!」
雨の言葉は雪に遮られた。
「何だよ雪。大事な話だぞ。俺も夢見たんだって変な夢を!」
晴の剣幕に、ムッとした様に雪が眉間に皺を寄せて言い返す。
「私だって変な夢見たわよ! でも見てよこの景色! おかしいと思わないの!」
そこで晴と雨は周りを見渡した。
雪の言葉通りだった。
三つ子たちが居たのは大きな大きな樹の下。
そして何処かの丘の上らしき場所だった。
こんな大きな樹は家の裏手の神社の中には無い。
否、あったとしたら気付いて格好の遊びの種になっている。
丘があるのも変だ。
「確かに」
「へんだよね」
晴も不安になって来てしまった。雨も流石に不安そうだ。
「此処は一体、何処なの?」
雪が涙声で言った。
そして震える指である方向を差す。
「見てあっち」
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