異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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717 虚無

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「つまり、スキルや魔法を使った調査方法は役に立たないということですか?」


 俺を膝枕しておっぱいを吸わせてくれているエマが、キュールの触心から得た結論をまとめてくれる。


 キュールが不貞腐れた後にフルファインダーも試してみた結果、魔力の膜の向こう側に魔力を広げることは可能だったけど、そこから情報を得ることは一切出来なかった。

 メタドライブで伸ばした魔力も制御は出来るけど、本当に維持できるだけで何も出来ることは無かった。


「はむはむ。危険が無いことが分かっただけでも収穫だけどねー。でも地面が無い事、踏み込んだら戻って来れない事を考えると安全とも言えないんだけど。れろれろ」

「まさに世界の終わり、断崖絶壁なんだねー。他の場所もこんな感じになっているのかなー?」


 俺の上で激しく踊っている狐耳を生やしたニーナが、動きを止めずに世界の果てに視線を向けている。

 どうなんだろうなー? 他の場所でもこんな感じなんだろうか?


 そもそもこの世界がどのくらいの広さを持っているのかが、いまいち把握しきれてないんだけど……。

 俺の両側に添い寝してくれているシャロとムーリのおっぱいの先を捻りあげながら、以前チラッと思い至った説をみんなに披露しておく。


「ガルクーザが討伐された時、崩界の余波で色んなところに影響が出たって言ってたじゃない? だからさ、俺はここもそうじゃないかなって思うんだよねー」

「……攻撃型移動魔法の崩界でなにも無い空間を作ったって言うのかい? でもあの先は魔力が一切作用しない空間だったのだから、崩界だって効果を発揮出来ないんじゃ?」

「いやいやキュール。移動魔法である崩界がこの先の空間を、魔力も何もかもを含めて全て削り取っていってしまったんじゃないかなって、俺はそう思ってるわけよ」

「……空間転移ってことかい? そんな馬鹿なと言いたいところだけれど、神器始界の王笏と、邪神ガルクーザの強大な魔力がぶつかり合った結果だと思えば、何が起きても不思議ではない……?」


 ついさっきまで不貞腐れていたキュールも、思考の取っ掛かりさえ見つかってしまえば完全に立ち直ってくれたようだ。

 知的好奇心に忠実なのが、良くも悪くもキュールらしい。


 キュールが考え事をしている間にお腹がいっぱいになったニーナに代わり、竜化したフラッタが俺の上で元気に動いてくれている。

 キュールが知的好奇心に忠実なら、俺は性的欲求に忠実すぎるかもしれないなっ。


「この世界って異界から流れ込む魔力と、この世界に漂う魔力が混在して構成されてるわけでしょ? その2つの魔力を空間ごと根こそぎ引っこ抜いちゃった結果、なにも無い空間が出来上がっちゃったのかなって思ってるんだ」

「……そう、か! この世界は異界から流れ込む魔力で形作られているから、異界の扉の魔力が流れ込まないと世界が修復出来ない……そういうことかいっ!?」

「多分だけどねー? ユニの1件で実証できたように、この世界の魔力は異界から流れ込む魔力を常に押し返そうとしてる状態だ。アウターの外にも魔力が漏れ出ているみたいだけど、そんな微々たる魔力量じゃこの先の空間を修復、または生成することが出来なかったんじゃないかな?」


 推論に推論を重ねている時点で信憑性も何もないけど、ここって元々は世界の果てでもなんでもなくて、地続きで広がる世界が存在していた場所だと思うんだよなー。

 それが崩壊の影響で抉り取られてしまったせいで、異界の扉からの魔力流入が起こらず、なにも無い空間として残ってしまったっていう感じなんじゃないの?


 つまりここは世界の果てじゃなくて、バグだ。

 偶発的に発生してしまった、本来ありえない空間がこの先の虚無空間なんじゃないかねー。


「勿論根拠なんて示せないよ? でもここから遠く離れたグルトヴェーダ山岳地帯に盆地を生み出すほどの影響力だからね。クラメトーラより決戦の地に近かったであろうこの場所の方が大きな影響を受けても不思議じゃないかなって」

「全ては神のみぞ知るってことかい……! くっそ~! 識の水晶が使えればなーっ!」


 再び地面に大の字に身を投げ出して、悔しそうに雄叫びを上げるキュール。

 確かに識の水晶に問えば正解が分かるだろうけど、ただの好奇心でなんの実利も無い事に自分の感情を捧げるなんて割に合わなすぎるっての。


 無事にフラッタもお腹いっぱいになって、俺の上にアウラが乗っかってくる。

 俺の頭の方もエマからラトリアの膝の上に移動して、ラトリアの母乳をちゅぱちゅぱとしゃぶっていると、チャールが何かに気付いたように、あっ……! と声を上げた。


「魔力が存在しないから修復されないって言うなら、魔力を補充してあげればこの先の空間も正常化するんでしょっ? 私たちならそれ、出来るんじゃないのかなっ!」

「呼び水の鏡……! もしくは招きの窓でもいけっか!? 確かにダンなら何とかできるんじゃねーのかっ!?」

「んー……。チャールとシーズには悪いけど、俺個人としてはあんまり乗り気ではないかなぁ……」

「なんで? 私もチャールとシーズに同意見なの。ダンさんならこの先の空間も普通に取り戻せちゃうんじゃないのー?」


 ターニアがシャロと位置を交替して俺の隣りに寄り添いながら、チャールとシーズの提案に乗っかってくる。

 俺はムーリと交替したヴァルゴのおっぱいと一緒にターニアのおっぱいの感触を確かめながら、気が進まない理由を説明する。


「第1に、この世界の反発力が働かない場所に異界の扉を開くのが怖い。この世界の魔力は聖域の樹海や世界樹によって調整されていたのだから、想定外の魔力流入が起こると良くないことが起きる気がするんだ」

「ふむ……世界中の魔物が極端に強化されたりはあるかもしれませんね。あとは全世界がアウター化して、植物や野生動物に悪影響を及ぼしたり……」

「わっ、私たちならいくら魔物が強くなっても平気だと思うけど……。他の人はそうもいかっ、ないよね……」


 ヴァルゴが口にした全世界アウター化の可能性に、俺に注ぎ込まれている最中のアウラがぴくぴく体を震わせながら不安を口にしている。

 そういった事態を防ぐ為に居るのがヴァルゴたち聖域の守人であり、そういった事態を収める為に生み出されたのが聖女アウラなんだろうなぁ。


 俺の目が黒いうちは、絶対にそんな事態を招くつもりは無いけどね。


「第2に、世界を修復するほどの魔力を流入させて、この世界の魔力バランスを崩してしまうのが怖いかな。流入した魔力が直ぐに世界の生成に使われるとは限らないからね」

「聖域や世界樹が直ぐに森を生み出しているのは、マジックアイテムによる効果ですものね……。仮にここに異界の扉を開いたとしても、私たちの想定通りに事が運ぶかは未知数か……」

「……調整が必要だと仰るなら、ここにもまたユニのような存在を生み出せばよいのではないですか? 制御されている異界の扉でしたら、不測の事態は起こらな……はぅっ!?」


 慎重論を口にするティムルと、世界樹を生み出せばいいのではと提案してくるラトリア。

 そんなラトリアの乳首の根元に歯を立てて、ラトリアの提案を却下する。


「ラトリアの言い分も分かるけど、大地すら無いこの先の虚無空間にマジックアイテムを設置するのは不可能だし、こっちの世界と虚無空間を跨ぐようにして異界の扉を開くのは、何が起こるか分からなすぎて流石に許可出来ないよ。そもそもこの場所を今すぐ何とかしなきゃいけない理由も無いのにさ」

「むむむ……。悔しいけれど、私もダンさんの意見に賛成だよ」

「えぇ~? キュールさんも反対かぁ……。いいアイディアだと思ったんだけどな~……」

「チャール。私たちは聖域の樹海やユニの件もあって少し気軽に考えてしまっているけれど、異界の扉を開くのは本来こんなに気軽に考えちゃいけない問題なんだ。失敗して世界が滅びました、なんて事態が起こらないとも限らない。必要性が無いなら避けるべきだよ」


 ガックリと肩を落すチャールと、そんなチャールの頭を優しい手付きで撫でるキュール。


 キュールがこんなことをするのは珍しいな?

 口ではチャールを諭しながらも、がっかりしているチャールの気持ちも分かるって言いたいのかもしれない。


「ねぇねぇダンさん。異界の扉を開かずに、少しずつ魔力を流し込んでいく~、なんて方法ならどうでしょう? それなら不測の事態は起こらないのでは?」

「具体的にどうやって魔力を流し込むのさ? えっちなムーリの1番奥に俺の魔力を注ぎ込むのとはワケが違うんだよ?」

「発光魔玉を片っ端から投げ込むとか、でしょうか? コストを度外視するのであればエネルギーキューブを用いてもいいかもしれませんが」

「残念だけどシャロ。この先の空間には底があるかどうかすら未知数だ。魔玉やエネルギーキューブを投げ入れても、なにも無い空間を無限に落ち続けてしまう可能性も無くはないんだよ?」


 もしも魔玉やエネルギーキューブを用いて少しずつ魔力を回復していくなら、人の手でマジックアイテムを支えておく必要がありそうだ。

 だけど効果があるかどうかも分からない方法に人手を割くのはリスキーだし、世界を創造するなんて魔力をチマチマ補充するのは現実的じゃなさ過ぎる。


「やることがあるとするなら、今回お姉さんが引いてくれた境界線を整備して、終焉の箱庭を抜けてきた人が不用意にこの先に足を踏み入れないようにすることくらいじゃない? 時間が経てば自然に修復される可能性もあるんだから、無理に修復を試みる必要は無いでしょ」

「ん~……。なぁんか怪しいの~……」

「ニーナ?」


 ラトリアのおっぱいをしゃぶり続けているので分かりにくいけど、ぽっこりお腹を愛おしそうに擦っているニーナが俺に訝しげな視線を送ってきているように感じられる。

 ニーナのジト目は大好物なんだけど、今の話でそんな目で見られる要素があったとは思えないんだよ?


「ねぇダンっ? 貴方私たちに隠している事があるんじゃないのーっ?」

「へ? 何も隠しているつもりは無いけど……? 少なくとも、みんなに隠し事をしている自覚は無いよ?」

「だってダンったらおかしいのっ! いつもだったらどうやって実現できるかを考えるのに、今回に限ってはどうやってチャールたちを諦めさせるかって方向性で話をしてるようにしか見えなかったのっ」

「……俺の考え方が普段とは逆だった?」

「いつもなら気軽にとんでもない事をやらかして、まいっかーって済ませちゃうのがダンでしょっ!」

「……う~ん。流石にその意見には頷きたくないんだよ?」


 しかしニーナの意見を聞いていると、確かに今回はみんなの要望を実現しようとはしていないかもしれないな?

 緊急性が低いから? 危険度が高いから? 何が起こるか想定出来ないから?


 理由はどうあれ、普段の俺ならニーナの言う通りに、みんなの要望を叶える為にはどうするかを考えていそうではあるな?


「なのに今回のダンは、みんなが出す意見やアイディアを悉く却下してるのっ! ダンっ! 貴方確信があるんでしょっ!? この先の空間を修復する方法に、何か心当たりがあるんでしょーっ!?」

「え、えぇ……!? 流石にその方法は思いついてないよ……? 今のところは見当もついて……」

「自覚が無いだけでしょっ! 私たちの事が大好きなダンが、みんなの意見をこんなにきっぱり否定することってありえないのっ! 貴方には正解の方法が分かっているから、それじゃダメなんだよーって却下してるんだからっ」

「自覚が無いだけで、俺の中にはもう正解の確信がある……?」


 口の中のラトリアの乳首を舌で転がし、両手で掴んだターニアとヴァルゴのおっぱいを揉みしだき、繋がったままのアウラの奥をガンガン突きながらニーナの言葉を反芻する。


 俺に正解の予想がついているかどうかは置いておいて、確かに俺は虚無空間を再生させる話に真面目に取り合っていなかった気がしてくる。

 ここはもう1度真剣にラトリアの母乳を啜りながら、虚無空間を再生させる方法を真面目に考えてみるべきじゃないか?


 そもそもこの先の空間が崩界で失われたという説だって仮説で推論でしかないけど、それは正しかったとして……。


「あ~……。なぁんで気が進まないのか分かった……。解決方法がまぁまぁリスキーな上に、仮に実行しても充分な魔力が供給できるとは思えないから、無意識のうちにここの再生を諦めてたのかも……」

「1人で納得してないで、全員に分かるように言いなさいっ。ダン、貴方はどんな方法を思いついたのっ?」

「うん……。虚無空間にマジックアイテムを設置することは出来ない。仮に出来ても異界の扉を開くのは何が起こるか未知数だ。けれど異界の扉を開かなければ、必要充分な量の魔力を確保出来ない……」

「うんうん。それで貴方はいったいどんな方法でそれを解決しようとしてるの?」

「マジックアイテムを用いずに、膨大な魔力を供給する方法……。その魔力量で十分かどうかは分からないけれど、開いていた異界の扉を強制的に閉じてしまうほどの魔力を生み出す方法が、俺達にはあるよね……?」

「「「――――ヴァンダライズっ……!!」」」


 同時に思い当たった仕合わせの暴君メンバーの声が、草原の空で重なった。


 メタドライブを使用したヴァンダライズなら、対象を指定することなく発動する事が可能なはず。

 ヴァンダライズで送り込む魔力で虚無空間が再生するかは五分五分だけど、これ以外の方法はちょっと直ぐには思いつかないな。


 もう1つ問題があるとすれば、ウェポンスキルを使う予定のニーナとティムルの魔力を、俺がどうやって束ねるかってことなんだけど……。

 俺と最も付き合いの長い2人の魔力を、俺が束ねられないとは考えられないんだよなぁ……。
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