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第3章 アカデミー5年生
11 特殊魔法試験
しおりを挟むさてさて特殊魔法の試験です。今日は飛行と転移。精神操作は教わる前に適性を試す必要があるらしい。俺もう学んじゃってるけど…それはまた後で。まずは筆記か。
なぜ特殊魔法に分類されるか、か。
んーと。特殊魔法の3つはまず危険度が高い。まあどの魔法にも危険は付きものだが、特殊魔法は根本が違う。
まず通常の魔法は大気中の魔力、大源を使ったもの。特殊魔法は身体の中の小源を使用する。ただしこの違いを知らない人は多い。知る必要がないからだ。
だが特殊魔法を扱うには、オドのコントロールが必須になる。それが一番の難関と言えるだろう。
魔道具もマナを使う。簡易魔具といったところか。だが魔法の使い方を習わないと魔道具を作動させることが出来ない。魔道具にスイッチとかないからな。
そして特殊魔法は、通常と違い人体にも作用するものだ。転移と精神は言わずもがな、飛行もだ。ぶっちゃけただ飛ぶだけなら、空飛ぶ絨毯とか箒みたいに、何かを浮かせてその上に乗ればいい。
やってみたが、箒だけすっ飛んでって俺は落ちた。舟を浮かべてみたらひっくり返った。服を浮かしてみたら首が締まるわ、半裸になるわ。以前授業中にジル先生に持ち上げられた時は、抱きかかえられているような感じだった。
だが特殊で俺自身を浮かせればスピードもコントロールも自由自在。慣れれば他者を浮かすことも出来るのだ。
まあ転移に関しては物も移せるから、その辺は研究中とのこと。魔法って複雑ね。
「ああ、今は魔法に免許が要るんだってねえ。ま、その方が安全か。は?特殊魔法?なんだい、今の若者はオドの使い方も知らないのか。…まあ、その方が平和だねえ。
あんたらの言う所の特殊魔法、他にも色々あるんだがねえ。あんたが使ってる〈アニマル〉とかいう魔法もだ。自覚なかったのかい?自分と魔物のオドを繋げて意思疎通をとっている。もう少し使い慣れりゃ、会話も可能になるだろうよ。
あとは身体能力強化もね。だがあれは代償が酷くてねえ。昔、こんな男がいた。戦場において、常に身体能力を2、3倍の状態であり、一騎当千の活躍をしていた男だ。
だがその分男は、周囲の3倍以上の早さで衰えていった。その容姿もまだ20代だというのに、まるで老人のようだったよ。
今の人間も使ってるようだが、本当に危険な時に一瞬だけ、とかみたいだね。あれなら代償はほぼ無いだろうよ。
まあ、そんな感じでオドを使う魔法は意外と多いのさ。その中で3つだけが免許が必要な理由なんざ知らん。転移と飛行は使用頻度が高そうだから、精神は危険度が桁違いだから…とかそんなんだろうよ。」
以前、師匠にそう言われた事があった。なるほどー、と思ったね。師匠の教えのおかげで、筆記は全問正解だったぜイエイ!
そして実技。まあ見せるだけだな。飛行は先生が付き添いのもと、学校の敷地内を1周するだけ。その際の安定感とか疲労度、速度なんかを見られた。いやあ、しかし飛行はやっぱ楽しい。調子に乗って高く飛びすぎて怒られた。
次、転移。まずは指定された場所に荷物を飛ばす。それを3回こなしてから自分を飛ばす。あっさりクリアー。
余談だが、以前自分だけ移動し、服を残してしまった男子生徒がいたとかなんとか。女子じゃなくてよかったね!その事件以来、念の為女子の試験は女性の先生が見るようになったとか。ちなみにその生徒とは父さんではなかった。また伝説を知ってしまったかと思ったのにい。
「ふむ…合格だな。」
「よっしゃ!!」
ジル先生に告げられ思わずガッツポーズ!これで自由に使えるぜ。あとは免許だが、カードとかではない。魔具に登録するのだ。登録された魔具を専用の魔道具にかざせば、免許の有無がわかるらしい。
「じゃ、このまま精神操作魔法の適性をみるぞ。移動するからついてこい。」
「はーい。ここじゃないんですね。」
「場所は王宮だ。」
「はあ!?」
思わず回れ右をしたがすぐ捕まった。
「しょうがないだろう。本当にこの魔法を取得する生徒は少ないんだ。僕のように魔法教師になるやつや、魔法師団でもトップくらいしか使えない。そもそも学生のうちに取るやつなんて、歴代でもお前を入れて片手で数えるほどだろうよ。
適性も試験も魔法師団本部で行う。」
「うへぇ。」
思ってたより大事だったんだなー。話にゃ聞いてたけどさ。
場所変わり、現在お城にいます。会議室みたいな部屋だな。魔法師団団長の王弟殿下が直々に相手するとか。まじか。
「はい、じゃあ早速始めようか。君はそこに座ってるだけでいいよ。勝手に見るから。」
「おふぅ…はい、質問です。もし俺の適性が不合格だったらどうなりますか?すでに学んでるのですが。」
「そうだね。大賢者様が君に教えてもいいと判断したんだろうから、大丈夫とは思うけど。最悪君の記憶を消すかな?」
「そですか…。」
笑顔で物騒なことをおっしゃる。まあ別にいいけど。
「では、始めます。」
殿下…いや団長が杖を振るう。なんだか…意識が、遠く…
「さてさて。君の深層心理を見せてもらおうかな。君は一体何者なんだい?」
「………。」
穏やかな笑みを浮かべる彼に対し、ジル先生は険しい顔をするのだった。
(どこだここ?)
気がつけば真っ暗な空間。亜空間を思い出すわ。ここは足場もしっかりしてるけど。てか俺、何してたんだっけ?
「さあ、君の目の前にいるのは誰かな?」
目の前?誰もいな…
(国王陛下。)
が、いきなり斬りかかってきた。なんで!?しかも速ええ!
(げえっ!!ちょちょちょお待ちくださいって!父と間違えてんじゃないですか!?やばいやばい!反撃…していいのか!?とにかく逃げーる!!)
脱兎の如く。逃げるが勝ち!!
「なるほど。じゃあ次は?」
ん?セイルだ。俺に魔法を放ってきた。当たったら怪我じゃすまなそうなやつを。
ささっと躱し、ぶん殴って気絶させとく。
「おや。容赦無いね。」
(まっさかー。手加減したし。)
「よし、次。」
あれは…いつかのデブ騎士。名前は忘れた。どうやらマルを人質にし、俺を害そうとしているらしい。
俺は短剣で奴の首を落とす。もちろん、マルには見えないように視界を隠してから。あれ、俺短剣なんて持ってたっけ?
「…容赦無いね。」
(当然だ。)
「じゃあこっち。」
ジル先生が母さんの首元に短剣を突きつけている。
(先生…どういうつもりですか?そのまま母さんを刺すというのなら、先生だって容赦しません。)
だが先生は、無情にも母さんを殺そうとする。
(チッ…!させるか!!)
先生を糸で拘束し、母さんを救う。先生は…とりあえず吊るしとこう。話が聞きたい。
「…なんだい、その糸は。」
(俺にしか使えないとっておき。誰にも教えてあげないよーだ。)
「すごいな…この世界でもそんな意思を持てるとは。よっぽど他人に知られたくないらしいね。なら仕方ない。じゃあ、次で最後。」
理事長が…父さんと殴り合ってる。
「何故!?貴方達はただのイメージ体でも喧嘩するのかい!?」
(あっはははは!見物見物。いけ!そこだ!おお~…理事長年の割にやるう。でも父さんの勝ち!さっすが!!)
どうやら父さんの勝利で終わったようだ。つーかさっきから俺に話しかけてんの誰よ?なんか聞き覚えはあるようなないような。
「はあ…最後は想定外だが、大体分かった。では、試験を終了するよ。」
んん?試験?そういえば…今俺は魔法の適性を…
「はっ!!?あれ、ここは…さっきの部屋?」
「シャル、大丈夫か?」
「ジル先生…?はっ!」
「うおわっ!!?」
思わず先生を簀巻きにしてしまった。なんで?つか俺何してたっけ?
「おいこら!!なんだこれ、解け!」
「あ、すいません。つい。」
「つい!?」
「まあまあ、しょうがないよ。2人には訳が分からないだろうけど。」
「「はあ…。」」
しゅるしゅると糸を解く。いや、本当についなんだよなあ。先生の顔見た途端に、吊るさねば!と思っちゃって。
「さて、君の適性は合格だ。面白いものを見せてもらったよ。」
「俺なんかしましたっけ!?」
「まあね。教えられないけど、君の人間性を試させてもらったんだよ。
精神操作魔法は悪用される可能性が大いにある。反魔法を習うとはいえ、相手の力量次第ではまるで意味がないからね。
例えば国王を操る事が出来たら、もう我々にはどうしようもないだろう?この国を滅ぼす事だって出来てしまうんだよ。」
(実を言うとこの試験、最初の国王陛下…兄上に対する反応だけで良かったんだけどね。あそこで逃げるか軽く相手するなら合格。もし殺そうとしたら不合格。嘘も誤魔化しも出来ない状態だったしね。
この国に対する忠誠心や判断力なんかを見たかっただけなんだけど…ついやり過ぎてしまった。おかげで面白いものが見れたけど。)
「…はい。つまり俺は、この国に無害だと認められたんでしょうか?」
「そうだよ。あと先に言っておくけど、免許を取れたら10年に一度更新が必要だから。今は良くても、人間なんて変わるものだからね。」
「まあ、そうですよね。」
俺にそのつもりは無いが、10年後の俺はこの国に牙を剥いているかもしれないって事ね。うん、更新は大事だ。
しかし疲れた。大した事はしてないはずなんだが、寮に帰った俺はとっとと眠りについた。これから本格的に精神魔法の勉強、頑張ろう…。
ついでに、本来なら王宮で授業を受けるらしいのだが、俺はこのまま師匠に教わる事を許された。流石大賢者様。まあ試験はちゃんと受けるし。
この1ヶ月後、俺は見事合格するのだった。
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