最後の人生、最後の願い

総帥

文字の大きさ
上 下
58 / 111
第2章 アカデミー1年生

33 それ火球ちゃう人魂や

しおりを挟む


 「おはようございます、シャルトルーズ様。」

 「おはよう、シャルトルーズ君。」

 「おはよう。今度勉強教えてくれないかな?」

 「おはようございます。あの、本日のランチをご一緒してよろしいかしら?」

 「シャルトルーズ様。よかったら、週末うちのお茶会に参加してみない?」

 






 「なんだこれ。」

 おはようございます、シャルです。俺は今日、朝から貴族の挨拶&招待攻撃を受けている。なぜ。今まではすれ違ったら挨拶する程度だったはずだ。なぜわざわざ席まで来る?お誘いは全部躱しといたがな。


 「今日はすごいね...シャル何かした?」

 「俺がやらかしたの前提なの?」

 「うん。」

 なんて遠慮のない友人だ。まあいいけど。



 「シャル。アルト。おはよう。」

 「おぉファル。おはよ。お前、この騒ぎの原因知らない?」

 「おはようございます。」

 やはりここは貴族の情報網に頼る。立ってるものは親でも使えってな。


 「君、昨日騎士団に行ったろう?そこで現役の騎士に短剣で圧勝したらしいじゃないか。」

 「...は?情報早くない?」


 俺びっくり。いつか噂になるかもとは思ってたが早すぎる!

 

 
 「その騎士隊の隊長の息子がこの学校にいる。あとは他の騎士の家族親戚、メイドなんかも目撃してたらしい。
 しかも隊長がその場でスカウト。王弟殿下も称賛されたとなれば、君の地位は約束されたようなものだからな。」

 「なるほど...つまり?俺とお近づきになりたいのね。」

 ふむふむと納得する。だがファルはため息をつきながら、それだけじゃないと続けた。


 「恐らくだが...君が自分をあくまでも平民だと言い張るなら、自分の側近にしようと考えている子息もいそうだ。令嬢なら専属の執事とかな。
 あとは、君を養子にしたい家も多い。まあそっちは伯父上の事が怖いから言われないと思うが。」



 怖っ!!貴族こえぇー!


 「あの...つまり。成績優秀で物腰も柔らかく礼儀正しく。さらに容姿端麗でいて戦闘能力も高いシャルは、貴族の方々にとって喉から手が出るほど欲しい人材という事ですよね?
 ...王家の方が出てきたりはしません...か?」

 アルトがおずおずとファルに言う。いつの間にか少し距離が縮んだようだ。つかベタ褒め恥ずかしいんですけど。




 「ああ...。というより陛下から非公式にだが招待されてるだろう?陛下は君と王子殿下を会わせようとしてるのではないのか?」

 「いやあれは...そういうのではなさそう。ただ周りはどう思うか知らんが。」

 「まあ、そういう事だ。どうしようもないが気をつけるんだぞ。」

 「おう...。」

 

 ファルが席に着き、先生が教室に入ってくる。先生の話をぼんやりと聞きながら、今後どうすっかなー...と考えていた。だが今は悩んでも仕方ないので、出来る事を一つ一つこなしていこう。


















 さーて待ってましたよ魔法の授業!今日は外の練習場だ。なのに。

 「よろしくお願いしますね、シャルトルーズ様。今日は負けませんわよ!」

 「ブーゲンビリア様...なぜここに...。」

 俺の横には暴走令嬢がいる。俺は先生を睨むが逸らされた。ん?よく見たら魔法科の先生がジル先生含め4人いる?

 代表してジル先生が授業を仕切るようだ。



 「皆、今日から四大元素の魔法を始める。そして見てわかると思うが、今日はDクラスと合同授業だ。仲良くやれよ?」

 なぜよりによってDクラスと!はあ...ニンフもいるし。無視するけど。



 「そして今日は2時間使って4種の魔法を取得してもらう。事前に知らせてある通り、教科書に載ってる魔法のみ使用するように。〈火球〉〈水輪〉〈つむじ風〉〈土人形〉。各属性の初歩だ。よく読んで、発動しなさい。何かあったらすぐ近くの先生に報告!いいな。」



 そして先生の合図で開始する。俺はアルトとセイルとファルも一緒にやる事にした。暴走令嬢はどっか行った。「どっちが先に全て習得するか勝負ですわ!」っつってた。ふん。負けねえぞ!売られた喧嘩は買う主義だ!
 あとニンフは近くにいる。話しかけては来ないがうざい。






 「えーと。俺たちは祝福を受けたから魔法を出すことは難しくないはず。じゃあ順番に〈火球〉からやるか。」


 全員頷く。さて、と。
 〈火球〉はそのまんま火の玉。ただ大きさに注意。そして魔法で生み出した炎は解除すれば消える。しかし他に燃え移った火は消えない。...気を付けよう。


 「大きさは...こんくらいで、〈火球〉」

 ポッと手の上に火が出たしかしこの形は...

 「どっからどうみても人魂じゃねーか!」


 「シャル。もう出来たの?うわ。変な形。」

 「うっせ!」

 他の連中はすぐ消えてしまうようだ。だが流石にセイルは上手くいきそうだ。不安定だが燃え続けている。


 俺も...しかしこの人魂は惜しい...。うーん...先生に相談だ!

 みんなにそう告げて先生の下にダッシュ。



 「せーんーせー!俺の〈火球〉変な形だけどいいですか!?」

 「どれ。うわ、変な形だな。」
 そんなに変か?

 「まあ、形はなんでもいいさ。むしろこっちの方が難易度高そうだが...?」

 「俺はこれを見慣れてんですー。じゃっ!」




 許可を得たので登録しよっと。名前はー...人魂って諸説あるし...。英語知らんし...。ファイヤーボールじゃつまらん。
 あ。そうだ。せっかくだし2種類作ろっと。

 通常の赤い炎の人魂と、青白い炎の人魂。とりあえず両方出してみる。出た出た。青白い方に触ってみる。



 「おま、あぶな...!」

 セイルが言う。こいつ昨日もそうだけど、結構心配性だなー。

 「大丈夫大丈夫。ほら、冷たく作ったんだ。」

 マジで?と言わんばかりに3人が食いつく。そして本当だ!とか言いながら触ってる。参考にすんなよ? 

 名前どうしよう。そもそも実際の青白い火は高温だけど、これは冷たい火だ。俺のイメージで変えるのだ。...分かりやすいのでいいか。

 「赤い人魂は〈フレイム〉。青い人魂は〈プラズマ〉だ!」



 魔本に文字が浮かび上がる。お?



 〈フレイム〉高温の人魂 延焼しない
 〈プラズマ〉低温の人魂 延焼しない



 あれ。なんか違うの出来ちゃった?...まあいいか。普通に火球も作っとこう。先生には後で説明しよっと。サクサク作る。

 名前はー。そもそも火球って日本語じゃ流星のことだよな。ファイヤーボールだとしたら炎球だと思う。



 〈フラム〉火の球 大きさは自在



 何語かは忘れたが炎系の意味だったはず。






 さ、どんどんいくぞ!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

決して戻らない記憶

菜花
ファンタジー
恋人だった二人が事故によって引き離され、その間に起こった出来事によって片方は愛情が消えうせてしまう。カクヨム様でも公開しています。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...