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別荘から我が家に帰宅すると、隣国の皇帝が俺達を待っていた。
自分でもなにを言っているのか分からないけど、現実は小説よりも奇なりってか?
「ねぇねぇキュール。悪いけど紹介してくれないかな? 俺が直接自己紹介していいものなのか分からないし……」
以前どっかのボンクラ王と謁見させられた時は、最初から最後までひと言も発言を許されなかったからな。
国が違うとは言え王様と皇帝。身分的にはほぼ一緒だろう。
そんな高貴な身分の方と直接会話をするのはマナー違反かもしれないので、帝国出身のキュールにとりなしてもらうことにする。
「ほう? 神器の所有者に選ばれた男とは思えぬほど殊勝な態度だな? どれ程傲慢な男かと覚悟していたが、少々拍子抜けだ」
マナーを気にしてキュールを仲介した俺に対して、何の遠慮もなく普通に話しかけてくる皇帝らしき女性。
なんで平民の俺より礼節無視してくるんですかね? 天辺に立つと礼節とか気にしなくて良くなるの?
「こちらから押しかけたのだ。身分差など気にせず普通に話すがいい。それに普段の堅苦しい会話には辟易しているのでな。無礼講で構わない」
「えっと、隣国の皇帝陛下に無礼講で接する方が怖いんですけど……?」
小声でツッコミを入れつつキュールに視線を送ると、彼女は諦めたようにフルフルと小さく首を振った。
……なるほど? 皇帝陛下は自由なお方みたいですね?
「……初めまして。お会い出来て光栄です皇帝陛下」
とにかく、普通に話せと言われた以上、このまま黙っている方が失礼になりそうだ。まずは挨拶と自己紹介かな。
コホンと咳払いして姿勢を正し、最大限に丁寧な挨拶を心がける。
「この度キュールと婚姻を結ばせていただいた、人間族のダンと申します」
「……普通に話せと言ったはずだが?」
最大限に下手に出たのに、それが原因で不機嫌になってしまう皇帝陛下。
こんな理不尽なことってありますぅ?
「まぁいい。私はヴェルモート帝国17代目皇帝カレン・ラインフェルド、そっちの男は帝国最強の剣士で私の護衛のカルナス将軍だ」
「カルナスだ。俺の事は気にしないでくれ」
最低限の自己紹介だけを済ませて黙り込むカレン陛下と、自分は話に参加する気は無いと1歩下がって見せるカルナス将軍。
どうやら押しかけてきた割に、自分たちから詳しい説明をしてくれる気は無いらしい。
皇帝陛下はうなじが見える程度に短く切り揃えられた赤い髪に、ティムルと同じくらいの身長に見える。
動作の端々から戦える雰囲気が伝わってくるので、護衛を連れている割に戦闘力を持たない貴族というわけではないようだ。
「それで? 皇帝陛下はいったいどんな理由があって、こんな辺鄙なところまで足をお運びになったんですか?」
下手に出るのも嫌がられるようなので、単刀直入に何しにきやがったんだと問いかける。
好奇心の塊のキュールですら、アポ無しで押しかけてきたりはしなかったんだけど?
「妻とは親しくしてくださっているようですけど、それだけで隣国からマグエルに来たりはしませんよね? いったい我が家に何の用ですか?」
「それは勿論、神器の所有者たる貴様と話をしてみたかったからに決まっている」
思わず、でしょうね、と言いかけた口を何とか押さえ込む。
識の水晶を所有しているらしい皇帝カレンが俺に会いにくる理由など、神器絡みに決まってる。
俺が聞いているのは、なんでこのタイミングで皇帝自らが会いに来たのか、なんだけどな?
「ようやく貴様をもてなす為の施設の建設も済んでな。貴様を帝国に招待しようと、私自らはるばる帝国からやってきたのだ。光栄に思うがいい」
「もてなす施設、ですか?」
「ああ。我が帝国が誇るヴェル・トーガ海岸を一望できる保養施設だ。海に夕日が沈む様など圧巻のひと言だぞ? 楽しみにするがいい」
「は、はぁ……。それは楽しみなんですけどぉ……」
……いまいち要領を得ないな。
帝国に招待する予定があるのに、態々護衛を伴ってこんな風に押しかけた意味はなんなんだよ?
こっちからしてみたら、見知らぬ相手に自宅で待ち伏せされてたようなもんなんだぞ?
「あ~、ダンさん。皇帝陛下はこういう人なんだ。深く考えるのは良くないよ」
どうやら俺の困惑を察したらしいキュールが、小声で俺に話しかけてくる。
恐らくこの声も相手に聞こえているはずなんだろうけれど、皇帝陛下は全く意に介さずに平然としているので、俺も遠慮せずにキュールに問いかける事にする。
「キュール……。こういう人、っていうのは?」
「勢いのままに行動される方、という意味だよ。普段は冷静で思慮深い方なのだけど、面白そうなことがあると興味本位でいきなり動き回られたりするんだ。そんな時の陛下には相手への配慮は期待しないほうがいいよ」
「はははっ! 随分な言い草だなキュールよ! だが概ね間違っては居ないぞ!」
「ね? こうやって開き直られるから、周囲の人が配慮するしかないんだ。ある意味皇帝らしい方なのかもしれないけど、巻き込まれる人間は堪ったものじゃないよ……」
溜め息を吐きながらガックリと肩を落すキュール。
要は、自分が周囲に迷惑をかけている事を自覚しても、そのまま構わず突っ走れちゃう人なんだな?
カレン・ラインフェルド皇帝陛下は、出来れば関わりたくないタイプの人のようだ。
……こらみんな。お前が言うなみたいな視線を送らないのっ。口に出してないでしょっ!
まぁいい。みんなへのお仕置きは後にして、今は皇帝カレンの相手をしないと。
あまり深く考えても仕方ないなら、とりあえず直球で行こう。
「皇帝陛下。せっかく来ていただいて恐縮なのですけど、隣国の皇帝を自宅に招き入れるとか、そんな面倒事を引き受けるつもりは無いんです」
「なっ!?」
面倒臭いんで貴方の相手はしたくありませんと素直に言ってみたら、皇帝陛下自身は涼しい顔をしているのに、カルナスと呼ばれる護衛の男が激昂してしまった模様。
「貴様ぁっ! 陛下に向かってなんだその言い草はぁっ!?」
「待てカルナス。招かれざる来客に戸惑うのも無理はない」
激昂して剣に手を当てるカルナスを、静かな声で制止する皇帝カレン。
護衛を制止する冷静さがあるなら、自分の訪問こそちゃんと事前連絡しろっつうの。
「……我が家には家族しか招きたくありません。なので話をするにしても、スペルディア王城あたりに場所を移してもらえませんか?」
「悪いなダン。私はスペルディア王城が嫌いだ。移動する気は毛頭無い。ゆえにここで話をさせてもらいたい」
カルナスを制止した皇帝カレンだったけど、俺の要望に応える気も無いらしい。
相手の言い分を聞く耳は持っているけれど、それとは別に自分の我を押し通す気か。厄介な相手だな。
「既に愚王はくたばったようだが、王城に行くたびにスペルディア家の馬鹿どもには男女の関係を求められてな。正直辟易しているし、この手で滅ぼしてやりたいくらいにはスペルディア家が嫌いだ」
忌々しげに吐き捨てる皇帝カレン。
王城に行きたくないのは、スペルディア家のセクハラが理由なのかよっ!
「シャーロット殿を前にして言うべきことではないだろうがな。シモン王の死には喜びすら覚えているぞ」
「私のことはどうぞお気遣いなく。父が女に溺れた下らない男だったのは、娘である私が最も良く知っておりますので」
「そういうシャーロット殿は、噂とはだいぶ印象が違うようだがな?」
どうやら初対面らしい皇帝カレンとシャロは、先王シモンの無能さを共通の話題としてコミュニケーションを図ろうとしているようだ。
しかしカレン陛下は直ぐに会話を切り上げ、俺の方に向き直る。
「突然は来訪を詫びよう。が、私たちの連絡役であったキュールが貴様に奪われてしまったことも忘れてくれるなよ?」
「別に奪ったつもりは無くて、いつも通り押しかけられただけなんだけど……。まぁ要するに、俺との連絡手段が無くなったと仰りたいんですね? それで自ら赴いたと」
「王国と帝国はさほど交流も無いからな。貴様の人となりはキュールからも報告を受けているし、スペルディア家を経由する意味も無さそうだと判断させてもらった」
「……なるほど」
国同士の交流が殆ど無いなら、国際問題みたいなものを考慮する必要も無いのか。
そもそもゴブトゴさんがキュールに配慮していたのだって、帝国じゃなくて皇帝との関係悪化を心配してたからだったっけ。
キュールからの報告で、ゴブトゴさんを通さずに会いに来ていいと判断された、かぁ。
それ自体は構わないんだけど、だとしても敵かもしれない人を家に招くつもりは無いんだよ?
「悪いんですが陛下。俺も貴女を家に上げる気はありません。出来ればお帰り願いたいんですけど、どうしたら帰ってくれますか?」
「はっ! ここまで邪険に扱われた記憶はほぼ無いぞ? が、こちらとてスペルドまできて手ぶらで帰る訳にはいかんのだ。相手をしてもらうまでは帰るわけにはいかないな?」
「はぁ~……。めんどくさぁ……」
頑として帰る気の無い皇帝カレンに対して、溜め息と共に本音が零れてしまった。
そのおかげで後ろに控えている護衛の男が滅茶苦茶殺気を飛ばしてくるんだよ? すごい忠誠心だなぁ。
「皇帝陛下は神器に興味がおありなんですよね?」
別荘で体を拭いてきたとはいえ、まだ全員からちょっと俺の匂いが立ちこめてるからな。
こんな話さっさと切り上げて、早いところみんなとお風呂を楽しみたいんだよ?
「それは、俺が持っている2つの神器、始界の王笏と呼び水の鏡を手中に収め、3つの神器を所有する真の神器保有者になりたい。ということでよろしいですか?」
「…………ああ。そうだ」
俺の問いかけを、かなりの間を置いて肯定するカレン陛下。
緊張感を増した彼女は、剣呑な雰囲気をまといながら俺に問い返してくる。
「しかし、いったいなんの確認だ? まさかここで神器の争奪戦でも始めるつもりか? だが生憎、識の水晶は……」
「いや。争奪戦なんてする気は無いですよ。『不可視の箱。不可侵の聖域。魔で繋がりて乖離せよ。インベントリ』」
陛下の言葉を否定しながら、右手に始界の王笏、左手に呼び水の鏡を握る。
相変わらず始界の王笏は鬱陶しく光り輝き、呼び水の鏡も勢い良く魔力を放出し始める。
「ま、さか……! そ、それが神器、始界の王笏と呼び水の鏡なのか……!」
「ですよ。不本意ながら俺が所有している2つの神器なのですが……。欲しけりゃあげますよ、こんなもの」
「………………は?」
カレン陛下に向かって、2つの神器をポイッと放り投げる。
神器なんて要らないし、こうやって面倒事を運び込んでくるんだから邪魔でしかない。
欲しいって言う人が居るなら譲るべきだろう。
「……はぁっ!!」
宙を舞う2つの神器に誰もが目を奪われている中、突如男性の声が響き渡る。
カレン陛下の護衛の男が、神器が俺の手を離れたことを見て取った瞬間、消えるような速さで俺の首目掛けて横薙ぎを放ってきたのだ。
……速いな? 人間族っぽいのに、支配ラトリアとほぼ同等の剣速に思えるぞ?
多分敏捷性補正を体に走らせて魔迅のような効果を生み出しているんだろうけど、この世界の人間が自力で職業補正を操作したのは、うちの家族以外では初めて見たなぁ。
「……っ!? 旦那様っ!!」
カルナスの剣が俺の首に触れた瞬間、魔迅を発動したヴァルゴがカルナスの剣を思い切り弾いた。
「ぐぅっ!?」
ヴァルゴの槍に思い切り剣を弾かれたカルナスは、その勢いのまま後方に飛び退り、槍を構えるヴァルゴに驚きの眼差しを向けている。
そして剣を構えたまま、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「す、凄まじいな……! 我が『閃刃』についてこれる者など初めて出会ったぞ!? 女、名はなんというのだ!?」
「センジン? いえ、それよりも誰の主人に剣を向けて……」
「うわっ!? い、今俺殺されそうになってた!? うわああああヴァルゴーーっ!」
「ちょっ!? 旦那様!?」
カルナスに殺気を放ちかけたヴァルゴに大騒ぎしながら抱き付いて、彼女の槍が目の前の男を貫くのを阻止する。
抱きつかれたヴァルゴも、周囲のみんなも、なにやってんだコイツ? と言いたげな胡乱な眼差しを俺に向けてくるのがちょっと癖になりそうだ。
「助けて、助けてくれーっ!」
「ちょ、抱きつかないでくださいっ! って、ドサクサに紛れて下着に手を入れ……」
「(ヴァルゴ。ひと芝居するから適当に合わせてくれ)」
「えっ……!?」
ヴァルゴの体を弄りながら、耳元で甘く打ち合わせをする。
カランさんの教えを受けたヴァルゴは、意外と搦め手にも長けているからな。最低限の情報でも即興で合わせてくれるだろう。
「こ、こっちは無条件で神器を差し出したのに、その瞬間切りかかってくるなんて……! そんな奴らと話すことなんか何も無いよっ!」
「え、あっ……!? カルナス! 貴様いったい何を……」
神器に目を奪われていた皇帝カレンが、ようやく事態を把握する。
……が、もうお前らに付き合う義理は無い。
「ヴァルゴ! ラトリア! エマ! キュール! そいつらが確実に神器を持って帰るまで確認しろ! リーチェとフラッタは俺を守れ! 他のみんなは全員ついてこい! 」
「待て! 待ってくれダン! 今のは私の意思では……!」
「虚ろな経路。点と線。見えざる流れ。空と実。求めし彼方へ繋いで到れ。ポータル。いいな!? そいつ等が帰るまで絶対に呼びに来るなよ!? 行こうみんなっ」
慌てて呼び止めてくる皇帝カレンを無視して、戸惑った様子のチャールとシーズの手を引き別荘に転移する。
同じく戸惑った様子のターニアとシャロのことは、ニーナが手を引いて一緒に連れてきてくれた。
全員が別荘の庭に転移し終えると、ニヤニヤしているニーナが俺に話しかけてくる。
「んふふー。ダンがなにしようとしてるのかは分かってるけど、多分無駄だと思うのっ。こんなやり方で神器を手放せるとは思わないかなーっ」
「そこはカレン陛下に期待してるよ。所有者が手放して、地面に転がってるだけの神器を持って帰れない程度の人物じゃないことを祈るね」
「あははっ! ダンは自分を見縊りすぎなのっ。どうせ手放せないと思うなー? 今ので手放せたら、ダンの言う事なぁんでも聞いちゃうのーっ」
手放せなくても何でも言う事聞いてくれるくせにーっ!
じゃれ合う俺とニーナの様子に、チャールとシーズが困惑した表情を浮かべている。
「えっ? えっ? ニーナ。ダン。2人とも何の話してるの……!?」
「説明しろよ! いったい今のはなんだったんだ!? なんで切りかかられて神器を手放して、それでいてこんな明るい雰囲気なんだよーーーっ!?」
「いきなりでごめんね。今のはこういう事だったんだー」
俺の大根演技を見たことがなくて状況が把握出来ていない数名に、ちょうどいい機会だったので神器を押し付けようとしたことを説明する。
これで神器を手放せたら、あとは寝室に篭って夢の生活が送れそうだけど……。
確信があるらしいニーナの様子を見る限り、望みは薄そうかなぁ……?
自分でもなにを言っているのか分からないけど、現実は小説よりも奇なりってか?
「ねぇねぇキュール。悪いけど紹介してくれないかな? 俺が直接自己紹介していいものなのか分からないし……」
以前どっかのボンクラ王と謁見させられた時は、最初から最後までひと言も発言を許されなかったからな。
国が違うとは言え王様と皇帝。身分的にはほぼ一緒だろう。
そんな高貴な身分の方と直接会話をするのはマナー違反かもしれないので、帝国出身のキュールにとりなしてもらうことにする。
「ほう? 神器の所有者に選ばれた男とは思えぬほど殊勝な態度だな? どれ程傲慢な男かと覚悟していたが、少々拍子抜けだ」
マナーを気にしてキュールを仲介した俺に対して、何の遠慮もなく普通に話しかけてくる皇帝らしき女性。
なんで平民の俺より礼節無視してくるんですかね? 天辺に立つと礼節とか気にしなくて良くなるの?
「こちらから押しかけたのだ。身分差など気にせず普通に話すがいい。それに普段の堅苦しい会話には辟易しているのでな。無礼講で構わない」
「えっと、隣国の皇帝陛下に無礼講で接する方が怖いんですけど……?」
小声でツッコミを入れつつキュールに視線を送ると、彼女は諦めたようにフルフルと小さく首を振った。
……なるほど? 皇帝陛下は自由なお方みたいですね?
「……初めまして。お会い出来て光栄です皇帝陛下」
とにかく、普通に話せと言われた以上、このまま黙っている方が失礼になりそうだ。まずは挨拶と自己紹介かな。
コホンと咳払いして姿勢を正し、最大限に丁寧な挨拶を心がける。
「この度キュールと婚姻を結ばせていただいた、人間族のダンと申します」
「……普通に話せと言ったはずだが?」
最大限に下手に出たのに、それが原因で不機嫌になってしまう皇帝陛下。
こんな理不尽なことってありますぅ?
「まぁいい。私はヴェルモート帝国17代目皇帝カレン・ラインフェルド、そっちの男は帝国最強の剣士で私の護衛のカルナス将軍だ」
「カルナスだ。俺の事は気にしないでくれ」
最低限の自己紹介だけを済ませて黙り込むカレン陛下と、自分は話に参加する気は無いと1歩下がって見せるカルナス将軍。
どうやら押しかけてきた割に、自分たちから詳しい説明をしてくれる気は無いらしい。
皇帝陛下はうなじが見える程度に短く切り揃えられた赤い髪に、ティムルと同じくらいの身長に見える。
動作の端々から戦える雰囲気が伝わってくるので、護衛を連れている割に戦闘力を持たない貴族というわけではないようだ。
「それで? 皇帝陛下はいったいどんな理由があって、こんな辺鄙なところまで足をお運びになったんですか?」
下手に出るのも嫌がられるようなので、単刀直入に何しにきやがったんだと問いかける。
好奇心の塊のキュールですら、アポ無しで押しかけてきたりはしなかったんだけど?
「妻とは親しくしてくださっているようですけど、それだけで隣国からマグエルに来たりはしませんよね? いったい我が家に何の用ですか?」
「それは勿論、神器の所有者たる貴様と話をしてみたかったからに決まっている」
思わず、でしょうね、と言いかけた口を何とか押さえ込む。
識の水晶を所有しているらしい皇帝カレンが俺に会いにくる理由など、神器絡みに決まってる。
俺が聞いているのは、なんでこのタイミングで皇帝自らが会いに来たのか、なんだけどな?
「ようやく貴様をもてなす為の施設の建設も済んでな。貴様を帝国に招待しようと、私自らはるばる帝国からやってきたのだ。光栄に思うがいい」
「もてなす施設、ですか?」
「ああ。我が帝国が誇るヴェル・トーガ海岸を一望できる保養施設だ。海に夕日が沈む様など圧巻のひと言だぞ? 楽しみにするがいい」
「は、はぁ……。それは楽しみなんですけどぉ……」
……いまいち要領を得ないな。
帝国に招待する予定があるのに、態々護衛を伴ってこんな風に押しかけた意味はなんなんだよ?
こっちからしてみたら、見知らぬ相手に自宅で待ち伏せされてたようなもんなんだぞ?
「あ~、ダンさん。皇帝陛下はこういう人なんだ。深く考えるのは良くないよ」
どうやら俺の困惑を察したらしいキュールが、小声で俺に話しかけてくる。
恐らくこの声も相手に聞こえているはずなんだろうけれど、皇帝陛下は全く意に介さずに平然としているので、俺も遠慮せずにキュールに問いかける事にする。
「キュール……。こういう人、っていうのは?」
「勢いのままに行動される方、という意味だよ。普段は冷静で思慮深い方なのだけど、面白そうなことがあると興味本位でいきなり動き回られたりするんだ。そんな時の陛下には相手への配慮は期待しないほうがいいよ」
「はははっ! 随分な言い草だなキュールよ! だが概ね間違っては居ないぞ!」
「ね? こうやって開き直られるから、周囲の人が配慮するしかないんだ。ある意味皇帝らしい方なのかもしれないけど、巻き込まれる人間は堪ったものじゃないよ……」
溜め息を吐きながらガックリと肩を落すキュール。
要は、自分が周囲に迷惑をかけている事を自覚しても、そのまま構わず突っ走れちゃう人なんだな?
カレン・ラインフェルド皇帝陛下は、出来れば関わりたくないタイプの人のようだ。
……こらみんな。お前が言うなみたいな視線を送らないのっ。口に出してないでしょっ!
まぁいい。みんなへのお仕置きは後にして、今は皇帝カレンの相手をしないと。
あまり深く考えても仕方ないなら、とりあえず直球で行こう。
「皇帝陛下。せっかく来ていただいて恐縮なのですけど、隣国の皇帝を自宅に招き入れるとか、そんな面倒事を引き受けるつもりは無いんです」
「なっ!?」
面倒臭いんで貴方の相手はしたくありませんと素直に言ってみたら、皇帝陛下自身は涼しい顔をしているのに、カルナスと呼ばれる護衛の男が激昂してしまった模様。
「貴様ぁっ! 陛下に向かってなんだその言い草はぁっ!?」
「待てカルナス。招かれざる来客に戸惑うのも無理はない」
激昂して剣に手を当てるカルナスを、静かな声で制止する皇帝カレン。
護衛を制止する冷静さがあるなら、自分の訪問こそちゃんと事前連絡しろっつうの。
「……我が家には家族しか招きたくありません。なので話をするにしても、スペルディア王城あたりに場所を移してもらえませんか?」
「悪いなダン。私はスペルディア王城が嫌いだ。移動する気は毛頭無い。ゆえにここで話をさせてもらいたい」
カルナスを制止した皇帝カレンだったけど、俺の要望に応える気も無いらしい。
相手の言い分を聞く耳は持っているけれど、それとは別に自分の我を押し通す気か。厄介な相手だな。
「既に愚王はくたばったようだが、王城に行くたびにスペルディア家の馬鹿どもには男女の関係を求められてな。正直辟易しているし、この手で滅ぼしてやりたいくらいにはスペルディア家が嫌いだ」
忌々しげに吐き捨てる皇帝カレン。
王城に行きたくないのは、スペルディア家のセクハラが理由なのかよっ!
「シャーロット殿を前にして言うべきことではないだろうがな。シモン王の死には喜びすら覚えているぞ」
「私のことはどうぞお気遣いなく。父が女に溺れた下らない男だったのは、娘である私が最も良く知っておりますので」
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しかしカレン陛下は直ぐに会話を切り上げ、俺の方に向き直る。
「突然は来訪を詫びよう。が、私たちの連絡役であったキュールが貴様に奪われてしまったことも忘れてくれるなよ?」
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「……なるほど」
国同士の交流が殆ど無いなら、国際問題みたいなものを考慮する必要も無いのか。
そもそもゴブトゴさんがキュールに配慮していたのだって、帝国じゃなくて皇帝との関係悪化を心配してたからだったっけ。
キュールからの報告で、ゴブトゴさんを通さずに会いに来ていいと判断された、かぁ。
それ自体は構わないんだけど、だとしても敵かもしれない人を家に招くつもりは無いんだよ?
「悪いんですが陛下。俺も貴女を家に上げる気はありません。出来ればお帰り願いたいんですけど、どうしたら帰ってくれますか?」
「はっ! ここまで邪険に扱われた記憶はほぼ無いぞ? が、こちらとてスペルドまできて手ぶらで帰る訳にはいかんのだ。相手をしてもらうまでは帰るわけにはいかないな?」
「はぁ~……。めんどくさぁ……」
頑として帰る気の無い皇帝カレンに対して、溜め息と共に本音が零れてしまった。
そのおかげで後ろに控えている護衛の男が滅茶苦茶殺気を飛ばしてくるんだよ? すごい忠誠心だなぁ。
「皇帝陛下は神器に興味がおありなんですよね?」
別荘で体を拭いてきたとはいえ、まだ全員からちょっと俺の匂いが立ちこめてるからな。
こんな話さっさと切り上げて、早いところみんなとお風呂を楽しみたいんだよ?
「それは、俺が持っている2つの神器、始界の王笏と呼び水の鏡を手中に収め、3つの神器を所有する真の神器保有者になりたい。ということでよろしいですか?」
「…………ああ。そうだ」
俺の問いかけを、かなりの間を置いて肯定するカレン陛下。
緊張感を増した彼女は、剣呑な雰囲気をまといながら俺に問い返してくる。
「しかし、いったいなんの確認だ? まさかここで神器の争奪戦でも始めるつもりか? だが生憎、識の水晶は……」
「いや。争奪戦なんてする気は無いですよ。『不可視の箱。不可侵の聖域。魔で繋がりて乖離せよ。インベントリ』」
陛下の言葉を否定しながら、右手に始界の王笏、左手に呼び水の鏡を握る。
相変わらず始界の王笏は鬱陶しく光り輝き、呼び水の鏡も勢い良く魔力を放出し始める。
「ま、さか……! そ、それが神器、始界の王笏と呼び水の鏡なのか……!」
「ですよ。不本意ながら俺が所有している2つの神器なのですが……。欲しけりゃあげますよ、こんなもの」
「………………は?」
カレン陛下に向かって、2つの神器をポイッと放り投げる。
神器なんて要らないし、こうやって面倒事を運び込んでくるんだから邪魔でしかない。
欲しいって言う人が居るなら譲るべきだろう。
「……はぁっ!!」
宙を舞う2つの神器に誰もが目を奪われている中、突如男性の声が響き渡る。
カレン陛下の護衛の男が、神器が俺の手を離れたことを見て取った瞬間、消えるような速さで俺の首目掛けて横薙ぎを放ってきたのだ。
……速いな? 人間族っぽいのに、支配ラトリアとほぼ同等の剣速に思えるぞ?
多分敏捷性補正を体に走らせて魔迅のような効果を生み出しているんだろうけど、この世界の人間が自力で職業補正を操作したのは、うちの家族以外では初めて見たなぁ。
「……っ!? 旦那様っ!!」
カルナスの剣が俺の首に触れた瞬間、魔迅を発動したヴァルゴがカルナスの剣を思い切り弾いた。
「ぐぅっ!?」
ヴァルゴの槍に思い切り剣を弾かれたカルナスは、その勢いのまま後方に飛び退り、槍を構えるヴァルゴに驚きの眼差しを向けている。
そして剣を構えたまま、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「す、凄まじいな……! 我が『閃刃』についてこれる者など初めて出会ったぞ!? 女、名はなんというのだ!?」
「センジン? いえ、それよりも誰の主人に剣を向けて……」
「うわっ!? い、今俺殺されそうになってた!? うわああああヴァルゴーーっ!」
「ちょっ!? 旦那様!?」
カルナスに殺気を放ちかけたヴァルゴに大騒ぎしながら抱き付いて、彼女の槍が目の前の男を貫くのを阻止する。
抱きつかれたヴァルゴも、周囲のみんなも、なにやってんだコイツ? と言いたげな胡乱な眼差しを俺に向けてくるのがちょっと癖になりそうだ。
「助けて、助けてくれーっ!」
「ちょ、抱きつかないでくださいっ! って、ドサクサに紛れて下着に手を入れ……」
「(ヴァルゴ。ひと芝居するから適当に合わせてくれ)」
「えっ……!?」
ヴァルゴの体を弄りながら、耳元で甘く打ち合わせをする。
カランさんの教えを受けたヴァルゴは、意外と搦め手にも長けているからな。最低限の情報でも即興で合わせてくれるだろう。
「こ、こっちは無条件で神器を差し出したのに、その瞬間切りかかってくるなんて……! そんな奴らと話すことなんか何も無いよっ!」
「え、あっ……!? カルナス! 貴様いったい何を……」
神器に目を奪われていた皇帝カレンが、ようやく事態を把握する。
……が、もうお前らに付き合う義理は無い。
「ヴァルゴ! ラトリア! エマ! キュール! そいつらが確実に神器を持って帰るまで確認しろ! リーチェとフラッタは俺を守れ! 他のみんなは全員ついてこい! 」
「待て! 待ってくれダン! 今のは私の意思では……!」
「虚ろな経路。点と線。見えざる流れ。空と実。求めし彼方へ繋いで到れ。ポータル。いいな!? そいつ等が帰るまで絶対に呼びに来るなよ!? 行こうみんなっ」
慌てて呼び止めてくる皇帝カレンを無視して、戸惑った様子のチャールとシーズの手を引き別荘に転移する。
同じく戸惑った様子のターニアとシャロのことは、ニーナが手を引いて一緒に連れてきてくれた。
全員が別荘の庭に転移し終えると、ニヤニヤしているニーナが俺に話しかけてくる。
「んふふー。ダンがなにしようとしてるのかは分かってるけど、多分無駄だと思うのっ。こんなやり方で神器を手放せるとは思わないかなーっ」
「そこはカレン陛下に期待してるよ。所有者が手放して、地面に転がってるだけの神器を持って帰れない程度の人物じゃないことを祈るね」
「あははっ! ダンは自分を見縊りすぎなのっ。どうせ手放せないと思うなー? 今ので手放せたら、ダンの言う事なぁんでも聞いちゃうのーっ」
手放せなくても何でも言う事聞いてくれるくせにーっ!
じゃれ合う俺とニーナの様子に、チャールとシーズが困惑した表情を浮かべている。
「えっ? えっ? ニーナ。ダン。2人とも何の話してるの……!?」
「説明しろよ! いったい今のはなんだったんだ!? なんで切りかかられて神器を手放して、それでいてこんな明るい雰囲気なんだよーーーっ!?」
「いきなりでごめんね。今のはこういう事だったんだー」
俺の大根演技を見たことがなくて状況が把握出来ていない数名に、ちょうどいい機会だったので神器を押し付けようとしたことを説明する。
これで神器を手放せたら、あとは寝室に篭って夢の生活が送れそうだけど……。
確信があるらしいニーナの様子を見る限り、望みは薄そうかなぁ……?
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