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最新章
659 ※閑話 槍心
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「ヴァルゴさん。1つお願いがあるのですが、聞いてもらえませんか?」
「なんでしょうラトリア? 私が役立てることであればいいのですが……」
ラトリアが真剣な表情で私に話しかけてきます。
ラトリアが旦那様抜きで私にお願い事をしてくるなんて珍しいですね。何の用件なんでしょう?
「ヴァルゴさんはこの祝賀イベント中、各地で戦闘指南をされるんですよね?」
「ええ。私に出来るのは槍を扱うことだけですからね。魔人族が王国に馴染むいい機会だとも言われましたし、精一杯励むつもりですよ」
浸透の知識が広まって、魔物狩りたちの職業浸透数が一気に増えていく事が予想されるこれからのスペルド王国では、戦闘技術が軽視されていく事が懸念されております。
なので職業補正に頼らずに腕を磨いた魔人族の戦闘技術が必要になるのではないかと、旦那様は私たち守人を王国中に派遣したのです。
……今までは王国にほとんど居なかったらしい魔人族の私たちは、各地で好奇の視線に晒されることも少なくないのですけれどね。
このくらいは甘んじで受け入れるとしましょう。
「その一環というわけじゃないんですけど、私の戦闘指南のほうも手伝ってもらえませんか? 私は剣を教えることはできるんですけど、槍には疎くって……」
「ラトリアの手伝いというと、ヴァルハールで竜人族に槍を教えろという話ですか? ですがヴァルハールには既に他の守人が派遣されていたと思いますが」
「ヴァルハールの方ではなくってですね。王国騎士団の指南を手伝ってもらいたいんです」
「王国騎士団……」
確かアウターエフェクトが発生したときにも派遣される、スペルド王国最大の戦力のことですね。
スピアオーガゼノンによるスペルディア襲撃の際にも奮闘したようですし、この機会に少し話をしてみるのもいいかもしれません。
ラトリアの誘いに興味が湧いた私は、互いのスケジュールを調整して、ラトリアが王国騎士団に戦術指南をつける日に同行したのでした。
それで実際に足を運んだまでは良かったのですが……。
「ラトリア様! 今度は自分と手合わせをお願いします!」
「見てくださいラトリア様! ラトリア様に言われた通りに訓練したんです! 剣の変化を確認してもらえませんか!」
「ラトリア様!」「ラトリア様!」
スペルディアの騎士ギルドに足を踏み入れた途端、ラトリアに群がってくる男たち。
どうやら王国騎士団の皆さんは、ラトリアの指導がお目当てのようですね。
そう言えば以前ムーリの転職に訪れた時に、旦那様が居るというのにラトリアに求婚する輩が後を絶たなかったと聞いておりましたね。
絶世の美貌を持ち、更には剣士としても尊敬に値する人物ということで、ラトリアは王国騎士たちに絶大な人気があるようです。
「はぁ……。ま、指南をしなくて済むのであれば槍を振るえばいいだけの話です」
此方に申し訳無さそうな視線を送るラトリアに、構いませんよと笑顔を返します。
ラトリアに悪気が無いのは分かっていますし、旦那様以外の男に興味などありません。ラトリアも本気で困れば実力で解決できる場面のはずですから、助け舟は必要無いでしょう。
せっかくの機会ですし、1度自分の槍を見直してみるとしましょう。
「せいっ! やぁっ!」
誰の邪魔にもならないであろうギルドの隅っこで、自分の体の隅々まで意識を巡らせながらひと突きひと突き槍を振るいます。
魔迅を使わずに、けれど魔迅で魔力を走らせるイメージを持って、一心不乱に槍を振るいます。
集中しながら槍を振るう中で思い起こされるのは、旦那様に切りかかった帝国の剣士の剣……。
「…………ギリ」
記憶に蘇った光景に、思わず歯噛みしてしまいます。
旦那様とは比較にならないほど未熟ではありましたが、あの男の技術は確かに旦那様の魔力操作と同一のものでした。
自分以外の誰かが旦那様の技術を再現した事が悔しくて、そしてどうしても許せない……!
魔力制御技術自体は私の方が圧倒的に上だと旦那様は仰っていました。そして旦那様のメタドライブは、私のダークブリンガーやフラッタのオーラに近い技術であるとも。
扱っているのが魔力か職業補正かという違いしかなく、殆ど同じ技術であると仰っていたはずです。
……ならばどうして、私には再現出来ないのですか、ヴァルゴ!!
「……落ち着きなさいヴァルゴ。心乱しても技術の向上は望めません。ここは旦那様を見習うべきです。そう、旦那様のように……」
旦那様のように、発想を転換するんです……。
無理に旦那様と全く同じ技術を利用するのではなく、ダークブリンガーを旦那様のメタドライブと同じ領域まで引き上げることが出来れば……!
メタドライブを使用した旦那様は、私とフラッタを超える膂力に、深獣化したニーナを超える速度。そしてティムルの熱視を超える魔力察知能力に、範囲を拡大した触心のような能力まで兼ね備えていました。
こうして改めて思い返すと、旦那様の規格外っぷりが際立つようではありますが……。職業補正そのものを操作出来ない私には、ダークブリンガーでメタドライブに迫るしかないでしょう!
「私としたことが、なんと甘えてしまっていたのか……。これではあの男を笑えませんね……」
発想の転換。先へ進む確固たる意思と覚悟。
それはかつて槍持つ鬼と退治した時に新たな力を欲した私自身が、既に体現していたことだったじゃありませんか……。
閃刃を編み出して技術が止まってしまったあの男のように、私もまたダークブリンガーとウルスラグナを編み出したことで、自身の技術に慢心してしまっていたのかもしれませんね……。
「旦那様はいつも、強くなる答えは私たちの中にあると仰っています。であれば私が強くなる方法は、旦那様の中にあると思うべきですよね……」
槍を振るいながら、旦那様の剣、魔力制御、お言葉、熱さ、硬さに至るまで、旦那様と過ごした時間を思い返します。
旦那様がメタドライブを編み出した時に説明してくれた言葉を、1つ1つ思い返します。
メタドライブは職業補正の自動制御だと言っていました。自身に累積した膨大な職業補正をただ全開にして、全力で使用するだけの技術であると。
私のダークブリンガーも本質的には同じで、魔迅の魔力と職業補正を混ぜ合わせ、その魔力を全身にまとう技術です。
これだけを考えれば、確かにダークブリンガーとメタドライブは本質的に同じ技術のようにも思えますが……。問題は、メタドライブの方が遥かに効果が大きいということですよね……。
確か旦那様は、職業の祝福の効果を完璧に把握しながらも、その恩寵を信じて制御を自動化したと言っていましたね。
「究極の魔力制御技術とも言えるメタドライブに至る方法が魔力制御を止める、ですからねぇ。頭を抱えますよ? 旦那様ってばぁ……」
メタドライブを発動した旦那様に、仕合わせの暴君5人が蹴散らされた事を思い返します。
始めは私とフラッタの1撃を、かなり辛そうに受け止めていたんですよね。
人間族である旦那様が私とフラッタの1撃を正面から受け止めている時点で常軌を逸していますけれど、あの時点ではまだメタドライブは未完成だったはずです。
その後集中しようとする旦那様を、ニーナの超高速転移とティムルの妨害障壁、リーチェの精霊魔法によるかく乱が邪魔をして、旦那様は魔力の制御になかなか集中出来ない様子でした。
それが嬉しそうに笑顔を浮かべた途端に、いきなり動きが変わって……。
「あの瞬間、旦那様の集中力がより一層深まったんですよね……。つまりメタドライブを再現する鍵は、旦那様と同等の常軌を逸した集中力にありそうです……」
旦那様の集中力の深さは視野の狭さ、私たち以外に一切興味を持たない事が起因しているのではないかとリーチェが分析していましたね。
私も旦那様の事を心から愛している自信はありますが……。旦那様のことを考えて旦那様ほど集中するのは流石に無理でしょう。
私も旦那様も自分よりも相手の方が大切なのは同じですが、旦那様の場合は自分自身の事が一切考慮に含まれていないですから。
旦那様でないのなら、私の最も深い部分にある私の本質とは何か……。
「そう、か……。分かった、かも……」
私には旦那様ほど旦那様を愛することが出来ない。
その事実に胸が締め付けられるように痛むと共に、私自身の本質に辿り着けたような気がしました。
旦那様は1度自身を喪失してしまったから、私たちに目を向ける事が1番の集中なのでしょう。
けれど私はそうはいきません。26年間生きてきた人生が、私に忘我を許さないのですから。
私は旦那様をどれ程思っても、旦那様ほどの想いを抱くことが出来ない。
旦那様のように忘我の境地に至るのではなく、自身と向き合うことでしか極限の集中を得ることは出来ないのです。
ならば私が目を向けるべきは、己が歩んできた26年の人生にあるはずです……!
「はぁぁぁぁぁっ……!!」
ダークブリンガーを発動し、黒い魔力を身に纏いながら槍を振るい続けます。
私の本質。
それは今までずっと磨き続けた槍の技術に他ならない。
旦那様のメタドライブのように、常時発動できてどんな動きにも対応可能な魔力制御は私には出来ません。
けれど槍を振るっている時に限れば、私にも旦那様に匹敵する集中状態に入れるはず……!
ダークブリンガーを制御するのではなく、ただダークブリンガーを発動したままで無心に槍を振るいます。
槍を振るう私の動きに祝福の力が応えてくれると信じて、祝福の力と混ざり合っているはずのダークブリンガーが応えてくれると信じて、魔力制御への意識を断ち切って槍を振るい続けます。
やがて魔力枯渇が起きてダークブリンガーが強制解除された時、私の中には確かな手応えが生まれていました。
「はぁっ……! はぁっ……! 掴んだ……! 掴みましたよ旦那様ぁ……!」
「ヴァ、ヴァルゴさん……! だ、大丈夫ですか……!?」
「だ、大丈夫ですよラトリア……って、あら?」
魔力枯渇を起こした私に心配そうに駆け寄ってくるラトリア。
そんな彼女に大丈夫だと返事をした時に、周囲に王国騎士達が集まっている事に初めて気付きました。
「ラトリア。皆さんはいったいなにをされているのですか? 貴女が剣の指南をしていたのでは?」
「私の指示でヴァルゴさんの姿を見てもらっていたんですよ。あれほどの集中状態も、極限まで洗練された槍の技術も、そのどちらもが簡単にお目にかかれるようなものではありませんから」
「ということは、結構前から見られていたという事ですか。全く気づきませんでしたね……」
極限の集中状態に入ることで、周囲の情報が得られにくくなってしまうのでしょうか。
気配を消していたわけでもなく、それどころか私に注目していた者たちの視線にすら気付かないとは、思った以上に扱いの難しい技術かもしれませんね。
この状態でも周囲の状況を完璧に把握されていた旦那様と私の違いは、集中の対象が己であるか他者であるかの違い……でしょうか?
極限の集中状態を得られているのに己の外に意識を向けられるなんて、普通に反則じゃないんですかぁ……?
……まぁいいでしょう。私が目指すのは最強の槍使いなのですから。
槍のようにただ一点に集中し、ありとあらゆる障害を突き破る、そんな存在こそが私の目指す極地なのです。
「済みませんがラトリア。手合わせをお願いできませんか?」
「えっ!? 手合わせは構いませんけど、ヴァルゴさん今魔力枯渇を起こしてるじゃないですかっ……!」
「魔力枯渇を起こしているからこそ、ですよ。旦那様がえっちな事をして魔力回復が早まるように、私は槍を振るっている時が最も集中できるようですから」
竜人族ゆえか、魔力枯渇の辛さを知っているラトリアは、なかなか私のお願いを聞いてくれません。
仕方ないので1人で槍を振るい始めると、ラトリアは観念したように王国騎士たちとの手合わせを許可してくれました。
「さっきヴァルゴさん、何か掴まれたんですよね? でしたら私は最後にお相手致しますので、まずは騎士達を相手に魔力を回復してください」
「ふふ。そこまで完璧に配慮してくれるなんて流石はラトリアですね。ありがとうございます」
先ほど掴んだ感覚を試すには騎士では実力不足でしょう。
その点職業浸透を進めながらも剣を磨き続けているラトリアならば、私の新しい力を受け止めてくれることでしょう。
……ですが、私の魔力が回復するまで騎士たちの方が持つでしょうか? そこだけが少し心配ですね。
「奮起しなさい騎士たちよ! 貴方達が今対峙している相手は、紛れもなく世界最強の一角なのですから!」
「「「うおおおおーーーっ!!」」」
ラトリアの激に後押しされて押し寄せる騎士達を正面から捻じ伏せていきます。
ふぅむ……。個人での力量は、下手をしたらトライラムフォロワーの方が上なのではないでしょうか?
しかし組織立った連携は目を瞠るものがありますね。個人の力量では勝てない相手を集団で圧殺する技術は、要人警護に特化した技術なのかもしれません。
……ま、ここまでの力量差があれば、戦術なんて意味をなしませんけど。
「……分かってはいましたけど、騎士たちではで全く相手になりませんね。下手をすると職業補正が無かった頃のヴァルゴさんすら止められなそうですよ」
「ふふ。旦那様には完膚なきまでに叩きのめされましたけどね? やはり職業補正は重要ですよ」
すぐさま全ての王国騎士を捻じ伏せた私の前に、少し嬉しそうな表情を浮かべたラトリアが双剣を構えて対峙します。
強さに触れるほど喜ぶ竜人族とは、なんとも気持ちの良い人たちです。
「それで、魔力のほうはどうでしょう? 私と一手交えられる程度には回復してくれましたか?」
「一手で貴女を退けられるとは思っていませんが、試行には充分でしょう。胸を借りますよラトリア」
「それは私の言葉なんですけど、ねっ!」
双剣を構えながら竜化の青いラトリアから、ビリビリと心地良い殺気が放たれてくる。
やはりラトリアは素晴らしいです。旦那様とフラッタの剣の師であり、世界最強の剣士の1人なのですから。
彼女を超える剣士であったというご主人にも、是非ともお会いしてみたかったものです。
「いきますよーーっ!」
「…………済みませんラトリア。それは私のセリフですね。行きます!」
ダークブリンガーを纏いつつ、その制御を放棄して槍に集中する。
そしてラトリアの構える双剣に狙いを定め、ただ槍を振るうことだけを考えて体を動かす。
「……なっ!?」
ラトリアの驚愕した声が背中越しに聞こえてくる。
気付くとラトリアが握っていた双剣が宙を舞っており、私はラトリアと擦れ違って彼女を背にして槍を構えていた。
「これが今の私が到れる槍の極地。魂まで槍と一体化する技術……。そうですね、『ジャベリンソウル』、とでも名付けましょうか」
全く新しい境地に到れたことは喜ばしいのですが、改良すべき点は山積みですね。
なによりも、極限まで集中することで半分無意識になる点は見過ごせません。このままでは実戦で使うことなど到底適わないでしょう。
けれど、進めました。自分の槍のその先へ、旦那様の居る境地へと、確かに1歩踏み出せました。
旦那様のように決して歩みを止めずに、己の心の示す先に進むことが出来ました……!
「……ありがとうございますラトリア。貴女が誘ってくれたおかげで、私の槍はまた1歩高みへと到れました」
「これ、が……。これが仕合わせの暴君に求められている領域なんですね……。は、はは……! 凄い、凄すぎますよヴァルゴさん……っ!」
剣を弾かれたラトリアに、どうやら怪我は無さそうです。
たった今垣間見た技術の先の領域に、しきりに興奮しているだけのようですね。
良かった。ラトリアの体に傷でも付けようものなら、旦那様の怒りを買ってしまいかねません。
いくら新しい技術を試したいからと言っても、本気の旦那様を相手にするのは流石に、ね?
「なんでしょうラトリア? 私が役立てることであればいいのですが……」
ラトリアが真剣な表情で私に話しかけてきます。
ラトリアが旦那様抜きで私にお願い事をしてくるなんて珍しいですね。何の用件なんでしょう?
「ヴァルゴさんはこの祝賀イベント中、各地で戦闘指南をされるんですよね?」
「ええ。私に出来るのは槍を扱うことだけですからね。魔人族が王国に馴染むいい機会だとも言われましたし、精一杯励むつもりですよ」
浸透の知識が広まって、魔物狩りたちの職業浸透数が一気に増えていく事が予想されるこれからのスペルド王国では、戦闘技術が軽視されていく事が懸念されております。
なので職業補正に頼らずに腕を磨いた魔人族の戦闘技術が必要になるのではないかと、旦那様は私たち守人を王国中に派遣したのです。
……今までは王国にほとんど居なかったらしい魔人族の私たちは、各地で好奇の視線に晒されることも少なくないのですけれどね。
このくらいは甘んじで受け入れるとしましょう。
「その一環というわけじゃないんですけど、私の戦闘指南のほうも手伝ってもらえませんか? 私は剣を教えることはできるんですけど、槍には疎くって……」
「ラトリアの手伝いというと、ヴァルハールで竜人族に槍を教えろという話ですか? ですがヴァルハールには既に他の守人が派遣されていたと思いますが」
「ヴァルハールの方ではなくってですね。王国騎士団の指南を手伝ってもらいたいんです」
「王国騎士団……」
確かアウターエフェクトが発生したときにも派遣される、スペルド王国最大の戦力のことですね。
スピアオーガゼノンによるスペルディア襲撃の際にも奮闘したようですし、この機会に少し話をしてみるのもいいかもしれません。
ラトリアの誘いに興味が湧いた私は、互いのスケジュールを調整して、ラトリアが王国騎士団に戦術指南をつける日に同行したのでした。
それで実際に足を運んだまでは良かったのですが……。
「ラトリア様! 今度は自分と手合わせをお願いします!」
「見てくださいラトリア様! ラトリア様に言われた通りに訓練したんです! 剣の変化を確認してもらえませんか!」
「ラトリア様!」「ラトリア様!」
スペルディアの騎士ギルドに足を踏み入れた途端、ラトリアに群がってくる男たち。
どうやら王国騎士団の皆さんは、ラトリアの指導がお目当てのようですね。
そう言えば以前ムーリの転職に訪れた時に、旦那様が居るというのにラトリアに求婚する輩が後を絶たなかったと聞いておりましたね。
絶世の美貌を持ち、更には剣士としても尊敬に値する人物ということで、ラトリアは王国騎士たちに絶大な人気があるようです。
「はぁ……。ま、指南をしなくて済むのであれば槍を振るえばいいだけの話です」
此方に申し訳無さそうな視線を送るラトリアに、構いませんよと笑顔を返します。
ラトリアに悪気が無いのは分かっていますし、旦那様以外の男に興味などありません。ラトリアも本気で困れば実力で解決できる場面のはずですから、助け舟は必要無いでしょう。
せっかくの機会ですし、1度自分の槍を見直してみるとしましょう。
「せいっ! やぁっ!」
誰の邪魔にもならないであろうギルドの隅っこで、自分の体の隅々まで意識を巡らせながらひと突きひと突き槍を振るいます。
魔迅を使わずに、けれど魔迅で魔力を走らせるイメージを持って、一心不乱に槍を振るいます。
集中しながら槍を振るう中で思い起こされるのは、旦那様に切りかかった帝国の剣士の剣……。
「…………ギリ」
記憶に蘇った光景に、思わず歯噛みしてしまいます。
旦那様とは比較にならないほど未熟ではありましたが、あの男の技術は確かに旦那様の魔力操作と同一のものでした。
自分以外の誰かが旦那様の技術を再現した事が悔しくて、そしてどうしても許せない……!
魔力制御技術自体は私の方が圧倒的に上だと旦那様は仰っていました。そして旦那様のメタドライブは、私のダークブリンガーやフラッタのオーラに近い技術であるとも。
扱っているのが魔力か職業補正かという違いしかなく、殆ど同じ技術であると仰っていたはずです。
……ならばどうして、私には再現出来ないのですか、ヴァルゴ!!
「……落ち着きなさいヴァルゴ。心乱しても技術の向上は望めません。ここは旦那様を見習うべきです。そう、旦那様のように……」
旦那様のように、発想を転換するんです……。
無理に旦那様と全く同じ技術を利用するのではなく、ダークブリンガーを旦那様のメタドライブと同じ領域まで引き上げることが出来れば……!
メタドライブを使用した旦那様は、私とフラッタを超える膂力に、深獣化したニーナを超える速度。そしてティムルの熱視を超える魔力察知能力に、範囲を拡大した触心のような能力まで兼ね備えていました。
こうして改めて思い返すと、旦那様の規格外っぷりが際立つようではありますが……。職業補正そのものを操作出来ない私には、ダークブリンガーでメタドライブに迫るしかないでしょう!
「私としたことが、なんと甘えてしまっていたのか……。これではあの男を笑えませんね……」
発想の転換。先へ進む確固たる意思と覚悟。
それはかつて槍持つ鬼と退治した時に新たな力を欲した私自身が、既に体現していたことだったじゃありませんか……。
閃刃を編み出して技術が止まってしまったあの男のように、私もまたダークブリンガーとウルスラグナを編み出したことで、自身の技術に慢心してしまっていたのかもしれませんね……。
「旦那様はいつも、強くなる答えは私たちの中にあると仰っています。であれば私が強くなる方法は、旦那様の中にあると思うべきですよね……」
槍を振るいながら、旦那様の剣、魔力制御、お言葉、熱さ、硬さに至るまで、旦那様と過ごした時間を思い返します。
旦那様がメタドライブを編み出した時に説明してくれた言葉を、1つ1つ思い返します。
メタドライブは職業補正の自動制御だと言っていました。自身に累積した膨大な職業補正をただ全開にして、全力で使用するだけの技術であると。
私のダークブリンガーも本質的には同じで、魔迅の魔力と職業補正を混ぜ合わせ、その魔力を全身にまとう技術です。
これだけを考えれば、確かにダークブリンガーとメタドライブは本質的に同じ技術のようにも思えますが……。問題は、メタドライブの方が遥かに効果が大きいということですよね……。
確か旦那様は、職業の祝福の効果を完璧に把握しながらも、その恩寵を信じて制御を自動化したと言っていましたね。
「究極の魔力制御技術とも言えるメタドライブに至る方法が魔力制御を止める、ですからねぇ。頭を抱えますよ? 旦那様ってばぁ……」
メタドライブを発動した旦那様に、仕合わせの暴君5人が蹴散らされた事を思い返します。
始めは私とフラッタの1撃を、かなり辛そうに受け止めていたんですよね。
人間族である旦那様が私とフラッタの1撃を正面から受け止めている時点で常軌を逸していますけれど、あの時点ではまだメタドライブは未完成だったはずです。
その後集中しようとする旦那様を、ニーナの超高速転移とティムルの妨害障壁、リーチェの精霊魔法によるかく乱が邪魔をして、旦那様は魔力の制御になかなか集中出来ない様子でした。
それが嬉しそうに笑顔を浮かべた途端に、いきなり動きが変わって……。
「あの瞬間、旦那様の集中力がより一層深まったんですよね……。つまりメタドライブを再現する鍵は、旦那様と同等の常軌を逸した集中力にありそうです……」
旦那様の集中力の深さは視野の狭さ、私たち以外に一切興味を持たない事が起因しているのではないかとリーチェが分析していましたね。
私も旦那様の事を心から愛している自信はありますが……。旦那様のことを考えて旦那様ほど集中するのは流石に無理でしょう。
私も旦那様も自分よりも相手の方が大切なのは同じですが、旦那様の場合は自分自身の事が一切考慮に含まれていないですから。
旦那様でないのなら、私の最も深い部分にある私の本質とは何か……。
「そう、か……。分かった、かも……」
私には旦那様ほど旦那様を愛することが出来ない。
その事実に胸が締め付けられるように痛むと共に、私自身の本質に辿り着けたような気がしました。
旦那様は1度自身を喪失してしまったから、私たちに目を向ける事が1番の集中なのでしょう。
けれど私はそうはいきません。26年間生きてきた人生が、私に忘我を許さないのですから。
私は旦那様をどれ程思っても、旦那様ほどの想いを抱くことが出来ない。
旦那様のように忘我の境地に至るのではなく、自身と向き合うことでしか極限の集中を得ることは出来ないのです。
ならば私が目を向けるべきは、己が歩んできた26年の人生にあるはずです……!
「はぁぁぁぁぁっ……!!」
ダークブリンガーを発動し、黒い魔力を身に纏いながら槍を振るい続けます。
私の本質。
それは今までずっと磨き続けた槍の技術に他ならない。
旦那様のメタドライブのように、常時発動できてどんな動きにも対応可能な魔力制御は私には出来ません。
けれど槍を振るっている時に限れば、私にも旦那様に匹敵する集中状態に入れるはず……!
ダークブリンガーを制御するのではなく、ただダークブリンガーを発動したままで無心に槍を振るいます。
槍を振るう私の動きに祝福の力が応えてくれると信じて、祝福の力と混ざり合っているはずのダークブリンガーが応えてくれると信じて、魔力制御への意識を断ち切って槍を振るい続けます。
やがて魔力枯渇が起きてダークブリンガーが強制解除された時、私の中には確かな手応えが生まれていました。
「はぁっ……! はぁっ……! 掴んだ……! 掴みましたよ旦那様ぁ……!」
「ヴァ、ヴァルゴさん……! だ、大丈夫ですか……!?」
「だ、大丈夫ですよラトリア……って、あら?」
魔力枯渇を起こした私に心配そうに駆け寄ってくるラトリア。
そんな彼女に大丈夫だと返事をした時に、周囲に王国騎士達が集まっている事に初めて気付きました。
「ラトリア。皆さんはいったいなにをされているのですか? 貴女が剣の指南をしていたのでは?」
「私の指示でヴァルゴさんの姿を見てもらっていたんですよ。あれほどの集中状態も、極限まで洗練された槍の技術も、そのどちらもが簡単にお目にかかれるようなものではありませんから」
「ということは、結構前から見られていたという事ですか。全く気づきませんでしたね……」
極限の集中状態に入ることで、周囲の情報が得られにくくなってしまうのでしょうか。
気配を消していたわけでもなく、それどころか私に注目していた者たちの視線にすら気付かないとは、思った以上に扱いの難しい技術かもしれませんね。
この状態でも周囲の状況を完璧に把握されていた旦那様と私の違いは、集中の対象が己であるか他者であるかの違い……でしょうか?
極限の集中状態を得られているのに己の外に意識を向けられるなんて、普通に反則じゃないんですかぁ……?
……まぁいいでしょう。私が目指すのは最強の槍使いなのですから。
槍のようにただ一点に集中し、ありとあらゆる障害を突き破る、そんな存在こそが私の目指す極地なのです。
「済みませんがラトリア。手合わせをお願いできませんか?」
「えっ!? 手合わせは構いませんけど、ヴァルゴさん今魔力枯渇を起こしてるじゃないですかっ……!」
「魔力枯渇を起こしているからこそ、ですよ。旦那様がえっちな事をして魔力回復が早まるように、私は槍を振るっている時が最も集中できるようですから」
竜人族ゆえか、魔力枯渇の辛さを知っているラトリアは、なかなか私のお願いを聞いてくれません。
仕方ないので1人で槍を振るい始めると、ラトリアは観念したように王国騎士たちとの手合わせを許可してくれました。
「さっきヴァルゴさん、何か掴まれたんですよね? でしたら私は最後にお相手致しますので、まずは騎士達を相手に魔力を回復してください」
「ふふ。そこまで完璧に配慮してくれるなんて流石はラトリアですね。ありがとうございます」
先ほど掴んだ感覚を試すには騎士では実力不足でしょう。
その点職業浸透を進めながらも剣を磨き続けているラトリアならば、私の新しい力を受け止めてくれることでしょう。
……ですが、私の魔力が回復するまで騎士たちの方が持つでしょうか? そこだけが少し心配ですね。
「奮起しなさい騎士たちよ! 貴方達が今対峙している相手は、紛れもなく世界最強の一角なのですから!」
「「「うおおおおーーーっ!!」」」
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ふぅむ……。個人での力量は、下手をしたらトライラムフォロワーの方が上なのではないでしょうか?
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……ま、ここまでの力量差があれば、戦術なんて意味をなしませんけど。
「……分かってはいましたけど、騎士たちではで全く相手になりませんね。下手をすると職業補正が無かった頃のヴァルゴさんすら止められなそうですよ」
「ふふ。旦那様には完膚なきまでに叩きのめされましたけどね? やはり職業補正は重要ですよ」
すぐさま全ての王国騎士を捻じ伏せた私の前に、少し嬉しそうな表情を浮かべたラトリアが双剣を構えて対峙します。
強さに触れるほど喜ぶ竜人族とは、なんとも気持ちの良い人たちです。
「それで、魔力のほうはどうでしょう? 私と一手交えられる程度には回復してくれましたか?」
「一手で貴女を退けられるとは思っていませんが、試行には充分でしょう。胸を借りますよラトリア」
「それは私の言葉なんですけど、ねっ!」
双剣を構えながら竜化の青いラトリアから、ビリビリと心地良い殺気が放たれてくる。
やはりラトリアは素晴らしいです。旦那様とフラッタの剣の師であり、世界最強の剣士の1人なのですから。
彼女を超える剣士であったというご主人にも、是非ともお会いしてみたかったものです。
「いきますよーーっ!」
「…………済みませんラトリア。それは私のセリフですね。行きます!」
ダークブリンガーを纏いつつ、その制御を放棄して槍に集中する。
そしてラトリアの構える双剣に狙いを定め、ただ槍を振るうことだけを考えて体を動かす。
「……なっ!?」
ラトリアの驚愕した声が背中越しに聞こえてくる。
気付くとラトリアが握っていた双剣が宙を舞っており、私はラトリアと擦れ違って彼女を背にして槍を構えていた。
「これが今の私が到れる槍の極地。魂まで槍と一体化する技術……。そうですね、『ジャベリンソウル』、とでも名付けましょうか」
全く新しい境地に到れたことは喜ばしいのですが、改良すべき点は山積みですね。
なによりも、極限まで集中することで半分無意識になる点は見過ごせません。このままでは実戦で使うことなど到底適わないでしょう。
けれど、進めました。自分の槍のその先へ、旦那様の居る境地へと、確かに1歩踏み出せました。
旦那様のように決して歩みを止めずに、己の心の示す先に進むことが出来ました……!
「……ありがとうございますラトリア。貴女が誘ってくれたおかげで、私の槍はまた1歩高みへと到れました」
「これ、が……。これが仕合わせの暴君に求められている領域なんですね……。は、はは……! 凄い、凄すぎますよヴァルゴさん……っ!」
剣を弾かれたラトリアに、どうやら怪我は無さそうです。
たった今垣間見た技術の先の領域に、しきりに興奮しているだけのようですね。
良かった。ラトリアの体に傷でも付けようものなら、旦那様の怒りを買ってしまいかねません。
いくら新しい技術を試したいからと言っても、本気の旦那様を相手にするのは流石に、ね?
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