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801 スクリームヴァレー
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「メタさえ超えるご都合主義の到達点ってことで、この力はデウス・エクス・マキナと名付けようかな」
新たに獲得した、魔力と一体化して世界と同化する能力デウス・エクス・マキナ。
魔力制御の究極系と評価されたメタドライブさえも上回る、全てを無視して我を通す暴君の如き能力。
「みんな、手合わせありがとう。でも今日はここまでにしておこうか」
1度は魂まで繋がったみんなの中に魔力を収め、ゆっくりとデウス・エクス・マキナを解いていく。
俺に向けていた関心や想いが自分の身に帰ってきたみんながゆっくり武器を下ろし、家族の本気のコミュニケーションが終了した。
しかし俺の最も近くにいたフラッタが、ドラゴンイーターを放り投げて詰め寄ってくる。
「ダンよっ! お主あれだけの魔力を操りながら身体はなんともないのじゃろうなっ!? ダンにもしものことがあったら妾たちは……!」
「大丈夫。本当になんともないよフラッタ。だよねティムル?」
「……信じられないけど、確かに何の異常も無い……わね」
フラッタをぎゅーっと抱き締めながら、青い瞳で呆けているティムルに声をかける。
しかし声をかけられたお姉さんは、なにも問題がないはずがないとでも言いたそうにしきりに首を傾げている。
キュールの触心やリーチェの精霊魔法まで試させるほどの徹底した調査を行なっても、まだ納得いかない様子で頭を抱えるお姉さん。
「家族全員の魔力を補填して、アウターに繋がっていないと維持できなかったアウラの最終形態も完成させて見せたのになんとも無いなんてありえないわ……。どこからそんな膨大な魔力を……」
「何処からって、ティムルも見てた……いや感じたでしょ? 世界に漂う魔力をちょっとだけ拝借したんだってば」
「精霊魔法で大気中の魔力を操れることも、液化で魔力に溶け込めることも証明されてるとはいえ……。とてもちょっと拝借しただけ、には見えなかったわよぉ……」
「ま、乱暴に言えばこの世界に漂う全ての魔力を好きに扱えるってことだからね。お姉さんが戸惑うのも無理ないよ」
「ダンよ……。戸惑っているのはティムルだけではないのじゃ。というかダンが平然としているのが信じられないのじゃ……」
フラッタとティムルをよしよしなでなでしながらみんなの様子を窺うと、それぞれ違った反応を見せてくれていて面白いなぁ。
とりわけヴァルゴが、勘弁してくださいよーっ!!! って絶叫しながら転げまわってるのが面白すぎるんだよ?
「いい加減にしてください世旦那様!! 世界の魔力と一体化するって、それもう聖域の樹海と変わらないじゃないですかっ! 魔人族の信仰の対象みたいなことをするのはやめてくださいよーーーっ!!」
「流石にそれは言いがかりすぎるよヴァルゴ。でも毎日ユニと魔力で繋がってたのが活きたかもね。そういう意味ではヴァルゴの言ってることもあながち間違ってないか?」
「間違ってないか? じゃないですよーっ!! 人に最強たれとか言っておきながら自分は何処まで強くなる気ですか! んもーっ! んもーーっ!!」
やってられるかーとでも言いたげに、ガニ股になって地団駄を踏むヴァルゴ。
でも下が砂浜だから踏みつけにくそうなんだよ?
そんな激おこぷんぷんヴァルゴを、何故かアウラが慰めに入る。
「ヴァルゴママ。少しは私の気持ちが分かった? 私こんなパパに最強の生物とか言われてるんだよ? 鏡見ろって言いたくならない?」
「アウラが最強なのは間違いないですが……。旦那様を表す言葉として相応しいのは『異常』、ですかね……。旦那様ってほんとに……! ほんっとにもーっ!!」
「あ~……。パパってそもそもこの世界の枠組みに入ってないんだねぇ……」
愛する娘に世界の枠組みに入っていないと言われても、そうかもしれないなぁとしか思えないな。
でも世界と繋がった結果として世界から逸脱してしまうというのも、なんだか皮肉な話だよ。
アウラの放った言葉にニーナが表情を険しくしたけど、気にしてないよと笑顔で伝える。
娘にディスられたくらいなんともないよ。自分の職業スキルに異界生物扱いされた方がよっぽど傷ついたからねっ!
決戦昂揚めぇ。誰が異界生物だってんだよぉ。
そりゃ確かに出身はこことは異なる世界ですけどぉ?
かつてエーテルジェネレイターを成立させた時に、神の領域に足を突っ込んでしまったなぁなんて思った記憶があるけど、デウス・エクス・マキナは完全に行き止まった感覚がある。
万能を超えた全能のエネルギーである魔力制御技術を極めると、エネルギー保存の法則に真っ向から喧嘩を売るように、魔力を消費してより大きい魔力を生み出すという永久機関が誕生してしまうらしい。
ありとあらゆる問題を片っ端から解決してしまいそうなこの技術は、確かにデウス・エクス・マキナと名付けるに相応しい能力のように思える。
人々が手を取り合った先に実現できる理想の能力と言えば、本当に心躍るような能力だけど……。なぜか致命的な過ちを犯したような気がしてしまうのも事実だ。
……強力過ぎる能力を得てしまった事に不安を抱いているだけなら良いんだけどなぁ。
「何はともあれ、これで決戦の準備は整った。みんなと一緒なら、邪神だろうが女神様だろうが負ける気がしないね」
「ダン1人でも邪神なんて簡単に滅ぼしちゃいそうなのーっ。でもどんなに強くなってもいいから、最後はちゃんと私達のところに帰ってきてね?」
「勿論だよニーナ。みんなが両手と両足を開いて出迎えてくれるなら、そこが俺の帰る場所だから」
ニーナのことも抱き締めながら、宣言通り彼女の中に根元まで身を沈める。
ああ……。ここが俺の生きる場所だよニーナぁ……!
次々にみんなを押し倒し、みんなの中に注ぎこみながらデウス・エクス・マキナの事を考える。
きっと俺の魔力とみんなの魔力が完全に混ざり合った時、デウス・エクス・マキナのように魔力の励起現象が起きて新たな生命が誕生するのではないだろうか?
みんなは俺の事を逸脱しているとか常軌を逸しているとか、狂ってるとか外れてるとか散々な言いようで罵ってくれるけれど、実は女性であるみんなは本能的に扱っている魔力制御技術なんじゃないかなぁ。
異種族と子供を作るというこの世界のルールを無視して、自分の願いを無理矢理押し通す能力かぁ。
言いたくないけど、本当に俺にピッタリの能力だって思えるねぇ。
それから種族代表会議の当日までは、各自で色々な用事を済ませながら、なるべく湖流の里に篭ってエロエロな日々を過ごした。
ここはたとえ識の水晶を活用しても辿り着けない場所のはずなので、バルバロイがどうやっても辿り着けない場所だからな。
満点の青空の下、何の遮蔽物も無い開放された空間で目に付いた女性をその時の気分で押し倒すというのは、なかなかに素晴らしい体験だったと言わざるを得ないよっ!
「……ご主人様。あの馬鹿を強制的に隷属させてしまってはいけなかったのですか?」
ある日偶然俺と2人きりになったシャロが、少し言い辛そうに問いかけてくる。
シャロと2人でゴブトゴさんに会いに行ったあの日、俺の強化従属魔法でバルバロイを隷属化していれば、人質もあの馬鹿の企みもまるっと解決出来ていたんじゃないかってことだね。
言い辛そうにしてるのは、俺が強制的に人を隷属させるのを快く思っていないと分かっているからか。
でも流石に敵にまでそんな配慮はしないんだよ? 特にシャロを弄んだあの下種に配慮なんかするわけがない。
俺があの馬鹿を隷属させなかったのは別の理由があるんだ。
「流石にあの馬鹿もあの場で死ぬ気は無かっただろうけど、あの馬鹿は命を賭けてでも俺に従属魔法を使わせるのも狙いだったんじゃないかとも思うんだよ」
「どういうことですか? いくらあの馬鹿とは言え、従属してしまったら詰みでしょう?」
「あの馬鹿は本能的に人の嫌がる事を察する能力に長けているからね。あの馬鹿は俺の最も嫌がる事に気付いて、命懸けで俺を否定しようとしたんじゃないかな」
なんだかコソコソと策を弄しているようだけれど、あの馬鹿が俺達との戦力差を理解していないとは思わない。
イントルーダーを1撃で葬って見せたことで、直接的な戦闘力では俺達に迫ることは出来ないと痛感したはずだ。
だけど戦闘力以外の要素なら……。
例えば精神的な苦痛を与えて、俺を屈服させる事は出来るかもしれない。
だからあの場に態々顔を出したのだ。
自分の命を度外視にしてでも、俺を罠に嵌める為に。
たとえ自分の命運が尽きようとも、俺に勝利したという事実を握り締めて高笑いしながら死にそうだからなあの馬鹿。
「ご主人様の1番嫌がることってなんですか? 誰かが不幸になってしまうことでしょうか?」
「俺が1番嫌がることなんて決まってるよ。愛するみんなとの絆を否定されることが我慢ならないんだ」
「え? それはご主人様らしいですけど、何であの馬鹿を強制隷属させると私たちとの絆を否定される事になるんですか?」
「あの馬鹿はさー。俺がみんなと愛し合えたのは、何か特殊な能力でみんなを操ったからだと思ってるんだー」
シャロと婚姻を結んだ日にも言われたし、思い返せば初めて顔を合わせた時もかなり勘ぐられた記憶がある。
俺がみんなと紡いできた絆を、あんな馬鹿に否定されるなんて考えただけでも腸が煮え返るよ。
「だから強制隷属なんてさせちゃったら、ほらやっぱりなー!? お前はその力で女を手篭めにしたんだろー! って鬼の首を取ったようにはしゃぎながら俺に殺されると思うんだよ」7
「あ、殺しはするんですね。……だけどそれは、図星を突かれて逆上した結果の行動だと思われるということですか?」
「うんうん。シャロを弄んだあの馬鹿に俺が譲ってやるものなんて1つも無いんだ。俺がシャロと愛し合った事実に、あの馬鹿の邪推なんてひと欠片も混ぜ合わせたくないんだよ」
俺に殺されないために色々な対策を考えていたようだけど、万が一俺に殺されたとしても自分が勝利できるように計らっていたというわけだ。
もしも出会い頭に斬り捨てていれば王国中でバタバタと人が死んで、タイミング的にあの馬鹿の死亡との関わりを連想するだろうからな。
俺がどう行動しても嫌がらせになるように、随分と周到に準備しやがってあの馬鹿。
「俺の奥さんは飛び切り魅力的な女性ばかりだからね。あの馬鹿じゃなくても俺にはなにか秘密があるんじゃないかと勘ぐってもおかしくない。そんな時に情事に詳しいどっかの王族があること無いこと言い触らしたら……ってね」
「王国に流布されたご主人様の悪評も効いてきそうですね。ですが私やゴブトゴなど、身分と影響力のある者たちが否定することも……」
「シャロやラトリアが否定して回るのは逆効果だろうねぇ」
スキャンダルって否定すればするほど燃え上がっちゃうものだからな。
大体にして、何らかの方法で俺に洗脳されていると思われているうちの奥さんたちがなにを言ったところで、やっぱり騙されてる! と思われるだけなのは、海洋研究所でカレンが証明しちゃってるからなぁ。
「ラトリアとゴルディアさんの仲の良さは有名だったそうだし、色狂いのシャーロットと肌を重ねた事のある男はみんなこう思うはずだ。あの色狂いが1人の男に執着するはずが無い。あの男がなにかしたに違いないってね」
「……ここで私の過去が邪魔をするのですか。過去の私を悔いるつもりはありませんが、少し悔しいですね……!」
「色女のシャーロットも、結局あの馬鹿が産み出した存在なわけだからねー。過去のシャーロットの振る舞いをシャロが後悔する必要は無いよ」
これ以上あの馬鹿の事を口にしても不快になるだけなので、互いの口を密着させて会話を中断する。
さ、つまんない話は終わりにして、楽しく甘い夫婦の時間を過ごそうね。
一応種族代表会議の開催予定地も事前に確認しておいた。
カレンによって急ピッチで建設された会議場はなかなかに巨大な建物だったけど、職業浸透を進め始めた大工さんたちがひょいひょいっと建材を持ち上げて猛スピードで建設を進める姿は普通に面白かった。
なんかクラフトゲーの動画を早送りで見てるみたいで爽快感があるね。
ちなみに会議が終わった後は帝国運営のホテルとして、帝国観光の1つの目玉にする方針のようだ。
思ったより抜け目無いね、ヴェルモート帝国。
スクリームヴァレーにあるアウター狂乱の渓谷もかなり変わっていて、半フィールド型アウターという他には無い特徴を持つアウターだった。
アウターには転移魔法陣を用いて移動し、アウター内部は屋外なのにアウターの外には転移魔法陣を使わないと出入り出来ないらしい。
カレンとキュール曰く、インベントリのようにこことは異なる空間に存在するアウターなのだと言われているそうだ。
「…………前人未到の狂乱の渓谷を、まさかこうもあっさりと攻略できてしまうとはなぁ」
念のために、会議の当日までに狂乱の警告を踏破しておいた。
閃刃を使いこなすカレンにアウター内の魔物は相手にならず、殆ど閃刃で突っ走っただけで、カレンが自力であっさりと最深部まで踏破してしまった。
最深部は霧深い渓谷となっており、テーブル型に突き出た足場に夥しい数の魔物が群がっていた。
どうやら屋内型アウターというのは本当らしく、反対側が別の場所に繋がっているという事も無いようだった。
「カルナスとバルバロイがここを指定した理由は分からないけれど、これでアナザーポータルで何処にでも一瞬で転移できるようになった。事前準備はこのくらいかな?」
「正直言わせて貰うと、カルナスたちのことよりも貴様が会議でなにを言い出すかの方が不安だがな? お手柔らかに頼むぞ、我が愛しき暴君よ」
カレン自らの案内で、スクリームヴァレーに建設された『スウィートスクリーム』に足を運ぶ。
そこはかとなく夢の宿グループ臭のするネーミングの建物だけど、ここはスルーしておきましょうねー。
さぁて。とうとうこの日がやってきたかー。
識の水晶のことも気になるっちゃ気になるけど、それ以上に会議で話し合われる議題こそが重要だ。
どっかの馬鹿どもに振り回されず、決めるべき事を決めていきたいところだねー。
新たに獲得した、魔力と一体化して世界と同化する能力デウス・エクス・マキナ。
魔力制御の究極系と評価されたメタドライブさえも上回る、全てを無視して我を通す暴君の如き能力。
「みんな、手合わせありがとう。でも今日はここまでにしておこうか」
1度は魂まで繋がったみんなの中に魔力を収め、ゆっくりとデウス・エクス・マキナを解いていく。
俺に向けていた関心や想いが自分の身に帰ってきたみんながゆっくり武器を下ろし、家族の本気のコミュニケーションが終了した。
しかし俺の最も近くにいたフラッタが、ドラゴンイーターを放り投げて詰め寄ってくる。
「ダンよっ! お主あれだけの魔力を操りながら身体はなんともないのじゃろうなっ!? ダンにもしものことがあったら妾たちは……!」
「大丈夫。本当になんともないよフラッタ。だよねティムル?」
「……信じられないけど、確かに何の異常も無い……わね」
フラッタをぎゅーっと抱き締めながら、青い瞳で呆けているティムルに声をかける。
しかし声をかけられたお姉さんは、なにも問題がないはずがないとでも言いたそうにしきりに首を傾げている。
キュールの触心やリーチェの精霊魔法まで試させるほどの徹底した調査を行なっても、まだ納得いかない様子で頭を抱えるお姉さん。
「家族全員の魔力を補填して、アウターに繋がっていないと維持できなかったアウラの最終形態も完成させて見せたのになんとも無いなんてありえないわ……。どこからそんな膨大な魔力を……」
「何処からって、ティムルも見てた……いや感じたでしょ? 世界に漂う魔力をちょっとだけ拝借したんだってば」
「精霊魔法で大気中の魔力を操れることも、液化で魔力に溶け込めることも証明されてるとはいえ……。とてもちょっと拝借しただけ、には見えなかったわよぉ……」
「ま、乱暴に言えばこの世界に漂う全ての魔力を好きに扱えるってことだからね。お姉さんが戸惑うのも無理ないよ」
「ダンよ……。戸惑っているのはティムルだけではないのじゃ。というかダンが平然としているのが信じられないのじゃ……」
フラッタとティムルをよしよしなでなでしながらみんなの様子を窺うと、それぞれ違った反応を見せてくれていて面白いなぁ。
とりわけヴァルゴが、勘弁してくださいよーっ!!! って絶叫しながら転げまわってるのが面白すぎるんだよ?
「いい加減にしてください世旦那様!! 世界の魔力と一体化するって、それもう聖域の樹海と変わらないじゃないですかっ! 魔人族の信仰の対象みたいなことをするのはやめてくださいよーーーっ!!」
「流石にそれは言いがかりすぎるよヴァルゴ。でも毎日ユニと魔力で繋がってたのが活きたかもね。そういう意味ではヴァルゴの言ってることもあながち間違ってないか?」
「間違ってないか? じゃないですよーっ!! 人に最強たれとか言っておきながら自分は何処まで強くなる気ですか! んもーっ! んもーーっ!!」
やってられるかーとでも言いたげに、ガニ股になって地団駄を踏むヴァルゴ。
でも下が砂浜だから踏みつけにくそうなんだよ?
そんな激おこぷんぷんヴァルゴを、何故かアウラが慰めに入る。
「ヴァルゴママ。少しは私の気持ちが分かった? 私こんなパパに最強の生物とか言われてるんだよ? 鏡見ろって言いたくならない?」
「アウラが最強なのは間違いないですが……。旦那様を表す言葉として相応しいのは『異常』、ですかね……。旦那様ってほんとに……! ほんっとにもーっ!!」
「あ~……。パパってそもそもこの世界の枠組みに入ってないんだねぇ……」
愛する娘に世界の枠組みに入っていないと言われても、そうかもしれないなぁとしか思えないな。
でも世界と繋がった結果として世界から逸脱してしまうというのも、なんだか皮肉な話だよ。
アウラの放った言葉にニーナが表情を険しくしたけど、気にしてないよと笑顔で伝える。
娘にディスられたくらいなんともないよ。自分の職業スキルに異界生物扱いされた方がよっぽど傷ついたからねっ!
決戦昂揚めぇ。誰が異界生物だってんだよぉ。
そりゃ確かに出身はこことは異なる世界ですけどぉ?
かつてエーテルジェネレイターを成立させた時に、神の領域に足を突っ込んでしまったなぁなんて思った記憶があるけど、デウス・エクス・マキナは完全に行き止まった感覚がある。
万能を超えた全能のエネルギーである魔力制御技術を極めると、エネルギー保存の法則に真っ向から喧嘩を売るように、魔力を消費してより大きい魔力を生み出すという永久機関が誕生してしまうらしい。
ありとあらゆる問題を片っ端から解決してしまいそうなこの技術は、確かにデウス・エクス・マキナと名付けるに相応しい能力のように思える。
人々が手を取り合った先に実現できる理想の能力と言えば、本当に心躍るような能力だけど……。なぜか致命的な過ちを犯したような気がしてしまうのも事実だ。
……強力過ぎる能力を得てしまった事に不安を抱いているだけなら良いんだけどなぁ。
「何はともあれ、これで決戦の準備は整った。みんなと一緒なら、邪神だろうが女神様だろうが負ける気がしないね」
「ダン1人でも邪神なんて簡単に滅ぼしちゃいそうなのーっ。でもどんなに強くなってもいいから、最後はちゃんと私達のところに帰ってきてね?」
「勿論だよニーナ。みんなが両手と両足を開いて出迎えてくれるなら、そこが俺の帰る場所だから」
ニーナのことも抱き締めながら、宣言通り彼女の中に根元まで身を沈める。
ああ……。ここが俺の生きる場所だよニーナぁ……!
次々にみんなを押し倒し、みんなの中に注ぎこみながらデウス・エクス・マキナの事を考える。
きっと俺の魔力とみんなの魔力が完全に混ざり合った時、デウス・エクス・マキナのように魔力の励起現象が起きて新たな生命が誕生するのではないだろうか?
みんなは俺の事を逸脱しているとか常軌を逸しているとか、狂ってるとか外れてるとか散々な言いようで罵ってくれるけれど、実は女性であるみんなは本能的に扱っている魔力制御技術なんじゃないかなぁ。
異種族と子供を作るというこの世界のルールを無視して、自分の願いを無理矢理押し通す能力かぁ。
言いたくないけど、本当に俺にピッタリの能力だって思えるねぇ。
それから種族代表会議の当日までは、各自で色々な用事を済ませながら、なるべく湖流の里に篭ってエロエロな日々を過ごした。
ここはたとえ識の水晶を活用しても辿り着けない場所のはずなので、バルバロイがどうやっても辿り着けない場所だからな。
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「……ご主人様。あの馬鹿を強制的に隷属させてしまってはいけなかったのですか?」
ある日偶然俺と2人きりになったシャロが、少し言い辛そうに問いかけてくる。
シャロと2人でゴブトゴさんに会いに行ったあの日、俺の強化従属魔法でバルバロイを隷属化していれば、人質もあの馬鹿の企みもまるっと解決出来ていたんじゃないかってことだね。
言い辛そうにしてるのは、俺が強制的に人を隷属させるのを快く思っていないと分かっているからか。
でも流石に敵にまでそんな配慮はしないんだよ? 特にシャロを弄んだあの下種に配慮なんかするわけがない。
俺があの馬鹿を隷属させなかったのは別の理由があるんだ。
「流石にあの馬鹿もあの場で死ぬ気は無かっただろうけど、あの馬鹿は命を賭けてでも俺に従属魔法を使わせるのも狙いだったんじゃないかとも思うんだよ」
「どういうことですか? いくらあの馬鹿とは言え、従属してしまったら詰みでしょう?」
「あの馬鹿は本能的に人の嫌がる事を察する能力に長けているからね。あの馬鹿は俺の最も嫌がる事に気付いて、命懸けで俺を否定しようとしたんじゃないかな」
なんだかコソコソと策を弄しているようだけれど、あの馬鹿が俺達との戦力差を理解していないとは思わない。
イントルーダーを1撃で葬って見せたことで、直接的な戦闘力では俺達に迫ることは出来ないと痛感したはずだ。
だけど戦闘力以外の要素なら……。
例えば精神的な苦痛を与えて、俺を屈服させる事は出来るかもしれない。
だからあの場に態々顔を出したのだ。
自分の命を度外視にしてでも、俺を罠に嵌める為に。
たとえ自分の命運が尽きようとも、俺に勝利したという事実を握り締めて高笑いしながら死にそうだからなあの馬鹿。
「ご主人様の1番嫌がることってなんですか? 誰かが不幸になってしまうことでしょうか?」
「俺が1番嫌がることなんて決まってるよ。愛するみんなとの絆を否定されることが我慢ならないんだ」
「え? それはご主人様らしいですけど、何であの馬鹿を強制隷属させると私たちとの絆を否定される事になるんですか?」
「あの馬鹿はさー。俺がみんなと愛し合えたのは、何か特殊な能力でみんなを操ったからだと思ってるんだー」
シャロと婚姻を結んだ日にも言われたし、思い返せば初めて顔を合わせた時もかなり勘ぐられた記憶がある。
俺がみんなと紡いできた絆を、あんな馬鹿に否定されるなんて考えただけでも腸が煮え返るよ。
「だから強制隷属なんてさせちゃったら、ほらやっぱりなー!? お前はその力で女を手篭めにしたんだろー! って鬼の首を取ったようにはしゃぎながら俺に殺されると思うんだよ」7
「あ、殺しはするんですね。……だけどそれは、図星を突かれて逆上した結果の行動だと思われるということですか?」
「うんうん。シャロを弄んだあの馬鹿に俺が譲ってやるものなんて1つも無いんだ。俺がシャロと愛し合った事実に、あの馬鹿の邪推なんてひと欠片も混ぜ合わせたくないんだよ」
俺に殺されないために色々な対策を考えていたようだけど、万が一俺に殺されたとしても自分が勝利できるように計らっていたというわけだ。
もしも出会い頭に斬り捨てていれば王国中でバタバタと人が死んで、タイミング的にあの馬鹿の死亡との関わりを連想するだろうからな。
俺がどう行動しても嫌がらせになるように、随分と周到に準備しやがってあの馬鹿。
「俺の奥さんは飛び切り魅力的な女性ばかりだからね。あの馬鹿じゃなくても俺にはなにか秘密があるんじゃないかと勘ぐってもおかしくない。そんな時に情事に詳しいどっかの王族があること無いこと言い触らしたら……ってね」
「王国に流布されたご主人様の悪評も効いてきそうですね。ですが私やゴブトゴなど、身分と影響力のある者たちが否定することも……」
「シャロやラトリアが否定して回るのは逆効果だろうねぇ」
スキャンダルって否定すればするほど燃え上がっちゃうものだからな。
大体にして、何らかの方法で俺に洗脳されていると思われているうちの奥さんたちがなにを言ったところで、やっぱり騙されてる! と思われるだけなのは、海洋研究所でカレンが証明しちゃってるからなぁ。
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「……ここで私の過去が邪魔をするのですか。過去の私を悔いるつもりはありませんが、少し悔しいですね……!」
「色女のシャーロットも、結局あの馬鹿が産み出した存在なわけだからねー。過去のシャーロットの振る舞いをシャロが後悔する必要は無いよ」
これ以上あの馬鹿の事を口にしても不快になるだけなので、互いの口を密着させて会話を中断する。
さ、つまんない話は終わりにして、楽しく甘い夫婦の時間を過ごそうね。
一応種族代表会議の開催予定地も事前に確認しておいた。
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なんかクラフトゲーの動画を早送りで見てるみたいで爽快感があるね。
ちなみに会議が終わった後は帝国運営のホテルとして、帝国観光の1つの目玉にする方針のようだ。
思ったより抜け目無いね、ヴェルモート帝国。
スクリームヴァレーにあるアウター狂乱の渓谷もかなり変わっていて、半フィールド型アウターという他には無い特徴を持つアウターだった。
アウターには転移魔法陣を用いて移動し、アウター内部は屋外なのにアウターの外には転移魔法陣を使わないと出入り出来ないらしい。
カレンとキュール曰く、インベントリのようにこことは異なる空間に存在するアウターなのだと言われているそうだ。
「…………前人未到の狂乱の渓谷を、まさかこうもあっさりと攻略できてしまうとはなぁ」
念のために、会議の当日までに狂乱の警告を踏破しておいた。
閃刃を使いこなすカレンにアウター内の魔物は相手にならず、殆ど閃刃で突っ走っただけで、カレンが自力であっさりと最深部まで踏破してしまった。
最深部は霧深い渓谷となっており、テーブル型に突き出た足場に夥しい数の魔物が群がっていた。
どうやら屋内型アウターというのは本当らしく、反対側が別の場所に繋がっているという事も無いようだった。
「カルナスとバルバロイがここを指定した理由は分からないけれど、これでアナザーポータルで何処にでも一瞬で転移できるようになった。事前準備はこのくらいかな?」
「正直言わせて貰うと、カルナスたちのことよりも貴様が会議でなにを言い出すかの方が不安だがな? お手柔らかに頼むぞ、我が愛しき暴君よ」
カレン自らの案内で、スクリームヴァレーに建設された『スウィートスクリーム』に足を運ぶ。
そこはかとなく夢の宿グループ臭のするネーミングの建物だけど、ここはスルーしておきましょうねー。
さぁて。とうとうこの日がやってきたかー。
識の水晶のことも気になるっちゃ気になるけど、それ以上に会議で話し合われる議題こそが重要だ。
どっかの馬鹿どもに振り回されず、決めるべき事を決めていきたいところだねー。
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