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744 親睦
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「ちゅうちゅう。っと、そろそろお昼かな?」
「んっ……そうですね。少なくともニーナさんたちより先に入城しておくべきでしょう。あんっ、もうダンさんったらぁ……」
ひたすらラトリアとキスをしたあと、俺はラトリアにお願いしておっぱいを飲ませてもらっている。
ラトリアの白くて形のいいおっぱいを根元から優しくも見上げて、ピンクの先端から滲み出る真っ白な母乳をペロペロちゅぱちゅぱ優しくしゃぶると、ラトリアも気持ち良さそうに体を震わせるのが可愛すぎる。
一応会食前だから手加減してちゅぱちゅぱしたんだけど、かえってお互い楽しむことが出来たかな?
「んんっ……。や、優しく吸われるの、いつもと違ってなんか……はうぅ……」
「ちゅうちゅう。はむはむ。ぺろぺろれろれろ。……うん、とりあえず止まったかな?」
もにゅもにゅおっぱいを揉み上げて、母乳が出ないか入念に確認する。
どうやらひたすら吸ったおかげで、ひとまずは大丈夫そうだ。
酷使してしまったラトリアの乳首をクリクリとマッサージしながら他のみんなのおっぱいも軽く吸わせてもらって、おっぱい成分を満タンまで補給してからフラグニークに転移した。
流石にここまで念入りにおっぱいしゃぶっておけば、俺だって数時間くらい我慢できるだろ。……多分?
「はっ! いつも通り生々しい臭いを纏っているじゃないか」
フラグニークに到着すると、すっかり身支度を整えたカレンが開口一番悪態をついてくる。
でもその言葉とは裏腹に、機嫌が悪そうな雰囲気は微塵も無いかな。
「そういうカレンはすっかり臭いを落としちゃったみたいだね? カレンのえっちな匂い、好きなんだけどなー」
「寝室ならまだしも、卑猥な臭いを漂わせて政務など出来ん。性的興奮に引き摺られてまともな判断が出来なくなるからな」
「それを言われると何も言い返せないな。カレンのえっちな匂いなんか嗅いじゃったら、確かに冷静ではいられないもん」
はいはいと肩を竦めながら、俺達を食堂に案内するカレン。
男性経験が無いと言いながら、男のあしらい方は慣れているようだ。
カレンくらい美人だと、言い寄ってくる男も後を絶たなかったんだろうな。
カルナスは勿論、先王シモンやバルバロイ殿下にも言い寄られていたらしいし。
「料理の準備は出来ているが、ニーナたちが来るまで待つのだろう? それまで少しゆっくり過ごしてくれ」
「皇帝陛下であるカレンをお待たせしてごめんね。でも気を使ってくれてありがとう」
「そりゃあ気は使わせていただくさ。近い将来家族になる者たちなのだから」
「カレンもみんなと仲良くやっていけそうで嬉しいよ。ちゅー」
「むっ、城でもするのかっ……? し、しかたないな……」
顔を近づける俺に一瞬戸惑ったカレンだったけど、直ぐに目を閉じてキスに応じてくれる。
流石に舌を入れるのは自重してカレンの柔らかい唇をハムハムしてみるけれど、周囲からは驚いたような反応はあっても、俺に対する怒りみたいなものは感じられないな。
使用人さんレベルにまで俺の存在が受け入れられているのか?
「……ダンよ。キスをしながら別の事に気を取られるのは感心しないぞ」
「ん、俺はえっちなことをしている時が1番リラックス出来るからね。ちゃんとカレンの柔らかい唇の感触にも集中してるから安心して」
「そんなに自然体に情事を楽しむほどに肌を重ねているのか? 私の身が持つか不安になってくるなぁ」
確かに昨日の時点で身は持ってなかった気がするな?
でも正式に婚姻を結んだら速攻で好色家を浸透させてあげるから大丈夫だよ。強制的に、確実に、絶対に?
昨晩の拘束は責め本当にきつかったのか、舌も入れない軽いキスはカレンも楽しかったようで、次第に鼻歌交じりでちゅっちゅちゅっちゅと唇を重ねてきてくれる。
そんなカレンの姿を、城の人たちはなんだかニヤニヤしながら眺めていた。
キュールとも気安く接しているカレンは、城の人たちとの関係も良好のようだ。
そう言えば以前、早く嫁いで欲しいと周囲にせっつかれていたとかも言ってたっけ?
「陛下。他のお客様もお見えになったようです」
「んっ。そうか。なら直ぐに食事の準備を頼む。客人たちは健啖家が多いからな。ん~っ」
報告に来たメイドさんに素早く指示を出して、直ぐに俺の唇に帰ってくるカレン。
ここは城なのにいいのかな? 俺はスペルディア王城でも散々キスした経験があるから気にしないけど。
結局そのままみんなが揃うまでずっとキスし続けたけど、本当に何の文句も言われなくてちょっと驚いてしまった。
「驚くくらいなら少しは自重しなよ……。暇さえあれば盛ってるんだからさぁ」
「ちゃんと自重して舌までは入れなかったし、おっぱいだって揉まなかったでしょ。キュールだって見てたじゃん」
「自重してアレだったのかい……。ダンさんは時と場所を選ぶ気は無さそうだねぇ」
運ばれてきた料理を無造作に口に放り込みながら、キュールが呆れて溜め息を吐く。
この世界では細かいテーブルマナーみたいなのは存在していないけれど、だからと言って皇帝陛下の前で気を抜きすぎじゃないか?
え、どの口が言ってるって? 返す言葉もございません。
「しかし本当に帝国の人たちは夫を受け入れられているんですね? まさか白昼堂々と城内でキスしても誰にも咎められないとは思いませんでしたよ」
「恐らく城の皆も、白昼堂々城内で私が唇を奪われるとは思っていなかっただろうがな。頭の固い連中が午後の会議で頭がいっぱいだったのが幸いしたのかもしれん」
キュールと違って美しい所作で料理を口に運ぶカレンの言い分によると、このささやかな食事会には部外者立ち入り禁止を申し渡してある上に、重鎮たちは観光業の話に頭がいっぱいになってしまってキスどころでは無かったようだ。
食事会の給仕をしてくれた侍女さんたちとは元々関係も良好で、お堅い皇帝陛下に訪れた突然の恋バナにみんな興味津々らしい。
「私より年下の侍女が次々に結婚して辞めていくのを何度も見送ったからな。辞める間際に、次は陛下の番ですよ、と言われるのが定番みたいになっていたのだ」
「ふふ。侍女がそんなことを口に出来るなんて、カレン陛下は城の皆さんととても良い関係を築けていたのですね」
「城内に歳の近い女性は侍女たちしか居なかったというのもあるが、我ながら良好な関係を築けていたとは思う。というか、城の管理を任せている相手をぞんざいに扱うなど馬鹿のすることだ」
「耳が痛いですね。夫に出会うまで、私は使用人たちの顔なんて殆ど気にしていませんでしたから」
シャロとカレンがちょっと住む世界の違う話で盛り上がっている。王族トークって奴?
どうやらカレンは仕事を評価し、個人を認識し、身分を越えて評価していたようだ。
この世界の使用人に対する接し方としては、シャロの態度の方が一般的な態度のように思える。
これが帝国の受継いできたマインドなのか、カレン個人の資質なのかはまだ判断出来ないな。
そもそもの違いとして、ヴェルモート帝国には奴隷制度が存在しない。
それはスペルド王国の奴隷制度を否定しているわけではなく、奴隷商人の転職魔法陣が用意できないからという理由からなんだけど、そのおかげで労働者の基本的立場は一定の水準に保たれているのかもしれない。
その代わり犯罪者には容赦が無くて、極刑は当たり前で、窃盗なんかの軽犯罪でも四肢を切り落とされたりするらしい。
取り分け野盗には容赦しないようだ。
「からかい半分ではあるが、侍女の皆が私を心配してくれていたのも本当だろう。20くらいまでは皇帝だから仕方無いという言い方だったのだが、20を過ぎてからは政務よりも伴侶を探せと真剣に諭されることが増えたからな」
「私は色狂いでしたから、そのうち色に狂って勝手に死ぬだろうと思われていたんでしょうね。早々に家族からも父からも見放されました」
「くっくっく。色女と言うには些か、シャーロット殿は一途過ぎるように見えるがな?」
「色に狂っていたのが夫に狂うようになっただけですよ。私の本質はきっと変わっておりませんっ」
ねーっと首を傾げて、にっこり俺に微笑みかけてくれるシャロ。
このお姫様、可愛すぎるーっ。
会議参加メンバーがカレンと親睦を深めている一方で、会議不参加メンバーは振舞われた料理を次々に平らげながら、なんだかあーでもない、こーでもないと話し合っているようだ。
「旅先でしか食べられない料理かー。ダンには悪いけど、私にはあんまりピンと来ないの。美味しい物を食べられればそれで充分満足だしさ」
「じゃがニーナ。ダンの作る料理は多種多彩じゃからのー。他ならぬダンに郷土料理とやらの必要性を語られると、なかなかに説得力を感じてしまうのじゃー」
「ニーナさんに会うまで料理をしたことが無かったっていうのに、ダンさんって色んなお料理を知ってますからね。やっぱり、知っているって大事です」
おや。どうやら料理そのものの話ではなく、不参加メンバーも観光業に紐付けて話し合っているようだ。
俺があまり料理に慣れていない頃から食事を振舞っていたフラッタやムーリは、知識や発想の重要性に改めて頷いている。
「ダンさんはまだまだお食事に満足されていませんからねぇ。少しでも食事の水準を良くしようと、私財を投じて王国中に料理を教えたりしてますし」
「そーそーっ! アレのおかげで教会の孤児の中にも、将来は自分の店を開いてみたいって子が増えたんだよね」
「個人的には希望者が集まって1つの店を開くべきだとは思うけどな? でもこれからは奴隷も激減して、子供もいっぱい増えるって言うし、美味いメシ屋は幾らあっても困らねぇってなっ」
俺が主催したお料理教室を手伝ってくれていたエマが、少し懐かしげに当時を振り返る。
まだ数ヶ月も経ってないのに、色々あったから凄く昔みたいに感じるな?
しかしお料理教室を開いた甲斐もあって、孤児の中には料理人を志そうと思ってくれた子が何人か出てくれたらしい。
月1の焚き出しを手伝っている教会のみんななら、きっと繁盛する店を開くことが出来るだろう。
「そこでしか食べられない特別なお料理はまだ分かるけど、移動魔法をあえて使わない旅行っていうのがピンとこないんだよねー。ポータル代を払えない人ならともかく、国境税を支払えるのにわざわざ徒歩で旅行に行く人なんて居るかなー?」
「ターニアの言い分も尤もです。仕合わせの暴君は徒歩での移動も苦になりませんが、一般の方はそうはいきませんよね?」
むしろ国境税の性質上、徒歩で旅行する方が何倍も費用がかさんでしまう。
顔を見合わせながら、う~ん……と体を傾ける2人が最高に可愛らしい。
移動制限に苦しめられたターニアと、聖域の樹海しか知らなかったラトリアには、スロートラベルの魅力は伝わらなかったようだ。
「パパって戦闘でもベッドの上でも物凄いのに、帝国の偉い人たちが興味を持つようなこともあっさり言っちゃうんだねー?」
「そうなんだよアウラ。そしてとんでもないお金を稼ぎながら、そのお金をどんどんばら撒いちゃうんだよねー。お金を貯めようなんて一切考えないんだよ、ダンって」
「それは仕方ないわよリーチェ。どんどん使っていかないとインベントリに収納しきれなくなっちゃうんですもの。無理矢理にでもお金を使わなきゃいけない……なんて、商人の頃ですら思ったことなかったわぁ……」
微妙にセンシティブな発言をするアウラを挟んで、料理を頬張りながら微妙に呆れた様子のティムルとリーチェ。
今の俺には莫大な不労所得もあるから、放っておくと王国中の貨幣が俺に集中しかねないんだよね~……。
この世界は魔物さえ狩れればお金に困る心配はない。だから貯金なんて考えるだけ無駄なんだよ。
そういう心配をするのは、もっともっと後になってからでも充分だ。
これから急速な変化の時を迎えるこの世界に思いを馳せながら、和やかな雰囲気で食事会は終了した。
「それじゃねダン。会議が終わったらユニのところで待ってるのー」
「またあとでねニーナ。いってらっしゃい」
会議不参加メンバーを、短めに唾液を交換してから送り出す。
なんか今日は朝からずっとキスばかりしているな?
もしも俺が皇帝だったら、今日という日をキスの日として国民の祝日に設定してしまいそうだ。
「それではそろそろ私たちも向かおう。石頭どもが手薬煉を引いて待ち侘びて……」
「お食事中のところ失礼します……! かっ、火急の用件にて、どうかご容赦ください……!」
カレンの案内で場内に戻ろうとした時だった。
酷く慌てた様子の兵士さんが汗だくのままカレンの前に跪き、両手で1枚の便箋を差し出している。
その様子にカレンは小さく溜め息を吐いたけれど、直ぐに皇帝の顔を作って兵士に力強く頷いて見せた。
「許す。で、その火急の件とはなんだ? 詳しく報告せよ」
「はっ! カレン陛下、覚悟してお聞きください……!」
大袈裟に感じる前置きをしてから伝令の兵士は語り出す。
しかし彼から語られた内容は、確かに火急の用件と呼ぶに相応しいものだった。
「恐れながら申し上げます……! 神器が……神器が奪われてしまいました……! ……カルナス将軍の手によって!」
「……なん……だとぉ……!?」
予想もしていなかった報告内容に、カレンも流石に驚愕した様子で固まってしまった。
ここで繋がってくるか、識の水晶……。
折角もう少しでカレンの皇帝ボディを、余すところ無く可愛がってやれそうだったのにな~……。
「んっ……そうですね。少なくともニーナさんたちより先に入城しておくべきでしょう。あんっ、もうダンさんったらぁ……」
ひたすらラトリアとキスをしたあと、俺はラトリアにお願いしておっぱいを飲ませてもらっている。
ラトリアの白くて形のいいおっぱいを根元から優しくも見上げて、ピンクの先端から滲み出る真っ白な母乳をペロペロちゅぱちゅぱ優しくしゃぶると、ラトリアも気持ち良さそうに体を震わせるのが可愛すぎる。
一応会食前だから手加減してちゅぱちゅぱしたんだけど、かえってお互い楽しむことが出来たかな?
「んんっ……。や、優しく吸われるの、いつもと違ってなんか……はうぅ……」
「ちゅうちゅう。はむはむ。ぺろぺろれろれろ。……うん、とりあえず止まったかな?」
もにゅもにゅおっぱいを揉み上げて、母乳が出ないか入念に確認する。
どうやらひたすら吸ったおかげで、ひとまずは大丈夫そうだ。
酷使してしまったラトリアの乳首をクリクリとマッサージしながら他のみんなのおっぱいも軽く吸わせてもらって、おっぱい成分を満タンまで補給してからフラグニークに転移した。
流石にここまで念入りにおっぱいしゃぶっておけば、俺だって数時間くらい我慢できるだろ。……多分?
「はっ! いつも通り生々しい臭いを纏っているじゃないか」
フラグニークに到着すると、すっかり身支度を整えたカレンが開口一番悪態をついてくる。
でもその言葉とは裏腹に、機嫌が悪そうな雰囲気は微塵も無いかな。
「そういうカレンはすっかり臭いを落としちゃったみたいだね? カレンのえっちな匂い、好きなんだけどなー」
「寝室ならまだしも、卑猥な臭いを漂わせて政務など出来ん。性的興奮に引き摺られてまともな判断が出来なくなるからな」
「それを言われると何も言い返せないな。カレンのえっちな匂いなんか嗅いじゃったら、確かに冷静ではいられないもん」
はいはいと肩を竦めながら、俺達を食堂に案内するカレン。
男性経験が無いと言いながら、男のあしらい方は慣れているようだ。
カレンくらい美人だと、言い寄ってくる男も後を絶たなかったんだろうな。
カルナスは勿論、先王シモンやバルバロイ殿下にも言い寄られていたらしいし。
「料理の準備は出来ているが、ニーナたちが来るまで待つのだろう? それまで少しゆっくり過ごしてくれ」
「皇帝陛下であるカレンをお待たせしてごめんね。でも気を使ってくれてありがとう」
「そりゃあ気は使わせていただくさ。近い将来家族になる者たちなのだから」
「カレンもみんなと仲良くやっていけそうで嬉しいよ。ちゅー」
「むっ、城でもするのかっ……? し、しかたないな……」
顔を近づける俺に一瞬戸惑ったカレンだったけど、直ぐに目を閉じてキスに応じてくれる。
流石に舌を入れるのは自重してカレンの柔らかい唇をハムハムしてみるけれど、周囲からは驚いたような反応はあっても、俺に対する怒りみたいなものは感じられないな。
使用人さんレベルにまで俺の存在が受け入れられているのか?
「……ダンよ。キスをしながら別の事に気を取られるのは感心しないぞ」
「ん、俺はえっちなことをしている時が1番リラックス出来るからね。ちゃんとカレンの柔らかい唇の感触にも集中してるから安心して」
「そんなに自然体に情事を楽しむほどに肌を重ねているのか? 私の身が持つか不安になってくるなぁ」
確かに昨日の時点で身は持ってなかった気がするな?
でも正式に婚姻を結んだら速攻で好色家を浸透させてあげるから大丈夫だよ。強制的に、確実に、絶対に?
昨晩の拘束は責め本当にきつかったのか、舌も入れない軽いキスはカレンも楽しかったようで、次第に鼻歌交じりでちゅっちゅちゅっちゅと唇を重ねてきてくれる。
そんなカレンの姿を、城の人たちはなんだかニヤニヤしながら眺めていた。
キュールとも気安く接しているカレンは、城の人たちとの関係も良好のようだ。
そう言えば以前、早く嫁いで欲しいと周囲にせっつかれていたとかも言ってたっけ?
「陛下。他のお客様もお見えになったようです」
「んっ。そうか。なら直ぐに食事の準備を頼む。客人たちは健啖家が多いからな。ん~っ」
報告に来たメイドさんに素早く指示を出して、直ぐに俺の唇に帰ってくるカレン。
ここは城なのにいいのかな? 俺はスペルディア王城でも散々キスした経験があるから気にしないけど。
結局そのままみんなが揃うまでずっとキスし続けたけど、本当に何の文句も言われなくてちょっと驚いてしまった。
「驚くくらいなら少しは自重しなよ……。暇さえあれば盛ってるんだからさぁ」
「ちゃんと自重して舌までは入れなかったし、おっぱいだって揉まなかったでしょ。キュールだって見てたじゃん」
「自重してアレだったのかい……。ダンさんは時と場所を選ぶ気は無さそうだねぇ」
運ばれてきた料理を無造作に口に放り込みながら、キュールが呆れて溜め息を吐く。
この世界では細かいテーブルマナーみたいなのは存在していないけれど、だからと言って皇帝陛下の前で気を抜きすぎじゃないか?
え、どの口が言ってるって? 返す言葉もございません。
「しかし本当に帝国の人たちは夫を受け入れられているんですね? まさか白昼堂々と城内でキスしても誰にも咎められないとは思いませんでしたよ」
「恐らく城の皆も、白昼堂々城内で私が唇を奪われるとは思っていなかっただろうがな。頭の固い連中が午後の会議で頭がいっぱいだったのが幸いしたのかもしれん」
キュールと違って美しい所作で料理を口に運ぶカレンの言い分によると、このささやかな食事会には部外者立ち入り禁止を申し渡してある上に、重鎮たちは観光業の話に頭がいっぱいになってしまってキスどころでは無かったようだ。
食事会の給仕をしてくれた侍女さんたちとは元々関係も良好で、お堅い皇帝陛下に訪れた突然の恋バナにみんな興味津々らしい。
「私より年下の侍女が次々に結婚して辞めていくのを何度も見送ったからな。辞める間際に、次は陛下の番ですよ、と言われるのが定番みたいになっていたのだ」
「ふふ。侍女がそんなことを口に出来るなんて、カレン陛下は城の皆さんととても良い関係を築けていたのですね」
「城内に歳の近い女性は侍女たちしか居なかったというのもあるが、我ながら良好な関係を築けていたとは思う。というか、城の管理を任せている相手をぞんざいに扱うなど馬鹿のすることだ」
「耳が痛いですね。夫に出会うまで、私は使用人たちの顔なんて殆ど気にしていませんでしたから」
シャロとカレンがちょっと住む世界の違う話で盛り上がっている。王族トークって奴?
どうやらカレンは仕事を評価し、個人を認識し、身分を越えて評価していたようだ。
この世界の使用人に対する接し方としては、シャロの態度の方が一般的な態度のように思える。
これが帝国の受継いできたマインドなのか、カレン個人の資質なのかはまだ判断出来ないな。
そもそもの違いとして、ヴェルモート帝国には奴隷制度が存在しない。
それはスペルド王国の奴隷制度を否定しているわけではなく、奴隷商人の転職魔法陣が用意できないからという理由からなんだけど、そのおかげで労働者の基本的立場は一定の水準に保たれているのかもしれない。
その代わり犯罪者には容赦が無くて、極刑は当たり前で、窃盗なんかの軽犯罪でも四肢を切り落とされたりするらしい。
取り分け野盗には容赦しないようだ。
「からかい半分ではあるが、侍女の皆が私を心配してくれていたのも本当だろう。20くらいまでは皇帝だから仕方無いという言い方だったのだが、20を過ぎてからは政務よりも伴侶を探せと真剣に諭されることが増えたからな」
「私は色狂いでしたから、そのうち色に狂って勝手に死ぬだろうと思われていたんでしょうね。早々に家族からも父からも見放されました」
「くっくっく。色女と言うには些か、シャーロット殿は一途過ぎるように見えるがな?」
「色に狂っていたのが夫に狂うようになっただけですよ。私の本質はきっと変わっておりませんっ」
ねーっと首を傾げて、にっこり俺に微笑みかけてくれるシャロ。
このお姫様、可愛すぎるーっ。
会議参加メンバーがカレンと親睦を深めている一方で、会議不参加メンバーは振舞われた料理を次々に平らげながら、なんだかあーでもない、こーでもないと話し合っているようだ。
「旅先でしか食べられない料理かー。ダンには悪いけど、私にはあんまりピンと来ないの。美味しい物を食べられればそれで充分満足だしさ」
「じゃがニーナ。ダンの作る料理は多種多彩じゃからのー。他ならぬダンに郷土料理とやらの必要性を語られると、なかなかに説得力を感じてしまうのじゃー」
「ニーナさんに会うまで料理をしたことが無かったっていうのに、ダンさんって色んなお料理を知ってますからね。やっぱり、知っているって大事です」
おや。どうやら料理そのものの話ではなく、不参加メンバーも観光業に紐付けて話し合っているようだ。
俺があまり料理に慣れていない頃から食事を振舞っていたフラッタやムーリは、知識や発想の重要性に改めて頷いている。
「ダンさんはまだまだお食事に満足されていませんからねぇ。少しでも食事の水準を良くしようと、私財を投じて王国中に料理を教えたりしてますし」
「そーそーっ! アレのおかげで教会の孤児の中にも、将来は自分の店を開いてみたいって子が増えたんだよね」
「個人的には希望者が集まって1つの店を開くべきだとは思うけどな? でもこれからは奴隷も激減して、子供もいっぱい増えるって言うし、美味いメシ屋は幾らあっても困らねぇってなっ」
俺が主催したお料理教室を手伝ってくれていたエマが、少し懐かしげに当時を振り返る。
まだ数ヶ月も経ってないのに、色々あったから凄く昔みたいに感じるな?
しかしお料理教室を開いた甲斐もあって、孤児の中には料理人を志そうと思ってくれた子が何人か出てくれたらしい。
月1の焚き出しを手伝っている教会のみんななら、きっと繁盛する店を開くことが出来るだろう。
「そこでしか食べられない特別なお料理はまだ分かるけど、移動魔法をあえて使わない旅行っていうのがピンとこないんだよねー。ポータル代を払えない人ならともかく、国境税を支払えるのにわざわざ徒歩で旅行に行く人なんて居るかなー?」
「ターニアの言い分も尤もです。仕合わせの暴君は徒歩での移動も苦になりませんが、一般の方はそうはいきませんよね?」
むしろ国境税の性質上、徒歩で旅行する方が何倍も費用がかさんでしまう。
顔を見合わせながら、う~ん……と体を傾ける2人が最高に可愛らしい。
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「パパって戦闘でもベッドの上でも物凄いのに、帝国の偉い人たちが興味を持つようなこともあっさり言っちゃうんだねー?」
「そうなんだよアウラ。そしてとんでもないお金を稼ぎながら、そのお金をどんどんばら撒いちゃうんだよねー。お金を貯めようなんて一切考えないんだよ、ダンって」
「それは仕方ないわよリーチェ。どんどん使っていかないとインベントリに収納しきれなくなっちゃうんですもの。無理矢理にでもお金を使わなきゃいけない……なんて、商人の頃ですら思ったことなかったわぁ……」
微妙にセンシティブな発言をするアウラを挟んで、料理を頬張りながら微妙に呆れた様子のティムルとリーチェ。
今の俺には莫大な不労所得もあるから、放っておくと王国中の貨幣が俺に集中しかねないんだよね~……。
この世界は魔物さえ狩れればお金に困る心配はない。だから貯金なんて考えるだけ無駄なんだよ。
そういう心配をするのは、もっともっと後になってからでも充分だ。
これから急速な変化の時を迎えるこの世界に思いを馳せながら、和やかな雰囲気で食事会は終了した。
「それじゃねダン。会議が終わったらユニのところで待ってるのー」
「またあとでねニーナ。いってらっしゃい」
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もしも俺が皇帝だったら、今日という日をキスの日として国民の祝日に設定してしまいそうだ。
「それではそろそろ私たちも向かおう。石頭どもが手薬煉を引いて待ち侘びて……」
「お食事中のところ失礼します……! かっ、火急の用件にて、どうかご容赦ください……!」
カレンの案内で場内に戻ろうとした時だった。
酷く慌てた様子の兵士さんが汗だくのままカレンの前に跪き、両手で1枚の便箋を差し出している。
その様子にカレンは小さく溜め息を吐いたけれど、直ぐに皇帝の顔を作って兵士に力強く頷いて見せた。
「許す。で、その火急の件とはなんだ? 詳しく報告せよ」
「はっ! カレン陛下、覚悟してお聞きください……!」
大袈裟に感じる前置きをしてから伝令の兵士は語り出す。
しかし彼から語られた内容は、確かに火急の用件と呼ぶに相応しいものだった。
「恐れながら申し上げます……! 神器が……神器が奪われてしまいました……! ……カルナス将軍の手によって!」
「……なん……だとぉ……!?」
予想もしていなかった報告内容に、カレンも流石に驚愕した様子で固まってしまった。
ここで繋がってくるか、識の水晶……。
折角もう少しでカレンの皇帝ボディを、余すところ無く可愛がってやれそうだったのにな~……。
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孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
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