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第6話 品種改良
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タラハ国の大半は険しい山脈だった。
平地は全体の3分の1しかなく、しかもその大半は痩せた土地となっている。
更には山に強力な魔物が巣食っている為、山の実りを期待するのも難しい。
つまり、この国は貧しいのだ。
そんな中、少しでも収穫を上げようとタラハ国では作物の品種改良に力を注いでいた。
病気や干ばつに強い品種が出来れば、それだけ安定して収穫を見込めるようになる。
「これは……」
研究室に顔を出した長官は、鉢植えを両手で掲げて唸る。
それは3日前に種を植えたばかりの小麦だった。
まあ彼が驚くのも無理は無いだろう。
通常、麦類の収穫には1年近くの期間が必要になる。
それが植えてからたった3日で穂を成しているのだから。
「驚きましたね」
長官がずり落ちた眼鏡を元に戻しながら、私を見た。
私が就職した魔導局では、魔導士の兵士としての育成の他に、魔導学院と連携して研究を進める部門も存在している。
私が在籍するのは研究部門の方だ。
力の強さを考えれば、本来私は軍部に編入される筈だった。
だが聖女としての高い魔法知識を活かすと言う事で、有事の際以外は研究に携わる事になっている。
「麦の改良には、以前少し関わっていましたから」
カサン王国でも、作物の研究は活発だった。
まああの国の場合は困窮する自国を良くすると言うよりは、輸出によってより多くの益を得る為ではあったが。
「この小麦の量産は可能ですか?」
「私の魔力を籠める必要があるので無限にとは言えませんが、タラハの国内の分でしたら問題なく」
麦は種に特殊な魔力を籠めると、その魔力をエネルギー源として高速で成長する事が研究で分かっていた。
更に魔力を圧縮して高濃度で付与すると、成長速度が倍増し、病気にも強く――ほぼ無敵――なり、水の無い痩せた土地でも問題なく育つ種へと生まれ変わる。
正に無敵の万能麦だ。
「それは有難い!早速陛下にお知らせせねば!」
そう叫ぶと、興奮気味に長官は研究室を出て行く。
長年成果の出せなかった課題がクリアされたのだ、興奮するのも無理はない。
「いやそれにしても、凄いですね。私達が魔力を籠めた種はまだ芽も出てないっていうのに」
鉢植えは他にも10個ほど並んでいた。
だが私が魔力を籠めた種以外、まだ芽は出ていない状態だ。
「まあ、相性がいいのかもね。私の魔力と麦は」
聖女として特殊な厳しい訓練を受けた私の魔力には、聖なる力が込められている。
麦の異次元レベルの成長はその為だろう。
だが私が元カサン王国の聖女である事は秘密であるため、説明する事が出来ないので適当に相性と言って誤魔化しておいた。
「またまた、ご謙遜をー」
長官の娘さん。
瓶底眼鏡のレペが私を無駄に持ち上げる。
ひょっとしたら、彼女は父親から私の事を言いているのかもしれない。
何でも長官は親馬鹿らしいので、それは十分に考えられた。
「偶々よ。たまたま」
聖女である事を隠すという制限はあるが、仕事は順調だった。
私はこの国に大きく貢献していくつもりだ。
それは次期国王たる愛しのクプタ王子の為であると同時に、私の為でもあった。
私はこの国に大きく貢献し、そして頂くつもりだ。
何を?
そんな物は決まっている。
第二夫人の座を!
国の王が複数の相手と婚姻を結ぶのは、世界的に至極普通の事だ。
それはこのタラハ国でも変わらない。
だから私は出世してなって見せるのだ。
第二夫人に。
それだけが今の私にとっての希望だった。
我ながら愚かな行動だとは分かっている。
だがクプタ王子を諦める事は出来そうになかった。
だから――
平地は全体の3分の1しかなく、しかもその大半は痩せた土地となっている。
更には山に強力な魔物が巣食っている為、山の実りを期待するのも難しい。
つまり、この国は貧しいのだ。
そんな中、少しでも収穫を上げようとタラハ国では作物の品種改良に力を注いでいた。
病気や干ばつに強い品種が出来れば、それだけ安定して収穫を見込めるようになる。
「これは……」
研究室に顔を出した長官は、鉢植えを両手で掲げて唸る。
それは3日前に種を植えたばかりの小麦だった。
まあ彼が驚くのも無理は無いだろう。
通常、麦類の収穫には1年近くの期間が必要になる。
それが植えてからたった3日で穂を成しているのだから。
「驚きましたね」
長官がずり落ちた眼鏡を元に戻しながら、私を見た。
私が就職した魔導局では、魔導士の兵士としての育成の他に、魔導学院と連携して研究を進める部門も存在している。
私が在籍するのは研究部門の方だ。
力の強さを考えれば、本来私は軍部に編入される筈だった。
だが聖女としての高い魔法知識を活かすと言う事で、有事の際以外は研究に携わる事になっている。
「麦の改良には、以前少し関わっていましたから」
カサン王国でも、作物の研究は活発だった。
まああの国の場合は困窮する自国を良くすると言うよりは、輸出によってより多くの益を得る為ではあったが。
「この小麦の量産は可能ですか?」
「私の魔力を籠める必要があるので無限にとは言えませんが、タラハの国内の分でしたら問題なく」
麦は種に特殊な魔力を籠めると、その魔力をエネルギー源として高速で成長する事が研究で分かっていた。
更に魔力を圧縮して高濃度で付与すると、成長速度が倍増し、病気にも強く――ほぼ無敵――なり、水の無い痩せた土地でも問題なく育つ種へと生まれ変わる。
正に無敵の万能麦だ。
「それは有難い!早速陛下にお知らせせねば!」
そう叫ぶと、興奮気味に長官は研究室を出て行く。
長年成果の出せなかった課題がクリアされたのだ、興奮するのも無理はない。
「いやそれにしても、凄いですね。私達が魔力を籠めた種はまだ芽も出てないっていうのに」
鉢植えは他にも10個ほど並んでいた。
だが私が魔力を籠めた種以外、まだ芽は出ていない状態だ。
「まあ、相性がいいのかもね。私の魔力と麦は」
聖女として特殊な厳しい訓練を受けた私の魔力には、聖なる力が込められている。
麦の異次元レベルの成長はその為だろう。
だが私が元カサン王国の聖女である事は秘密であるため、説明する事が出来ないので適当に相性と言って誤魔化しておいた。
「またまた、ご謙遜をー」
長官の娘さん。
瓶底眼鏡のレペが私を無駄に持ち上げる。
ひょっとしたら、彼女は父親から私の事を言いているのかもしれない。
何でも長官は親馬鹿らしいので、それは十分に考えられた。
「偶々よ。たまたま」
聖女である事を隠すという制限はあるが、仕事は順調だった。
私はこの国に大きく貢献していくつもりだ。
それは次期国王たる愛しのクプタ王子の為であると同時に、私の為でもあった。
私はこの国に大きく貢献し、そして頂くつもりだ。
何を?
そんな物は決まっている。
第二夫人の座を!
国の王が複数の相手と婚姻を結ぶのは、世界的に至極普通の事だ。
それはこのタラハ国でも変わらない。
だから私は出世してなって見せるのだ。
第二夫人に。
それだけが今の私にとっての希望だった。
我ながら愚かな行動だとは分かっている。
だがクプタ王子を諦める事は出来そうになかった。
だから――
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