最後の人生、最後の願い

総帥

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第3章 アカデミー5年生

24 今すぐハムスターに癒されたい

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 そして次の日。現在玉座の間にて陛下に謁見中です。

 どこまで報告したもんかと悩んだが、面倒なので俺の事情以外は全部話した。
 古代に存在した魔族のことから、アーラの目的まで。
 ただ全部信じてくれたかはわかんね。なんせ要約すれば『ラメが王族皆殺しにして隣国に宣戦布告しようとしてました。』てな訳で。誰が信じるよ、こんな話。…と話し終えた俺は思っていたが。



 「そうであったか…。シャルトルーズ、君には礼をしなくてはならないな。
 この国、そして我が姪の命をその魔族とやらから救ってくれ、感謝する。」

 陛下がスッと頭を下げる。しかも周囲にいた王弟やら王妃様やら王太子やらお偉いさん方まで!
 突然のことで俺は目を丸くする。



 「あ、はい…ではなく!どうか頭をあげてください、陛下!…発言の許可を頂いても?」

 「許可する。」

 「ありがとうございます。…その、信じてくださるのですか?あまりにも荒唐無稽な話であると自覚しております。」

 「そうであるな。だが君の言動については、ジークリンドが責任を持つと明言している。
 何より今この間に、偽りの証言を暴く魔法がかけられている。反応がないということは、少なくとも君は嘘をついてはいない。
 君ならば反魔法も使えるかもしれぬが…魔具も持っていないしな。」


 あっっっぶな!!!念のため嘘つかなくて良かったー!
 魔具は武器になるから、この玉座の間に持ち込むことは出来ない。部屋に入る前に預けた。

 しかし魔法に気付かんかったな。あれか、特待生の試験の時とは違うな。
 俺が嘘を言えないようにされてるんだったら気付けたと思うんだけどな。違和感みたいなのを感じるだろうし。んー、魔力の流れとかが目に見えりゃいいのに。



 「左様でしたか…。無用な発言、申し訳ございません。」

 「構わぬ。ところで、その魔族…名前はなんと言ったか?」


 「アウグルヴァリックニーネイラでございます。長すぎるのでアーラと呼んでおります。」

 「そうか…その者はまだ生きているのだな。」

 「…はい。現在は狭間の世界、私の師匠のもとに身を寄せております。」

 「聞くが…なぜ始末しなかった?」



 …陛下の纏う空気が変わったな。そりゃそうだ。俺は国家転覆を目論んだ奴を匿ってるようなもんだ。相手が強すぎて倒せなかった、ではなく自ら見逃したもんな。
 たとえ今は無力でも、国を思えば始末するべきだ。…今更する気はないが。

 慎重に答えねえと。でも嘘をつけばバレるし、場合によっては家族と王弟殿下にも累が及ぶ。
 

 「…そうですね。アーラは王女殿下から引き離された現在、魔法を使うこともできぬ無力な存在です。身体を持たぬため、狭間の世界から出ることも叶いません。
 恐ろしい存在ではありますが、少々抜けている所があったりし、命を奪うのを躊躇いました。王女殿下も助けて欲しいと仰っておりました。
 アーラはまだ、実際には行動を起こしておりませんでしたので。ただし王女殿下の評判を下げてしまったのは事実ですが。
 そして古代の知識を持つため、私の知的好奇心が勝り一応捕獲しました。…なにより…」

 「何より…なんだ?」

 

 
 「…アーラは、格好いいんです…!」

 「「…は?」」


 陛下と王太子殿下がハモった。
 ってそんな事はどうでもよく、俺は床に崩れ落ちた。

 

 「ですから!アーラはものすごく格好いいんです!!そう、まるでドラゴン!竜人って感じの!
 皆様も見ていただければご理解されるはずなのです!ザ・魔王!なんとも少年心を擽られるビジュアル!絵本なんかでしか見たことがないファンタジーを具現化したような存在、それがアーラです!
 お分りいただけますか!?」


 俺は興奮のあまり熱弁した。そう、奴を生かした最大の理由がそれだ。
 もちろんアーラがすでに何かやらかしてたら始末しただろう。それこそラメが殺されそう、とかだったら迷わずアーラを殺す。
 でもあの時はそうじゃなかったし…。



 「……すまぬ、わからん。」
 
 なぜ!!!陛下もアーラを見れば納得されるはず!!でもピリピリした空気がなくなってよかった。



 「左様ですか…。では、アーラをどうなさいますか?」

 「…今は大賢者殿のもとにいるのだろう?近くジークリンドを遣わす。判断してまいれ。」

 「畏まりました、陛下。
 そういうことだから、またお願いするよ。」

 「はい。」

 「はあ…ともかく、今回の君の功績を讃えなくてはならぬ。だがこの騒動、公には出来ない。なので内々に褒美をとらす。何か欲しいものはないか?」

 
 やっぱそうなるか。でもなあ…特にないんだよなあ。

 「…では陛下、恐れながら。

 私に褒美は必要ございません。ですので、代わりにアウグルヴァリックニーネイラの助命を乞いたく存じます。」
 

 「…そうか。では、話は以上だ。下がりなさい。」

 「はい。失礼致します。」





 …終わった、か?俺はふい~っと息を吐く。あー、緊張した。
 ああもう、城を出たら風紀委員室に行こう。ハムズに癒されたい!!





 …と、前から誰か歩いてくる。見た感じ貴族だな。俺は廊下の端により、軽く頭を下げ相手が通り過ぎるのを待つ。

 なぜ通り過ぎない?相手は俺の前で止まってしまった。正確には、貴族についてきたその息子と思わしき少年が、だが。

 「おい。」

 「…なんでしょうか。」
 話しかけんなよ。

 「貴様、シャルトルーズだな?」

 「はい、そうでございます。」

 「…平民のくせに、城に上がるとはなんと不敬な!なぜ衛兵はつまみ出さない!?」

 彼の言葉に衛兵さんたちタジタジ。俺、一応陛下の客だからねー。言わないけど。


 「恐れながら。私は招待されてこの場におります。すぐに帰りますのでお構いなく。」

 「なんだと…!?ふん、どうせ父親の力でも借りたのであろう。卑しいことだ。」



 そう言い残して去って行った。…何がしたかったんだ?あいつ。
 つか見覚えあるわ。アカデミーの後輩だ。確か4年の首位で、カナリー家の子息だな。それ以外は知らんが。じゃ、さっき一緒にいたのは当主か。


 あー、気分悪。ハムズよ、俺を癒してくれえ!!


 今日は、日が暮れるまでひたすらハムスターを眺めていたのだった。

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