異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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「お待ちしていましたーっ。ようこそトライラム教会へーっ」


 スペルディアにあるトライラム教会の本部に顔を出すと、待ち構えていたムーリが俺の胸に飛び込んでくる。

 ぶるんぶるん暴れ回るムーリの我が侭ボディをしっかりと受け止めて、ちゅっちゅっと軽くキスをする。ムーリ大好きぃ。


「それでキュール。トライラム教会の本部にお邪魔した感想は?」

「お蔭様でなかなか刺激的だったよ。皆さん私にも親切に接してくれたしね。尤もこれはダンさんのおかげかもしれないけどー?」


 ムーリの背後に控えていたキュールが、ご機嫌な様子で教会にきた感想を口にする。


 スペルディアのトライラム教会本部には、昨日に引き続きムーリと究明の道標の3人が資料の確認に顔を出していた。

 今まであまりトライラム教会とは関わりの無かったキュールにとって、教会の資料を閲覧できるのはかなり楽しいらしい。


「これから更にサーディユニオム教とも接触できるなんて夢のようだよっ。宗教としてはあまり興味はないけど、彼らの成り立ちは神器と深く関わっているようだから楽しみだねっ」

「個人的には結構きな臭い集団だと思ってるけどね。でも教徒の皆さんは多分何も知らないんだろうなぁ」


 情熱を失くしたサーディユニオム教徒が暗躍するのは考え難いけれど、情熱がないからこそ誰かに利用されやすいとは思う。

 識の水晶になにか都合よく扱われている可能性もあるし、カルナスやバルバロイに協力している可能性も否定出来ない。


 特にカレンの側近だったカルナスは帝国の機密情報に全てアクセスできただろうし、カレンを失脚させようとしている勢力にも利用されやすい気がする。

 考えれば考えるほど迷惑な存在だな、カルナスの野郎。


「カルナスも優秀な男だったはずなのだがなぁ。人間族でありながら帝国最強と称されるまでは並々ならぬ努力も必要であっただろうに、どうしてこんなことになったのやら……」

「あ~……。カルナス将軍は陛下に懸想してましたからねぇ。恋は盲目という奴なんじゃないですか? 分かりやすい態度でしたけど陛下は全く相手にしてませんでしたしー?」


 キュールがからかい口調でカレンに絡んでくる。

 カレンの恋バナになると途端にウザがらみしてくるよな、キュールって。


 当のカレンは、そんなキュールの態度にも気分を害した様子はないけど。


「……カルナスには悪いが、私は奴の想いに応えることは出来ないんだよ。本人にも1度はっきりそう告げてやったはずなんだがな」

「えっ!? 将軍って陛下に振られてたんですか!? なのにあの態度って……。ああ、逆に開き直ったんでしょうか?」

「キュールまで城の侍女のような反応をするんじゃないっ」


 流石にツッコミを入れてキュールを嗜めるカレン。

 でも侍女にからかわれる皇帝陛下って可愛すぎでしょー。ちゅっちゅっ。


「カルナスは聞き分けよく引き下がり、以後は恋慕の情を忠誠心に変えて私に尽くすと言ってくれたのだが……。残念だが口先だけだったようだな」


 告白を断った上で忠誠を誓ったカルナスの事を、カレンは思ったよりも信用していたようだ。

 だけどカルナスの忠誠は口だけで、結局カレンが別の男に体を許しそうになった途端に暴走して、挙句帝国全体に迷惑をかけてしまっているんだから世話ないよな。


 カレンは勿論、帝国上層部の信用も地に堕ちてしまった以上、もしも俺から神器を奪ったとしてもカルナスが帝国に迎えられる事はないんじゃないか?


「カレンがカルナスを受け入れられなかった理由も気になるっちゃ気になるけど、まずはニーナたちを迎えにヴァルハールに行くよー」

「ほう? 愛する夫に問い詰められれば話すのも吝かではないが、聞かなくていいのか?」

「妻の過去に拘らないのが良い夫の条件ってね。今こうして俺の腕の中にカレンが収まっている事実以外はどうでもいいよ。『虚ろな経路。点と線。見えざる流れ。空と実。求めし彼方へ繋いで到れ。ポータル』」


 女性の過去には触れない方が良いのは、ティムルを迎えた時に思い知っているからね……。

 所有権を主張するようにカレンとムーリを抱き寄せて、残りのメンバーと合流する為にヴァルハールへと転移した。


「ほう……。これがラトリア殿とグラン・フラッタ殿の故郷ヴァルハールか。なかなか賑っているようだな」

「お~……ヴァルハールに魔人族が普通に歩いてるねぇ……。エルフ族も居るって話だけど……流石に直ぐに見かけるほど数は多くないかぁ」


 目の前の無骨な街並みに感嘆の声を漏らすカレンと、キョロキョロと周囲を見回して待ち行く人たちを観察しているキュール。

 カレンとキュールがヴァルハールの街並みを見たいと希望したので、2人の希望に応えて街の入り口に転移したのだ。


「このあと1度フラグニークのお城にも行かなきゃいけないし、ここからは竜爵家邸までは直行させてもらうよー?」

「我が侭を聞いてもらって悪いな。私の夫は妻の要望を快く叶えてくれるからありがたいよ」

「このくらいで我が侭なんて俺の奥さんは皆謙虚すぎるよ。もっともっと我が侭言っていいんだからね?」


 服の上から乳首をつついて、笑顔のカレンにキスをする。

 するとカレンは俺から視線を外して、赤面しながら少し怯えたように小声で呟く。


「貴様にあまり我が侭を言いすぎると、ベッドの上での支払いが恐ろしくてなぁ……」

「大丈夫ですよカレン様っ。ダンさんは私たちの都合なんてお構いなしに可愛がってくれますからねーっ」

「シスタームーリ。それ全く大丈夫要素ないからねー?」


 エロ方面に偏ったフォローをするムーリに、チャールが呆れながらツッコミを入れる。

 初めてヴァルハールを訪れた時はチンピラに絡まれて、その次はマインドロードと対決したりと碌な思い出のないヴァルハールの街並みも、家族の皆と賑やかに歩けばそれだけで楽しいから困っちゃうなっ。


 カレンとムーリを抱き寄せてその感触を楽しみながら、ヴァルハール初到着組の反応を楽しんだ。





「あら~珍しいわねぇ? ニーナちゃんがフラッタちゃんとヴァルゴ相手に手合わせをしてるなんてぇ」


 今まで黙っていたティムルが、竜爵家邸の地下訓練場に足を踏み入れた瞬間に意外そうに呟く。


 ティムルが言った通り、ニーナがフラッタとヴァルゴの2人を相手に本気度高めの手合わせをしていた。

 あまり強さを求めていないニーナが、オーラとダークブリンガーを使用したあの2人と手合わせをするのは意外だなぁ?


「え、えと……。ニーナさんの姿が私には全く見えないんですけど……。キュ、キュールさんは見えます?」

「残念ながら私にも見えないよシャロ様。フラッタさんとヴァルゴさんが何かを弾いているのは分かるけど、何が弾かれているのかは全く見えないねぇ……」


 どうやらニーナは獣化して訓練場を縦横無尽に飛び回り、ムービングディザスターのような全方位斬撃を再現しているようだ。

 移動魔法の使えない屋内で全包囲攻撃をする為に、天井や壁なんかも足場にしてるみたいだな。


 フラッタとヴァルゴに攻撃を弾かれた勢いも移動に利用して、目に映らない速度で2人に襲い掛かっているね。


「流石は我が家のスピードスターのニーナだね。獣化だけでここまでのスピードを発揮するなんて」

「あ、ダン! 見ての通りの状況なんだけど大丈夫!?」


 いつもなら直ぐに俺に気がつき、その生意気おっぱいを惜しげもなく押し付けてくれるリーチェが、ニーナの手合わせに気を取られて俺に気付くのが遅れたようだ。

 慌てて俺のところに走ってきたリーチェは、心配そうに手合わせの様子を見守っている。


「普段のニーナなら必要以上の手合わせなんてしたがらないのに、今日は自分から2人に手合わせを申し込んだんだっ。幸い今のところは誰も怪我してないけど、このまま続けても平気だと思うっ!?」

「心配しなくていいよリーチェ。早すぎてニーナの顔は見えないけど、フラッタがニコニコしているからニーナもニコニコしてるはずだからね。少なくとも暴走はしていないハズだ」

「なにその判断基準!? てかダンの目でもニーナの表情は確認できないの?」

「今のニーナの移動速度はフラッタとヴァルゴよりも数段速いからねー。深獣化も使えば世界最速は間違いなくニーナだよ。俺の動体視力でニーナを追うのは難しいかな」


 大好きなニーナの顔には無意識に目がいっちゃうんですけどねっ!

 ニーナの本気の手合わせなんて珍しくてちょっと心配したけど、ニーナも相手の2人も楽しんでいるようだから心配無さそうだ。


「いやぁ……。ニーナってこんなに早く動けるんだねー……。あんなに小さかったニーナが、ダンさんのおかげでこんなに強くなってくれて嬉しいの……」

「はいはいターニア。ニーナが楽しんでるんだから泣かない泣かない。この調子なら心配なさそうだからターニアも応援してあげてね」

「ダンよ。貴様の目でも追えないニーナの動きをグラン・フラッタ殿とヴァルゴ殿は正確に捉えているようだが、2人にはニーナの動きが見えているのかっ?」

「んー、あの2人なら普通に見えてるかもしれないなぁ」


 爛々と目を輝かせて武者震いしているカレンが、興奮した様子で俺に解説を求めてくる。

 手合わせに注目しすぎて服の中で乳首を摘む俺の指先にも気付かないカレンの疑問に、カレンの乳首を摘み上げながら答える。


「竜人族はそれほどまでに突出した身体能力を持っているし、ヴァルゴの暮らしていた聖域の樹海は視界が得られない真っ暗なアウターでね。守人のみんなは魔力による視力強化を自然に行なっているんだ。カレンも閃刃による魔力制御を極めれば見えるようになるかもよ?」

「これも魔力制御の先にある姿なのか……! 素晴らしい……! 凄まじいな……!」

「人間族の身であそこまで目指すのはお勧めしないけどねー……っと、そろそろ止めた方が良さそうだ」


 全体魔力自動回復スキル持ちの俺とティムルが到着したことで魔力枯渇の心配はなくなったと思うけど、ニコニコしているニーナとフラッタに隠れてヴァルゴがちょっと辛そうだ。

 この3人で手合わせをした場合、ヴァルゴが1番相性が悪いんだよなー。


 仕合わせの暴君メンバーの中で対魔物戦最強は恐らくニーナで、対人戦最強は間違いなくヴァルゴだ。

 フラッタは対魔物、対人のどちらでも安定した強さを発揮できて、ティムルとリーチェは後衛というのがウチのパーティメンバーの役割だと思う。


 対魔物戦闘最強のニーナは身体能力やスキルに頼る傾向が強く、その動きは結構単純だ。

 逆に対人戦最強のヴァルゴは殺しの技術に特化しすぎていて、相手が強くなればなるほど手加減が難しくなるんだよな。


 我が家の家族は手合わせでも絶対に怪我しないように配慮してくれているので、その制限がヴァルゴにとってはかなりの足枷になっちゃってるんだよねー。


「無意味にヴァルゴの自信を喪失させるわけにはいかないから、そろそろ止めさせてもらうよ。ラトリアやエマはもっと見たそうにしてるけどごめんね」

「い、いえ……それは構わないんですけど……。ちゃんと止まります、これ……?」

「心配しなくていいよエマ。ニーナとフラッタがご機嫌だったら、一瞬で止められる魔法の言葉があるからねー」


 カレンとムーリの乳首をシコシコ扱いてから、足元に水溜りを作った2人を解放して前に出る。

 一瞬で手合わせは止められるけど、その一瞬で俺は満身創痍になるのは間違いないからな。カレンとムーリを巻き込むわけにはいかない。


 一応メタドライブも発動しておくか……。

 さぁ思い切り息を吸いましてー……!


「ニーナー! フラッター! 2人とも大好……ぐふぅっ!」


 言い終わるやいなや、砲撃されたような衝撃が俺の体を貫いてくる。

 呼吸の止まった体で無理矢理自分の姿を確認すると、獣化状態のニーナと竜化状態のフラッタが武器を放り投げて俺に抱き付いてきていた。


 狙い通りだけど想定以上にダメージが大きいんだよっ! 無詠唱キュアライトーっ!


「お帰りダンっ! 私も大好きなのーっ!」

「ダンよっ! 聞いて欲しいのじゃ! ニーナったら凄いのじゃーっ!」

「2人とも大好きー。だけどこのままじゃ俺が死んじゃうから、話の前に獣化と竜化を解いてくれると嬉しいなー?」

「あははっ! 獣化を解いて欲しかったらいっぱいえっちして欲しいのーっ」


 なにその俺が100%得する交換条件は!? ニーナってひょっとして祝福の女神なのでは!?

 でもこのままだとそのえっちをする前に俺の全身の骨が持たないんですよねっ!


「獣化に関係無くニーナのこともフラッタのこともたっぷり可愛がってあげるってば。だから俺の可愛いニーナと俺の可愛いフラッタ、いい子だからまずは獣化と竜化を解いてくれる?」

「「はーい」なのじゃー」


 すりすりと俺の胸に頬ずりしながら種族特性を解くニーナとフラッタ。

 とりあえずこれで俺の命の危険は無くなったかな?


 2人に全力で抱きつかれている俺の全身の骨がまだ悲鳴をあげているけど、流石に妻の素の全力ハグくらいには耐え切ってくれたまえ。夫としてなっ。


「ニーナもフラッタも大好きだよー。言うまでもないと思うけどヴァルゴのことも大好きだからねー?」

「私もお慕いしております世旦那様。それと助かりました。あのままでは少し危険だったかもしれません」

「ニーナとフラッタが楽しそうにしてたからやめ時を見失っちゃったんだね。そんな優しいヴァルゴのことも抱き締めたいからヴァルゴもおいでー」

「全部見抜かれてしまうと少し恥ずかしいですね……。では旦那様、失礼致します……」


 キュアライトによる全身治療が終わった頃、槍を仕舞ったヴァルゴがしずしずと俺の胸に収まってくれる。

 ヴァルゴのこの少し遠慮がちな態度は我が家としては珍しいから、これはこれで結構興奮しちゃうんだよなーよしよしなでなで。


「あはは~……。あんなに凄いニーナママたちも、パパの前では正に骨抜きだねぇ~……」


 骨抜きにされてるのはお互い様だけどね?

 勿論可愛い娘のアウラにもメロメロの骨抜きだからねー?


 恐らくニーナの動きを完全に捉えていたアウラの姿に頼もしさを憶えつつ、本気の手合わせを終えた3人を労って暫くよしよしなでなでを続けるのだった。
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