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第7話 快調

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 話はとんとん拍子に進む。

 貴族社会――というより、文明レベル的にこの世界――には娯楽が少ない。
 女性なら恋愛や噂話、後はオシャレぐらいだろう。
 男性なら書物や狩りと言った感じだ。

 兎に角この世界には娯楽が少なかった。その為だろうか、面白そうな事があると貴族はそれに直ぐに飛びつく傾向がある。その為俺の歌唱の噂は瞬く間に広がり、今やお茶会では引っ張りだこだ。お陰で政務に掛ける時間が削られ――しかも聖歌や呪歌は結構つかれるので――セバスチャンに半丸投げ状態だった。

 彼には苦労を掛けているので、復権して余裕が出来たら特別褒賞や休暇を与えてやるとしよう。

「準備が整いました。お嬢様」

「ありがとう。セバスチャン」

 俺はセバスチャンにエスコートされ、待たせていた馬車に乗り込む。

「カレン、粗相のないようにな」

 父が俺の出立を見送ってくれる。その顔色は一時期に比べればかなりいい。

 私の顔の噂が歌声に上書きされ、貴族の女子連中で私の悪口を口にする者は最早殆どいない。それどころか俺への評価は大絶賛の嵐で、送られてくる手紙や招待状の数も半端なかった。そんな人気者になった俺を見て、父も心配事が減ったのだろう。もう少し静養すれば問題なく政務にも復帰できそうだ。

「はい、行ってまいります。お父様。セバスチャン。私が留守の間、家の事をお願いね」

「畏まりました」

 セバスチャンは恭しくお辞儀する。従者に許可を出すと、馬車が舗装された街道をゆっくりと進みだす。
 これから向かう先は王宮だった。俺の歌姫としての名声を聞きつけた王家が、ついに動いたのだ。明後日に開かれる、現国王ガイゼル・グラン・ヒュエインのパーティーに、俺は歌手として正式に招待されている。

 これは正に千載一遇のチャンスだ。王家とのパイプを作り、呪いをかける絶好の。これを機に、呪歌を使って王家の心をがっちりと鷲掴みし、回数を重ねてその心を手中に収める。爵位が戻るの日もそう遠くは無いだろう。

「ふふふ」

 思わず笑い声が漏れる。メイドは怪訝そうな顔で此方を見つめるが、俺は気にせず鼻歌を歌う。何もかも順調過ぎて怖い位だ。正にチート様様だ。

 さあ、待っていろ王家。俺の歌の虜にしてやるぜ。
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