異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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762 ※閑話 見えざる手の真相

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「今まで後回しにしてきたけど……。いざやるとなってもこの量はきついなぁ……!」


 目の前に積みあがった紙の量に、思わず息を飲んでしまう。

 なんだかんだと目を背けてきたけど、そろそろ向き合わなきゃいけないのか、現実とっ!



 俺達は今まで幾つかの組織を壊滅させ、その組織が残していた研究資料などを回収してきた。

 アルケミストからはアウラの資料を、ロストスペクターからはレガリアの記録を、状態は良くないものも少なくないが、回収した資料はなかなかの量になってしまった。


 しかし回収した後はなんだかんだと忙しく、とりあえずニーナの別荘に適当に突っ込んでいたんだけれど、家主のニーナからクレームが入ったのでノーリッテからパクった研究所に移動したまま放置していたのだ。


「ほらほら、さっさと片付けるわよぉ? 建物の増設はしてるくせに中は散らかったままなんて格好つかないからね~?」


 隣りのティムルがパンパンと手を叩いて俺には発破をかけてくる。
 
 実はティムルの言う通り、暇を見つけてはノーリッテの隠し研究所のリフォームは進めているのだ。


 元々あった家屋は手をつけずに、それに併設するように新たに離れを建設し、そちらに大きいベッドや調理場、水洗トイレなどを整備して住環境を整えた。

 家の回りも塀で囲うかは迷いどころだけど、今のところは保留中だ。


「ほら始めるぜダンー。お前のせいで家じゃオチオチ資料作りも出来ねーってことで用意した場所なんだから、責任もって整備しろって」

「ここにも寝室を用意しちゃったから結局意味無い気もするけどねー。ま、資料が散らばってるのは気分が良くないし、シーズの言うように早く始めよー?」


 究明の道標の為に用意された施設だけあって、実際に使う予定のチャールとシーズはとても張り切っているようだ。


 トライラム教会にいる頃から積極的にお手伝いしていた2人は、部屋が散らかっていると気になって仕方ないらしい。

 2人は特別綺麗好きというわけではなくて、まだ物心もついていないくらい小さい子供と一緒に暮らしてきた為に、部屋が片付いていないと危険だと感じてしまうそうだ。


 発想が完全に母親、または保護者目線なんだよなぁ。


「はっはーっ! 私のパーティメンバーは頼もしい限りだねっ! 皆が総出で片付けてくれればこの施設もようやく片付きそうさっ」


 テキパキと資料を振り分けていく2人を見ながら、2人に振り分けられた資料を読み散らかしているキュール。

 片付けの苦手なキュールにはザックリとした資料の選別が言い渡されているようだ。


「ダンさんも片付けは苦にならないみたいだしねー。夫も家族も頼もしくって嬉しくなっちゃうよ」

「チャールとシーズに片付けを任せきりで申し訳ないとか情けないとか、そういう感情は抱かないの?」

「はっ! この歳まで片付けが出来なかったんだ。そんな感情とっくに割り切り済みさ。適材適所と思って自分の出来る事に注力したほうが迷惑をかけないと気付いたのさっ」


 気にしていないと言いながらも少しだけ悔しさを滲ませるキュールの頬にキスをして、俺も片付けに参加する。

 片付けを終わらせないと、片付けが苦手なキュールがいつまでも気にしてしまいそうだ。さっさと済まそう。


 今回は家族総出での作業と言うことで、ティムルやとリーチェのいつもの2人や、竜爵家でゴルディアさんの執務を手伝ってきたラトリアとエマ、マグエルで教会運営に携わっていたムーリ、そしてキュールとシャロが資料の整理を担当してくれている。

 比較的活字の嫌いなニーナやフラッタ、そしてターニアと、まだスラスラと字が読めないヴァルゴ、片付けの得意なチャールとシーズが掃除やリフォームを担当している。


 でもちょっと目を離すと、ニーナは寝室ばかり拡張したがるから困りものだ。


「へぇ~……。マジックアイテムで変質させた魔力でナーチュアクレイドルをいっぱいにして、体の外側から時間をかけて少しずつ魔力を染み込ませていったんだ~。気が遠くなる話だね~?」


 ちなみにアウラにはアルケミストから押収したホムンクルス計画の資料を読ませる事にした。


 一応大人組で内容は検閲済みで、生贄みたいに物騒な手法ではないこともあって本人に読ませても問題ないと判断。

 長命なアウラは自分のことを自分でも深く理解しておくべきだというということで、キュールの隣りで自身の研究資料を読み耽っている。


 俺はちょいちょい質問してくるアウラに答えながら、散らばっている資料を片っ端から読み込み、整理していくのだった。





「……ダンって面倒くさがりのくせに、妙なところは几帳面だよね~?」


 数時間かけて種類ごとに選別した資料を見て、リーチェがちょっと引いている。

 どっちかというとリーチェもズボラなほうだからな~。興味があることには一直線なんだけど。


 俺も基本ズボラなほうだけど、ゲームのアイテムとか頻繁にソートしちゃうタイプだった。

 実用するものは実用的に並んでいないと落ち着かないんだよなぁ。


「職業補正のおかげで大工仕事が苦にならないからありがたいよ。資料棚も満足いくものが作れたし、片付けはひとまずコンプリートかな?」

「みなさ~ん。お茶が入りましたよーっ」


 タイミング良くラトリアがお茶を淹れてくれたので、離れに作った広いリビングに移動する。

 ラトリアが淹れてくれたお茶とエマが用意してくれた軽食を摘まんで、作業後の軽い疲労感を楽しもう。


 次々に寛ぐ家族の中で、人一倍片付けを頑張ったチャールとシーズが楽しげに会話している。


「凄い数の資料になったねー。でもアレを全部読むのは流石に大変だ~……」

「いくつか資料が抜けちまってるのが惜しいよなーっ。人道に反する研究とか再現出来ねーしさぁ」

「私が読んだことがある資料なら補足できるから、何でも聞いてくれていいよっ。流石にホムンクルス計画についてはノータッチだけどさ」


 専用の研究施設が使用可能になったことで、究明の道標の3人は普段より少しテンションが高いな。

 家では俺がちょっかいを出すから、研究に集中できる施設がマジで嬉しいんだろうな。


 そこまで分かっていようとも、3人へのえっちなちょっかいをやめる気は無いけどねっ。


 俺はリーチェとムーリのおっぱいを優しくもみもみしながら、少しぼーっとしているアウラに話しかける。


「大丈夫アウラ? 読ませておいて今更だけど、ホムンクルス計画に触れて気分悪くなったりしてない?」

「ん~……、気分は悪くないけど色々考えちゃってさぁ。私って本当に強い意志を持って生み出された存在なんだね~」

「思ったより平気そうでよかった。落ち込んだり思い詰めたりするかもって、少し心配してたんだ」


 俺との会話には応じてくれてるけど、アウラはどこか上の空に見える。


 自分が超えてしまった450年近い歳月。

 その間に行われた果てしない研究に理解が追いついていないのかもしれない。


「ガルクーザの脅威に晒されていた人たちが望んだ救世主だからねアウラは。そりゃあ生半可な想いと決意じゃなかったと思うよ?」

「それで出来たのはパパとえっちしなきゃ生きていけない吸精主じゃ笑い話にもならないね~……」

「誰が上手い事を言えと……。資質だけを見れば、多分アルケミストの想定を遙かに上回ってるんだけどなぁ。アウラもこっちにおいでおいで」

「はぁ~いパパぁ」


 両隣に侍らせたリーチェとムーリのおっぱいを揉んでいる為、アウラはソファに座る俺の上に向かい合うようにして跨ってきた。

 お互い服は着ているけれど、ぎゅーっと抱き付いてくれるアウラのおかげで密着度が高く、大変興奮させられる。


 流石俺の自慢の娘だな。的確に俺が喜ぶことばかりしてくれるぜっ!
 

「……ねぇパパ。私、パパと出会わなかったらどんな暮らしをしていたと思う?」

「アウラ?」


 興奮する俺に対して、アウラはまるで親に甘える少女のようにぎゅっと抱き付いてくる。

 落ち込んでいるわけじゃなさそうだけど、やっぱりなにか気になっているみたいだ。


「前も言ったけどさ。カイメンたち……アルケミストの人たちを悪く思ってはいないんだ。悪くは思ってないけど……。パパに連れ出してもらえなかったら、私どうなってたのかな……」

「……どうだろうね。案外目を覚ましたアウラが可愛すぎて、俺以上に溺愛されてたかもよ?」

「あはっ。だったらいいね」


 ダメだ。どう考えてもエロいことをする空気じゃない。

 服の上からアウラの大事なところをパパがいっぱい突いちゃうぞーっ、とか言える空気ではない。


 仕方ないのでムーリとリーチェのおっぱいをくりくりきゅっきゅと摘みあげる。楽しい。


「……でも、きっとそうはならなかったよね。カイメンたちは私のこと、人として見てくれてなかったもん」


 淡々と語るアウラからはネガティブな感情は読み取れない。

 単に自分とアルケミストの関係性を客観的に語っているだけのように思える。


 眠ったままで、カイメンたちと接した事が無ければ今の俺の言葉にも説得力が出たんだけど。

 カイメンとアウラは、俺と会う前にひと月くらいは一緒に過ごして居たからなぁ……。


「どうせもうありえない想定なんだし、折角だから可能な限り明るい未来にしてみようか」

「へ? パパに出会って良かったー、じゃ駄目なの?」

「遊びだよ遊び。もしもの話を考えるなら楽しい未来の方が良くない?」


 と言っても、10歳にしてホムンクルス計画の資料を普通に読みこんでしまうアウラに下手な誤魔化しは出来ない。

 遊びとは言えカイメンたちの情報を参考に、ちゃんとリアリティを感じさせなきゃいけないな。


「アウラが目覚めた後は、暴王のゆりかごもある程度は機能するようになるから……。始めはアウターから離れられなくても、職業浸透が進んだ後は結構自由に動けたんじゃない?」

「ぶぶーっ。パパ、クラクラットにある転職魔法陣じゃ魔力補正は得られないでしょっ。暴王のゆりかごから数時間も離れられないあの頃の私じゃ、自由を得ることは難しかったんじゃないかなぁ?」


 おおう、転職は全て俺が職業設定で行なってるのにクラクラットの転職魔法陣を把握してるのかぁ。

 だけどくすくす笑うアウラの様子は、先ほどよりも機嫌が良さそうに見えるね。


 その後もイフの話を繰り返すものの、アウラは面白がって俺の想定を悉く却下する。

 ……却下するのが前提みたいになってない? カイメンたちをフォローするのも限界があるんですけどぉ。


「ふっふーん。無理だよパパー。カイメンたちはパパみたいに私の気持ちまで見てくれなかったからね。カイメンたちにとっては、私はマジックアイテムみたいなものだったんじゃない?」

「こんな可愛いマジックアイテムがあるかっての。でもまぁマジックアイテムとは言わないけど、人類の未来をアウラに押し付けようとはしてたかな」

「押し付ける? そんな風には考えたこと無かったなぁ」


 俺に頬ずりしながら、んーっと可愛く考え込むアウラ。

 確かに強烈な魅了効果のあるマジックアイテムと言えなくもないかなっ。


「俺が魔力で満ちたこの世界に来て思うのはさ。問題を誰かに押し付けて、責任から目を逸らしちゃダメってことなんだ。俺が元居た世界以上にそう感じるんだよ」

「んー、分からないなぁ……。どういうことパパー?」

「ステイルークではニーナが呪いを押し付けられていて、ティムルはネプトゥコで濡れ衣を着せられててね。フラッタの家は大量殺人犯に仕立て上げられ、リーチェは建国の英雄に祭り上げられてたんだ」


 俺がこの世界に来てから、家族の皆は人の悪意に翻弄され続けていた。

 もしかしたら本来は悪意ではなかった想いもあったかもしれないけれど、他人の都合を押し付けられていたのは皆同じだったと思う。


「ムーリは子供達と絶望の未来を押し付けられてて、ヴァルゴたち守人も先の見えない状況を押し付けられていた。そして俺の可愛いアウラも、人類の未来を守る聖女って役割を押し付けられていたように思うんだよね」

「あはははっ! それじゃアウラとダンが出会ったのは完全に必然じゃないかっ!」

「ですよねーっ。というかダンさんのやってることって正反対なんですよ。誰かの問題を勝手に無理矢理解決しちゃうんですよねっ」

「今はアウラと喋ってるのっ! リーチェもムーリも茶化さないでくれるっ?」

「「ひゃぁんっ!?」」


 ぎゅーっと思い切り乳首を引っ張って、爆乳2人を牽制する。

 相変わらず乳首だけで簡単に気持ちよくなっちゃうんだからぁ。引っ張り甲斐がありすぎるぅ。


「魔力に満ちた世界……。魔力は魂に、人の意思に大きく影響を受ける……。ダンは他の人とは違う……むしろ正反対……?」

「ん? どうしたのティムル。何か気になることでも……」

「まさか……まさかそういうことだったの……!? だからダンはまるで導かれるように私たちと出会ったってこと……!?」


 なんだか気になる事を叫びながら椅子から飛び上がるティムルお姉さん。


 確かに今まで偶然では片付けられない色々な縁を感じたことはあるけど、それって何か理由があったの?

 個人的には、エロに従った結果みんなと出会ったんだと解釈したんだけど。


「チャールやキュールはそうでもないと思うけど、ダンのお嫁さんってみんな助けを求めていたわよねっ……!?」

「うんうん。少なくとも私は誰か助けてって思ってたのー。ダンに、ではないけどさー」

「妾も兄上に会うためにと焦燥感に駆られながら、消耗しきって絶体絶命だったのじゃー」

「でねでねっ!? 私たちとは逆に、ダンは自分の救いを求めていなかったの! 開拓村の壊滅を自分のせいだと思っていたダンは、自分の代わりに幸せになるべき人が沢山いたはずだって、きっと誰よりも強く願って……!」


 ……あ~、当時の事を指摘されるのはちょっと恥ずかしいな。

 自分の代わりに誰かの幸せを願うなんて傲慢だった。俺の幸せが他の人にとっての幸せとも限らないのに。


「ニーナちゃんが言ってたじゃない! ダンだけが私たちが必死に伸ばしていた見えない手を掴んでくれたんだって! あれってそういうことだったんじゃないっ!?」

「……えと、ごめんねティムル。もうちょっと詳しく教えて欲しいの」

「だからさぁ! 助けを求める私達の強い想いと贖罪を求めるダンの強い想いに魔力が影響を受けて、私たちを魔力の縁で結びつけたんじゃないっ……!? 特にフラッタちゃんとのエピソードなんて、偶然で片付けるには都合よすぎるじゃないっ……!」


 ティムルの必死の解説に、皆の反応は人ぞれぞれだった。

 二ーナやヴァルゴ、そしてムーリはうんうんと納得したように頷いているし、キュールは割と真面目に考察し始めている。

 リーチェとシャロはうっとりした顔で俺を見詰めてくるし、チャールとシーズは懐疑的な表情を浮かべている。


 が、フラッタやターニア、ラトリアにエマがティムルの説を完全に信じきってしまったようだ。


「凄いのじゃ凄いのじゃっ! 確かに広大なアウターの中で偶然出会うなど普通なら有り得んのじゃっ! ダンは出会う前から妾を見つけてくれていたのじゃなーっ!」

「元々は年が明けてからヴァルハールを調査する予定だったと聞いています。なのに予定を早めてくれたおかげでうちの屋敷の皆は一命を取りとめましたよね……」

「意識は混濁していましたが、あの時の私たちは本当に限界だったと思います……。そんな私達の声を掴み取ってくださっていたのですか、ダンさんは……!」

「ニーナと一緒に私の家に来たのも偶然にしては出来すぎだと思ってたのーっ! やっぱりダンさんが助けてくれたんじゃないっ!」

「ちょちょちょ!? それは流石に暴論過ぎるんだよ!? みんなちょっと落ち着こう!?」

「あはははははっ! 確かにクラクラットで私と出会ったのも偶然にしては出来すぎだよねっ!? もしかしてリーチェお姉ちゃんの世界樹の護りがリュートとパパに会わせてくれたのかもーっ!」


 嬉しくて仕方ないといった様子で、ぎゅーっと抱き付いてくるアウラ。

 アウラにこんなに嬉しそうにされちゃったら、ティムルの説を否定しにくくなっちゃうじゃないかっ……!


 でも、論理立てて考えると結構否定しにくい説でもあるんだよな……。

 この世界には至るところに魔力が満ちているし、精霊魔法で大気中の魔力に干渉することも可能で、触心によって魔力から情報を読み取る事も可能なのだから。


 ……だけど、あの時ニーナの手を取ったことに魔力は関係ないはずだ。

 あの時の俺はニーナを助けたいなんて思うより、ニーナと一緒に生きたいと願ったような気がするから。

 自分の命よりも見ず知らずの俺を心配してくれる心優しい少女を死なせたくないと願ったのは、紛れもなく俺自身の意思によるものだ。


 大体俺が惹かれたのは魔力じゃなくて、魅力的過ぎるみんな自身に惹かれたんだからねー?

 さ、せっかくの流れだから盛り上がっていきましょーっ!
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