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第2章 アカデミー1年生
33 それ火球ちゃう人魂や
しおりを挟む「おはようございます、シャルトルーズ様。」
「おはよう、シャルトルーズ君。」
「おはよう。今度勉強教えてくれないかな?」
「おはようございます。あの、本日のランチをご一緒してよろしいかしら?」
「シャルトルーズ様。よかったら、週末うちのお茶会に参加してみない?」
「なんだこれ。」
おはようございます、シャルです。俺は今日、朝から貴族の挨拶&招待攻撃を受けている。なぜ。今まではすれ違ったら挨拶する程度だったはずだ。なぜわざわざ席まで来る?お誘いは全部躱しといたがな。
「今日はすごいね...シャル何かした?」
「俺がやらかしたの前提なの?」
「うん。」
なんて遠慮のない友人だ。まあいいけど。
「シャル。アルト。おはよう。」
「おぉファル。おはよ。お前、この騒ぎの原因知らない?」
「おはようございます。」
やはりここは貴族の情報網に頼る。立ってるものは親でも使えってな。
「君、昨日騎士団に行ったろう?そこで現役の騎士に短剣で圧勝したらしいじゃないか。」
「...は?情報早くない?」
俺びっくり。いつか噂になるかもとは思ってたが早すぎる!
「その騎士隊の隊長の息子がこの学校にいる。あとは他の騎士の家族親戚、メイドなんかも目撃してたらしい。
しかも隊長がその場でスカウト。王弟殿下も称賛されたとなれば、君の地位は約束されたようなものだからな。」
「なるほど...つまり?俺とお近づきになりたいのね。」
ふむふむと納得する。だがファルはため息をつきながら、それだけじゃないと続けた。
「恐らくだが...君が自分をあくまでも平民だと言い張るなら、自分の側近にしようと考えている子息もいそうだ。令嬢なら専属の執事とかな。
あとは、君を養子にしたい家も多い。まあそっちは伯父上の事が怖いから言われないと思うが。」
怖っ!!貴族こえぇー!
「あの...つまり。成績優秀で物腰も柔らかく礼儀正しく。さらに容姿端麗でいて戦闘能力も高いシャルは、貴族の方々にとって喉から手が出るほど欲しい人材という事ですよね?
...王家の方が出てきたりはしません...か?」
アルトがおずおずとファルに言う。いつの間にか少し距離が縮んだようだ。つかベタ褒め恥ずかしいんですけど。
「ああ...。というより陛下から非公式にだが招待されてるだろう?陛下は君と王子殿下を会わせようとしてるのではないのか?」
「いやあれは...そういうのではなさそう。ただ周りはどう思うか知らんが。」
「まあ、そういう事だ。どうしようもないが気をつけるんだぞ。」
「おう...。」
ファルが席に着き、先生が教室に入ってくる。先生の話をぼんやりと聞きながら、今後どうすっかなー...と考えていた。だが今は悩んでも仕方ないので、出来る事を一つ一つこなしていこう。
さーて待ってましたよ魔法の授業!今日は外の練習場だ。なのに。
「よろしくお願いしますね、シャルトルーズ様。今日は負けませんわよ!」
「ブーゲンビリア様...なぜここに...。」
俺の横には暴走令嬢がいる。俺は先生を睨むが逸らされた。ん?よく見たら魔法科の先生がジル先生含め4人いる?
代表してジル先生が授業を仕切るようだ。
「皆、今日から四大元素の魔法を始める。そして見てわかると思うが、今日はDクラスと合同授業だ。仲良くやれよ?」
なぜよりによってDクラスと!はあ...ニンフもいるし。無視するけど。
「そして今日は2時間使って4種の魔法を取得してもらう。事前に知らせてある通り、教科書に載ってる魔法のみ使用するように。〈火球〉〈水輪〉〈つむじ風〉〈土人形〉。各属性の初歩だ。よく読んで、発動しなさい。何かあったらすぐ近くの先生に報告!いいな。」
そして先生の合図で開始する。俺はアルトとセイルとファルも一緒にやる事にした。暴走令嬢はどっか行った。「どっちが先に全て習得するか勝負ですわ!」っつってた。ふん。負けねえぞ!売られた喧嘩は買う主義だ!
あとニンフは近くにいる。話しかけては来ないがうざい。
「えーと。俺たちは祝福を受けたから魔法を出すことは難しくないはず。じゃあ順番に〈火球〉からやるか。」
全員頷く。さて、と。
〈火球〉はそのまんま火の玉。ただ大きさに注意。そして魔法で生み出した炎は解除すれば消える。しかし他に燃え移った火は消えない。...気を付けよう。
「大きさは...こんくらいで、〈火球〉」
ポッと手の上に火が出たしかしこの形は...
「どっからどうみても人魂じゃねーか!」
「シャル。もう出来たの?うわ。変な形。」
「うっせ!」
他の連中はすぐ消えてしまうようだ。だが流石にセイルは上手くいきそうだ。不安定だが燃え続けている。
俺も...しかしこの人魂は惜しい...。うーん...先生に相談だ!
みんなにそう告げて先生の下にダッシュ。
「せーんーせー!俺の〈火球〉変な形だけどいいですか!?」
「どれ。うわ、変な形だな。」
そんなに変か?
「まあ、形はなんでもいいさ。むしろこっちの方が難易度高そうだが...?」
「俺はこれを見慣れてんですー。じゃっ!」
許可を得たので登録しよっと。名前はー...人魂って諸説あるし...。英語知らんし...。ファイヤーボールじゃつまらん。
あ。そうだ。せっかくだし2種類作ろっと。
通常の赤い炎の人魂と、青白い炎の人魂。とりあえず両方出してみる。出た出た。青白い方に触ってみる。
「おま、あぶな...!」
セイルが言う。こいつ昨日もそうだけど、結構心配性だなー。
「大丈夫大丈夫。ほら、冷たく作ったんだ。」
マジで?と言わんばかりに3人が食いつく。そして本当だ!とか言いながら触ってる。参考にすんなよ?
名前どうしよう。そもそも実際の青白い火は高温だけど、これは冷たい火だ。俺のイメージで変えるのだ。...分かりやすいのでいいか。
「赤い人魂は〈フレイム〉。青い人魂は〈プラズマ〉だ!」
魔本に文字が浮かび上がる。お?
〈フレイム〉高温の人魂 延焼しない
〈プラズマ〉低温の人魂 延焼しない
あれ。なんか違うの出来ちゃった?...まあいいか。普通に火球も作っとこう。先生には後で説明しよっと。サクサク作る。
名前はー。そもそも火球って日本語じゃ流星のことだよな。ファイヤーボールだとしたら炎球だと思う。
〈フラム〉火の球 大きさは自在
何語かは忘れたが炎系の意味だったはず。
さ、どんどんいくぞ!
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