7 / 11
第7話 快調
しおりを挟む
話はとんとん拍子に進む。
貴族社会――というより、文明レベル的にこの世界――には娯楽が少ない。
女性なら恋愛や噂話、後はオシャレぐらいだろう。
男性なら書物や狩りと言った感じだ。
兎に角この世界には娯楽が少なかった。その為だろうか、面白そうな事があると貴族はそれに直ぐに飛びつく傾向がある。その為俺の歌唱の噂は瞬く間に広がり、今やお茶会では引っ張りだこだ。お陰で政務に掛ける時間が削られ――しかも聖歌や呪歌は結構つかれるので――セバスチャンに半丸投げ状態だった。
彼には苦労を掛けているので、復権して余裕が出来たら特別褒賞や休暇を与えてやるとしよう。
「準備が整いました。お嬢様」
「ありがとう。セバスチャン」
俺はセバスチャンにエスコートされ、待たせていた馬車に乗り込む。
「カレン、粗相のないようにな」
父が俺の出立を見送ってくれる。その顔色は一時期に比べればかなりいい。
私の顔の噂が歌声に上書きされ、貴族の女子連中で私の悪口を口にする者は最早殆どいない。それどころか俺への評価は大絶賛の嵐で、送られてくる手紙や招待状の数も半端なかった。そんな人気者になった俺を見て、父も心配事が減ったのだろう。もう少し静養すれば問題なく政務にも復帰できそうだ。
「はい、行ってまいります。お父様。セバスチャン。私が留守の間、家の事をお願いね」
「畏まりました」
セバスチャンは恭しくお辞儀する。従者に許可を出すと、馬車が舗装された街道をゆっくりと進みだす。
これから向かう先は王宮だった。俺の歌姫としての名声を聞きつけた王家が、ついに動いたのだ。明後日に開かれる、現国王ガイゼル・グラン・ヒュエインのパーティーに、俺は歌手として正式に招待されている。
これは正に千載一遇のチャンスだ。王家とのパイプを作り、呪いをかける絶好の。これを機に、呪歌を使って王家の心をがっちりと鷲掴みし、回数を重ねてその心を手中に収める。爵位が戻るの日もそう遠くは無いだろう。
「ふふふ」
思わず笑い声が漏れる。メイドは怪訝そうな顔で此方を見つめるが、俺は気にせず鼻歌を歌う。何もかも順調過ぎて怖い位だ。正にチート様様だ。
さあ、待っていろ王家。俺の歌の虜にしてやるぜ。
貴族社会――というより、文明レベル的にこの世界――には娯楽が少ない。
女性なら恋愛や噂話、後はオシャレぐらいだろう。
男性なら書物や狩りと言った感じだ。
兎に角この世界には娯楽が少なかった。その為だろうか、面白そうな事があると貴族はそれに直ぐに飛びつく傾向がある。その為俺の歌唱の噂は瞬く間に広がり、今やお茶会では引っ張りだこだ。お陰で政務に掛ける時間が削られ――しかも聖歌や呪歌は結構つかれるので――セバスチャンに半丸投げ状態だった。
彼には苦労を掛けているので、復権して余裕が出来たら特別褒賞や休暇を与えてやるとしよう。
「準備が整いました。お嬢様」
「ありがとう。セバスチャン」
俺はセバスチャンにエスコートされ、待たせていた馬車に乗り込む。
「カレン、粗相のないようにな」
父が俺の出立を見送ってくれる。その顔色は一時期に比べればかなりいい。
私の顔の噂が歌声に上書きされ、貴族の女子連中で私の悪口を口にする者は最早殆どいない。それどころか俺への評価は大絶賛の嵐で、送られてくる手紙や招待状の数も半端なかった。そんな人気者になった俺を見て、父も心配事が減ったのだろう。もう少し静養すれば問題なく政務にも復帰できそうだ。
「はい、行ってまいります。お父様。セバスチャン。私が留守の間、家の事をお願いね」
「畏まりました」
セバスチャンは恭しくお辞儀する。従者に許可を出すと、馬車が舗装された街道をゆっくりと進みだす。
これから向かう先は王宮だった。俺の歌姫としての名声を聞きつけた王家が、ついに動いたのだ。明後日に開かれる、現国王ガイゼル・グラン・ヒュエインのパーティーに、俺は歌手として正式に招待されている。
これは正に千載一遇のチャンスだ。王家とのパイプを作り、呪いをかける絶好の。これを機に、呪歌を使って王家の心をがっちりと鷲掴みし、回数を重ねてその心を手中に収める。爵位が戻るの日もそう遠くは無いだろう。
「ふふふ」
思わず笑い声が漏れる。メイドは怪訝そうな顔で此方を見つめるが、俺は気にせず鼻歌を歌う。何もかも順調過ぎて怖い位だ。正にチート様様だ。
さあ、待っていろ王家。俺の歌の虜にしてやるぜ。
10
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・
【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!
ジャン・幸田
恋愛
私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!
でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
婚約破棄は結構ですけど
久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」
私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。
「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」
あーそうですね。
私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。
本当は、お父様のように商売がしたいのです。
ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。
王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。
そんなお金、無いはずなのに。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる