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第28話 多忙
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「流石に引くわね」
そう言いながらロザリア様がお菓子を頬張った。
サクッと口どけの柔らかなクッキーで、私もさっきから10個近く頂いている。
――やばい、太りそう。
「謝罪に生首送られてきたら、確かにきついですね」
私もロザリア様も実際に見たわけではないのだが、話を聞くだけでドン引きだ。
レブント帝国から、件の領土侵犯に関する謝罪の使者が訪れた。
使者からは、皇帝からの書簡と、木箱に入れられた生首が此方へと引き渡されている。
首の主はグリード・R・ベース。
カルメさんの事で騒いでいた男の物だった。
書簡の中身はグリードが独断で侵犯を行なった事が綴られ、その責を取らした証として生首を送ると書かれていたそうだ。
まあ確かに責任を取らせて処罰したと告げるだけより、実際に生首を渡して改めさせた方がインパクトは強いので、効果的なのかもしれないが……
いきなり生首を送られて来た此方としてはドン引きである。
「無茶な関税も全てグリードの独断って事だそうよ」
死人に口なし。
全部の責任をグリードと言う男が背負わされた形になる。
まあふざけた行動を見る限り、案外本当に独断でやっていた可能性もあるが。
「勿論グリードが不当にせしめていた差額は、計算して全て返還するってさ」
名目上は返還ではあるが、実際は和解金と言った所だろう。
「10年分だと相当な額になるんじゃ?」
関税が強く締め上げられたのがここ10年の話だと言うので、全額返還と言うと10年分の差額と言う事になる。
それだけ支払って帝国は痛くないのだろうか?
「まあね。内にとっては大金よ。でも国の経済規模を考えると、あちらさんにとっては大した額じゃないんでしょーね」
国として基礎の差か……
まあ何はともあれ、これで少なくともレブント帝国と直ぐに戦争という流れだけは避けられた。
少々しっくりこない部分もあるが、概ね良好な結果と言えるだろう。
「所でドレスはもう用意したの?」
「いえ、まだです。なかなかまとまった休みが頂けなくって」
来月末にはタラハシとカルメさんの結婚式がある。
勿論その式には私達も招待されている訳だが、着ていくドレスを私はまだ用意できていなかった。
実はここ最近、外国の貴族や魔導士の訪問が凄く多くなっている。
レブント帝国を退けた大賢者と言う事で――実際は別に退けてはいないのだが――各国の要人や賢者と呼ばれるお歴々の方が興味を持ったらしく、良く私を訪ねて来る様になってしまったのだ。
そのため多忙な毎日を送っている私は、早く用意しなければならないとは思いつつも、忙しい日々に忙殺される有様だった。
今日だってほんのちょっとした半休でしかないので、とても仕立て屋を探している余裕などはない。
「だと思った!ロレント家ゆかりの業者がいるから、今度呼び寄せるわ。その時に私の分と合わせてドレスを作りましょう」
「ありがとうございます」
ロザリア様が華やいだ笑顔を見せる。
こういう時は、人間大体下心がある物だ。
「勿論費用も持つわよ!」
うん、確定。
「で、お疲れのところ悪いんだけど……また魔力を貸して欲しいの。お願い!」
そう言うと彼女は合掌して頭を下げる。
まあ呼ばれた時点で、大体察しはついていたからいいけどね。
「わかりました」
「ありがとう!じゃさっそく!」
返事をすると、さっそく工房へと連れていかれる。
やれやれ、今度は何を作る気なのやら……
そう言いながらロザリア様がお菓子を頬張った。
サクッと口どけの柔らかなクッキーで、私もさっきから10個近く頂いている。
――やばい、太りそう。
「謝罪に生首送られてきたら、確かにきついですね」
私もロザリア様も実際に見たわけではないのだが、話を聞くだけでドン引きだ。
レブント帝国から、件の領土侵犯に関する謝罪の使者が訪れた。
使者からは、皇帝からの書簡と、木箱に入れられた生首が此方へと引き渡されている。
首の主はグリード・R・ベース。
カルメさんの事で騒いでいた男の物だった。
書簡の中身はグリードが独断で侵犯を行なった事が綴られ、その責を取らした証として生首を送ると書かれていたそうだ。
まあ確かに責任を取らせて処罰したと告げるだけより、実際に生首を渡して改めさせた方がインパクトは強いので、効果的なのかもしれないが……
いきなり生首を送られて来た此方としてはドン引きである。
「無茶な関税も全てグリードの独断って事だそうよ」
死人に口なし。
全部の責任をグリードと言う男が背負わされた形になる。
まあふざけた行動を見る限り、案外本当に独断でやっていた可能性もあるが。
「勿論グリードが不当にせしめていた差額は、計算して全て返還するってさ」
名目上は返還ではあるが、実際は和解金と言った所だろう。
「10年分だと相当な額になるんじゃ?」
関税が強く締め上げられたのがここ10年の話だと言うので、全額返還と言うと10年分の差額と言う事になる。
それだけ支払って帝国は痛くないのだろうか?
「まあね。内にとっては大金よ。でも国の経済規模を考えると、あちらさんにとっては大した額じゃないんでしょーね」
国として基礎の差か……
まあ何はともあれ、これで少なくともレブント帝国と直ぐに戦争という流れだけは避けられた。
少々しっくりこない部分もあるが、概ね良好な結果と言えるだろう。
「所でドレスはもう用意したの?」
「いえ、まだです。なかなかまとまった休みが頂けなくって」
来月末にはタラハシとカルメさんの結婚式がある。
勿論その式には私達も招待されている訳だが、着ていくドレスを私はまだ用意できていなかった。
実はここ最近、外国の貴族や魔導士の訪問が凄く多くなっている。
レブント帝国を退けた大賢者と言う事で――実際は別に退けてはいないのだが――各国の要人や賢者と呼ばれるお歴々の方が興味を持ったらしく、良く私を訪ねて来る様になってしまったのだ。
そのため多忙な毎日を送っている私は、早く用意しなければならないとは思いつつも、忙しい日々に忙殺される有様だった。
今日だってほんのちょっとした半休でしかないので、とても仕立て屋を探している余裕などはない。
「だと思った!ロレント家ゆかりの業者がいるから、今度呼び寄せるわ。その時に私の分と合わせてドレスを作りましょう」
「ありがとうございます」
ロザリア様が華やいだ笑顔を見せる。
こういう時は、人間大体下心がある物だ。
「勿論費用も持つわよ!」
うん、確定。
「で、お疲れのところ悪いんだけど……また魔力を貸して欲しいの。お願い!」
そう言うと彼女は合掌して頭を下げる。
まあ呼ばれた時点で、大体察しはついていたからいいけどね。
「わかりました」
「ありがとう!じゃさっそく!」
返事をすると、さっそく工房へと連れていかれる。
やれやれ、今度は何を作る気なのやら……
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