最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

14 魔具お披露目

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 ゴキゲンで亜空間の外に出ると、やはり俺が最後だったらしい。1人の先生が声をかけてきた。

 「シャルトルーズ君。随分時間がかかっていたが大丈夫かい?それにフェルト先生は?」

 「はい、ご心配をおかけしましたが問題ありません。先生は...放っておいた方がいいかと。」

 「そ、そう...?」



 その先生に一礼し、友人達の元に行く。


 「遅かったなシャル。終わったのか?」

 「おう。問題なく出来たぞ。後でお披露目してやるからな!」

 「お披露目って...みんな一緒だろ。」

 「まあまあ。お前らも早く行けよ。まだ枠空いてるじゃん。」

 「そうだね。じゃあ僕たちも。」

 「行ってくるか。」

 「おう!...さて、ファルはどこかなーっと。」







 「あ、リア!」

 「どうだったの?って、あの本は?」

 「へへー。ここだ!」

 「え?...こんなに小さかったかしら...。」

 「凄いだろ!俺のテンションはマックスだ!今なら木にも登るぜ!!」

 「何を言ってるのか分からないけど...詳しい話は聞きたいわ。」

 「おう!でも今はファル様んとこ行くんだ。後でな!」

 「ええ。」








 「お、いた。しっかし貴族が近くにいて声かけらんねえ...。」
 俺は気付けぇ!という念を送る。それが届いたのか、ファルがこっちを見た。


 「すまない。僕は少し席を外す。」

 ファルがこっちに来た。貴族達は残念そうだが何も言わなかった。


 

 「シャル、結果は...成功のようだな。」

 ファルがにやっと笑う。それ貴族の笑い方としてどうなの...?俺の影響受けちゃダメだよ?
 俺らは教室の後ろの方で話す。ヒソヒソと。

 「まあな。俺の仮説が証明された!見よ!!」

 バアアーーン!と効果音が付きそうな勢いで取り出す。

 「おお!小さい!で、どうやった?」

 「いいか。全てはイメージだ。あと念の為にフェルト先生にやってもらった方がいい。
 融合が始まる前に、頭の中に映像を浮かばせろ。俺と違って縮めるだけだからいける!」

 「ふむ、縮める...。」

 「大きさは考えなくていい。ただ自分の意思で縮小して、使う時元に戻せるように考えろ。」

 

 そして俺らは教室の隅に立て掛けといた荷物に目をやる。あれは今朝杖屋から届いたファルの特注の杖だ。
 
 ただ、デカい。俺が夢見た魔術師の杖だ。大人になっても使うことを想定し、俺らの身長の2倍の長さはある。
 それに意匠を凝らし、素晴らしい出来になった。後は俺と同じように縮小機能をつけるだけだ。



 「終わったよ~。あ、シャル。フェルト先生が後で話があるって。」

 「お、そうかやっと復活したか。それがアルトの魔具か。」

 「そうだよ。やっぱ杖がいいかなって。」

 「セイルは?」

 「これだ。ペンダント。で、お前は?」

 「んふふー。後でどどーんとお披露目するって~。んっふっふー。」

 「こいつ、たまに気持ち悪いな...。」

 「まあ、否定しないよ...。」

 俺はまだまだゴキゲンなので友人達の悪口もスルーしますー。うふふー。



 おっとファルの番か。みんなデカい布の塊を持つファルに驚いてざわざわしている。
 フェルト先生だけが、何かを悟って遠い目をしている。俺は心の中でエールを送った。


 「わあー。ライミリウム様のあの荷物なんだろ?」

 「んふー。後で分かるぜー。」

 「なんか知ってんのか...。まあ後で全部話せよ。」

 「まかせなさーい!」








 数分後、ファルが出てきた。その手には、役目を終えた布だけが握られている。

 成功だ...。俺はフッと笑った。気分は我が子が大学に合格した時のようだった。
 向こうも俺の方を向く。ドヤ顔をし、そして自分の胸ポケットを指差す。そこにはペンサイズに縮んだ杖があった。完璧だ...。






 「以上で魔具の作成は終了だ...皆お疲れ...。魔具は死ぬまで使う相棒だ。大事にしろよ。
 魔法の本格的な授業は明日からだ。どの教科でも言えることだが、基礎を疎かにしてはいけない。この中から大魔法使い...いや、賢者が生まれることを祈っているよ。

 それと。ライミリウムとシャルトルーズ。前に出なさい。」



 「え?」

 ファルと顔を見合わせる。なんかやっちゃった?やだー。とりあえず行くか。




 「僕達がどうかしましたか、先生?」

 「...魔具、出してみろ。」

 「はい。出しました。」

 「...お前ら示し合わせたよな?」

 「えーと、俺が考えて、ファル様にも提案してみました。」

 「じゃあやっぱ元凶はお前か...。」

 「その通りです先生。」

 「元凶ってなんですか。ファル様も。俺ら一蓮托生ですよねぇ?」

 
 「はあ...皆注目。この2人だが、これまでにない魔具を創り出すことに成功した。先生方もご覧ください。
 さあ、出してみろ。」


 言われるがままに掲げる。ファルの杖はともかく、俺の魔本(ミニサイズ)にみんな興味深々だ。


 「元のサイズにしてみろ。」

 俺らが念じると、ポフっと音を立てて大きくなった。ついでに俺は浮かせておく。サービスでページも捲ってあげよう。エンターテイメントですよ。


 
 先生も生徒もポカーンというのがぴったりな顔で俺らを見ている。確かに凄いと自分でも思うけど、そこまで...?



 「先生...もしかして俺やらかしましたか?」

 「正解だ。花マルをあげよう。」




 いらねえ......。


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