『七色の魔法使い』 改稿版

時空 まほろ

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序章

始めの物語から

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 昔むかし、『七色の魔法使い』という名の魔法使いが居た。

 しかし、彼女は魔法使いたちの間では、孤独な魔法使いだった。
彼女の魔法は抜群で、他の魔法使いより飛び抜けて秀でていた。
故に、他の魔法使いたちから嫉妬され、敬遠されがちだったからかもしれない。
 彼女の髪の色は、真っ黒と真っ白の二色で、腰まで届くほど長かった。
その髪を一つの三つ編みにし、肩から垂らしていた。
そして彼女は灰色のボロボロのフード付きのローブを着ていた。

 そんな彼女だったが、魔法が使えない普通の人々からは大人気だった。

 彼女は歌えば、どんな傷でも魔法で癒えた。
 彼女が作った薬はどんな万病にも効いた。

 彼女の歌は、七色の光の調べだった。
 彼女の歌には、七色の想いがのせられていた。

 ある時、彼女はふと思い立って、世界を巡る旅に出かけた。

極寒ごっかんの大地】
灼熱しゃくねつの大地】
みどりもりの大地】
草原そうげんおかの大地】
こおりの世界の大地】
ほのおが燃え盛る大地】
やみの大地】
ひかりの大地】

 彼女は、それらの大地を旅した。
彼女が最後から二番目に訪れた【やみの大地】は、過酷で厳しい旅となり、七色の魔法使いである彼女でも心身ともに疲れ果ててしまった。

 ようやく、最後の地【ひかりの大地】に辿り着いた彼女は、とうとう倒れてしまった。

 七色の魔法使いの彼女を助けたのは、【ひかりの大地】にあるひかりの国の王子だった。
国の入口で倒れていた彼女を城に連れ帰り、介抱した。

 彼女は、初めて他人の手によって癒されていった。
優秀な彼女は、自分の怪我くらい自分で治せたが、今回は心まで疲れ果てて倒れてしまったので、自分では治せなかったのだ。

 七色の魔法使いは、ひかりの国にしばらく逗留することにした。

 彼女の心も癒えてきたある日。
光の王子が、城に庭で庭師と話をしていると、視界の隅に散歩をしていた七色の魔法使いが目に入った。
彼女はいつもローブのフードを目深に被り、決して人前では取ることはなかった。
その時、風が強く吹き、庭の花々の花弁を撒き散らした。
その風が、七色の魔法使いである彼女のフードを取り去った。
光の王子は目を見張った。
七色の魔法使いである彼女の素顔は、大変、美しかったのだ。
光の王子の心は奪われた。

 光の王子は、ひかりの国の王と女王に相談し、彼女を妻に迎えることにしたと告げ、説得した。
 
 光の王子のプロポーズに、一度は首を振った魔法使いだったが、その熱心さにとうとう折れ結婚を承諾した。

 光の王子と七色の魔法使いはこうして結婚した。
だが彼女は、正妃という地位になることだけは反対が条件の結婚だった。

 そして数年後。
光の王子と七色の魔法使いの間には、七つ子の子どもが生まれた。
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