最後の人生、最後の願い

総帥

文字の大きさ
上 下
23 / 111
第2章 アカデミー1年生

9 食堂にて

しおりを挟む


 遂にきたか...こういうの...



 「聞こえなかったのか?平民は耳も悪いらしい。それとも理解する頭が無いか?」



 こいつ同じクラスの奴だな。自己紹介で長々と語ってたナルシスト。さてここで俺たちが取るべき最善の方法は?

 1、謝罪し順番を譲る。
 却下。こいつらにやっちまったら、他の貴族にもしなきゃならない。
 
 2、喧嘩を買う。
 アホか。俺は自分から喧嘩を売ることはしないが売られたら買う主義だ。だが今は駄目だ。

 3、正論で返す。
 微妙。ぜってえ屁理屈こねるに決まってる。


 そう。答えは4だ。


 「何をしている?」


 目には目を、歯には歯を、権力には権力を。
 ライミリウム様に丸投げだ☆


 「貴様がこいつらの監督役か。平民の分際で我々の前に立つなど何を指導している。」



 ...こいつライミリウム様が誰か分かってらっしゃらない?周りの生徒見てみ?やっちまったな...とか聞こえんだけど。オマエのご友人も真っ青よ?

 俺が聞いた話では高位貴族は3家のみ。俺は御三家と密かに呼ぶことにした。御三家を上回るのは王族のみ。ただし現在王族の方は学校に通っていない。今年卒業したらしい。


 で、だ。ライミリウム家はその高位貴族。そしてリノファーク様は嫡男。さらに生徒会長。この場で彼以上の人間はいないだろうなぁ。


 「それがお前の言い分か。学校の施設は全て、高位貴族から平民まで利用に制限は無い。
 生徒間で序列による格差があるのは認めるが、今この場においてはその限りでは無い。」

 「貴様!誰に向かってものを言っている!?名乗れ!家族もろとも処罰を下してやる!」


 「これは失礼した。私はリノファーク・ライミリウム。そちらも名乗ってはどうか?」




 「...............名乗るほどの者ではございません。」


 流石に名前は知ってたか...。平民のチームに居たから勘違いしたんだろうけど、こんなオーラ放ってる平民がいると思うの?
 腐っても貴族なら、せめて高位貴族くらい把握しておけよ。

 「何、遠慮することはない。先程も言ったがこのレクリエーション中は身分は関係ない。」


 「あ、ほんとに結構ですので。先生、僕早退します。では。」

 

 ......出てった。あいつ救いようがないな。ライミリウム様が情けをかけてやったのに。
 レクリエーション中は皆対等だヨという事は、あいつがこの場で
「自分が間違ってました。ごめんなさい」とか言えば、俺らが
「もう気にしてませんので」とか言えたのに。そうすれば、もう次は無いぞ!で終わったのに。


 「「申し訳御座いませんでした!!!!」」

 友人2人はちゃんと謝罪した。しかもライミリウム様にではなく俺ら、平民に。

 「いえ。お気になさらずに。謝罪を受け入れます。」


 代表してステッド先輩が答える。少しトラブルはあったものの、やっと食事開始だ。



 あのナルシーは中位貴族だったらしく、下手すりゃお家取り潰しになってもおかしくなかったとか。貴族ってそういうもんだからね。
 そこまでにならなかったのは、ひとえにライミリウム様が厳しい処罰を求めなかったから。ただあいつはアカデミーを卒業したら家を勘当されるらしい。

 
 ...これで良かったのかもしれないな。多分だけど、あいつこのまま貴族やってたらもっとデカい問題起こしそうだし。
 心を入れ替えて勉強頑張れば、卒業後もなんとか生きていけるよ。






 「少し騒がしかったけど、食事にしようか。」
 
 「はい。もうお腹すきましたよ。」


 まだレクは終わってないからな。しっかり食って備えよう。
 さっきまで意気消沈してた他のみんなもなんとか持ち直したようだ。先輩たちと和やかに会話しながら箸を進める。あ、この国に箸ねえわ...。
 リアもアイシャ先輩と会話が弾んでいるようだ。女の子同士気が合う様でよかった。



 それにしても。俺は向かいに座るライミリウム様に目を向ける。

 「ん、どうした?」

 「ああ、いえ。大したことではないんです。」


 黄緑色の短い髪に黒い目。鍛えているだろう、逞しくも引き締まった体。まだ12歳だというのにこの風格。

 
 「失礼かもしれませんけど...。」

 「いいよ、言ってみて。」



 「ふと...ライミリウム様って、俺の父に似てるなぁと思いまして。」


 「......!そうか...そっか。嬉しいことを言ってくれるね。」


 ライミリウム様が破顔した。そんなに嬉しかったの...?今日1番の笑顔だけど。教室のアレは別だから。女子2人顔赤らめちゃってるよ。



 しかしこの人、笑顔がファルにそっくりだな。やっぱ兄弟だもんな。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

決して戻らない記憶

菜花
ファンタジー
恋人だった二人が事故によって引き離され、その間に起こった出来事によって片方は愛情が消えうせてしまう。カクヨム様でも公開しています。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

処理中です...