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811 慟哭の最終決戦④ 奇策
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「それじゃ俺は、今までいったい何の為にこんなことを……」
力無く崩れ落ちるカルナスを無視して、キスをしながらカレンの身体を弄ぶ俺。
NTRなんて興味は無いはずなんだけど、敵対者に対する報復込みでならひたすら優越感に浸れて素晴らしいなっ!
大量に消費してしまった水分を口移しで楽しく補給させたあと、それでも万歳の姿勢で俺に身を委ね続けるカレンが、少しだけ表情を引き締めて確認してくる。
「このあとどうする? カルナスをここに置いてさっさとバルバロイを追うべきか、カルナスから情報を引き出すべきか難しい局面だが」
「そう、だね……。いや、ここはカルナスに洗いざらい喋ってもらおっか。バルバロイに時間を与えたくはないけど、どうせ早く追いついても人質をチラつかされるだけでしょ」
「心得た。ではカルナスよ。バルバロイについて知っている事を全部話せ。余計な事を喋るな。黙秘も虚偽も許さん。こちらの質問には簡潔かつ正確に答えよ」
「ぐぅ……分か、りまし……たぁ……!」
なんだかロボットダンスのようにギクシャクとした動きで立ち上がるカルナス。
これはカレンの命令によって自分の意思とは無関係に立たされた故の動きなのかな?
そう言えばこの世界、歌い手や踊り子みたいな人とも会ったことがないな?
娯楽の一環として、芸能関係の普及も広めていくべきかー?
そんなどうでもいいことを考えている俺の前で、お漏らしカレンを苦悶の表情で見ているカルナスが苦々しく口を開く。
「……私がバルバロイに出会ったのは、己の未熟さを悔いてここ狂乱の渓谷に篭もっていた時でした……」
「貴様とバルバロイの馴れ初めなどどうでもいい。何故貴様はバルバロイに与した?」
「ぐぎ、ぐぅ……! それは勿論カレン様を手に入れるためです……!」
「それも分かり切っているわ馬鹿者が。どんな文言で誘われたのかと聞いているのだ」
何とか口を閉じようとするカルナスを、何処までも冷ややかに見詰めるカレン。
問いかけを終える度にストレスを発散するように激しく舌を吸ってくれるので、段々バルバロイの事なんかどーでも良くなってきちゃうよぉ。
「くっ……! や、奴は帝国にもその名を轟かせるほどの女誑しです……! そんな男がカレンの思っている事は分かっていると言い、事実貴女はそのように動いていました……! だから私は貴女を手に入れる為にぃ……! ぎ、ぎぎぃ……!」
「私が奴の言う通りに行動したとはなんだ? 具体的にいくつか例を挙げてみよ」
「じ、神器を求めながらも実力で及ばない貴女は、女の色香を使ってその男に接近し始めるはずだと……! そしてその男本人よりも、まずは周囲の人間の信頼を得ようとすることなど……! 始まりの黒で貴女はまさにそのように振舞って……!」
ああ、始まりの黒で会った時って、カルナス的にはまだお試し期間のつもりだったのね?
スペルド王国の王族にしか開放されていない始まりの黒への招待は、魔物狩りも行なうカルナスにとっては魅力的な話だったんだろう。
だけど皇帝に言い渡された謹慎期間中に隣国の王子と行動を共にするなんて、仮に叛意が無くても極刑に値する行為だと思うんだけどな?
この暴走ポジティブシンキング野郎は、最終的にカレンの下に戻れば万事オッケー! って思ってたっぽいね。
「始まりの黒で接していた時はまだ友人のつもりだったがな……。まぁ実際に妻となってしまった今となってはどうでもいい話だ」
同意を求めるように、背後の俺の顔を抱き寄せて唇を重ねて来るカレン。
確かにあの時のカレンはまだ仲の良い友人でしかなかったよね。
あの時のカレンの中では、俺とキュールと同列くらいの認識だったんじゃないかな?
「それで? バルバロイはここで何をしようとしているんだ? どうせ全容は告げられていないだろうが、知ってる事を洗いざらい話せ」
「や、奴は神器を使ってぇ……! 各種族の代表たちの更に上に君臨する、絶対存在を呼び戻すと言っていましたが……それ以上は知りません……!」
「呼び戻す、か……。想定通りの最悪の展開だな。器巫女の3人はどうしている?」
「エ、エルドパスタムの宿にて休ませています……! 3人の安全と貞操はバルバロイに約束させたので無事なはずで……」
「貴様との約束などをあの男が守るとは思わんが、生きているなら充分だ」
エルドパスタムに匿っていたのか。単純に帝国から最も遠い場所を選んだのかな?
それに加えてエルドパスタムは王都並みに賑っている場所だし、スペルディア家や俺達との関わりも薄い街だからな。
俺達と、その知り合いから身を隠すなら最適の場所だったか?
「ダンよ。今回の報酬代わりに3人をしっかり隷属させて欲しい。それが彼女たちが命を繋ぐ唯一の方法だからな」
「なっ!? なんでその男にあの3人を差し出すような真似を……!?」
「国家叛逆罪を犯した貴様と同行し、共に神器を奪い去ったのだから極刑に決まっているだろう? それを夫が望んだ為に性奴隷とすることで、なんとか3人の命を奪わずに丸く収めようというのだ。元凶の貴様が口を挟むところでは無い」
従姉妹や姪に当たるらしい器巫女の3人を奴隷に落とすのは、流石のカレンもかなり心苦しく思っているようだ。
しかし極刑にされたり、俺以外の男に生涯弄ばれるよりは、自分の目の届くところで俺に楽しく玩具にされる方が数億倍マシだと言っていた。
奴隷にされた女の末路はティムルが身を持って証明してくれているからね。
コットンだって命を危ぶまれていたのだから、この世界の女奴隷には人権も未来も存在しないらしい。
「バルバロイが人質に取っているという人々は誰だ? 無差別に殺戮を行なう命を受けている者の所在は?」
「ど、どちらも分かりかねます……。俺はただ、来る日に備えて職業浸透を進めていろとしか……」
「……質疑応答の時間が無駄に思えてきたな。そうだ、最後に1つ聞いておこう」
時間を無駄にして申し訳ないと、カレンが躊躇いがちに唇を重ねてくる。
彼女の舌と乳首と中をよしよしなでなでしてあげて、カレンは何にも悪くないんだよと伝えてから彼女の口を解放する。
「バルバロイはこれから起こる事が夫のせいだと言っていたらしいな? これについては何か聞いていないか?」
「……私には良く分からなかったのですが、なんでもこれから行なわれる神降ろしの最後のひと押しはその男自身の手で行われると、バルバロイはそう言っておりました……」
「はっ! 人々の上に立つ絶対存在を招くなどと嘯きながら、結局はそれが未曾有の危機に繋がる事を認識しているんじゃないか。馬鹿馬鹿しい……」
「いえ、神降ろしはこの男がこのあとにやらかす何かから人々を導く為に行なわれるらしいです。具体的には何のことか分かりませんが……」
ふぅむ? まるでナゾナゾだな。
これから俺に何かをさせる気なのは間違いないようだけど、俺が人類に敵対するような行為をするかな?
例えばここに居る家族のみんなが危険に晒されれば、俺は世界だろうが神様だろうが滅ぼしてやろうとは思っているけれど、こうして手と目の届く範囲にみんながいてくれている以上は不覚を取るつもりは無いんだけどなぁ。
……まぁいいや。どうせ俺が何かしなきゃいけないのは変わらないんだから。
「そろそろ行こうかカレン。本番はこれからだ」
「了解した。ではカルナスよ。貴様は自力でアウターから脱出後スウィートスクリームに出頭し、私に完全服従した事をローファに伝え大人しくしていろ」
「ぐぅ……! りょ、了解しま……したぁ……! 『虚ろな経路。点と線。偽りの庭。妖しの箱。穿ちて抜けよ。アナザーポータル』」
カレンが命令すると、即アナザーポータルで転移していくカルナス。
多分カレンは無意識に、これ以上カルナスに構っていられないと辟易していたんだろうな。
カルナスが居なくなって周囲を見回してみると、家族のみんなが周囲にサンクチュアリを張り巡らせていてくれた事に気付いた。
道理でアウター最深部なのに魔物が邪魔してくる事もなく、ゆっくり会話出来ていたわけだよ。
カレンへのいたずらが楽しすぎて普通に気付かなかったわ。
我が家の2大爆乳のリーチェとムーリが、その霊峰を意識してぶるんぶるん揺らしながら駆け寄ってくる。
「人の手で神を降ろそうなんて、なんて傲慢な考えなんでしょう。ダンさんやトライラム様、変世の女神様たちは自身の行ないによって神と崇められているというのに……!」
「ちょっと待ってムーリ。流石に女神様たちと俺を同列に語るのは止めてくれる?」
「バルバロイの狙いはかつての邪神召喚で間違いなさそうだけど……。最後の後押しを君にさせるってのはどういうことだろうね? 手加減知らずのダンに手伝わせたら、呼び出すべき邪神ごと吹き飛ばしかねないよ?」
「リーチェも落ち着こうか。おっぱいはそのまま揺らしておいてくれて構わないけど? じゃなくて、ついうっかりで邪神を吹き飛ばす俺って何よ? ある意味バルバロイより厄介者扱いされてない?」
「この世にダンより厄介な人なんて居ないのっ! さぁダンも下らない事を言ってないで、さっさとバルバロイを追うのーっ」
爆乳の2人の間から飛び込んできた無乳のニーナが、俺とカレンをえいっと引き剥がす。
続きは全部終わってからってことだね……って。俺も何気にエロ方面には暴走ポジティブシンキングしてる気がするな?
「カルナスは撃退、ガルシアさんはあまり乗り気じゃ無さそうだったから、今度こそバルバロイと対決することになるかな? みんな、識の水晶が相手だと思って警戒していこう」
「カレン陛下の身体を弄っていたダンより気を抜いていた者などおらぬわ。さっさと行くのじゃ」
「ぐぅっ! 相変わらず痛いところを的確に突いてきやがってぇ……!」
呆れた様子のフラッタに指摘には返す言葉もございませんっ。
これ以上藪から蛇が飛び出して来ないうちにとっとと転移してしまわなければっ。
ごめんねとフラッタにキスをして、一瞬でにへら~っと気を抜いたフラッタと手を繋ぎながらアナザーポータルに飛び込んだ。
……しかし転移先のアウター入り口付近で俺達を待ち受けていたのは、想定していなかった緊急事態だった。
「入り口の転移魔法陣が消失しているだと!? どういうことだカルナス!?」
「そそっ、それが自分にもさっぱりで……!」
アウターの入り口付近には20~30名程度の人が集まっていて、入り口の転移魔法陣が消失してしまったとパニックを起こしている。
その中に混じってアタフタしていたカルナスに事情を問い質すも、カルナスにも事情が分からないようだ。
「貴女の命でアウターを脱出しようとしたところ、入り口の転移魔法陣が見当たらなくて……! 俺自身も途方に暮れていたんですよっ!」
「……ダメだダンさん。転移魔法陣の痕跡すら残されてないよ。どうやら本当に消失しまっているようだ……!」
転移魔法陣があったはずの場所をキュールに触心してもらうも、どうやら何の痕跡も見つけられなかったようだ。
つまり転移魔法陣は隠されたり移動されたりしたわけじゃなく、本当に消失してしまったと見るべきか……?
「タイミング的にバルバロイの仕業に違いないとは思いますが……。転移魔法陣を消し去るなど出来るものなのですか? 旦那様には可能です?」
「あのーヴァルゴさん。俺を基準にするのはやめてくれないっすかね?」
「余計な口を挟まず、旦那様ならどうやって同じ事をするのか考えてくださいますか? それで本当に思いつかないようなら私も引き下がりますので」
どうせ思いつくでしょうけどねと、ちゅっとキスをして俺を見守るヴァルゴ。
くっそーっ! たとえ何を言われても、ヴァルゴの柔らかい唇の感触に帳消しにされてしまうぜぇっ!
「……試したことが無いから推論になっちゃうけど」
「いい加減ご主人様のその枕詞は必要ないと思いますよ? そもそも試していたら大問題ですし」
「くっ! 俺の話も間違ってるかもって言いたいんだから素直に聞いてよシャロっ! っとと、多分だけどバルバロイは、アウターの外にある方の転移魔法陣を破壊したんじゃないかな?」
「……アウターの外側の魔法陣を……!?」
アウター内部には影響が無く、入り口だけが閉ざされたとすれば、同じ事をするにはアウターと外界を繋ぐ転移魔法陣を壊してしまうのが手っ取り早い気がする。
問題は魔物相手にしか適用されない職業の祝福の力で、どうやって魔法陣を破壊するかってことだけど……。
「そうだなぁ……。例えば竜人族のブレスはブレス痕なんて物が残ることからも、地面や建物を破壊する事が可能だよね? だから竜人族の奴隷あたりにブレスを放ってもらって……とか?」
「やっぱりあっさり答えちゃうじゃないですかっ! しかしアウター内部からアウターの外に干渉することは出来ないはずなので、かなり厄介な状況のようですね……」
「アウターは異界から流れ込む魔力が流入する場所だから、もしかしたら放っておいたらアウターが自動で修復してくれるかもしれないけどね。でも外の安全を確保できずに転移魔方陣に飛び込むのは避けたいな……」
始界の王笏のウェポンスキルである崩界は移動魔法を応用した攻撃魔法らしいし、もしも転移中に魔法陣が消失してしまったら何が起こるか分からない。
最悪の場合、体の半分だけが転移してしまうようなスプラッタな状況だって起こりうるかもしれないのだ。
……ん、待てよ? 始界の王笏に、これから俺がすることになっている人々に仇なす行為。
そしてその結果呼び出される神の如き存在、か……。
「あ~……。バルバロイが俺に何をさせようとしているのか分かったかもぉ……」
「そこで言葉を切らないでっ! さっさと話してダンさんっ!」
「恐らくだけどねターニア。バルバロイは俺が狂乱の渓谷を消失させてしまう事を狙っているんじゃないかなぁ?」
「ア、アウターを消失させるって、そんな……!?」
詰め寄ってきたターニアを捕獲して、ぎゅーっと抱き締めながらみんなに俺の推論を伝えていく。
いつもなら抱き締めると直ぐに力を抜いてくれるターニアが、俺の言葉に逆に体を強張らせてしまったのが分かった。
「俺がアウターを消失させてしまった事は、俺自身が直接バルバロイに報告しちゃってるからねぇ。そしてここまで賑っている都市のアウターを消失させるなんて、確かに人類に仇なす行為でしょ」
「え……っと! ダンをアウターに閉じ込めるなら分かるけど、アウターを消失させて何の意味があるのっ!? ただの嫌がらせですることなのかな……!?」
「チャールの言う通りだぜダン! アウターが減ったらバルバロイだって困るはず……いやそれ以前に、ダンを知らない大多数の人たちに、アウター消失とダンを関連付けさせるのはまず無理じゃねーか!?」
「周囲を見なよシーズ。この状況じゃ証人には事欠かないと思わない?」
「そ、そんなの場所を移動すりゃあ済む話だろっ……!?」
「仮に誰の目にも触れない、例えば最深部で事を起こしたとしても、アウターを消失させた前科がある奴なんて俺しか居ないよね? そしてそれを、スウィートスクリームに集まっている各種族の代表者たちの多くは知っていたりするんだよ」
流石に会議の出席者たちが俺に敵対することは無いと思うけど、アウターが消失したら俺との関連が無いと思ってくれる人もいないだろうからな。
狂乱の渓谷を消し飛ばしたのは俺だ、という共通認識さえあれば、あの馬鹿ならどうとでも人心を扇動してしまうだろう。
……何より厄介なのは、そこまで分かっていてもアウターを脱出する為にはここを消し飛ばしてやるしかないってことだ。
閉じられた入り口を無理矢理内側から抉じ開けるのだから、恐らく俺達の身に危険が及ぶ事はないとは思うけど……。
そしてアウター消失の際に発生するであろう膨大な魔力を使って、絶対者となる神を降ろすってかぁ?
ヴァンダライズで消耗した直後に古の邪神と対決する事になりそうで、流石にやってられないなっ……!
でも逆に考えれば、神器を所有しているバルバロイも神降ろしを行なう為にはこの場を離れられないはずだ。
ならばここでしっかりと決着をつけて、この世界の全ての因縁に決着をつけてやるぜ!
……1度ノーリッテを取り逃してしまったような致命的なポカは、もう絶対に繰り返さないんだからねっ!?
力無く崩れ落ちるカルナスを無視して、キスをしながらカレンの身体を弄ぶ俺。
NTRなんて興味は無いはずなんだけど、敵対者に対する報復込みでならひたすら優越感に浸れて素晴らしいなっ!
大量に消費してしまった水分を口移しで楽しく補給させたあと、それでも万歳の姿勢で俺に身を委ね続けるカレンが、少しだけ表情を引き締めて確認してくる。
「このあとどうする? カルナスをここに置いてさっさとバルバロイを追うべきか、カルナスから情報を引き出すべきか難しい局面だが」
「そう、だね……。いや、ここはカルナスに洗いざらい喋ってもらおっか。バルバロイに時間を与えたくはないけど、どうせ早く追いついても人質をチラつかされるだけでしょ」
「心得た。ではカルナスよ。バルバロイについて知っている事を全部話せ。余計な事を喋るな。黙秘も虚偽も許さん。こちらの質問には簡潔かつ正確に答えよ」
「ぐぅ……分か、りまし……たぁ……!」
なんだかロボットダンスのようにギクシャクとした動きで立ち上がるカルナス。
これはカレンの命令によって自分の意思とは無関係に立たされた故の動きなのかな?
そう言えばこの世界、歌い手や踊り子みたいな人とも会ったことがないな?
娯楽の一環として、芸能関係の普及も広めていくべきかー?
そんなどうでもいいことを考えている俺の前で、お漏らしカレンを苦悶の表情で見ているカルナスが苦々しく口を開く。
「……私がバルバロイに出会ったのは、己の未熟さを悔いてここ狂乱の渓谷に篭もっていた時でした……」
「貴様とバルバロイの馴れ初めなどどうでもいい。何故貴様はバルバロイに与した?」
「ぐぎ、ぐぅ……! それは勿論カレン様を手に入れるためです……!」
「それも分かり切っているわ馬鹿者が。どんな文言で誘われたのかと聞いているのだ」
何とか口を閉じようとするカルナスを、何処までも冷ややかに見詰めるカレン。
問いかけを終える度にストレスを発散するように激しく舌を吸ってくれるので、段々バルバロイの事なんかどーでも良くなってきちゃうよぉ。
「くっ……! や、奴は帝国にもその名を轟かせるほどの女誑しです……! そんな男がカレンの思っている事は分かっていると言い、事実貴女はそのように動いていました……! だから私は貴女を手に入れる為にぃ……! ぎ、ぎぎぃ……!」
「私が奴の言う通りに行動したとはなんだ? 具体的にいくつか例を挙げてみよ」
「じ、神器を求めながらも実力で及ばない貴女は、女の色香を使ってその男に接近し始めるはずだと……! そしてその男本人よりも、まずは周囲の人間の信頼を得ようとすることなど……! 始まりの黒で貴女はまさにそのように振舞って……!」
ああ、始まりの黒で会った時って、カルナス的にはまだお試し期間のつもりだったのね?
スペルド王国の王族にしか開放されていない始まりの黒への招待は、魔物狩りも行なうカルナスにとっては魅力的な話だったんだろう。
だけど皇帝に言い渡された謹慎期間中に隣国の王子と行動を共にするなんて、仮に叛意が無くても極刑に値する行為だと思うんだけどな?
この暴走ポジティブシンキング野郎は、最終的にカレンの下に戻れば万事オッケー! って思ってたっぽいね。
「始まりの黒で接していた時はまだ友人のつもりだったがな……。まぁ実際に妻となってしまった今となってはどうでもいい話だ」
同意を求めるように、背後の俺の顔を抱き寄せて唇を重ねて来るカレン。
確かにあの時のカレンはまだ仲の良い友人でしかなかったよね。
あの時のカレンの中では、俺とキュールと同列くらいの認識だったんじゃないかな?
「それで? バルバロイはここで何をしようとしているんだ? どうせ全容は告げられていないだろうが、知ってる事を洗いざらい話せ」
「や、奴は神器を使ってぇ……! 各種族の代表たちの更に上に君臨する、絶対存在を呼び戻すと言っていましたが……それ以上は知りません……!」
「呼び戻す、か……。想定通りの最悪の展開だな。器巫女の3人はどうしている?」
「エ、エルドパスタムの宿にて休ませています……! 3人の安全と貞操はバルバロイに約束させたので無事なはずで……」
「貴様との約束などをあの男が守るとは思わんが、生きているなら充分だ」
エルドパスタムに匿っていたのか。単純に帝国から最も遠い場所を選んだのかな?
それに加えてエルドパスタムは王都並みに賑っている場所だし、スペルディア家や俺達との関わりも薄い街だからな。
俺達と、その知り合いから身を隠すなら最適の場所だったか?
「ダンよ。今回の報酬代わりに3人をしっかり隷属させて欲しい。それが彼女たちが命を繋ぐ唯一の方法だからな」
「なっ!? なんでその男にあの3人を差し出すような真似を……!?」
「国家叛逆罪を犯した貴様と同行し、共に神器を奪い去ったのだから極刑に決まっているだろう? それを夫が望んだ為に性奴隷とすることで、なんとか3人の命を奪わずに丸く収めようというのだ。元凶の貴様が口を挟むところでは無い」
従姉妹や姪に当たるらしい器巫女の3人を奴隷に落とすのは、流石のカレンもかなり心苦しく思っているようだ。
しかし極刑にされたり、俺以外の男に生涯弄ばれるよりは、自分の目の届くところで俺に楽しく玩具にされる方が数億倍マシだと言っていた。
奴隷にされた女の末路はティムルが身を持って証明してくれているからね。
コットンだって命を危ぶまれていたのだから、この世界の女奴隷には人権も未来も存在しないらしい。
「バルバロイが人質に取っているという人々は誰だ? 無差別に殺戮を行なう命を受けている者の所在は?」
「ど、どちらも分かりかねます……。俺はただ、来る日に備えて職業浸透を進めていろとしか……」
「……質疑応答の時間が無駄に思えてきたな。そうだ、最後に1つ聞いておこう」
時間を無駄にして申し訳ないと、カレンが躊躇いがちに唇を重ねてくる。
彼女の舌と乳首と中をよしよしなでなでしてあげて、カレンは何にも悪くないんだよと伝えてから彼女の口を解放する。
「バルバロイはこれから起こる事が夫のせいだと言っていたらしいな? これについては何か聞いていないか?」
「……私には良く分からなかったのですが、なんでもこれから行なわれる神降ろしの最後のひと押しはその男自身の手で行われると、バルバロイはそう言っておりました……」
「はっ! 人々の上に立つ絶対存在を招くなどと嘯きながら、結局はそれが未曾有の危機に繋がる事を認識しているんじゃないか。馬鹿馬鹿しい……」
「いえ、神降ろしはこの男がこのあとにやらかす何かから人々を導く為に行なわれるらしいです。具体的には何のことか分かりませんが……」
ふぅむ? まるでナゾナゾだな。
これから俺に何かをさせる気なのは間違いないようだけど、俺が人類に敵対するような行為をするかな?
例えばここに居る家族のみんなが危険に晒されれば、俺は世界だろうが神様だろうが滅ぼしてやろうとは思っているけれど、こうして手と目の届く範囲にみんながいてくれている以上は不覚を取るつもりは無いんだけどなぁ。
……まぁいいや。どうせ俺が何かしなきゃいけないのは変わらないんだから。
「そろそろ行こうかカレン。本番はこれからだ」
「了解した。ではカルナスよ。貴様は自力でアウターから脱出後スウィートスクリームに出頭し、私に完全服従した事をローファに伝え大人しくしていろ」
「ぐぅ……! りょ、了解しま……したぁ……! 『虚ろな経路。点と線。偽りの庭。妖しの箱。穿ちて抜けよ。アナザーポータル』」
カレンが命令すると、即アナザーポータルで転移していくカルナス。
多分カレンは無意識に、これ以上カルナスに構っていられないと辟易していたんだろうな。
カルナスが居なくなって周囲を見回してみると、家族のみんなが周囲にサンクチュアリを張り巡らせていてくれた事に気付いた。
道理でアウター最深部なのに魔物が邪魔してくる事もなく、ゆっくり会話出来ていたわけだよ。
カレンへのいたずらが楽しすぎて普通に気付かなかったわ。
我が家の2大爆乳のリーチェとムーリが、その霊峰を意識してぶるんぶるん揺らしながら駆け寄ってくる。
「人の手で神を降ろそうなんて、なんて傲慢な考えなんでしょう。ダンさんやトライラム様、変世の女神様たちは自身の行ないによって神と崇められているというのに……!」
「ちょっと待ってムーリ。流石に女神様たちと俺を同列に語るのは止めてくれる?」
「バルバロイの狙いはかつての邪神召喚で間違いなさそうだけど……。最後の後押しを君にさせるってのはどういうことだろうね? 手加減知らずのダンに手伝わせたら、呼び出すべき邪神ごと吹き飛ばしかねないよ?」
「リーチェも落ち着こうか。おっぱいはそのまま揺らしておいてくれて構わないけど? じゃなくて、ついうっかりで邪神を吹き飛ばす俺って何よ? ある意味バルバロイより厄介者扱いされてない?」
「この世にダンより厄介な人なんて居ないのっ! さぁダンも下らない事を言ってないで、さっさとバルバロイを追うのーっ」
爆乳の2人の間から飛び込んできた無乳のニーナが、俺とカレンをえいっと引き剥がす。
続きは全部終わってからってことだね……って。俺も何気にエロ方面には暴走ポジティブシンキングしてる気がするな?
「カルナスは撃退、ガルシアさんはあまり乗り気じゃ無さそうだったから、今度こそバルバロイと対決することになるかな? みんな、識の水晶が相手だと思って警戒していこう」
「カレン陛下の身体を弄っていたダンより気を抜いていた者などおらぬわ。さっさと行くのじゃ」
「ぐぅっ! 相変わらず痛いところを的確に突いてきやがってぇ……!」
呆れた様子のフラッタに指摘には返す言葉もございませんっ。
これ以上藪から蛇が飛び出して来ないうちにとっとと転移してしまわなければっ。
ごめんねとフラッタにキスをして、一瞬でにへら~っと気を抜いたフラッタと手を繋ぎながらアナザーポータルに飛び込んだ。
……しかし転移先のアウター入り口付近で俺達を待ち受けていたのは、想定していなかった緊急事態だった。
「入り口の転移魔法陣が消失しているだと!? どういうことだカルナス!?」
「そそっ、それが自分にもさっぱりで……!」
アウターの入り口付近には20~30名程度の人が集まっていて、入り口の転移魔法陣が消失してしまったとパニックを起こしている。
その中に混じってアタフタしていたカルナスに事情を問い質すも、カルナスにも事情が分からないようだ。
「貴女の命でアウターを脱出しようとしたところ、入り口の転移魔法陣が見当たらなくて……! 俺自身も途方に暮れていたんですよっ!」
「……ダメだダンさん。転移魔法陣の痕跡すら残されてないよ。どうやら本当に消失しまっているようだ……!」
転移魔法陣があったはずの場所をキュールに触心してもらうも、どうやら何の痕跡も見つけられなかったようだ。
つまり転移魔法陣は隠されたり移動されたりしたわけじゃなく、本当に消失してしまったと見るべきか……?
「タイミング的にバルバロイの仕業に違いないとは思いますが……。転移魔法陣を消し去るなど出来るものなのですか? 旦那様には可能です?」
「あのーヴァルゴさん。俺を基準にするのはやめてくれないっすかね?」
「余計な口を挟まず、旦那様ならどうやって同じ事をするのか考えてくださいますか? それで本当に思いつかないようなら私も引き下がりますので」
どうせ思いつくでしょうけどねと、ちゅっとキスをして俺を見守るヴァルゴ。
くっそーっ! たとえ何を言われても、ヴァルゴの柔らかい唇の感触に帳消しにされてしまうぜぇっ!
「……試したことが無いから推論になっちゃうけど」
「いい加減ご主人様のその枕詞は必要ないと思いますよ? そもそも試していたら大問題ですし」
「くっ! 俺の話も間違ってるかもって言いたいんだから素直に聞いてよシャロっ! っとと、多分だけどバルバロイは、アウターの外にある方の転移魔法陣を破壊したんじゃないかな?」
「……アウターの外側の魔法陣を……!?」
アウター内部には影響が無く、入り口だけが閉ざされたとすれば、同じ事をするにはアウターと外界を繋ぐ転移魔法陣を壊してしまうのが手っ取り早い気がする。
問題は魔物相手にしか適用されない職業の祝福の力で、どうやって魔法陣を破壊するかってことだけど……。
「そうだなぁ……。例えば竜人族のブレスはブレス痕なんて物が残ることからも、地面や建物を破壊する事が可能だよね? だから竜人族の奴隷あたりにブレスを放ってもらって……とか?」
「やっぱりあっさり答えちゃうじゃないですかっ! しかしアウター内部からアウターの外に干渉することは出来ないはずなので、かなり厄介な状況のようですね……」
「アウターは異界から流れ込む魔力が流入する場所だから、もしかしたら放っておいたらアウターが自動で修復してくれるかもしれないけどね。でも外の安全を確保できずに転移魔方陣に飛び込むのは避けたいな……」
始界の王笏のウェポンスキルである崩界は移動魔法を応用した攻撃魔法らしいし、もしも転移中に魔法陣が消失してしまったら何が起こるか分からない。
最悪の場合、体の半分だけが転移してしまうようなスプラッタな状況だって起こりうるかもしれないのだ。
……ん、待てよ? 始界の王笏に、これから俺がすることになっている人々に仇なす行為。
そしてその結果呼び出される神の如き存在、か……。
「あ~……。バルバロイが俺に何をさせようとしているのか分かったかもぉ……」
「そこで言葉を切らないでっ! さっさと話してダンさんっ!」
「恐らくだけどねターニア。バルバロイは俺が狂乱の渓谷を消失させてしまう事を狙っているんじゃないかなぁ?」
「ア、アウターを消失させるって、そんな……!?」
詰め寄ってきたターニアを捕獲して、ぎゅーっと抱き締めながらみんなに俺の推論を伝えていく。
いつもなら抱き締めると直ぐに力を抜いてくれるターニアが、俺の言葉に逆に体を強張らせてしまったのが分かった。
「俺がアウターを消失させてしまった事は、俺自身が直接バルバロイに報告しちゃってるからねぇ。そしてここまで賑っている都市のアウターを消失させるなんて、確かに人類に仇なす行為でしょ」
「え……っと! ダンをアウターに閉じ込めるなら分かるけど、アウターを消失させて何の意味があるのっ!? ただの嫌がらせですることなのかな……!?」
「チャールの言う通りだぜダン! アウターが減ったらバルバロイだって困るはず……いやそれ以前に、ダンを知らない大多数の人たちに、アウター消失とダンを関連付けさせるのはまず無理じゃねーか!?」
「周囲を見なよシーズ。この状況じゃ証人には事欠かないと思わない?」
「そ、そんなの場所を移動すりゃあ済む話だろっ……!?」
「仮に誰の目にも触れない、例えば最深部で事を起こしたとしても、アウターを消失させた前科がある奴なんて俺しか居ないよね? そしてそれを、スウィートスクリームに集まっている各種族の代表者たちの多くは知っていたりするんだよ」
流石に会議の出席者たちが俺に敵対することは無いと思うけど、アウターが消失したら俺との関連が無いと思ってくれる人もいないだろうからな。
狂乱の渓谷を消し飛ばしたのは俺だ、という共通認識さえあれば、あの馬鹿ならどうとでも人心を扇動してしまうだろう。
……何より厄介なのは、そこまで分かっていてもアウターを脱出する為にはここを消し飛ばしてやるしかないってことだ。
閉じられた入り口を無理矢理内側から抉じ開けるのだから、恐らく俺達の身に危険が及ぶ事はないとは思うけど……。
そしてアウター消失の際に発生するであろう膨大な魔力を使って、絶対者となる神を降ろすってかぁ?
ヴァンダライズで消耗した直後に古の邪神と対決する事になりそうで、流石にやってられないなっ……!
でも逆に考えれば、神器を所有しているバルバロイも神降ろしを行なう為にはこの場を離れられないはずだ。
ならばここでしっかりと決着をつけて、この世界の全ての因縁に決着をつけてやるぜ!
……1度ノーリッテを取り逃してしまったような致命的なポカは、もう絶対に繰り返さないんだからねっ!?
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