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狐少女の恋の行方
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「エハモ7のヤシン‼」
私は思わず話を遮って叫んでしまった。
アンリさんなんかびっくりして、ふさふさの尻尾と耳がぴーんと立っている。
「ご存知なんですか……?」
「知ってるも何も、有名ですよ! エハモ7のヤシンは私もファンです! カッコいいですよね~!」
私の興奮具合といったら、ここに来てから一番かもしれない。
エハモ7のメンバーは数字の通り7人だが、皆個性があって歌も上手くて、何と言ってもそれぞれがイケメン! なのだ。
アンリさんに言った通り、私の推しは断然ヤシンだった。
……あ、待てよ。サムやタックも捨てがたい。このもどかしさ、分かる人居ないかな~。
そんな私を置いて、アンリさんは話を続ける。
「……雑誌を見てからというものの更にヤシンさんの事が忘れられなくて……」
「確かに、忘れられないですよね。あのイケメンは」
私の言葉にブンブンと頭を振って頷くアンリさん。
そして、マスターの紅茶を静かに飲むアンリさん。
可愛いのに、恋で悩んでいるアンリさんは、綺麗と言った方がいい気がした。
私は、つと尋ねる。
「アンリさん、人間界の何処に向かったんですか? ヤシン……さんと会えるなんて、そうそうないはずしじゃあ?」
「ああそれは……」
秘密ですよ?
とアンリさんは片目を瞑った。
「ステージです」
「え?」
「正確には、屋外のステージですね。山の近くの
小さな屋外ステージだったですけど」
アンリさんは真面目だから、ふらふらと来た人間界でもつい気になってそこをよく覗きに行くらしい。
「あそこは、特別なんですよ……」
人間界でも、まだ人気の出ない出てるに限らず、アイドルがそこで歌を歌ったり踊ったりする、屋外ステージはアンリさん達のデビュー場所を彷彿させるらしい。
「私、根っからのアイドルなんですよ」
アンリさんは笑った。
晴れ晴れと。
その笑顔には、何か吹っ切れたような感じがした。
「アンリさん……」
私は、マスターを思わず見た。
マスターは穏やかに、静かな目で私に頷いた。
アンリさんは恋をしたこれから、どうする気でいるのだろう、どんな覚悟を持ったのだろう。
「マスター、えっと、ウェイトレスさんありがとうございます。私決めました」
「決めましたか?」
マスターが問う。
「ええ」
アンリさんはまた笑った後、覚悟の宣言をした。
「私は……」
「……!」
驚いた。
そう決めたんだ、アンリさん……。
私はこの後思った。
その答えアンリさんらしいな。と。
アンリさんが喫茶店を出ていった後、私はマスターに尋ねてみた。
「マスターは、忘れられない恋をしたこと、ありますか?」
その質問に、マスターは軽く目を見開くと、静かに黙って頷いた。
「そうですか、恋……」
私は、誰かに恋をしたのかな……。
「マスター」
「はい」
「紅茶が、飲みたいです。とびっきり美味しいのが」
「はい」
また、静かな時間が流れていった……。
私は思わず話を遮って叫んでしまった。
アンリさんなんかびっくりして、ふさふさの尻尾と耳がぴーんと立っている。
「ご存知なんですか……?」
「知ってるも何も、有名ですよ! エハモ7のヤシンは私もファンです! カッコいいですよね~!」
私の興奮具合といったら、ここに来てから一番かもしれない。
エハモ7のメンバーは数字の通り7人だが、皆個性があって歌も上手くて、何と言ってもそれぞれがイケメン! なのだ。
アンリさんに言った通り、私の推しは断然ヤシンだった。
……あ、待てよ。サムやタックも捨てがたい。このもどかしさ、分かる人居ないかな~。
そんな私を置いて、アンリさんは話を続ける。
「……雑誌を見てからというものの更にヤシンさんの事が忘れられなくて……」
「確かに、忘れられないですよね。あのイケメンは」
私の言葉にブンブンと頭を振って頷くアンリさん。
そして、マスターの紅茶を静かに飲むアンリさん。
可愛いのに、恋で悩んでいるアンリさんは、綺麗と言った方がいい気がした。
私は、つと尋ねる。
「アンリさん、人間界の何処に向かったんですか? ヤシン……さんと会えるなんて、そうそうないはずしじゃあ?」
「ああそれは……」
秘密ですよ?
とアンリさんは片目を瞑った。
「ステージです」
「え?」
「正確には、屋外のステージですね。山の近くの
小さな屋外ステージだったですけど」
アンリさんは真面目だから、ふらふらと来た人間界でもつい気になってそこをよく覗きに行くらしい。
「あそこは、特別なんですよ……」
人間界でも、まだ人気の出ない出てるに限らず、アイドルがそこで歌を歌ったり踊ったりする、屋外ステージはアンリさん達のデビュー場所を彷彿させるらしい。
「私、根っからのアイドルなんですよ」
アンリさんは笑った。
晴れ晴れと。
その笑顔には、何か吹っ切れたような感じがした。
「アンリさん……」
私は、マスターを思わず見た。
マスターは穏やかに、静かな目で私に頷いた。
アンリさんは恋をしたこれから、どうする気でいるのだろう、どんな覚悟を持ったのだろう。
「マスター、えっと、ウェイトレスさんありがとうございます。私決めました」
「決めましたか?」
マスターが問う。
「ええ」
アンリさんはまた笑った後、覚悟の宣言をした。
「私は……」
「……!」
驚いた。
そう決めたんだ、アンリさん……。
私はこの後思った。
その答えアンリさんらしいな。と。
アンリさんが喫茶店を出ていった後、私はマスターに尋ねてみた。
「マスターは、忘れられない恋をしたこと、ありますか?」
その質問に、マスターは軽く目を見開くと、静かに黙って頷いた。
「そうですか、恋……」
私は、誰かに恋をしたのかな……。
「マスター」
「はい」
「紅茶が、飲みたいです。とびっきり美味しいのが」
「はい」
また、静かな時間が流れていった……。
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