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796 世間知らず
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「ほらほらアウラっ! ティムルのおかげで魔力枯渇の心配が無いんだから、もっと積極的に種族特性を活用するのーっ!」
「さっきからずっと使ってますけどーっ!? それでもニーナママが早すぎて追いつけないだけなんですけどーっ!」
奈落に響き渡る楽しげなニーナの笑い声と、余裕を無くした半ギレアウラのヤケクソな絶叫。
奈落の底に跋扈するアウターエフェクトモドキという名の魑魅魍魎を、まるで競争するかのように薙ぎ倒していくニーナとアウラ。
狐耳を生やしたコンコンニーナと虎耳を生やしたガウガウアウラが可愛すぎて、俺も流れ弾で致命傷を負ってしまった気分だな?
大乱交から目を覚ました湖人族の皆さんと軽く食事を済ませたあと、俺とアウラとニーナの3人が引率となって、湖人族の皆さんに好色家を浸透させる為に奈落の底に足を運んだ。
昨日に引き続き俺が湖人族の護衛を担当し、ニーナとアウラの2人で魔物狩りを担当することになったまでは良かったんだけど……。
うん、今のアウラが獣化してもニーナに全くついていけてないんだよ?
「なんで閃刃を纏ったカレン様より早く動くわけーっ!? おかしいでしょニーナママーっ!」
「流石に私の3分の1くらいしか職業浸透していないカレン様に後れを取るわけにはいかないのっ。というかアウラこそカレン様より遅いようじゃ話にならないよー?」
「話にならないのはこっちのセリフだからーっ!! ニーナママの基準、絶対におかしいからねーっ!?」
巨大ハンマータイニームーンを振り回しながらニーナを追いかけるアウラの姿はどこかシュールで、だけどホラーゲームのモンスターが主人公を追いかけているのを見ている気分にもなるから不思議なんだよ?
ニーナが爆笑してるから、ホラーな雰囲気なんて微塵もありませんけどねー。
ホラー要素は無いはずなんだけど、2人を眺めている湖人族の皆さんは震え上がっておいでのようです?
「湖人族の皆さんにあの2人の戦い振りを一般レベルだと思われても困るけど、職業の祝福を極めた先にある姿であるとも言えるかな? ま、参考程度に捉えてよ」
「いやいや、ダンは当たり前のように言うけどさぁ……。みんなびっくりしてて、貴方の話を聞くどころじゃないからね?」
「ニーナ凄いっ。私と同い年であんなに凄いんだ? ダンもそうだったけど、水の中で液化を使ってるより早く動いてるよっ」
俺の両隣で生乳をもみもみされているクラーとミレーが、ニーナとアウラの動きにそれぞれの素直な印象を呟く。
おっぱいをもみもみされているのを忘れるほど、ニーナとアウラの追いかけっこは衝撃的なようだった。
「液化のおかげで水中で無双出来る湖人族の皆さんがあそこまで鍛える必要は無いと思うよ。あの2人は世界最強って水準だからね」
「せ、世界最強って言われてもピンと来ないよ……。ただ、海の外がとんでもない場所だってことは薄々分かってきたかな……」
「何千、何万人も居る中での最強だなんて、たった36人で生きてきた私らには想像つかないね……。ただそんなダンたちが身内になると思えば心強くもある、かな……」
始めは最深部の雰囲気に圧倒されていたルッツさんとイーマさんだったけど、まるで蒸発するように殲滅されていく魔物の姿を見て、怯えるのは馬鹿馬鹿しいとばかりに落ち着いてくれたようだ。
落ち着いてはくれたけど、どこか現実感は無さそうだけどね。
例の如くドロップアイテムは無視しつつ、ひたすら魔物を狩って速攻で皆さんの好色家を浸透させる。
ドギーの村人もしっかりLV10まで上げてから全員を好色家にして、そのまま旅人に転職してもらう。
元々旅人だったクラーとミレーには冒険者になってもらったので、今後は湖人族の移動のサポートをお願いしたいところだ。
好色家 最大LV30
補正 持久力上昇+ 持久力上昇 持久力上昇-
スキル 精力増進 病気耐性-
旅人 最大LV30
補正 持久力上昇-
スキル インベントリ
冒険者 最大LV50
補正 体力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇-
スキル インベントリ ポータル
「どうかな? 好色家のおかげで体の負担軽くなってる?」
「ああんもう、今はキスに集中してぇ?」
問いかける俺に抱き付きながら、甘えるようにキスをねだるアルテさん。
湖人族の皆さんが好色家を得るまで戦ってもアウラの防具職人が浸透していなかったので、その間もクラー姉妹のおっぱいをもみもみ揉みしだきながら湖人族の皆さんと代わる代わるキスをした。
え、キスだけじゃ好色家の効果が実感出来ないって?
でも流石にニーナに怒られるから、これ以上の行為はユニのところに行くまでお預けなんだよー。
あ、でもそうやって俺の股間をなでなでする分には多分ニーナも怒らないと……って、競うように俺の下着に手を入れるのはやめてっ!?
「見てたドギーちゃんっ!? 私、あんな人たちに最強とか言われてるんだよっ!? 言われるこっちの身が持たないよーっ!」
「えーっ? アウラちゃんも物凄かったよーっ!? あんなでっかい武器を軽々と振り回しててかっこよかったーっ」
アウラとドギーが仲良くしているのを見てほっこりしていると、湖人族の皆さんも柔らかな眼差しで2人のやり取りを見守っている事に気付いた。
永遠の末っ子の予定だったドギーは、湖人族のみんなにとても大切に思われているみたいだ。
アウラのおかげで追加の職業浸透が進み全員が旅人の浸透まで終わった湖人族の皆さんには、商人と冒険者で半分に分かれてもらった。
移動魔法が使用できるようにならないと職業浸透を進めにくいし、人の悪意を知らない湖人族には商人の目利きスキルは有用だと思ったのだ。
ま、当分移動魔法の無断使用は遠慮してもらわなきゃいけないんだけどね。
商人 最大LV30
補正 幸運上昇-
スキル 目利き
冒険者 最大LV50
補正 体力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇-
スキル インベントリ ポータル
残念ながら今回クラーとミレーの冒険者の浸透は終わらなかったけど、2人は特に不満に感じていないようで安心した。
今まで職業とは無縁に生きてきた2人だから、不満を感じるほどの知識も無いか。
アウラは防具職人を浸透させ終わり、次の職業には回復魔法士を選択した。
身体操作性補正も魔力補正も大分累積されてきて、アウラも自身の性能を遺憾なく発揮できるようになってきた感があるなぁ。
回復魔法士 最大LV50
補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
スキル 回復魔法
しかし実際に職業浸透を進め成長しているアウラ本人は、自分の成長を喜ぶよりも目標の遠さを嘆いているようだった。
「私と一緒に戦うとか言いながら、ニーナママは容赦なく私を置き去りにしていくんだよーっ!? 信じられるーっ!?」
……嘆いていると言うより、愚痴を零しているといた方が正確かな?
今回は本番行為を自重して奈落を脱出した俺達は、そのまま直ぐにユニの元を訪れて日課のメタドライブと朝食を楽しむ事にした。
湖人族のみんなも一緒でいつも以上に賑やかな雰囲気の中、ドギーと共に朝ご飯を食べているアウラがユニに愚痴を聞かせていた。
「あはーっ。自分の実力に自覚が無いニーナちゃんとの共闘は、アウラのいい刺激になったみたいねぇ」
「なのにニーナは力不足で悩んでるって言うんだから堪らないよねー? 自分の能力を自覚した上で力を求めるダンと違って、ニーナって自分の実力に自覚が無さ過ぎるよ」
俺の膝の上でもぐもぐと朝食を食べるニーナを、2人で仲良く良しなでなでするティムルとリーチェ。
撫でられているニーナ本人はアウラと一緒に戦えたのが嬉しかったのか、ずっとアウラのほうを見ながらニコニコしているなー。
「ダンとティムルも同じじゃが、ニーナは妾やリーチェのために瞬く間に強くなってしまったからのー。己の力を自覚する時間が無かったのかも知れぬのじゃ」
「ですがフラッタ。旦那様もティムルもニーナほど無自覚な印象はありませんよ? ずっと一緒に寄り添ってきたはずの旦那様は病的なまでに自身の能力を把握しているのに、ニーナは全く逆ですよね?」
自分の旦那を病気扱いする悪いヴァルゴには、あとでたっぷりお仕置きしてあげないとな。
でもみんなの言う通り、いつからニーナってこんなに自分の実力に自覚が無くなっちゃんだろ?
ステイルークを旅立ったあたりでは何も出来ない自分に憤っていたニーナが俺との手合わせを遊ぶ半分で楽しめるようになったのは、恐らく悪いことじゃないと思うけど。
「そうねぇ。初めて貴女達2人を見た時は、ダンもニーナちゃんも本当にボロボロになってたっけ……。ダンの力になれないと自分を憎んでいたニーナちゃんが楽しく笑ってくれてるのが悪い事のはずないわよねぇ」
「ん~……。なんとなくだけど、ニーナって呪いのせいでずっと自分がみんなの足を引っ張ってるって意識があった気がするよ。フラッタもリーチェもヴァルゴも、パーティと家族に迎えた時点で戦闘力が高かったしさ」
「あーっ! フラッタちゃんとリーチェと一緒に竜爵家に乗り込んだとき、私とニーナちゃんだけお留守番してたんだった! あれがきっかけでニーナちゃん、自分が戦力外だと思っちゃったとか!?」
かつてラトリアたちを助けた時、まだ呪いが解けずにヴァルハールに同行できなかったティムルとニーナは、自分たちの事を戦力外だと認識してしまったってことか?
確かにあのあとティムルも暫く自分を卑下するシーンが多かったし、ティムルの言っていることも間違ってはいないんだろうけど……。ちょっとしっくりこない、かな?
「待つのじゃティムル。それではお主とニーナの違いに説明が付かぬぞ?」
どうやら俺と同じくらいニーナの事が大好きなフラッタも、ティムルの説明に納得がいかなかったようだ。
リーチェと共にもぐもぐと料理を平らげながら、疑問と料理を口にするフラッタ。
「確かにティムルも力不足を嘆くことは多かったが、それはこのパーティ内で役に立てないという話ではなかったか? お主には世間一般の魔物狩りパーティからは逸脱している自覚はあったはずなのじゃ」
「世間一般の水準……。もしかしたら湖人族以上に閉鎖的な環境で育ったニーナには、強さの基準というものが無いのかも知れませんね」
「い、いや違うよヴァルゴっ! 多分ニーナの基準ってダンなんだ!」
フラッタとヴァルゴの会話を聞いたリーチェが、はっとしたように大きな声を張り上げた。
おかげで大きなおっぱいも跳ね上がって眼福なんだけど、いったい俺がどうしたって?
「ぼくとフラッタは始めダンよりも強かったし、ヴァルゴもダンを殺しかけたって言ってたじゃないっ! それがニーナの強さの基準なんだよっ! ダンだけがニーナの基準なんだっ!」
「あはーっ、なるほどねーっ! ダンより強ければ強い、ダンより弱ければ弱い、何とも単純な基準じゃないっ。細かいことを気にせずダンのことしか考えてないニーナちゃんらしいわーっ」
がばーっとニーナに抱き付いてくるティムルお姉さん。
可愛いので俺の腕の中に招待して、ニーナと一緒にぎゅーっと抱きしめてあげる。
ニーナもティムルも、ずっとこうやって俺の腕の中で大切に抱きしめてきた存在だ。
俺達に出会う前に行商人として沢山の人と触れ合ったティムルはともかく、この俺の両手がニーナが世間一般の常識に触れる事を妨げてしまっていたのかもしれないな。
ティムルに抱きしめられて頬ずりされているニーナは、嬉しそうに微笑みながらもちょっとだけ戸惑った表情を浮かべている。
「ダンのことしか知らなくても問題ないのー。私はダンともみんなとも離れ離れになる気はないんだからね-?」
「う~ん……。確かに今更世間一般レベルの水準なんて物差しにする意味は無いかな? でもニーナ、アウラやラトリアはおろか、ぼくだって君の動きについていけないのは自覚したほうがいいかも?」
「ふふ、ついてこれなくても待っててあげるのっ! 大好きなリーチェとアウラを置いてどっかに行ったりしないんだからっ」
「あ、あう……。そ、そう返されちゃうと参っちゃうなぁ……!」
飛び切りの笑顔のニーナにモロにカウンターを受けたリーチェは、言葉を詰まらせて嬉しそうに赤面する。
ティムルとイチャイチャしてばかりのリーチェだけど、実は家族全員にメロメロだよなコイツ。
「どんなに先を歩いても必ず待っててくれるなんて、ニーナって本当に姉さんみたいなこと言うんだからぁ……!」
「騙されないでリーチェママ! ニーナママったら高笑いしながら私を置き去りにしてったからねーっ!?」
「ふふっ。アウラがついてきてくれるのが嬉しくて、ついつい先へ先へ走りたくなっちゃったのーっ。もしも置き去りにしちゃっても。アウラの後ろにはダンもいてくれたしねっ」
「あ~、そういうことですか。旦那様の歯止めを期待して同行させたニーナでしたが、逆にニーナは旦那様の存在に後押しされて走り回ってしまったのですね」
1人納得したようにうんうんと頷きながら朝食を再開するヴァルゴ。
ヴァルゴはヴァルゴで結構マイペースなところあるよな。
ま、振り回されたアウラには気の毒だけど、今更ニーナが一般の魔物狩りなんて意識しても仕方ない。
振り回されてご機嫌ナナメの愛娘のフォローは、父親でありニーナの夫でもある俺が担当すればいいだけだ。
俺が世間知らずを加速させてしまったらしいニーナを愛しく思いながら、久々に仕合わせの暴君メンバーだけでゆっくり会話を楽しんだのだった。
「さっきからずっと使ってますけどーっ!? それでもニーナママが早すぎて追いつけないだけなんですけどーっ!」
奈落に響き渡る楽しげなニーナの笑い声と、余裕を無くした半ギレアウラのヤケクソな絶叫。
奈落の底に跋扈するアウターエフェクトモドキという名の魑魅魍魎を、まるで競争するかのように薙ぎ倒していくニーナとアウラ。
狐耳を生やしたコンコンニーナと虎耳を生やしたガウガウアウラが可愛すぎて、俺も流れ弾で致命傷を負ってしまった気分だな?
大乱交から目を覚ました湖人族の皆さんと軽く食事を済ませたあと、俺とアウラとニーナの3人が引率となって、湖人族の皆さんに好色家を浸透させる為に奈落の底に足を運んだ。
昨日に引き続き俺が湖人族の護衛を担当し、ニーナとアウラの2人で魔物狩りを担当することになったまでは良かったんだけど……。
うん、今のアウラが獣化してもニーナに全くついていけてないんだよ?
「なんで閃刃を纏ったカレン様より早く動くわけーっ!? おかしいでしょニーナママーっ!」
「流石に私の3分の1くらいしか職業浸透していないカレン様に後れを取るわけにはいかないのっ。というかアウラこそカレン様より遅いようじゃ話にならないよー?」
「話にならないのはこっちのセリフだからーっ!! ニーナママの基準、絶対におかしいからねーっ!?」
巨大ハンマータイニームーンを振り回しながらニーナを追いかけるアウラの姿はどこかシュールで、だけどホラーゲームのモンスターが主人公を追いかけているのを見ている気分にもなるから不思議なんだよ?
ニーナが爆笑してるから、ホラーな雰囲気なんて微塵もありませんけどねー。
ホラー要素は無いはずなんだけど、2人を眺めている湖人族の皆さんは震え上がっておいでのようです?
「湖人族の皆さんにあの2人の戦い振りを一般レベルだと思われても困るけど、職業の祝福を極めた先にある姿であるとも言えるかな? ま、参考程度に捉えてよ」
「いやいや、ダンは当たり前のように言うけどさぁ……。みんなびっくりしてて、貴方の話を聞くどころじゃないからね?」
「ニーナ凄いっ。私と同い年であんなに凄いんだ? ダンもそうだったけど、水の中で液化を使ってるより早く動いてるよっ」
俺の両隣で生乳をもみもみされているクラーとミレーが、ニーナとアウラの動きにそれぞれの素直な印象を呟く。
おっぱいをもみもみされているのを忘れるほど、ニーナとアウラの追いかけっこは衝撃的なようだった。
「液化のおかげで水中で無双出来る湖人族の皆さんがあそこまで鍛える必要は無いと思うよ。あの2人は世界最強って水準だからね」
「せ、世界最強って言われてもピンと来ないよ……。ただ、海の外がとんでもない場所だってことは薄々分かってきたかな……」
「何千、何万人も居る中での最強だなんて、たった36人で生きてきた私らには想像つかないね……。ただそんなダンたちが身内になると思えば心強くもある、かな……」
始めは最深部の雰囲気に圧倒されていたルッツさんとイーマさんだったけど、まるで蒸発するように殲滅されていく魔物の姿を見て、怯えるのは馬鹿馬鹿しいとばかりに落ち着いてくれたようだ。
落ち着いてはくれたけど、どこか現実感は無さそうだけどね。
例の如くドロップアイテムは無視しつつ、ひたすら魔物を狩って速攻で皆さんの好色家を浸透させる。
ドギーの村人もしっかりLV10まで上げてから全員を好色家にして、そのまま旅人に転職してもらう。
元々旅人だったクラーとミレーには冒険者になってもらったので、今後は湖人族の移動のサポートをお願いしたいところだ。
好色家 最大LV30
補正 持久力上昇+ 持久力上昇 持久力上昇-
スキル 精力増進 病気耐性-
旅人 最大LV30
補正 持久力上昇-
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冒険者 最大LV50
補正 体力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇-
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「どうかな? 好色家のおかげで体の負担軽くなってる?」
「ああんもう、今はキスに集中してぇ?」
問いかける俺に抱き付きながら、甘えるようにキスをねだるアルテさん。
湖人族の皆さんが好色家を得るまで戦ってもアウラの防具職人が浸透していなかったので、その間もクラー姉妹のおっぱいをもみもみ揉みしだきながら湖人族の皆さんと代わる代わるキスをした。
え、キスだけじゃ好色家の効果が実感出来ないって?
でも流石にニーナに怒られるから、これ以上の行為はユニのところに行くまでお預けなんだよー。
あ、でもそうやって俺の股間をなでなでする分には多分ニーナも怒らないと……って、競うように俺の下着に手を入れるのはやめてっ!?
「見てたドギーちゃんっ!? 私、あんな人たちに最強とか言われてるんだよっ!? 言われるこっちの身が持たないよーっ!」
「えーっ? アウラちゃんも物凄かったよーっ!? あんなでっかい武器を軽々と振り回しててかっこよかったーっ」
アウラとドギーが仲良くしているのを見てほっこりしていると、湖人族の皆さんも柔らかな眼差しで2人のやり取りを見守っている事に気付いた。
永遠の末っ子の予定だったドギーは、湖人族のみんなにとても大切に思われているみたいだ。
アウラのおかげで追加の職業浸透が進み全員が旅人の浸透まで終わった湖人族の皆さんには、商人と冒険者で半分に分かれてもらった。
移動魔法が使用できるようにならないと職業浸透を進めにくいし、人の悪意を知らない湖人族には商人の目利きスキルは有用だと思ったのだ。
ま、当分移動魔法の無断使用は遠慮してもらわなきゃいけないんだけどね。
商人 最大LV30
補正 幸運上昇-
スキル 目利き
冒険者 最大LV50
補正 体力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇-
スキル インベントリ ポータル
残念ながら今回クラーとミレーの冒険者の浸透は終わらなかったけど、2人は特に不満に感じていないようで安心した。
今まで職業とは無縁に生きてきた2人だから、不満を感じるほどの知識も無いか。
アウラは防具職人を浸透させ終わり、次の職業には回復魔法士を選択した。
身体操作性補正も魔力補正も大分累積されてきて、アウラも自身の性能を遺憾なく発揮できるようになってきた感があるなぁ。
回復魔法士 最大LV50
補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
スキル 回復魔法
しかし実際に職業浸透を進め成長しているアウラ本人は、自分の成長を喜ぶよりも目標の遠さを嘆いているようだった。
「私と一緒に戦うとか言いながら、ニーナママは容赦なく私を置き去りにしていくんだよーっ!? 信じられるーっ!?」
……嘆いていると言うより、愚痴を零しているといた方が正確かな?
今回は本番行為を自重して奈落を脱出した俺達は、そのまま直ぐにユニの元を訪れて日課のメタドライブと朝食を楽しむ事にした。
湖人族のみんなも一緒でいつも以上に賑やかな雰囲気の中、ドギーと共に朝ご飯を食べているアウラがユニに愚痴を聞かせていた。
「あはーっ。自分の実力に自覚が無いニーナちゃんとの共闘は、アウラのいい刺激になったみたいねぇ」
「なのにニーナは力不足で悩んでるって言うんだから堪らないよねー? 自分の能力を自覚した上で力を求めるダンと違って、ニーナって自分の実力に自覚が無さ過ぎるよ」
俺の膝の上でもぐもぐと朝食を食べるニーナを、2人で仲良く良しなでなでするティムルとリーチェ。
撫でられているニーナ本人はアウラと一緒に戦えたのが嬉しかったのか、ずっとアウラのほうを見ながらニコニコしているなー。
「ダンとティムルも同じじゃが、ニーナは妾やリーチェのために瞬く間に強くなってしまったからのー。己の力を自覚する時間が無かったのかも知れぬのじゃ」
「ですがフラッタ。旦那様もティムルもニーナほど無自覚な印象はありませんよ? ずっと一緒に寄り添ってきたはずの旦那様は病的なまでに自身の能力を把握しているのに、ニーナは全く逆ですよね?」
自分の旦那を病気扱いする悪いヴァルゴには、あとでたっぷりお仕置きしてあげないとな。
でもみんなの言う通り、いつからニーナってこんなに自分の実力に自覚が無くなっちゃんだろ?
ステイルークを旅立ったあたりでは何も出来ない自分に憤っていたニーナが俺との手合わせを遊ぶ半分で楽しめるようになったのは、恐らく悪いことじゃないと思うけど。
「そうねぇ。初めて貴女達2人を見た時は、ダンもニーナちゃんも本当にボロボロになってたっけ……。ダンの力になれないと自分を憎んでいたニーナちゃんが楽しく笑ってくれてるのが悪い事のはずないわよねぇ」
「ん~……。なんとなくだけど、ニーナって呪いのせいでずっと自分がみんなの足を引っ張ってるって意識があった気がするよ。フラッタもリーチェもヴァルゴも、パーティと家族に迎えた時点で戦闘力が高かったしさ」
「あーっ! フラッタちゃんとリーチェと一緒に竜爵家に乗り込んだとき、私とニーナちゃんだけお留守番してたんだった! あれがきっかけでニーナちゃん、自分が戦力外だと思っちゃったとか!?」
かつてラトリアたちを助けた時、まだ呪いが解けずにヴァルハールに同行できなかったティムルとニーナは、自分たちの事を戦力外だと認識してしまったってことか?
確かにあのあとティムルも暫く自分を卑下するシーンが多かったし、ティムルの言っていることも間違ってはいないんだろうけど……。ちょっとしっくりこない、かな?
「待つのじゃティムル。それではお主とニーナの違いに説明が付かぬぞ?」
どうやら俺と同じくらいニーナの事が大好きなフラッタも、ティムルの説明に納得がいかなかったようだ。
リーチェと共にもぐもぐと料理を平らげながら、疑問と料理を口にするフラッタ。
「確かにティムルも力不足を嘆くことは多かったが、それはこのパーティ内で役に立てないという話ではなかったか? お主には世間一般の魔物狩りパーティからは逸脱している自覚はあったはずなのじゃ」
「世間一般の水準……。もしかしたら湖人族以上に閉鎖的な環境で育ったニーナには、強さの基準というものが無いのかも知れませんね」
「い、いや違うよヴァルゴっ! 多分ニーナの基準ってダンなんだ!」
フラッタとヴァルゴの会話を聞いたリーチェが、はっとしたように大きな声を張り上げた。
おかげで大きなおっぱいも跳ね上がって眼福なんだけど、いったい俺がどうしたって?
「ぼくとフラッタは始めダンよりも強かったし、ヴァルゴもダンを殺しかけたって言ってたじゃないっ! それがニーナの強さの基準なんだよっ! ダンだけがニーナの基準なんだっ!」
「あはーっ、なるほどねーっ! ダンより強ければ強い、ダンより弱ければ弱い、何とも単純な基準じゃないっ。細かいことを気にせずダンのことしか考えてないニーナちゃんらしいわーっ」
がばーっとニーナに抱き付いてくるティムルお姉さん。
可愛いので俺の腕の中に招待して、ニーナと一緒にぎゅーっと抱きしめてあげる。
ニーナもティムルも、ずっとこうやって俺の腕の中で大切に抱きしめてきた存在だ。
俺達に出会う前に行商人として沢山の人と触れ合ったティムルはともかく、この俺の両手がニーナが世間一般の常識に触れる事を妨げてしまっていたのかもしれないな。
ティムルに抱きしめられて頬ずりされているニーナは、嬉しそうに微笑みながらもちょっとだけ戸惑った表情を浮かべている。
「ダンのことしか知らなくても問題ないのー。私はダンともみんなとも離れ離れになる気はないんだからね-?」
「う~ん……。確かに今更世間一般レベルの水準なんて物差しにする意味は無いかな? でもニーナ、アウラやラトリアはおろか、ぼくだって君の動きについていけないのは自覚したほうがいいかも?」
「ふふ、ついてこれなくても待っててあげるのっ! 大好きなリーチェとアウラを置いてどっかに行ったりしないんだからっ」
「あ、あう……。そ、そう返されちゃうと参っちゃうなぁ……!」
飛び切りの笑顔のニーナにモロにカウンターを受けたリーチェは、言葉を詰まらせて嬉しそうに赤面する。
ティムルとイチャイチャしてばかりのリーチェだけど、実は家族全員にメロメロだよなコイツ。
「どんなに先を歩いても必ず待っててくれるなんて、ニーナって本当に姉さんみたいなこと言うんだからぁ……!」
「騙されないでリーチェママ! ニーナママったら高笑いしながら私を置き去りにしてったからねーっ!?」
「ふふっ。アウラがついてきてくれるのが嬉しくて、ついつい先へ先へ走りたくなっちゃったのーっ。もしも置き去りにしちゃっても。アウラの後ろにはダンもいてくれたしねっ」
「あ~、そういうことですか。旦那様の歯止めを期待して同行させたニーナでしたが、逆にニーナは旦那様の存在に後押しされて走り回ってしまったのですね」
1人納得したようにうんうんと頷きながら朝食を再開するヴァルゴ。
ヴァルゴはヴァルゴで結構マイペースなところあるよな。
ま、振り回されたアウラには気の毒だけど、今更ニーナが一般の魔物狩りなんて意識しても仕方ない。
振り回されてご機嫌ナナメの愛娘のフォローは、父親でありニーナの夫でもある俺が担当すればいいだけだ。
俺が世間知らずを加速させてしまったらしいニーナを愛しく思いながら、久々に仕合わせの暴君メンバーだけでゆっくり会話を楽しんだのだった。
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松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
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