異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機

514 空っぽ (改)

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「ふっふーんっ。呪われる前は数メートル飛び上がるくらいが限界だったけど、今の私ならこの森の上にだっていけると思うんだーっ」


 聖域の樹海の中心に転移した途端、空を覆うほどの大木を見上げたターニアがワクワクした様子で不敵に笑っている。

 真っ暗で木の上なんか全然見えないけど、だからこそ登るのが楽しみなのかな?


 とりあえず暗視魔法トーチを発動して視界を確保すると、そこにはすっかり見慣れた森深い光景が広がっていた。


「聖域の中心と言っても、やはり他の場所との差異は感じられませんね。魔物や生体反応にすら変化を感じません」


 ゆったりと槍を携えながら、自然体のままで周囲を見回すヴァルゴ。

 聖域の樹海で生きてきた彼女だからこそ、聖域の中央に何の変化も認められないのが不思議に感じるのかもしれない。


「でも、こんなアウターの奥地にも普通に生体反応があるなんてびっくりなの。スポットや竜王のカタコンベなんて生体反応は一切無いのにねー?」

「やっぱりフィールド型アウターだからだろうね。スポットと違って水場もあるし、野生動物の餌には事欠かなそうだから」


 ニーナとリーチェもまた、周囲を見回しながら口々に感想を漏らしている。

 2人とも、アウター内部とは思えないほどの多くの生体反応に感心したような表情を浮かべている。


 アウターの境界が曖昧な為か聖域の樹海には野生動物も多く、魔物を餌として捕食する生物もいるらしい。

 野生動物も魔物と同じく基本的には人間を襲う存在だが、恐らく聖域の樹海を守る守人たちを捕食することが出来なかったんだろうなぁ。


 魔物って魔力で形作られた擬似生命体って話なのに、ストームヴァルチャーを始め、一定数魔物を狩る野生動物もいるんだよなぁ。

 単に敵対者として攻撃を加えているのか、それとも魔物を捕食することで魔力だったり栄養素を取りこめているのだろうか?


「相変わらず巨大な木々が乱立して陰鬱な場所なのじゃ。これでは木々の向こうの青空を仰ぐことも叶わぬな」

「ひょっとしたらこの木々がアウターの境界線のような役割を担っているのかもしれないわねぇ。魔力の流入量を調節したりとか、もしくは逆に魔力の流出量を抑えたりとか?」


 周囲に無数に生えている巨木を仰ぎながら、フラッタとティムルがその木々の役割について言及している。


 地球だったら樹齢数万年かよと言いたくなるような巨木が、聖域の樹海の中には犇きあっている。

 俺達は世界樹を見た経験があるからそこまで驚きはしてないけど、その存在感は圧倒的だ。


 木って確か地球上では100メートルくらいまでしか成長できないんじゃなかったっけ?

 でもこの世界では物理法則が違うのか、それとも魔力の影響なのか、空を覆うほどの巨木ってのが普通に存在するんだよなぁ。


「みんなー。早速調査を始めるよー」

「「「はーい」」」


 俺の呼びかけに、少し気の抜けたような返事が返ってくる。

 少し緊張感が緩みすぎている気がしないでもないけど、ここは自然体であることを良しとしよう。


 このままみんなと一緒にゆっくり大自然の魅力に触れていたい気もするけど、それは調査が終わってからでも出来ることだ。

 今はやるべきことを済ませて、ゆっくりするのはそれからにしよう。


 今回は非戦闘員も同行しているので、実際に調査を始める前に軽く打ち合わせをしておくか。


「究明の道標は基本的にここで待機ね。ティムルがいる限りみんなが危険に晒される事は絶対に無いから、安心して待機してて」

「了解だよー。ま、私たちが下手に動き回ったら足手纏いにしかならないもんね」

「精々後学の為に学ばせて貰うよ。俺達だって未知の場所を調査する機会に恵まれる可能性もあるわけだしな」

「なるほど。なにか手掛かりでも見つかったら、それに対する分析や調査を担当する感じかな? 戦闘ではお役に立てないけれど、他の分野で役に立てるよう備えておくさ」


 事実上の戦力外宣言もアッサリと受け入れ、待機を約束してくれる究明の道標メンバー。

 キュールさんがたまに暴走気味だけど、基本的に思慮深い3人が危険な場所で勝手な行動をすることはまず無いだろう。


 シーズに至っては、待機を受け入れながらも俺達の様子を観察し、未知の場所の調査のやり方を貪欲に学ぼうとしているようだ。

 でも俺達だって調査の正解なんて分からないんだよ? シーズの参考になるかなぁ?


「アウラとムーリも基本的に待機ね。まず危険が及ぶことは無いとは思うけど、究明の道標の護衛を務める気持ちでいて欲しい」

「はいっ」「了解だよーっ」

「ここはアウターの中心付近だけど、それでも野生動物が出る可能性がある。だから不慮の自体が起こる可能性は常に想定しておいてねー」


 事故と聞いて表情を強張らせてしまうアウラとムーリ。

 脅かすつもりは無かったんだけど……。警戒心を持つのは悪いことじゃないかぁ。


 ティムルの竜鱗甲光があれば野生動物からのあらゆる攻撃をシャットアウトできるんだけど、その竜鱗甲光の魔力障壁を貫通する攻撃なんかが発生しないとも限らないからな。まず無いとは思うけど。


 ……無いとは思うけど注意喚起は必要だ。

 最悪の事態を起こさないためには、最悪の想定は常にしておかねばなるまい。


「ラトリアとエマは常にコンビで動いてね。2人一緒なら相手がイントルーダーでも野生動物でも不覚を取ることは無いでしょ」

「了解ですっ! 仕合わせの暴君のみなさんと同じ戦場に立たせてもらえるなんて光栄ですっ」

「私たちは竜化のおかげで野生動物とも相性が悪くないですからね。ですが無理はしないとお約束しますよ」


 ワクワクが隠しきれていない様子のラトリアと、そんなラトリアを見ながらご安心をと頷いてくれるエマ。

 実力もさることながら、性格的にもいいコンビだ。


 2人は対人戦の技術も高く、竜化とブレスのおかげで野生動物が出現したとしても相性は悪くない。頼りにさせてもらおう。


「ニーナ、フラッタ、ヴァルゴはそれぞれ自由に動いていいからね。ただし単独行動は極力避けて欲しい」


 仕合わせの暴君メンバーにも、今回は極力単独行動は避けてもらう方針だ。

 フラッタとヴァルゴを抜けるような敵対存在が居るとは想定してないけど、職業補正が適用されない戦闘では事故の可能性は常にあるからな。念のためだ。


「状況によっては3人には単独行動をお願いすることもあるかもしれないけど、基本的には一緒に行動してね。まずはこの場所の危険度を把握しよう」

「ん~。私は何を見るべきか分からないからなー。単独行動しても役に立てそうにないの。というわけでフラッタ、一緒に回ろっかー」

「ふははっ! 妾だって何を見ればいいのかなんぞ分からんのじゃ!」


 あ、そう言えばニーナとフラッタって、我が家での調べ物苦手なツートップだったわ。

 その代わり直感には優れてるんだけど、それが調査にはどう影響してくるかな?


「ということでヴァルゴ! お主も妾たちと一緒に行動するのじゃーっ」

「こ、この豪快さ……。頼りになるのかならないのか分かりませんね……?」


 満面の笑みを浮かべて調査を丸投げするフラッタに、赤面しつつも頭を抱えるヴァルゴ。

 今ヴァルゴは絶対に、これだからフラッタは! って思ってるだろうなっ。


「はぁ~……了解です。ニーナ、フラッタ、よろしくお願いしますね」


 最近フラッタに篭絡されつつあるヴァルゴは、嬉しそうにフラッタをよしよしなでなでしている。

 フラッタはヴァルゴの槍に思いっきり好意をぶつけてるもんな。あれで篭絡されない方がおかしいよ。


「ティムルとリーチェはこの場で待機ね」

「「はいっ」」


 お姉さん組が胸を張って元気良く答えてくれる。

 危なく自信満々に張られたリーチェのおっぱいに手を伸ばしそうになってしまったけど、ギリギリで軌道修正して2人の頭をよしよしなでなで。


「ティムルは熱視を使って全体の把握をしながら、究明の道標の護衛をお願いね」

「あはーっ。自分の役割があるって良いわねっ」


 竜王戦や世界呪戦で力不足を嘆いたティムルが、少し含みを感じさせる言葉を口にする。

 だけど俺が反応するより早く、瞳に決意に宿しながら力強く宣言するティムル。


「任せてダン。チャールたちのことは絶対に守り抜いてみせるわよーっ」

「うん。任せたよお姉さん。頼りにしてる」


 熱視による調査や名匠の上位レシピなど、ティムルにしか出来ない役割をいっぱいこなしてもらってる気がするんだけどなぁ。

 それでも真面目なお姉さんは、戦闘で役割を振られたのが嬉しかったみたいだ。


「リーチェは弓を使った援護と、全員の会話を常に繋げられる様にしておいて」

「ぼくも了解だよ。ぼくの弓でみんなを守ってあげるし、ぼくの風でみんなのことを常に繋いでおくからねっ」


 剣の腕もラトリアやフラッタに次ぐほどの達人なのに、その本領は後衛のリーチェが笑顔とおっぱいを弾けさせる。

 目の前でぶるんぶるん揺らしやがってぇ。あとで思いっきりお仕置きだからなぁ?


 あ、そうだ。精霊魔法と言えば。


「ねぇリーチェ。精霊魔法って植物の声を聞けるって、以前言ってなかったっけ?」

「うんうんっ。言ったよーっ。ぼくの言ったこと、ちゃ~んと覚えててくれたんだねっ」

「いやいや、こんなことで喜びすぎだってばっ」


 予想外に真っ直ぐな好意をぶつけられてドギマギしてしまった。

 くそぅ。コイツ本物のお姫様の癖にワンコ系でめっちゃ懐いてきやがるよぉ……!


 リーチェを押し倒したい衝動に必死で抗いながら話の続きを口にする。


「えっと……。つまり精霊魔法で樹海の植物から情報を引き出せたりしないかなって思ったんだ。どうかな?」

「んー。植物の声と言っても、直接言語を使って会話が出来るワケじゃないんだ。植物達から漠然とした感情みたいなものが読み取れる程度なんだよね」

「へぇ? 植物の感情か。面白いな」

「でも確かに試してみる価値はあるかな? ちょっと試してみていいっ?」

「勿論。頼りにしてるよリーチェ」


 少し自信なさげなリーチェのほっぺにキスをして送り出すと、リーチェは地面に両手をついて翠色の魔力を纏い始めた。

 どうやら精霊魔法を発動しているらしい。


「ん、んー……?」


 しかし地面に両手をついたリーチェは、直ぐに違和感を感じたような表情を浮かべて、しきりに首を傾げている。

 この様子だと結果は芳しくなさそうだな。


「う~……。ごめんダン……。あんまり役に立てないかもぉ……」

「謝らなくて大丈夫だけど、どうしたのリーチェ?」

「うん……。やっぱりここの木って自然に生えてきたものじゃないのかも……。僕の精霊魔法に対する反応がほとんどないんだ。空っぽって言うかさぁ……」

「『空っぽ』か。なんとなく聖域の樹海らしいワードだなぁ……」


 他の場所なら別だけど、聖域の樹海の木々の中身が空っぽっだと言われると微妙に納得できてしまうんだよな。

 作りものっぽいというか人工物っぽいというか。


「もう充分だよリーチェ。ありがとうね」


 屈んでいるリーチェを立たせてあげて、お礼にちゅっとキスをする。

 精霊魔法で一気に真相まで迫ることができれば言うことなかったけど、流石にそこまで甘くないよな。地道に調査していくしかないかぁ。


「当初の予定通り、目と足を使った地道な調査と行こうか。ティムル。周辺の魔力を見てみてくれる?」

「あはーっ。お姉さんにまっかせてーっ」


 瞬く間に碧眼になったティムルに我慢できずにちゅっとキスをして、ティムルが周囲を見回している間にターニアにも声をかけておく。


「それじゃターニアは俺とペアで行動してね。ターニアの飛行能力をアテにしてこき使っちゃうかもしれないけど、よろしく頼むよ」

「あはっ! ダンさんとデートできるなんてラッキーなのっ! いつも以上に好き放題にしていいのーっ」

「作戦指示をエロワードに変換しないのっ。獣化中のターニアはただでさえ天使みたいに綺麗なんだから、あんまり誘惑しないで欲しいなぁ?」


 そんなことを言いながらターニアを抱き寄せて、ティムルからリアクションがあるまでひたすらターニアと唾液を交換する。

 今のうちにたっぷりとキスをしておいて、獣化した後はちゃんと我慢しましょうという作戦だ。


 ……我慢できるとは言ってないけど?


 キスをして気分が盛り上がってきた俺が、ターニアの可愛いお尻をイヤらしく撫で回し始めたあたりで、ふむ……っとティムルが声をかけてきた。


「暴王のゆりかごほどじゃないけど、ここも魔力が少し薄い感じがするわ。少なくともアウターの中心部分とは思えない魔力濃度ね」

「……つまりここは中心じゃない? それとも暴王のゆりかごみたいにどこかに魔力が流れてる?」


 ここはクラメトーラや暴王のゆりかごと違って、熱視が無くても魔力の存在を感じられる程度には魔力漂う空間だ。

 しかし熱視で魔力を可視化出来るティムルからすると、ここは違和感を抱く場所のようだ。


「ティムル、魔力の流れは追えた? 魔力の入り口と出口は分かる?」

「えっとね。魔力は上から下に向かって流れてるみたいなの。それも、周囲に聳え立つ巨木を通って地面に流れ込んでいるように思えるわ」

「へ? 木を通して魔力が流れ込んでるの? だって聖域の樹海って、魔力を木々に変換してるって話だったんじゃ……」


 いや、ルドルさんの説明を疑っても仕方ないのか。ルドルさんも聖域の樹海を実際に調査したわけじゃないんだしな。


 上から魔力が流れ込んでいるっていうのは、大気中の魔力を木々が吸い取っているって事でいいんだろうか?

 そしてその吸い取った魔力を地面に取り込んでアウターに吸収させていると。


 その吸収した魔力を地面からアウター周辺に放出し、新たな森として循環させている……って感じか?


「ふむ。これは木の上がどうなってるのか確認する必要がありそうだね」

「ええ。恐らく木々の樹冠部分に魔力を吸収する機能があるんじゃないかって思うの。私がこの場を離れるわけにもいかないから、悪いけど確認してきてもらえるかしら」

「お安いご用だよ。ちょっと待っててね」


 ティムルのほっぺにキスをしてから、調査担当チームを集める。

 さっきニーナが、なにを見ればいいか分からないって言ってたからな。具体的に指示を出しておこう。


「この巨木の樹冠部分に何か秘密がありそうだ。どの木でもいいから、樹冠部分に何か異変が無いかみんなで見て回るよー」

「了解だよっ。見るべき場所が限定されてるなら安心なのっ」

「どれでも構わぬのじゃな? まずは片っ端から目で見て確認なのじゃ」

「ふふ。木登りなんて久しぶりですね。なんだか童心に帰るようですよ」


 ……なんだろう、仕合わせの暴君メンバーが地味に頼りにならなくない? 楽しそうだから良いんだけど。

 っと、双竜の顎組もちょっとワクワクした表情してるなぁ。


「こんなに高い木を登る機会なんて今後あるとは思えませんからねっ。ちょっとだけ楽しませていただきますねっ」

「あ~……。ラトリア様、ご実家の庭の木を登るの好きでしたものねぇ……。直ぐにヒョイヒョイっと登れるようになっちゃったせいで、飽きるのも早かったですけど……」

「ラトリアもエマも探索者と魔導師が浸透済みだから、もし足を滑らせたり危険が迫ったりしていたら、詠唱短縮スキルを発動しながらアナザーポータルを使ってね」

「……今更仕方ありませんが、移動魔法の有用性を正しく理解していたらあの時も……。なんて思わずにはいられませんね」


 俺の指示に対して、少し悔しさを滲ませるラトリア。

 あの時……。ノーリッテと対峙して、ゴルディアさんを喪ってしまった日のことを思い返しているんだろうな。


 しかし直ぐにはっとして、力無い笑顔を浮かべるトリア。


「……失礼しました。少ししんみりさせちゃいましたね」

「構わないよ。ラトリアにとってのゴルディアさんの存在は、俺にとってのニーナみたいなものだろうしさ」

「ふふ。そうですね。私が今生きて呼吸している事だって、ディア抜きにしては語れませんっ。私が生き延びて強さを手に入れることが出来たのだって、きっとディアの存在があったからこそです」


 爽やかな笑顔を浮かべるラトリアをぎゅっと抱き締め、もう何も言わなくていいよと口付けをする。


 ……別に励まそうとか思ったわけじゃない。

 ただゴルディアさんを語るラトリアが魅力的過ぎて、俺が我慢出来なくなっただけだ。


「頼りにしてるよラトリア。でも木登りに夢中になって足を踏み外したりしないようにね?」

「ご安心をっ! こう見えて私、木登りはすっごく得意なんですよっ! 逆にディアは木登りが下手で……」

「ラトリア様に無理矢理木の上まで追い立てられて、いつも泣かされていましたねゴルディア様……」

「ははっ。ラトリアは子供の頃からラトリアだったってことか」


 呆れ顔のエマも抱き締めキスをして、真面目な気持ちに切り替える。

 調査中も笑顔を絶やさずにいたいけど、気持ちだけは引き締めないとね。


「常に会話は繋がっている状態だから、小さな違和感でも気にせず共有してね。何が起こるか分からないことを忘れちゃ駄目だよ」

「了解です。消して無茶はしませんのでご安心を」

「それじゃ始めよう。ターニア、ちょっと失礼するねー」

「あははっ! まるでニーナになった気分なのーっ」


 みんなに注意喚起を促しながら、俺とペアを組むターニアをお姫様抱っこする。

 ターニアの飛行能力はどこで役立ててもらうか分かってないので、木の上までは抱っこでエスコートだ。


「聖域の樹海はレリックアイテムって話だし、この森の異変から呼び水の鏡がノーリッテに渡った経緯もある。ぶっちゃけ何も起こらないとは全く思ってないよ。みんな、気を引き締めてね」

「うっ……。確かにバロールの民の壊滅が旦那様と縁を繋げたようなものですか。旦那様とノーリッテ、両者に縁があると言われると、確かに何か起こりそうではありますね……」


 俺達は仕合わせの暴君だからね。

 俺達と仕合わせるって事は、何らかの因縁はあると思っておくべきだろう。不本意だけど。


「ノーリッテ? メナスに所有権が渡る前にも誰か呼び水の鏡を手にした者がいるのかい?」

「それについては調査が終わってから話すよ。キュールさんも正式にチャールたちと一緒に過ごすみたいだしね」


 普通にノーリッテ呼びしていたため、メナスという名前しか知らないキュールさんには話が通じていなかった模様。

 調査が終わってから解説することを約束して、彼女との会話を切り上げた。


 周囲に聳え立つ無数の巨木を仰ぎ見る。

 世界呪といい聖域の樹海といい、この世界は何かと大樹に縁があるのかな?


 1度全員の顔を見て、全員の状態に問題がないことを確認。

 リーチェの精霊魔法で会話が通じることを改めて確かめてから、3手に分かれてそれぞれ別の巨木を駆け上がったのだった。
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