最後の人生、最後の願い

総帥

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第2章 アカデミー1年生

9 食堂にて

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 遂にきたか...こういうの...



 「聞こえなかったのか?平民は耳も悪いらしい。それとも理解する頭が無いか?」



 こいつ同じクラスの奴だな。自己紹介で長々と語ってたナルシスト。さてここで俺たちが取るべき最善の方法は?

 1、謝罪し順番を譲る。
 却下。こいつらにやっちまったら、他の貴族にもしなきゃならない。
 
 2、喧嘩を買う。
 アホか。俺は自分から喧嘩を売ることはしないが売られたら買う主義だ。だが今は駄目だ。

 3、正論で返す。
 微妙。ぜってえ屁理屈こねるに決まってる。


 そう。答えは4だ。


 「何をしている?」


 目には目を、歯には歯を、権力には権力を。
 ライミリウム様に丸投げだ☆


 「貴様がこいつらの監督役か。平民の分際で我々の前に立つなど何を指導している。」



 ...こいつライミリウム様が誰か分かってらっしゃらない?周りの生徒見てみ?やっちまったな...とか聞こえんだけど。オマエのご友人も真っ青よ?

 俺が聞いた話では高位貴族は3家のみ。俺は御三家と密かに呼ぶことにした。御三家を上回るのは王族のみ。ただし現在王族の方は学校に通っていない。今年卒業したらしい。


 で、だ。ライミリウム家はその高位貴族。そしてリノファーク様は嫡男。さらに生徒会長。この場で彼以上の人間はいないだろうなぁ。


 「それがお前の言い分か。学校の施設は全て、高位貴族から平民まで利用に制限は無い。
 生徒間で序列による格差があるのは認めるが、今この場においてはその限りでは無い。」

 「貴様!誰に向かってものを言っている!?名乗れ!家族もろとも処罰を下してやる!」


 「これは失礼した。私はリノファーク・ライミリウム。そちらも名乗ってはどうか?」




 「...............名乗るほどの者ではございません。」


 流石に名前は知ってたか...。平民のチームに居たから勘違いしたんだろうけど、こんなオーラ放ってる平民がいると思うの?
 腐っても貴族なら、せめて高位貴族くらい把握しておけよ。

 「何、遠慮することはない。先程も言ったがこのレクリエーション中は身分は関係ない。」


 「あ、ほんとに結構ですので。先生、僕早退します。では。」

 

 ......出てった。あいつ救いようがないな。ライミリウム様が情けをかけてやったのに。
 レクリエーション中は皆対等だヨという事は、あいつがこの場で
「自分が間違ってました。ごめんなさい」とか言えば、俺らが
「もう気にしてませんので」とか言えたのに。そうすれば、もう次は無いぞ!で終わったのに。


 「「申し訳御座いませんでした!!!!」」

 友人2人はちゃんと謝罪した。しかもライミリウム様にではなく俺ら、平民に。

 「いえ。お気になさらずに。謝罪を受け入れます。」


 代表してステッド先輩が答える。少しトラブルはあったものの、やっと食事開始だ。



 あのナルシーは中位貴族だったらしく、下手すりゃお家取り潰しになってもおかしくなかったとか。貴族ってそういうもんだからね。
 そこまでにならなかったのは、ひとえにライミリウム様が厳しい処罰を求めなかったから。ただあいつはアカデミーを卒業したら家を勘当されるらしい。

 
 ...これで良かったのかもしれないな。多分だけど、あいつこのまま貴族やってたらもっとデカい問題起こしそうだし。
 心を入れ替えて勉強頑張れば、卒業後もなんとか生きていけるよ。






 「少し騒がしかったけど、食事にしようか。」
 
 「はい。もうお腹すきましたよ。」


 まだレクは終わってないからな。しっかり食って備えよう。
 さっきまで意気消沈してた他のみんなもなんとか持ち直したようだ。先輩たちと和やかに会話しながら箸を進める。あ、この国に箸ねえわ...。
 リアもアイシャ先輩と会話が弾んでいるようだ。女の子同士気が合う様でよかった。



 それにしても。俺は向かいに座るライミリウム様に目を向ける。

 「ん、どうした?」

 「ああ、いえ。大したことではないんです。」


 黄緑色の短い髪に黒い目。鍛えているだろう、逞しくも引き締まった体。まだ12歳だというのにこの風格。

 
 「失礼かもしれませんけど...。」

 「いいよ、言ってみて。」



 「ふと...ライミリウム様って、俺の父に似てるなぁと思いまして。」


 「......!そうか...そっか。嬉しいことを言ってくれるね。」


 ライミリウム様が破顔した。そんなに嬉しかったの...?今日1番の笑顔だけど。教室のアレは別だから。女子2人顔赤らめちゃってるよ。



 しかしこの人、笑顔がファルにそっくりだな。やっぱ兄弟だもんな。


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