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「さて。それじゃ俺たちが踏破した順に回ってみようか」
帰宅して10日ぶりの自宅えっちを思う存分堪能し、ちょっと張り切りすぎて湖人族まで含む全員を思い切り失神させるくらい満喫した俺は、次の日早速各地のアウターを回ってみることにした。
マギーが同行できないのは勿論のこと、カレンとティムルも避難場所の建設のために別行動する。シャロもマギーの手伝いがしたいということで残念ながら同行しない。
カレン側にはラトリアが、シャロ側にはエマが付き添うことになり、湖人族はクラーとミレーとドギーの3人を除いて別行動だ。
意外だったのは究明の道標の3人も別行動を希望したことだった。
「多分触心で分かる情報は無いと思うからね。戦えない私は大人しく後方で待つよ」
「今まで大人しくしていなかったキュールにしては珍しい。で、本音は?」
「いや、ダンさんが収集してきた情報を解析する人は必要でしょ。ルーラーズコアなんてものを知って、今更アウターに潜っても仕方ないなぁなんて決して思ってないよ?」
本気なのか冗談なのか分かりにくいことを言いながら研究所に転移していくキュール。
チャールとシーズはスポットに潜って普段通り職業浸透を進めながら、キュールが部屋を散らかさないギリギリの時間を見繕って手伝いをするそうだ。
別行動するメンバーを念入りに注ぎ込んで送り出し、同行するメンバーにも十分に注ぎ込んでから家を出る。
その間にニーナは各地の花のお世話を済ませたようだ。
「今回はリーチェの観光を兼ねてるから、リーチェをエスコートしていこうかな」
「も、もうっ。ダンさんったら強引なんだから……。貴方は気にしないかもしれないけど、私は恥ずかしいんだけど……」
「俺のリーチェはどこに出して恥ずかしくない最高に魅力的な奥さんだよ。恥ずかしがるリーチェも可愛いけどね」
抱き寄せられて恥ずかしそうにもじもじしているリーチェに、ちゅっちゅっと何度もキスの雨をお見舞いする。
勿論リーチェの緊張を解す為にやった行為だけど、恥じらうリーチェが可愛すぎて我慢できなかった。ちゅっちゅっ。
「空いている片側は順番に回していこうか。まずはニーナ、おいでおいでーっ」
「わぁいお呼ばれするのーっ! リーチェもよろしくなのーっ」
「う、う~ん……。恥じらう私の方が間違ってるのかしら……?」
恥じらう姿も可愛いから何も間違ってないよとキスをして、るんるんと抱き着いてきたニーナにもキスをして、まずはスポットの手前に転移する。
すぐに最深部に行ってもいいんだけど、それだとリーチェの観光にならないからな。
ニーナとリーチェを抱き寄せてスポットを見上げる俺と、久しぶりに眺めるスポットを前に感慨に耽るニーナ。
「懐かしいね……。ダンと2人でスポットの前に立った日がなんだかすごく昔に思えるの……」
「あの頃は余裕が無くて毎日がむしゃらだったもんね。リーチェはスポットに入ったことは?」
「ええ。当時分かっていたアウターには全部潜ったことがあるわ。でもあの頃はこんな気持ちでアウターを見られるとは思わなかったわね……」
アウターエフェクトやイントルーダーの出現条件が分かっていなかった当時は、とにかく効率の良い狩場を求めて各アウターを転々として職業浸透を進めたそうだ。
魔物鑑定も人物鑑定も使えなかった当時は、体感で職業浸透を量るしかなかったんだろう。
「既にいくつかのアウターを回った経験があるみたいだけど、当時との違いとかあったら感想が聞きたいな。それじゃ次は最深部に行こうか」
感慨に耽るニーナとリーチェを抱き寄せたまま転移し、サクッと最深部まで転移してしまう。
久々に訪れたスポット最深部には、俺たち以外の生体反応もそれなりに感じられた。
「ほほー。1年前は妾たちが独占していた狩場も、今や随分賑わうようになったのじゃなー」
「残念だけどこれじゃえっちはお預けかな? ダン、我慢できる?」
「本気で心配すんなリュート。でも用事が済んだら1度夢の一夜亭に寄ろうか。この分だと他のアウターにも人が増えてそうだから」
きょろきょろと感心した様子で周囲を見渡しているフラッタと、割と本気の声色で俺を案じるリュートにキスをして、見える範囲に人が居ないことを確認してニーナとリーチェの服の中に手を入れる。
そして指先に感じる2人の乳首に集中することで意識を保ちつつ、慎重にルーラーズコアにアクセスする。
「ムーリ。記録をお願いしていい? 今から言う数字を紙に書いてくれるかな?」
「あははっ。ダンさんの両手は忙しそうですもんねっ。記録するのは勿論構いませんが、いったい何の記録なんですか?」
「ルーラーズコアを使えばアウター最深部に流れ込む魔力の流入量が参照できるみたいなんだ。だから俺がアウターに入るようになった去年の5月から今まで、一か月ごとのデータを引き出そうと思ってね」
ルーラーズコアには5桁の数字でスポット最深部の流入魔力量が記録されているけれど、単位は正直分からない。この数値はこの世界では採用されていない尺度で計測されてるってことなのかもしれない。
最小値は2万弱と言ったところだけれど、俺たちが最深部に到達した11月以降は数値が増え始め、アウターエフェクトを討伐した12月は5万近い数値を叩き出している。
気になる点としては、ノーリッテの操っていたオリジナルイントルーダーを討伐した3月は特に魔力の量が増えていない点だ。
いくら魂を込めたとは言っても、造魔イントルーダーはアウター内の魔力量に影響を及ぼさないようだ。
「どうやら魔物を倒せば倒すほど魔力の流入量は上がるらしいね。魔物って既に流れ込んだ後の魔力が形になってるみたいだけど、アウター内の魔物の総量はある程度決まってるのかもしれない」
「そういう構造的な情報も引き出せないのですか?」
「それがさヴァルゴ。アウターの構成みたいな情報は情報量が多すぎて俺の方が耐えられないっぽいんだよね。恐らくは女神様たちにはあった前提となる知識が不足していて、必要な情報だけを引き出すってのが難しそうなんだ」
アウター内の魔物の総数には上限も下限もあるんじゃないだろうか? 少なくとも俺がこの世界に来てからはアウターから魔物が溢れたことも無いし、ターナ商会が独占しているアウターからも魔物が溢れてきたって報告は無い。
そもそも魔物が溢れる事態が起こるなら、その時点で未発見のアウターなんてあるはずないからな。
聖域の樹海みたいに境界壁が無い場所でもない限り、アウターエフェクトくらいしか外に出てこないのはほぼ確定だろう。
だからこそ余計にアウターエフェクトが脅威とされるってことでもあるけど。
「少なくとも、去年と比べてスポットの魔力流入量は格段に増えてる。でもこれがコラプサーが原因なのか魔物狩りが増えたからなのかは判別がつかないって感じかな。次に行こうか」
ニーナとリーチェのおっぱいから手を放し、お礼のキスを贈ってからスポットを脱出する。
ニーナとフラッタに交代してもらい、次に訪れたのは竜人族の街であるヴァルハールだ。
「妾の故郷にようこそなのじゃっ! ここはスペルド王国建国後に築かれた町じゃからリーチェは初めてじゃろっ」
「ええそうねフラッタ。でも意外とエルフや魔人族も見かけるわ」
「ふははっ! 去年までは他の種族にとっては居心地の悪い街であったがな。今のヴァルハールは他種族と共に強さを求める街なのじゃーっ」
「お、おいあれ……フラッタ様じゃないか?」
「おっと、そろそろ移動しようか」
可愛いフラッタが元気いっぱいに声を張り上げるから、だんだんと注目を集め始めてしまう。美貌だけでも目を引くのに、何せグラン・フラッタ様だからなー。
強さを信奉する竜人族にとって、終の神ガルフェリアを純粋なパワーだけで圧倒したフラッタは冗談抜きで信仰の対象だし、その容姿だけでもアイドル以上の人気だ。
今更俺たちにちょっかいをかけてくる輩が居るとは思わないけど、俺たちが一か所に留まっているだけで他の人には迷惑をかけかねない。
移動中も手を振られたり声をかけられたりするフラッタを、リーチェは感心したように眺めている。
「人気者なのねフラッタは。私も当時は多少持て囃されたものだけど、フラッタはなんというか、遠巻きにされたりはしないんだ?」
「兄上と母上のおかげじゃな。スペルド王国貴族であることよりも竜人族であることを誇りに思い、そして同胞と手を取り肩を並べ、他種族と競い合うのが今のヴァルハールの方針じゃからのー」
「へぇ。竜人族が他種族を競争相手に据えるなんて時代も変わったものね? 当時は同族同士で競い合っていたイメージしかないわ」
「組織レガリアとの騒動で、竜人族は他種族に思い切りしてやられたからのぉ……。少なくともあと数年は他種族を侮るような愚か者は出てこぬじゃろうよ」
組織レガリアとの騒動で、竜人族は長年に渡って人間族に飼育されていたり、王国最強と謳われていた竜爵家夫妻が敗北したり、同時多発テロに利用されたりと散々だったもんね。
その前に俺にケンカを売って返り討ちにあった6人なんて、なんとか命を取り留めた後にいつの間にかヴァルハールを去ったらしいし。
「今の王国にはダンが居るからのー。種族による身体能力さなんて何の意味も無いとようやく気付いたのじゃろうよ」
「いや、ダンさんを基準に考えるのも危険な気がするけど……」
「言いたいことがあるならはっきり言っていいんだよリーチェ?」
耳元で甘く囁いてやると、赤くなりながら青褪めるという器用な表情を浮かべるリーチェ。
だけどせっかくリーチェが言葉を選んだのに、ダンは基準ではなくて脅威なのじゃーっ、などと元気にのたまうフラッタのせいで台無しになってしまったな。
よし、連帯責任としてあとで2人ともお仕置きししてあげようっ。
「ああ、竜王のカタコンベの周りに都市を築いたのね」
どうやらリーチェは竜王のカタコンベも探索経験があるらしい。けれど当時はこんなに立派な都市など無くて、アウターに到着するまで分からなかったようだ。
「うわ……。竜王を倒した月だけ100倍以上の魔力が流入してるね……。あ。でもあの時はアウターエフェクトも乱獲したんだっけ」
「そうそう! 私のダガーもヴァルゴの槍も、みーんなここで拾ったのーっ」
「勿論妾のドラゴンイーターもなのじゃっ! ティムルが神鉄を扱えるようになったのもここじゃし、妾たちの実力が飛躍的に伸びた場所なのじゃーっ」
「ふふ。この槍は私と出会う前から旦那様を守ってくれていたんですよね。そう思うとなんだか不思議な縁を感じますよ」
ムーリに記録を取ってもらっていると、ニーナとフラッタが楽しげに当時のことをリーチェに報告し、その後ろでヴァルゴが災厄のデーモンスピアを愛おしそうに抱き締めていた。
竜王と遭遇したことでイントルーダーという存在を知り、乗り越えたことでターニアとヴァルゴに出会えたんだよなぁ。
今のメインウェポンの多くはここで手に入れたものだし、何より浄化魔法でニーナの解呪に成功したのもここだ。本当に印象深い場所だよ。
ちなみにここの最深部はスポット以上に賑わっていて、やっぱりみんなとえっちなことをすることは出来なかった。
ルーラーズコアとのアクセス時にフラッタとリーチェのおっぱいを楽しむことすら諦めなければならなかったほどだ。
トラップが設置されている屋内型のアウターは人気が無いかなと思っていたんだけど、今では探索魔法士も増えてきていてあまり問題が無くなったようだ。
トラップの危険性さえクリアできれば、屋外型のアウターと比べて魔物の密度が高く、効率的に職業浸透が進められるとむしろ人気らしい。
魔玉の代わりに硬貨がドロップするのも人気の1つかもしれないけど。
「ようこそダンさん。お帰りフラッタ。お時間があれば昼食を一緒にいかがですか?」
竜爵家邸に顔を出すとちょうどお昼の時間だったので、シルヴァの言葉に甘えてご馳走になることにした。
シルヴァもラトリアやマギーからコラプサーについては聞き及んでいたようで、竜王のカタコンベに異変があれば迷わず報告すると約束してくれた。
「終の神も、変世の女神や祝福の神さえも凌駕する存在。本来ならば怯えなくてはいけないところだと思うんですけど、既に僕たちはダンさんを目にしているので今更って感じです」
「へ~、シルヴァも言うようになったじゃん? いくらお義兄さんとは言えさぁ」
「いやいや、妹と一緒に母上まで娶ってる人に義兄と呼ばれたくないですから。実力的にも貴方の背中を追いかける立場ですしね」
俺に対して遠慮の無くなったシルヴァは、柔らかく笑いながらも挑戦的な眼差しで俺を見てくる。
フラッタを竜人族の象徴として祭り上げたのに、自分が目標にしてるのが俺っておかしくない?
……シルヴァにとってフラッタは、どこまで強くなっても可愛い妹なのかもしれないな。
「あ、ダンさん。使用人のみんなにあまり迷惑をかけないでくださいね? 出来ればご自身で後始末までしていってくだされば助かります」
食事の終わり際、何のこととは言わずに釘を刺してくるシルヴァ。まったく、本当に遠慮が無くなったもんだ。
……言っていることは正論すぎるので、フラッタの部屋に籠る前に替えの寝具を用意していただきましたけど?
帰宅して10日ぶりの自宅えっちを思う存分堪能し、ちょっと張り切りすぎて湖人族まで含む全員を思い切り失神させるくらい満喫した俺は、次の日早速各地のアウターを回ってみることにした。
マギーが同行できないのは勿論のこと、カレンとティムルも避難場所の建設のために別行動する。シャロもマギーの手伝いがしたいということで残念ながら同行しない。
カレン側にはラトリアが、シャロ側にはエマが付き添うことになり、湖人族はクラーとミレーとドギーの3人を除いて別行動だ。
意外だったのは究明の道標の3人も別行動を希望したことだった。
「多分触心で分かる情報は無いと思うからね。戦えない私は大人しく後方で待つよ」
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「いや、ダンさんが収集してきた情報を解析する人は必要でしょ。ルーラーズコアなんてものを知って、今更アウターに潜っても仕方ないなぁなんて決して思ってないよ?」
本気なのか冗談なのか分かりにくいことを言いながら研究所に転移していくキュール。
チャールとシーズはスポットに潜って普段通り職業浸透を進めながら、キュールが部屋を散らかさないギリギリの時間を見繕って手伝いをするそうだ。
別行動するメンバーを念入りに注ぎ込んで送り出し、同行するメンバーにも十分に注ぎ込んでから家を出る。
その間にニーナは各地の花のお世話を済ませたようだ。
「今回はリーチェの観光を兼ねてるから、リーチェをエスコートしていこうかな」
「も、もうっ。ダンさんったら強引なんだから……。貴方は気にしないかもしれないけど、私は恥ずかしいんだけど……」
「俺のリーチェはどこに出して恥ずかしくない最高に魅力的な奥さんだよ。恥ずかしがるリーチェも可愛いけどね」
抱き寄せられて恥ずかしそうにもじもじしているリーチェに、ちゅっちゅっと何度もキスの雨をお見舞いする。
勿論リーチェの緊張を解す為にやった行為だけど、恥じらうリーチェが可愛すぎて我慢できなかった。ちゅっちゅっ。
「空いている片側は順番に回していこうか。まずはニーナ、おいでおいでーっ」
「わぁいお呼ばれするのーっ! リーチェもよろしくなのーっ」
「う、う~ん……。恥じらう私の方が間違ってるのかしら……?」
恥じらう姿も可愛いから何も間違ってないよとキスをして、るんるんと抱き着いてきたニーナにもキスをして、まずはスポットの手前に転移する。
すぐに最深部に行ってもいいんだけど、それだとリーチェの観光にならないからな。
ニーナとリーチェを抱き寄せてスポットを見上げる俺と、久しぶりに眺めるスポットを前に感慨に耽るニーナ。
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「あの頃は余裕が無くて毎日がむしゃらだったもんね。リーチェはスポットに入ったことは?」
「ええ。当時分かっていたアウターには全部潜ったことがあるわ。でもあの頃はこんな気持ちでアウターを見られるとは思わなかったわね……」
アウターエフェクトやイントルーダーの出現条件が分かっていなかった当時は、とにかく効率の良い狩場を求めて各アウターを転々として職業浸透を進めたそうだ。
魔物鑑定も人物鑑定も使えなかった当時は、体感で職業浸透を量るしかなかったんだろう。
「既にいくつかのアウターを回った経験があるみたいだけど、当時との違いとかあったら感想が聞きたいな。それじゃ次は最深部に行こうか」
感慨に耽るニーナとリーチェを抱き寄せたまま転移し、サクッと最深部まで転移してしまう。
久々に訪れたスポット最深部には、俺たち以外の生体反応もそれなりに感じられた。
「ほほー。1年前は妾たちが独占していた狩場も、今や随分賑わうようになったのじゃなー」
「残念だけどこれじゃえっちはお預けかな? ダン、我慢できる?」
「本気で心配すんなリュート。でも用事が済んだら1度夢の一夜亭に寄ろうか。この分だと他のアウターにも人が増えてそうだから」
きょろきょろと感心した様子で周囲を見渡しているフラッタと、割と本気の声色で俺を案じるリュートにキスをして、見える範囲に人が居ないことを確認してニーナとリーチェの服の中に手を入れる。
そして指先に感じる2人の乳首に集中することで意識を保ちつつ、慎重にルーラーズコアにアクセスする。
「ムーリ。記録をお願いしていい? 今から言う数字を紙に書いてくれるかな?」
「あははっ。ダンさんの両手は忙しそうですもんねっ。記録するのは勿論構いませんが、いったい何の記録なんですか?」
「ルーラーズコアを使えばアウター最深部に流れ込む魔力の流入量が参照できるみたいなんだ。だから俺がアウターに入るようになった去年の5月から今まで、一か月ごとのデータを引き出そうと思ってね」
ルーラーズコアには5桁の数字でスポット最深部の流入魔力量が記録されているけれど、単位は正直分からない。この数値はこの世界では採用されていない尺度で計測されてるってことなのかもしれない。
最小値は2万弱と言ったところだけれど、俺たちが最深部に到達した11月以降は数値が増え始め、アウターエフェクトを討伐した12月は5万近い数値を叩き出している。
気になる点としては、ノーリッテの操っていたオリジナルイントルーダーを討伐した3月は特に魔力の量が増えていない点だ。
いくら魂を込めたとは言っても、造魔イントルーダーはアウター内の魔力量に影響を及ぼさないようだ。
「どうやら魔物を倒せば倒すほど魔力の流入量は上がるらしいね。魔物って既に流れ込んだ後の魔力が形になってるみたいだけど、アウター内の魔物の総量はある程度決まってるのかもしれない」
「そういう構造的な情報も引き出せないのですか?」
「それがさヴァルゴ。アウターの構成みたいな情報は情報量が多すぎて俺の方が耐えられないっぽいんだよね。恐らくは女神様たちにはあった前提となる知識が不足していて、必要な情報だけを引き出すってのが難しそうなんだ」
アウター内の魔物の総数には上限も下限もあるんじゃないだろうか? 少なくとも俺がこの世界に来てからはアウターから魔物が溢れたことも無いし、ターナ商会が独占しているアウターからも魔物が溢れてきたって報告は無い。
そもそも魔物が溢れる事態が起こるなら、その時点で未発見のアウターなんてあるはずないからな。
聖域の樹海みたいに境界壁が無い場所でもない限り、アウターエフェクトくらいしか外に出てこないのはほぼ確定だろう。
だからこそ余計にアウターエフェクトが脅威とされるってことでもあるけど。
「少なくとも、去年と比べてスポットの魔力流入量は格段に増えてる。でもこれがコラプサーが原因なのか魔物狩りが増えたからなのかは判別がつかないって感じかな。次に行こうか」
ニーナとリーチェのおっぱいから手を放し、お礼のキスを贈ってからスポットを脱出する。
ニーナとフラッタに交代してもらい、次に訪れたのは竜人族の街であるヴァルハールだ。
「妾の故郷にようこそなのじゃっ! ここはスペルド王国建国後に築かれた町じゃからリーチェは初めてじゃろっ」
「ええそうねフラッタ。でも意外とエルフや魔人族も見かけるわ」
「ふははっ! 去年までは他の種族にとっては居心地の悪い街であったがな。今のヴァルハールは他種族と共に強さを求める街なのじゃーっ」
「お、おいあれ……フラッタ様じゃないか?」
「おっと、そろそろ移動しようか」
可愛いフラッタが元気いっぱいに声を張り上げるから、だんだんと注目を集め始めてしまう。美貌だけでも目を引くのに、何せグラン・フラッタ様だからなー。
強さを信奉する竜人族にとって、終の神ガルフェリアを純粋なパワーだけで圧倒したフラッタは冗談抜きで信仰の対象だし、その容姿だけでもアイドル以上の人気だ。
今更俺たちにちょっかいをかけてくる輩が居るとは思わないけど、俺たちが一か所に留まっているだけで他の人には迷惑をかけかねない。
移動中も手を振られたり声をかけられたりするフラッタを、リーチェは感心したように眺めている。
「人気者なのねフラッタは。私も当時は多少持て囃されたものだけど、フラッタはなんというか、遠巻きにされたりはしないんだ?」
「兄上と母上のおかげじゃな。スペルド王国貴族であることよりも竜人族であることを誇りに思い、そして同胞と手を取り肩を並べ、他種族と競い合うのが今のヴァルハールの方針じゃからのー」
「へぇ。竜人族が他種族を競争相手に据えるなんて時代も変わったものね? 当時は同族同士で競い合っていたイメージしかないわ」
「組織レガリアとの騒動で、竜人族は他種族に思い切りしてやられたからのぉ……。少なくともあと数年は他種族を侮るような愚か者は出てこぬじゃろうよ」
組織レガリアとの騒動で、竜人族は長年に渡って人間族に飼育されていたり、王国最強と謳われていた竜爵家夫妻が敗北したり、同時多発テロに利用されたりと散々だったもんね。
その前に俺にケンカを売って返り討ちにあった6人なんて、なんとか命を取り留めた後にいつの間にかヴァルハールを去ったらしいし。
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「言いたいことがあるならはっきり言っていいんだよリーチェ?」
耳元で甘く囁いてやると、赤くなりながら青褪めるという器用な表情を浮かべるリーチェ。
だけどせっかくリーチェが言葉を選んだのに、ダンは基準ではなくて脅威なのじゃーっ、などと元気にのたまうフラッタのせいで台無しになってしまったな。
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どうやらリーチェは竜王のカタコンベも探索経験があるらしい。けれど当時はこんなに立派な都市など無くて、アウターに到着するまで分からなかったようだ。
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「ふふ。この槍は私と出会う前から旦那様を守ってくれていたんですよね。そう思うとなんだか不思議な縁を感じますよ」
ムーリに記録を取ってもらっていると、ニーナとフラッタが楽しげに当時のことをリーチェに報告し、その後ろでヴァルゴが災厄のデーモンスピアを愛おしそうに抱き締めていた。
竜王と遭遇したことでイントルーダーという存在を知り、乗り越えたことでターニアとヴァルゴに出会えたんだよなぁ。
今のメインウェポンの多くはここで手に入れたものだし、何より浄化魔法でニーナの解呪に成功したのもここだ。本当に印象深い場所だよ。
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トラップの危険性さえクリアできれば、屋外型のアウターと比べて魔物の密度が高く、効率的に職業浸透が進められるとむしろ人気らしい。
魔玉の代わりに硬貨がドロップするのも人気の1つかもしれないけど。
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シルヴァもラトリアやマギーからコラプサーについては聞き及んでいたようで、竜王のカタコンベに異変があれば迷わず報告すると約束してくれた。
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「へ~、シルヴァも言うようになったじゃん? いくらお義兄さんとは言えさぁ」
「いやいや、妹と一緒に母上まで娶ってる人に義兄と呼ばれたくないですから。実力的にも貴方の背中を追いかける立場ですしね」
俺に対して遠慮の無くなったシルヴァは、柔らかく笑いながらも挑戦的な眼差しで俺を見てくる。
フラッタを竜人族の象徴として祭り上げたのに、自分が目標にしてるのが俺っておかしくない?
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「あ、ダンさん。使用人のみんなにあまり迷惑をかけないでくださいね? 出来ればご自身で後始末までしていってくだされば助かります」
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