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第3章 アカデミー5年生
30 ルカお前…お前ぇ!!
しおりを挟む今日は終業式。明日から夏季休暇だ!
しかし予定はいっぱいいっぱいだ、ああ忙しい。ついでに言うと、気楽な学生は今年で終わり。
進学する生徒は別として、俺は働く予定だからな。今世初の夏休みは最初で最後になっちまったよ…切ない。
「それでは皆、また新学期に会おう。
それと休暇中、知っての通り学校内の練習場でのみ魔法の使用が許可されている。時間は9時から17時までだ。」
ジル先生、初耳ですが?あ、俺以外は皆知ってるわけね。
じゃあファルとアルトの魔法の練習に付き合いましょうかね。
先生が解散を告げ、皆それぞれの時間を過ごす。先生に挨拶しとこう。
「せんせーい。俺たまに学校来ると思うから、よろしくお願いします。」
「おう。あ、ハムスターはどうする?」
「ああ、休暇中は師匠のとこに連れて行きます。飼育委員とかできたら当番制で面倒見れるんですけどねー。
貴族さんがたにゃ難しいかもしれないから、やっぱ学校で飼うのは難しいですかね?」
「そうだな…他にもまだ課題は多いし…。」
「はあ、残念。じゃあ、俺が卒業する時に山に還すか引き取りますね。カイトが寂しがりそう。」
「カイト?誰だ。」
「魔物好きの後輩。飼育委員の第一候補でした。」
カイトはちょくちょくハムに会いに来ていた。その際餌なんかも持ってきてくれるので大助かりだったよ。大体俺か、アルトやリアなんかが用意してたから。
てか今更だけど、アカデミーって風紀以外委員会ないんだよね。生徒はほぼ貴族ですし?図書だ美化だのは職員さんいるし。だから飼育委員作りたいって言っても「なにそれ?」で終わりだよ。
まあ、ハムズは俺が責任持って最後まで面倒みるか。もちろんアスラも。
先生と別れ、寮に帰る。今日も皆集合している。マル含めてな。
「じゃ、休暇中の予定を確認しようぜ。
まず貴族組。皆領地に帰るんだろう?ファルが帰る時、俺も着いて行きたいんだけど。おじ様とおば様、カルウィンさんに挨拶しにゃ。
…そういやこの国、社交界シーズンとかないの?皆領地に引っ込んでんじゃん。」
「社交界シーズン?ああ、他国には数ヶ月そういうのがあるらしいね。この国は春に2ヶ月程度しかないよ。アカデミーで言うと入学式の頃には終わってるね。」
イシアスが教えてくれた。へえ、そーなんだ。また少し貴族社会を知った。
「ねえシャル兄ちゃん。マルも行きたい!」
「ん。どうだ、ファル?」
「大丈夫だろう。休暇の後半に帰る予定だ。イシアスとアンジュもな。」
「よし。えーと、今日が7月10日。休暇は9月10日までのまるっと2ヶ月か。」
今年の夏季休暇は、皆で集まる日をつくることにした。冬は魔法の試験とか色々あって、忙しいらしいから。
そんなこんなで予定を決め、俺初の夏季休暇が始まる。
まず最初の予定は…
「う~ん、この軽トラの乗り心地。懐かしい。」
久しぶりの軽トラの旅、目的地はオルドー地方のリント村。ルカの住む村だ。
久しぶりに2人に会える。俺はもう、昨日から楽しみで仕方ない!一度行った場所なら転移できるようになるから、頻繁に会えるようになるし!
俺は結構背が伸びたし、俺だって分かるかな?ちなみに髪も伸ばしっぱなしで、今は三つ編みにして横から垂らしてる。実は陛下リスペクト。
「あいつらもでかくなってんだろうな。どうなってるかな?ルカとか、ゴツくなってたら面白そう。ライラはどうかな。」
色々想像しつつ、村に着く。確か停留所に迎えに来てくれるって手紙で…。それっぽいのいないな。
少し待つか。と思っていたら、もう一台別の軽トラが来た。反対側から来て、王都方面に向かうやつだな。
そしてその軽トラから降りてきたのは…
「その水色の髪…ライラ?」
「…あなたは、シャル?」
やっぱり…!すぐ分かった。水色の長い髪を今はツインテールにしている。成長しているが、顔は面影ありまくりだ!
「うっそ、シャル!?あなた…前から思ってたけど美形よね。モテるんじゃない?」
「相変わらず思った事全部口にするね。それほどモテないよ。周り貴族ばっかで、婚約者いる人も多いし。
それに、ライラも可愛いぞ。」
こないだお姫様に告白されましたが。黙っておこう。
ライラは俺の可愛い発言に顔を赤くし、もーやだあ!と言いながら背中を強く叩いた。痛い。
「そっか。…ふふ、あの時は、絶対にアカデミーに通うって思ってたのにね。わたしもルカもダメだったわねえ。」
「ほんとだよ!入学の説明会行ったら俺しかいないんだから。」
「あはは、ごめんってば。改めて、おめでとう。今更だけどね!」
「ん、ありがとうな。」
もう最高学年だけどな。俺の失踪事件のことは揃ってから話すということにして、ルカが来るまで雑談をする。
互いの友達のこととか、家族の話。好きな人はいるのかと聞かれ、いないと答える。
なんとライラは彼氏がいるらしい。早くね?え、そうでもない?そっすか…。確かにライラは女の子らしくなったなー。
こう、雑誌のスナップ写真のコーナーに小さく載ってる女子中学生?超美少女じゃないけど、普通に可愛い女の子?うまく表現できん…。
彼氏とか手紙にも書いてなかったじゃん、と思ったが、最近付き合い始めたばかりらしい。ほほう。
「でさ、シャルならすぐ彼女できるでしょ。好きな人はいなくても、タイプとかないの?」
「えー…。難しいな。…だめだ、わからん。
もう俺のことより、ルカはどうだと思う?ああいうのが女子にモテると思うんだよなー。」
「あー、ちょっと分かるかも。ほっとけないというか、母性本能くすぐるというか…。
って、遅いわね!いつ迎えに来るのかしら!?」
そういや遅いな。もう30分くらい経つんだけど…お?あれって、まさか…。
ライラの肩を叩いて、彼女の後ろを指差す。
「おいライラ、あれ…。」
「来た!?…なにあれ。」
こっちに向かってくる、あれは…。
「おーい!シャルとライラだよな!?ひっさしぶりー!!」
トレードマークの真っ赤な髪を耳のあたりで切り揃え、おそらく俺より背の高い少年。ほどよく鍛えられているのか、そこそこ筋肉のついた身体。
勢いよく、元気よく手を振るルカと。
「あれがルカ君のお友達?ふうん、まあまあじゃない。」
「あ、あなたがライラちゃんね!私のほうが、ルカとは付き合い長いんだからね!?」
「結構美少年じゃなーい!や~ん、お姉さんテンション上がっちゃう~!」
「アタシはルカの方が格好いいと思うけどな。…って、特別な意味はねえから!」
「で、ライラさんとやら?貴女、ルカさんに邪な感情を抱いてないでしょうね?いくら男性を連れてカモフラージュしようとしても、私は騙されませんよ!」
「「………。」」
ルカと、女の子が5人。その光景にライラと顔を見合わせる。
——人違いかしら?——
——いや、間違いなくルカだ——
——…私、帰っていい?——
——うん、気持ちはわかるがダメ——
残される俺の立場を考えてくれ。俺らは、視線だけでそんな会話をしていた。
ルカお前…いつの間にギャルゲーの主人公になったんだ!?
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