最後の人生、最後の願い

総帥

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第3章 アカデミー5年生

36 デート?のお誘い

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 休暇もすでに、2週間ほど過ぎた。
 俺はその間、学校で魔法の練習、遊ぶ、師匠のとこで修行、遊ぶを繰り返していた。
 今日は師匠んとこ行こーかなと思っていたら、なんとリアが訪ねてきた。



 「どした?」

 「あの…えっと…。」

 なんかしどろもどろだな。あ、もしかして。

 「店番の仕事か?いいよ、行ける。特に決まった用事もないし。」

 「あ、そうなのね?…じゃないわよ!」

 違った。
 実は俺、リアんちの店で働かせてもらっている。もちろん、ハムズとアスラの餌代だ!
 リアの家は、俺が魔具の本を買った古道具店、骨董品店、あとは古着やらを取り扱っている。あれだな、リサイクルショップのチェーン。古本屋なんかもやってるし。質屋もやってるって聞いたな。
 今は王都だけだが、地方にも出店を考えているらしい。
 まあそこで俺は、主に本屋で働いている。平日の放課後2日と土曜日だけだが。たまに急に入ってもらえないかって日もある。今日もそうかと思ったが、違うんだな。


 「じゃあ、何か用か?」

 「…!し、深呼吸、すー、はー、ふーぅ。」

 「???」


 リアはなぜか深呼吸を繰り返し、落ち着くと俺をキッと睨んできた。なんで??


 「あのっシャル!えええ演劇のチケットを貰ったのだけど、一緒にいかがかしら!?」

 「演劇?」

 なんでまた俺?こういうのはアンジュとか誘って女の子同士で行った方がいいんじゃない?他にも女友達いるだろ?
 とはいえ断る理由もないけど。


 「へえ…いいよ、行く。何時からだ?」

 「!!!じゅ、11時からよ。まだ時間は大丈夫よ。」

 「じゃあ支度してくるから、リビングで待っててくれ。」

 「わかったわ。」


 シャルが部屋に消えた後、リアは誰もいないリビングで1人ガッツポーズをとる。
 
 (ついに、シャルをデートに誘えたわ!いやまあ、デートと認識されてるか怪しいけど…とにかく!今日の目標は、私を意識してもらうこと!)



 1年の頃から、リアはシャルを意識していた。ずっと会えなかったけど、久しぶりに再会し、成長したシャルを見て完全に惚れてしまったようだ。
 最初は憧れに近い感情だった。小学生が、足の速い男の子にカッコいいー!となるのに近い。

 昔悪いやつらに捕まって、リア自身は縛られただけで酷いことはされなかった。だが目の前で友人2人が痛めつけられているのを見せられ、心が壊れそうになってしまった。
 そこに、シャルが助けにきてくれた。うろ覚えだが、彼は謝っていた。のちに玖姫に聞いた話だが、シャルは自身を責めていたらしい。友人が酷い目に遭ったのは、自分のせいだと。
 だがリア達はそう思わなかった。だがもしそうだとしても、助けに来てくれた。それだけで、十分だった。
 
 そして友人達は考える。もしも同じような状況になった場合、今度はどうするか。
 シャルは自分といると、また同じような目に遭うかもしれないと懸念しているようだ。だったら、「そんな心配は無用!」と胸を張って言えるようになればいい。

 セイルはひたすら自分を鍛えた。魔法はもちろん、魔具がない状況を想定して体術、剣術も習得している。
 アルトは最低限の護身術は使えるが、相手によってはまるで効かない。ならば守る何かがあればいい。それがお金であり、魔道具だ。

 ならば、リアはどうしようか?リアも護身術は使える。もちろん、全然足りないが。一応、結界の魔法を勉強中だ。難易度が高く、苦戦しているが。マスターできれば、何者も通さない結界がはれるようになるかもしれない。
 …理想でいえば、シャルのそばにいたい。彼の一番近くにいて、守ってもらいたい。代わりに、自分が彼の生活を守るから。


 (彼が疲れて帰ってきたところに、暖かいご飯を出してあげたい。いつも頑張ってくれてありがとうって、私が癒してあげたい。
 ライバルが姫様ってのはキツイけど…負けたくない!私が、シャルの一番になりたい。そのためにも…!)

 「今日のデートで、私を見てもらうんだから!」


 「…お前ら、デート行くの?」

 「ひぃあああああ!!?
 …セイル!?き、聞いてた!?」


 いつの間にやら、セイルがリビングにいた。リアは完全に忘れていたが、彼はシャルの弟なのだ。当然、家にもいる。


 「お前、声に出てたぞ。気ぃつけねーと、兄貴に聞こえんぞ。」

 「うっそ!あ、ありがと。」

 余談だが。リアの想いは周囲にバレバレである。気づいていないのはシャル本人ばかり。マルですら察している。






 

 「お待たせ。じゃあ行こうぜ。」

 さっきまでセイルがいたと思ったのだが、あいつ急用を思い出したとか言ってどっか行った。なんなんだ?


 「し、私服姿もかっ…!じゃなくて!
 こほん…じゃあ、行きましょう?」

 「お、おう…?」

 今日のリアはテンション高いな…まあいいか。
 俺らはまず、劇場に向かった。場所は俺の家から少し離れた商業地区だ。定期バスもあるのだが、時間もあるし歩いていくことになった。…いや、そうだ!


 「リアは今日スカートか…。」

 「ふえ!?おかしいかしら!?」

 「あ、悪い。全然おかしくないから、可愛いから。」

 「かわっ…!!?」

 俺はせっかくだから、魔法で飛んで行こうと思ったのだ。練習の成果か、俺とあと1人くらいは余裕で飛ばせる。
 でもリアスカートだし、飛ぶのはよくないか…。あ、そうだ。


 「なあリア、飛行魔法使いたいんだけど、君に少し触れてもいいか?」

 リアは赤い顔でこくこく頷いてくれた。うーん、年頃の女の子だからな、異性を気にしてしまうようだ。青春だねえ。
 まあ許可もとったし、リアを横抱きにした。


 「んなああっ!?シャ、シャル!重いわよ!?」

 さっきよりさらに真っ赤になってしまった。心なしか涙目になってない?そんなに嫌?ちょっとショック…。

 「いや、全然軽いぞ。でもそんなに嫌ならやめるけど…。」

 「嫌なんかじゃないわ!このまま行きましょう!」

 降ろそうとしたら、めっちゃしがみついてきた。嫌じゃないなら、いいのかな…?
 そのまま、空に飛び立つ。



 「わあ…!」

 リアが感嘆の声をあげる。
 そういえば、空から王都を見るのは初めてかもしれない。アカデミーでは飛んだことあるけど、そこまで高くなかったし。

 …こうしてみると、綺麗な街並みだなって思う。ここが今俺が暮らしている国なんだな。日本とはまるで違う。
 遠くには王城も見える。陛下が頑張って国を治めてくれているから、この平和があるんだな。
 俺も、ほんの少しくらいは国の役に立てるようになりたい。基本的には人任せにするが。


 普通に飛んだらあっという間に着いてしまうから、歩くようなスピードで飛んで行った。
 リアも楽しんでくれたみたいだし、またやろう。













 「あ!飛んでっちゃった!」

 「どうすっか。俺だけならともかく、お前まで浮かせらんねえぞ。空だと遮蔽物もねえし。」

 「目的地は分かってるんでしょ?」

 「まあな。しゃーない、走るか。」

 「わかった。にしても、いきなり「アールトくーん!遊びましょー!」って来るとは思わなかったよ。」

 「貴族の家にアポ無し訪問できねえだろ。ちゃんとカメラ持ってるか?」

 「ばっちり。」

 「よっしゃ、行くぜ!」

 
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