異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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「すっご~いっ! なんだマドゥは全部分かっちゃうのーっ!?」 

「なんでって言われても……。なんとなく、かな」


 お気に入りのお人形を失くしてしまったと泣き付いてきたエルラが、そのお人形を抱きしめながら問いかけてくる。


 でも、なんでなんて聞かれたって私自身も分からないよ?

 私にとっては生まれつきのことなんだから。


 私は小さい頃からとても勘が鋭くて、探し物や悩み事の解決が得意だった。

 まるで魔法のようだとよく持て囃されちゃったけど、何かの能力を行使しているわけじゃなくて、なんとなく分かるとしか言い様が無いの。


 ……けど、もしも私に変な力があるとしたら、その原因だけは分かってる。

 私は現役の器巫女が、識の水晶を抱きながら宿した命だったから。



 私の母は器巫女で、父はその護衛を任された兵士さんだった。

 それまで面識の無かった2人は、母さんが器巫女として城で隠れ住む事になって、そこで初めて出会ったみたい。


 でも、こんなに厳しい監視生活の中で、2人ともよくそんな気になったよね?


「んふふー。まだお子様のマドゥには分からないかもしれないわねーっ。恋心っていうのは障害が多ければ多いほど激しく燃え上がるものなのよっ」


 母さんのノロケ話には興味ないけど、障害が多ければ多いほど恋心が燃え上がるという話だけは少し共感できた。

 誰にも相談出来ない私の心は、押さえつければ押さえつけるほどその強さを増していくから。


「己の身1つで帝国最強に上り詰めたカルナス様みたいに、私も強い剣士になりたいんだっ」


 親戚のルチネが突然剣を習い始めたと思ったら、どうやら憧れの男の人が剣士みたい。

 カルナスって人が如何に魅力的かを熱弁するルチネの姿はキラキラしていて、思わず手を伸ばしそうになってしまう。


「ルチネに付き合って始めただけの剣だったけどさっ! 意外と性に合ってたみたいっ。少しずつ剣の振り方が分かってきて楽しいんだよっ?」


 不純な動機で剣を習い始めたルチネと違って、純粋に剣の扱いの上達を喜ぶエルラ。

 自分の興奮を必死に私に伝えようとしてくれる彼女が愛おしくて、ついつい抱き締めたくなってしまう。


 でもダメだよマドゥ。女の子が女の子を好きだなんて言ったって、受け入れてもらえるわけは無いんだから。

 カレン様に憧れているエルラだけど、私がエルラやルチネに向ける視線と違って、カレン様を見るエルラの瞳には憧れと情熱しか感じられないもの。


 自分の気持ちに蓋をして、漏れ出ないように必死に押さえつけて過ごしていたら、いつの間にか私は何事にも冷めたつまらない女だって思われるようになっちゃった。




「ははっ。ならマドゥも器巫女になったらどうだ? 元から冷めたお前なら、識の水晶に翻弄されることも無いだろう?」


 カレン様のそのひと言で、私は器巫女に推薦された。

 自分は16歳で皇帝の座に上り詰めたほどの野心家の癖に、冷めた私が器巫女に向いているなんてよく言うよ。


 でもカレン様の言葉には、有無を言わせないほどの魅力があるんだよなぁ。


 正直エルラが憧れるのも無理ないよ。

 というか私が男の人に興味が持てなかった原因の1つは、カレン様が男の人よりよっぽどかっこいいせいもあると思うんだ。


 正直言って、私は器巫女には何の興味も持てなかった。

 けれど器巫女という特殊な環境で結ばれた父さんと母さんはカレン様の推薦に大喜びで、もう話は決まったとばかりにどんどん準備を進めちゃった。


 まぁ……ルチネとエルラが一緒なら悪くないかもしれないな。

 そんな気持ちも手伝って、結局私は器巫女を任される事になったのだった。





「あははっ。マドゥったら勘はいいのに、なんで運動だけはからっきしなんだろうねーっ?」


 私をその背に庇うルチネが、屈託のない笑顔を向けてくれる。


 器巫女はその役割の為に、最低限旅人の浸透を進めなくてはいけない。

 神器を守るという役割もあって、器巫女たちは自らの足でアウターに赴き、職業の浸透を進めなきゃいけないんだけど……。


 残念ながら私に運動神経なんて無かったみたいで、いつもルチネとエルラに頼るしかなかった。


「マドゥって視野も広いし大局を見る目は凄いんだけど、肝心の運動神経が壊滅的なせいで、自分自身の動きにはその能力を活かしきれないのよねー」

「まぁまぁいいじゃないルチネ。いつもマドゥには助けてもらってきたんだから、このくらいはさっ」

「分かってるってば。後ろでマドゥが見てくれてるだけで安心感が違うもの。エルラもほんと頼りになるしっ」


 足を引っ張る私に文句の1つもぶつけることなく、むしろ可愛い可愛いと撫でたり抱き付いてくれる2人。

 そんな2人の反応が嬉しいと同時に、決して友人以上の関係を望むことは出来ないのだと思い知らされてしまう。


 そんな私の耳に届いたのは、神と嘯く悪魔の囁き。


『汝の悩みに解を示そう。剣士の手を取り、共に帝国を離れるがいい』

「……今の、は。まさか神託?」


 ある日、私が器番だった日のこと、夢か現実かも分からないまどろみの中で示された1つの道。

 神器を持って帝国を去り、これまで描いていたのとは全くの別の人生を歩む道……。


 一見魅力的に聞こえる話に、何故か私は瞬時に気付いてしまう。

 これは神託なんかじゃなくて、誰かが悪意を持って私たちを利用としている、何の保証もない甘言に過ぎないのだと。


 神託の裏に込められた悪意の強さに、心の中がしんと冷えこむような錯覚さえも覚えた。


「マドゥも聞いたんだ!? ならやっぱりあれは神託だったのね!?」

「ん~……! ルチネだけなら馬鹿馬鹿しいって笑い飛ばすことも出来たんだけど……。マドゥも同じ言葉を聞いたなら、やっぱりあれは神託だったのかなぁ……」

「ちょっとぉっ! それどういう意味よエルラーーっ!」


 けれど、ルチネとエルラもまた別々の理由で同じ言葉を囁かれていた。


 ルチネは憧れの男性との距離を縮める為に。

 エルラは憧れの女性の背中に追いつき、追い越すために。

 そして私はそんな2人と一緒にいる為に、私たちは悪意の囁きを受け入れて帝国を後にしたのだった。


 
 エルドバスタムに潜伏していた数日間は、正直言って楽しくて仕方が無かった。

 2人は外に出れなくって不満げだったけれど、2人とずっと同じ部屋で過ごしていられるなんて最高の時間だったんだ。


 ルチネもエルラも大好き。

 でも大好きだからこそ、彼女たちと友人以上の関係を求めてはいけない。


 それは分かっているけれど、分かっているからこそ少しでも長く一緒にいたい。


 ルチネもエルラもいつかは誰かと結ばれて、家庭を持って子供を育てていくだろう。

 そうしていつの日か、仲が良かった親戚の女のことなんて記憶から薄れていってしまうのだ。


 嫌だ嫌だ、絶対嫌だ。

 彼女たちの1番に選ばれないのは仕方無いにしても、彼女たちの記憶から私が消えて行くのだけは絶対に嫌だ。


 2人の人生に関わろうなんて思わない。

 2人の恋路を応援し、恋の成就をサポートしてあげるのだって厭わない。


 だからせめて、もう少しだけ2人と一緒に過ごさせてほしかった。


 けれどそんな私の我が侭で、結局2人の人生を台無しにしてしまったんだ……。





「終の神ガルフェリア……。でもあの声って、識の水晶から聞こえてきた声、だよね……」

「仕合わせの暴君って!? 王国では評判の悪い最低のパーティが、なんで王様と一緒にあんな化け物と戦ってるのっ……!?」


 突然私達の目と耳に届けられた、人類の存亡を賭けた死闘の光景。

 2人から不安や緊張、恐怖や困惑が伝わってくる。


 識の水晶に従って、神の言葉に従って行動したはずなのに、こんなことになるなんて聞いてない……!

 そんな負の感情が波のように押し寄せてくる。


 怯える2人と抱き合いながら、私の身体は恐怖じゃなくて、怒りを覚えて震え出す。


 2人ともう少し一緒にいたい。

 そんなささやかな我が侭ですら私には許されないの!?


 ルチネの1番になることも、エルラの1番になることも諦めて、彼女たちが意中の相手に選ばれるように力の限り協力してきたのに、その結果がこんな結末だなんて絶対に納得がいかないっ!


 だけど無力な私には、震える2人に根拠もない言葉をかけて慰めてあげることしか出来ないんだ……。

 
 私たち3人は寄り添い、自分たちが軽はずみな気持ちで引き起こしてしまった大罪に怯えながら、死闘の行く末を見守ることしか出来なかった。

 なんとか終の神が滅ぼされてほっとしたのも束の間、私たちが選んだ道の先にいたのは、どこまでもえっちなご主人様だった。


「なるべく悪いようにはしないから、短絡的な行動には走らないでね?」


 カレンお姉様の夫を名乗ったダン様は、私たち3人を強制的に隷属させながらも、触れることもなく保護してくれた。

 連れて行かれた先にはカレンお姉様と仲の良かったキュールさんがいてくれたおかげで、ルチネとエルラはようやく肩の力を抜くとこが出来たみたい。


「ダンさんが陛下の夫だって話は本当だよ。ま、私の夫でもあるんだけどさ」

「え、えぇ……? さっきの方、カレンお姉様とキュールさんを一緒に娶られたんですか……?」

「性奴隷に落とされた君達にこんなことを言っても信じられないとは思うけど、夫に引き取られたのは幸運だったと思うよ?」


 性奴隷に幸運も何もないでしょうと食って掛かるエルラに、そりゃそうだよねぇと笑いを返すキュールさん。

 でも、なんとなく私はキュールさんの言っている通りなんだろうなぁと理解できた。


「と言うか、夫は君達の受け入れを渋ってたんだよ? それを陛下が無理を言って認めさせたんだ。つまり陛下も、君達は夫に引き取られるのが最も救いのある道なのだと信じているのさ」

「ん、ん~……。カレンお姉様のご主人なら信用してもいいのかもしれないけどぉ……。マドゥも信用してるみたいだし……。う~ん……」


 腕を組んでう~んう~んと悩むルチネ。

 そんな風に悩む余裕があることこそがキュールさんの言っている事の証明になっていることに、ルチネは全然気付いていないみたい。


 流石に2人の人生を台無しにしてしまった私が、2人と一緒にいる事を素直に喜ぶことは出来なかったけれど。





「ごめんねダン様。私……。私が好きなのは女の子、なんだ……」


 どうしてこんなことを言ってしまったのか。

 ダン様にも聞かれたけれど、自分でも上手く説明できなかった。


 ルチネとエルラに申し訳が無かったから?

 ダン様の性欲に上手く応えられるか不安だったから?


 ……ううん。そうじゃない。

 きっと私はダン様に嫉妬したんだ。


 カレンお姉様もルチネもエルラも、私には1度も見せたことのない女の顔でダン様を見ていた。

 何年も一緒に過ごした私の知らない顔で、出会ったばかりのダン様に愛される事を受け入れた2人の姿に、私は貴方に身体を許しても、決して心は許さないと意地を張ってしまったんだ。


 だけど意地を張る私に、ダン様はどこまでも優しかった。


「こんな小娘の言うことなんか無視して、無理矢理弄んでもいいんじゃないの? 私、ダン様の性奴隷なんだよ?」

「俺は欲張りだからね。性奴隷の身体も心も俺のモノにしたいんだよ」


 力ずくで押し倒してしまえばいいのに、1つ1つ反応を確かめながら私の身体を弄るダン様。

 その手付きは優しさに溢れていて、ルチネとエルラが虜になってしまうのも理解できた。


 いつかは男性に身体を許さなければならないとは思っていた。

 けれどこんなに優しく愛してもらえるなんて思ったこともなかった。


 私を愛してくれる相手がダン様で良かった。

 そんな風に思い始めた私に、ダン様は事も無げに提案してくる。


「ちゃんと所有者を受け入れたマドゥにはご褒美をあげようかな」


 そう言って私の舌を吸い始めたダン様は、私の舌を吸ったままでルチネと唇を重ねてしまったの。

 目の前でビックリした表情を浮かべているルチネの口と、私の口が繋がって……!


 決してダン様抜きでキスをすることは許されなかったけれど、ルチネとキスをしたまま子種を注ぎ込まれるのは、まるでルチネに孕まされているように思えてものすごく興奮しちゃったぁ……!


「ねぇマドゥ。興味があるならルチネのおっぱい吸ってみる?」


 だけどキスだけに留まらず、ルチネのおっぱいを一緒に吸おうと誘ってくださるダン様。

 ダン様とキスし続けることを条件に、引っ込み思案なルチネの乳首をゆっくりと舐め上げながらどうぞとばかりに見せ付けてくる。


 こここここんなのっ、我慢できる訳ないよーーーっ!


 ルチネのお腹が膨れるまで、私と一緒にルチネのおっぱいをしゃぶるダン様。

 ダン様ったらわざと私の舌を妨害して、私にダン様の舌をいっぱい舐めさせるんだからっ。いじわるぅ~っ!


 ルチネの乳首にたっぷり塗りつけた私の唾液を、私に見せつけながら丹念に舐め取るダン様。

 その様子にまた嫉妬しそうになる私に、ダン様はにやりと笑ってまた提案してくれる。


「マドゥ。吸うのはルチネのおっぱいだけでいいのかなー?」


 この瞬間、私はこの人に自分の生涯を全て捧げようと心に決めた。

 女の子が好きだと言った私をあっさりと受け入れて、夢にまで見たエルラの巨乳を吸わせてくれるなんて、ダン様ったら神様みたいっ!


 え、代わりに私の身体を楽しませてもらうって!?

 そんなの全然オッケーだよダン様! 何人だって孕ませてっ!


 ごめんねルチネ。エルラ。

 2人の事は大切な親友だと思ってるけれど……。


 それ以上に性的な意味で魅力的だと思ってたから、いいと言われたらもう我慢できないよーっ!
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