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第3章 アカデミー5年生
17 ちょい師匠、展開早すぎ
しおりを挟むいやいや。じゃあ今のチェスラメル様の状態って、今の俺と少し近い?
だが俺は今まで生まれ変わるたび、それぞれ別人格だった。性格も趣味嗜好もそれぞれ違う。今のシャルトルーズと文太も別人な訳だし?
つまり彼女は、俺で言うと生まれた時から文太の人格が前面に出てたの?もし俺がそうだったら、俺の人生は今と180度違うと断言出来る。
まず特待生なんて目指さない。ただ魔法には興味津々だと思うから、町の学校でそれなりに頑張ってたと思う。
それだけで大きな違いだよな。今の友人達とは出会うことすらなかったんだから。もちろんルカとかも。代わりに別の出会いはあっただろうけどさ。
でもそうだったら、今の俺は?カッコいいもの大好きで、売られた喧嘩は全部買う。割と他人とも積極的に関わる。文太との共通点といえば、家族大好きってぐらいじゃない?
最初から、名前はシャルトルーズでも別人だったって事だ。つまり?
「前世…ですか。そのような事が、あり得るのですね。」
あ、殿下。それに関しては目の前にもいますんで。言わないけど。
「師匠…それじゃあ、チェスラメル様の本来の人格は存在してるんですか?」
俺の疑問に、殿下も同意する。俺らのしようとしてることは、無駄なんじゃないのか?元々無いもんは、取り戻しようもないじゃんか!
「あるよ?」
「「あるんですか!!?」」
殿下とハモった。
「で、あんたの前で大人しかった理由だがね。その妖怪っての?それに近い存在だからじゃないかねえ?本能的に、あんたを恐れてんだよ。そんであんたに近付こうとしてんのが、娘本来の人格だね。」
「…えーと。その存在って…?」
「魔族。」
「いんの!?」
「サラ様、その魔族というのは?」
殿下知らんの?でも俺も歴史とかでも習ってないし…。俺にとっちゃ魔法以上にファンタジーな存在だよ。
なんてったってファンタジー。最初は魔王とか勇者とかいんのかなー!と思ったもんだ。魔法があって魔物がいるんだし!まあそんなもんはなかったが。聖女ならいたな、大昔の暗殺者だったが…。
「大昔の話さ。アタシも生まれる前だ。人間の祖先とも言えるね。」
師匠の話によると。師匠も遺跡とかの古代文明を調べまくって知った事らしいが。
はるか昔。この世界に人間も魔物も存在しなかった頃。この地を統べるのは魔族と呼ばれた種族。
魔族にも種類があった。今でいう人間に近い二足歩行の人型や四足歩行の獣型等。
だが彼らは、突然滅んだ。滅んだと言うより、力を失ったらしい。原因は師匠にも分からないらしいが、現在の人間と魔物は彼らの成れの果てだとか。
多分魔族っつーくらいだから、魔法の扱いに長けてんだろうな。探り入れなくてよかった…。
「師匠、四大元素の王達は何か知ってるんじゃない?」
「知っている。だが教える事は出来ぬ。」
「うわっ!…居たんですか、翠空雀妃!」
突然目の前に翠色の鳥が現れた。小さめサイズの翠空雀妃だ。
「え、何者?なんだって?」
「あ、えーと。長くなるので、後ほど説明しますね。で、教えられないとはどういう事ですか?」
殿下に説明するのは面倒だ、絶対長くなるし。後で師匠に説明してもらおーっと。
この時師匠も同じ事を考えていたらしく、後日俺らはなすりつけ合う事になるのだった。
「そのままの意味。世界の理を崩しかねない。妾らは干渉不可。」
「つまり、アタシらが勝手に調べて知る分には構わないんだよ。だから地道にやってんだ。」
「そうですか…。その状況で、相手の実力も分からないのにチェスラメル様を解放できるのでしょうか?」
「あんたなら、できるかもね。干渉の魔法はマスターしたんだろうねえ?」
「ばっちりです!でも失敗は出来ないんですよ?今の俺で、力不足じゃ…。」
不安しかない。失敗したら、彼女は死ぬ可能性が高い。俺は背負えるのか?王族の殺人罪とかになりそうで怖い。
「やるしかないよ。前にも言ったが、娘の人格はそろそろ消えそうだ。どっちにしても死ぬんなら、やってみりゃいいんじゃないかい?」
そういう問題?人格が死ぬのと身体が死ぬのじゃ大違いだと思うけど…?…ちらり。
「シャルトルーズ君。私は、君にお願いしたい。よく分からないが、私達には出来ない事なのだろう?
まだ間に合うのなら、可能性に賭けたいんだ。もしもの場合、全責任は私が負うよ。」
「…わかりました。全身全霊、やらせていただきます。」
やるしかないか。この人生、後悔はしたくないって決めたんだし!あと殿下が闇堕ちしそうでマジ怖い。
自分の頬を叩いて気合を入れる。
「よっし!師匠、いつ実行しますか!?」
「今から。」
「「今から!?」」
はえーよ!!心の準備が全く出来てないんだけど!?
しかし師匠がやるっつったらやるんだ。急がねえと!
「殿下!早速お願いがございます。まずチェスラメル様に気付かれないように、接触させてください。」
「分かった。」
「出来れば眠らせたいな…。魔法は使わない方がいいし、師匠。なんかありません?」
「超強力な睡眠薬ならあるが。」
「それ!!殿下、これを飲ませてください。その後は俺がなんとかしますので。…なんでこんなモン持ってんの?」
なんか犯罪臭半端ねえ!睡眠薬で幼女を眠らせるとか俺やばくない?だが手段を選んでる暇はねえ!
「…シャルトルーズ君、いいよ。」
ほいきた。現在の時間は昼過ぎ。お茶に薬を混ぜ、寝かしつけることに成功。関係者は殿下が信用できる者とのこと。俺が犯罪者じゃない証人になってくださいね!
そんじゃあ…いっちょやったるか!
ここまできたら相手に気付かれてもかまわねえ。椅子の上で座りながら眠る彼女の横に膝をつく。
集中しろ。彼女の精神と俺の精神を繋ぐ。深く、深く、深くーーー。
ーーー見つけた、
「〈ダイビング〉!!」
彼女の精神の中枢に、ダイブする!
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