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最終話 神ゲーだった
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王子の首目掛け、邪神の手にした刃が振り下ろされる。
「とぅ!」
だが、突如現れた小さな影が邪神へとぶつかりそれを阻んだ。
その衝撃で邪神は勢いよく倒れ込み。
その直ぐ傍に、小さなキツネが宙を一回転して着地した。
「ガード!?どうしてあなたがここに!?」
「なんだか胸騒ぎがしたので駆けつけました!」
ナイス!
ナイスよガード!
只の小間使いとして生み出した使い魔だが、正に値千金の大活躍だ。
「ガード!王子達を守って」
「はーい!」
「邪魔をするな!」
起き上ると同時に、邪神は再び王子へと剣を振るう。
だがその一撃は、光を放つガードによって弾き返される。
その隙に私は一気に間合いを詰めた。
「おのれ……畜生如きが……」
「畜生じゃない!カワイイ私の使い魔よ!」
突っ込んで杖を振るう。
極限まで育成した今の私は、魔法だけでは無く武術の方も一級品だ。
「ぬぅぅ」
私の放った完璧な一撃を邪神は辛うじて剣で受け止める。
だがその態勢は大きく崩れた。
そのがら空きのボディに、私は容赦なく回し蹴りを叩き込む。
「人間風情がぁ!」
「聖女舐めんな!」
私は力を収束させた杖を高々と掲げ、聖なる光を邪神目掛けて放つ。
光は彼女を飲み込み。
その全てを蒸発させる。
「おのれぇぇぇ」
何もない空間から邪神の怨嗟の声が響く。
「だが、聖杯はもはや人間の手の届かぬ所にある!もはやお前達に千年後の未来はない!精々我が復活に怯えて生きるがいい!」
そう捨て台詞を言い残し。
邪神の魂はこの場から掻き消えた。
「手の届かぬところ……か。それよりも」
私は王子の元へ駆け寄り。
その傷を癒す。
神官長とついでに大司教の傷も回復させる。
「ベルベット……エリスは……」
「彼女は倒しました」
「そうか……」
王子は暗い表情を見せる。
仮初とは言え、王子と彼女は夫婦だったのだ。
その彼女が死んだと聞かされれば、落ち込むのも仕方がない。
私は王子になんて声を掛ければいいのだろうか?
「でも良かった。君が無事で。エリスが君に背後から急に切りかかった時は、生きた心地がしなかったよ」
「王子……」
急に泉に突き落とされたのは、邪神の凶刃から私を守る為だったのだろう。
王子が私を守ってくれたのだ。
幾ら私が強くても、背後から切りつけられればひとたまりも無かっただろう。
「すまなかった」
意識を取り戻した大司教が私達に頭を下げる。
「聖女の儀の際、私がその真偽に気づけなかったせいで、君達を危険な目に合わせてしまった。それどころか、危うく邪神の復活まで許すところであった。言い訳のしようがない」
「貴方だけのせいではありませんよ。聖杯の管理は本来私の仕事。それが盗まれてこうなったのですから、私も同罪です」
「レイラ……」
神官長と大司教が見つめ合う。
なんだかいい雰囲気だ。
案外2人は両思いなのかもしれない。
「ベルベット……」
王子が私の手を握る。
とても暖かい。
私の視線とカールの視線が絡み合う。
「ベルベット様!見てください!バッタですよバッタ!」
そこへ空気の読まない、家の使い魔が口から大きなバッタを取り出し見せて来る。
私は驚いて思わず王子に抱き着いた。
「へ、変な物を口にしては駄目っていつも言ってるでしょ!」
「へへへ、ごめんなさい」
ガードは屈託なく笑うと、さっさとどこかへ行ってしまう。
困ったものだ。
「ベルベット……」
気づくと王子の顔が私のすぐ傍にあった。
目を閉じると、王子の温もりが温もりと吐息が伝わって来る。
大好き……
~あれから1年~
今日は私と王子の結婚式だ。
私は父に連れ添われ、バージンロードを進む。
因みに、聖杯はきちんと見つけ出し、千年に一度の封印の儀もつつがなく終えている。
邪神が残した言葉、人間の手の届かない所には思い当たりがあったからだ。
普通なら、確かに見つけ出すのは無理だったろう。
だが私は聖乙女伝説の狂心的なやり込みプレイヤー。
私にとっては答えを邪神が教えてくれたに等しかった。
正に間抜けな邪神乙と言った所だ。
大司教が何やらごちゃごちゃ言っているが、私はすぐ横の王子の凛凛しい顔を眺めるのに忙しく、話を真面に聞いてはいない。
こう見えても聖女だ。
誓いの文言ぐらいは把握している。
「では誓いのキスを」
大司教がそう告げると、王子が私の顔にかかった純白のベールをまくり上げる。
「愛してるよ、ベルベット」
「私もよ、カール」
こうして私は王子と幸福な口付けを交わし、長い人生を彼と共に歩む。
やっぱ聖乙女伝説は神げーだわ。
私は生涯を通してそれを実感する事になる。
~FIN~
「とぅ!」
だが、突如現れた小さな影が邪神へとぶつかりそれを阻んだ。
その衝撃で邪神は勢いよく倒れ込み。
その直ぐ傍に、小さなキツネが宙を一回転して着地した。
「ガード!?どうしてあなたがここに!?」
「なんだか胸騒ぎがしたので駆けつけました!」
ナイス!
ナイスよガード!
只の小間使いとして生み出した使い魔だが、正に値千金の大活躍だ。
「ガード!王子達を守って」
「はーい!」
「邪魔をするな!」
起き上ると同時に、邪神は再び王子へと剣を振るう。
だがその一撃は、光を放つガードによって弾き返される。
その隙に私は一気に間合いを詰めた。
「おのれ……畜生如きが……」
「畜生じゃない!カワイイ私の使い魔よ!」
突っ込んで杖を振るう。
極限まで育成した今の私は、魔法だけでは無く武術の方も一級品だ。
「ぬぅぅ」
私の放った完璧な一撃を邪神は辛うじて剣で受け止める。
だがその態勢は大きく崩れた。
そのがら空きのボディに、私は容赦なく回し蹴りを叩き込む。
「人間風情がぁ!」
「聖女舐めんな!」
私は力を収束させた杖を高々と掲げ、聖なる光を邪神目掛けて放つ。
光は彼女を飲み込み。
その全てを蒸発させる。
「おのれぇぇぇ」
何もない空間から邪神の怨嗟の声が響く。
「だが、聖杯はもはや人間の手の届かぬ所にある!もはやお前達に千年後の未来はない!精々我が復活に怯えて生きるがいい!」
そう捨て台詞を言い残し。
邪神の魂はこの場から掻き消えた。
「手の届かぬところ……か。それよりも」
私は王子の元へ駆け寄り。
その傷を癒す。
神官長とついでに大司教の傷も回復させる。
「ベルベット……エリスは……」
「彼女は倒しました」
「そうか……」
王子は暗い表情を見せる。
仮初とは言え、王子と彼女は夫婦だったのだ。
その彼女が死んだと聞かされれば、落ち込むのも仕方がない。
私は王子になんて声を掛ければいいのだろうか?
「でも良かった。君が無事で。エリスが君に背後から急に切りかかった時は、生きた心地がしなかったよ」
「王子……」
急に泉に突き落とされたのは、邪神の凶刃から私を守る為だったのだろう。
王子が私を守ってくれたのだ。
幾ら私が強くても、背後から切りつけられればひとたまりも無かっただろう。
「すまなかった」
意識を取り戻した大司教が私達に頭を下げる。
「聖女の儀の際、私がその真偽に気づけなかったせいで、君達を危険な目に合わせてしまった。それどころか、危うく邪神の復活まで許すところであった。言い訳のしようがない」
「貴方だけのせいではありませんよ。聖杯の管理は本来私の仕事。それが盗まれてこうなったのですから、私も同罪です」
「レイラ……」
神官長と大司教が見つめ合う。
なんだかいい雰囲気だ。
案外2人は両思いなのかもしれない。
「ベルベット……」
王子が私の手を握る。
とても暖かい。
私の視線とカールの視線が絡み合う。
「ベルベット様!見てください!バッタですよバッタ!」
そこへ空気の読まない、家の使い魔が口から大きなバッタを取り出し見せて来る。
私は驚いて思わず王子に抱き着いた。
「へ、変な物を口にしては駄目っていつも言ってるでしょ!」
「へへへ、ごめんなさい」
ガードは屈託なく笑うと、さっさとどこかへ行ってしまう。
困ったものだ。
「ベルベット……」
気づくと王子の顔が私のすぐ傍にあった。
目を閉じると、王子の温もりが温もりと吐息が伝わって来る。
大好き……
~あれから1年~
今日は私と王子の結婚式だ。
私は父に連れ添われ、バージンロードを進む。
因みに、聖杯はきちんと見つけ出し、千年に一度の封印の儀もつつがなく終えている。
邪神が残した言葉、人間の手の届かない所には思い当たりがあったからだ。
普通なら、確かに見つけ出すのは無理だったろう。
だが私は聖乙女伝説の狂心的なやり込みプレイヤー。
私にとっては答えを邪神が教えてくれたに等しかった。
正に間抜けな邪神乙と言った所だ。
大司教が何やらごちゃごちゃ言っているが、私はすぐ横の王子の凛凛しい顔を眺めるのに忙しく、話を真面に聞いてはいない。
こう見えても聖女だ。
誓いの文言ぐらいは把握している。
「では誓いのキスを」
大司教がそう告げると、王子が私の顔にかかった純白のベールをまくり上げる。
「愛してるよ、ベルベット」
「私もよ、カール」
こうして私は王子と幸福な口付けを交わし、長い人生を彼と共に歩む。
やっぱ聖乙女伝説は神げーだわ。
私は生涯を通してそれを実感する事になる。
~FIN~
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