異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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7章 家族みんなで冒険譚1 いつもと違うメンバーで

475 紹介 (改)

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 俺のお手伝いをしに炊事場に顔を出したアウラ。

 そんな優しく可愛いアウラの姿を見た途端に、紫の顔を青白くして震えだすキュールさん。


 キュールさんの様子に首を傾げながらも、俺が渡した料理を大事そうに抱えるアウラたち。

 そんなアウラがニーナとリーチェと一緒に楽しそうに炊事場を去ったあと、震えているキュールさんに声をかける。


「あの少女はアウラ。暴王のゆりかごで保護した俺の可愛い娘だよキュールさん」

「暴王のゆりかごでって……! じゃあ彼の地のドワーフたちは、ホムンクルス計画はどうなって……!?」

「……その様子だとアウラの説明は必要なさそうだねぇ」


 ホムンクルス計画なんて口にするあたり、どうやらキュールさんはアウラの事情を完璧に把握しているようだ。

 そもそも俺だってアウラの事はノーリッテに教えられたわけだし、ノーリッテと面識のあったキュールさんが知っていてもおかしくはないのかもしれない。


「ノーリ……、メナスはホムンクルス計画の事を嫌っている感じだったけど、それでもキュールさんにアウラの事を教えてあったなんて少し意外だよ」

「あ、あぁなるほど……。ダンさんはメナスと直接やりあったんだったね、だから知っていたのか……」


 アウラの存在にも驚いたようだけど、俺がホムンクルス計画の事を知っている事自体に驚いていたのか? 確かに極秘で続けられていた活動っぽかったしな。

 それってつまり、組織レガリアの中でもアウラの事を知っている奴って殆ど居なかったってことなんだろうか? カイメンたちもレガリアに所属してたわけじゃなさそうだったし。


「ダンさんの言う通り、メナスはホムンクルス計画のことは嫌っていたね。自分の趣味じゃないとか言って」


 落ち着きを取り戻したキュールさんは、とりあえず俺の問いかけに返答してくれる。


 でも、嫌ってたってなんでだよ?

 あいつ、イントルーダーやアウターエフェクトの後ろに隠れてるような奴だったじゃん。むしろ趣味に合ってんじゃないの?


「けれど魔力を後天的に付与する技術自体には興味があったようでね、研究のためにと私にもあの施設を見学させてくれたんだよ」

「魔力を後天的に……。その技術の応用で移魂の命石なんかを開発しやがったのかねアイツは」

「……すごいね。まさかダンさんの口から移魂の命石なんて聞く事になるとは思ってなかったよ」

「……むしろ俺からしたら、俺の話が悉く通じるキュールさんにびっくりするけどね?」


 いくらレガリアの資料を読み解きノーリッテと共に研究していたからって、いくらなんでもこの知識量は多すぎないか?


 こんなに知識豊富な人物を……。

 組織のトップであるノーリッテと同等の知識を持つ人間をあっさり解放するような組織だったのか? レガリアって。


 ……ノーリッテは気にせず解放しそうな気はするな?


「とりあえず要点だけ伝えておくよ。暴王のゆりかごの研究施設はぶっ潰して、そこの研究者たちをほぼ皆殺しにしてアウラを掻っ攫ってきたんだ」

「みっ、みなごっ……、ええっ……!?」

「その結果、暴王のゆりかごは正常化して、クラメトーラやグルトヴェーダの魔力枯渇状態が解消されていく見込みなんだ」

「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれたまえよ……! 情報量が多すぎるよ……! 少しでいいから情報を整理する時間をくれないかい……!?」


 戸惑うキュールさんに構わず事実だけを伝えると、混乱したキュールさんからタイムの要望が出された。


 アウラを掻っ攫ってきた時点で思い当たってもいい情報しか開示しなかったつもりなんだけどな。

 予想がつく事でも実際に告げられると衝撃も違うか。


「んじゃ俺も朝食の配膳をするから、落ち着いたら食堂に来てよ。キュールさんの分も用意してあるから」

「へ……? あ、ああ悪いね。ご馳走になるよ……」


 頭を抱えてしまったキュールさんを置いて、俺も大量に作った朝食の配膳に参加する。

 今朝は普段よりも気持ち多めに用意したから、キュールさん1人増えるくらいなら問題ないだろう。


 昨晩は仕合わせの暴君メンバーとはイチャイチャこちょこちょとした楽しい時間を過ごさせてもらったけれど、他の5人の体は徹底的に貪ってしまったからなぁ。

 因果関係があるのかどうかは分からないんだけど、激しく過ごした後のみんなは普段よりも多く食べる気がするんだよね。

 それだけハードなワークアウトをこなしているから、消費したカロリーを補おうとするのかもしれない。


「あ、おはようダンっ」


 食堂には既にチャールとシーズも合流していて、欠伸をかみ殺しながらみんなと挨拶を交わしている。


 この2人は夜遅くまで語り合っていることが多く、少しだけ夜更かしさんらしい。

 みんなと抱き合いながら生体察知を発動すると、結構遅い時間まで動きがあるんだよねぇ。


 ……なんか生体察知の使い方に犯罪臭を感じなくもないけれど、最高に無防備なベッドの上で察知スキルを定期的に発動するのはもう癖みたいになってしまったのだ。

 スキルの使用を止める方が意識しないと難しかったりする。


「おはよう2人とも。あんまり夜遅くまで起きてちゃダメだからね? 寝不足でスポットに入るのは危険だからさ」

「私も早く寝たいんだけどねー……。資料のこととか今後のこととか、話しても話しても纏まらなくってさぁ」

「勿論最低限の睡眠時間は確保してっけどな。でも、今までってあんまり将来の事を考えたことが無くってさ。こういうの、慣れてねーんだよ」


 寝る間も惜しんで先の事を語り合うなんて熱いなぁ。そういうのって若い頃しか出来ないよね。

 ……俺は若い頃もしたこととないけど?


 っと、2人は察知スキルを使えないから、キュールさんが訪ねてきている事に気付いていないかもしれないな。


「今朝はお客様が見えてるんだ。朝食の時に紹介するからそのつもりでいてね」

「へ? なんで私たちに紹介するの? いや、別に紹介されるのは良いけど、その人ってダンのお客さんなんじゃ?」

「……俺達にも関係あると言ったら、孤児か教会の人か? でも紹介するって事は面識は無い相手なんだろうな多分」

「ははっ。もったいぶるつもりは無いけど、その人の紹介は本人が来てからにさせてもらうね」


 別にクイズにするつもりは無かったけど、2人にとっては良い頭の体操になりそうだ。

 直ぐに答えを教えずに、僅かな時間だけどシンキングタイムを提供する。


「あ、皆さん……。朝早くからお邪魔してます……」


 配膳が済んで全員に飲み物を配り終わったタイミングで、ようやく食堂に顔を出したキュールさん。


 チャールとシーズは見覚えのないお客さんに興味津々のようだ。

 それじゃ答え合わせの時間だよー。


「この人はヴェルモート帝国で歴史学者をやっているキュールさんだ。今日から暫くうちの離れで寝泊りすることになるから、みんなよろしくね」

「「えっえっ……、ええ……!?」」


 お客さんが歴史学者と聞いて驚いて、暫くうちに泊まると聞いて更に驚くチャールとシーズ。

 2人とも、前々から会いたがっていた相手の突然の登場に理解が追いついていないようだ。


「突然押しかけて申し訳無いけど、ダンさんのご厚意に甘える事にしました。皆さんにとってはご迷惑かと思いますが、少しの間宜しくです」

「キュールさんっ。私たちに敬語は必要ないのー。ダンと話してるときみたいに気楽に喋っていいからねー」

「ん、そうかい? ならお言葉に甘えさせていただくよ。ありがとう」


 別人のように丁寧な挨拶をするキュールさんに、遠慮は要らないからと微笑みかけるニーナ。

 何気にニーナのコミュニケーション能力が爆発してるな。


 さて、チャールとシーズが混乱しているうちにキュールさんに2人を紹介しておくかな。

 恐らくはチャールとシーズの2人と接する時間が多くなるだろうし。


「この場に居るのはほぼ俺の家族なんだけど、この2人、チャールとシーズは別でね。この国の歴史を調べる為に協力してもらっているんだ」

「ってことは、この2人が以前話していた子たちなんだねっ……!? 話には聞いていたけど本当に若いなぁ、素晴らしいねっ」


 戸惑う2人とは対照的に、好奇心でいっぱいの視線を2人に送って感心しているキュールさん。この調子なら仲良くなれそうだ。

 共通の話題があれば、仲良くなるのに歳は関係ないからな。


「他にも初対面の人が居ると思うけど、2人以外は全員俺の妻だと思っていいよ。暫くうちで寝泊りするなら話す機会もあるだろうし、今は紹介を置いておいてまずは朝食をいただこうか」

「ようやく食べられるのじゃー。おなかペッコペコなのじゃー」

「ダンの作った料理を並べられて待たされるのは酷いよねー? 待たされた分、いっぱい食べちゃおうねフラッタっ」


 ええい、朝食だって言うのに戦闘モードに入るのはやめなさいっ。

 フラッタとリーチェの腹ペココンビに本気出されたら、いくら作っても足りなくなっちゃうからぁっ!


 いつも通りの騒がしい食事が始まり、食事しながら今日の予定について話し合う。


「今日からは聖域の樹海の探索を始めるよ。メインの攻略は終焉の箱庭と同様に、傾国の姫君と双竜の顎に行なってもらうからね」

「了解ですっ。張り切っちゃいますよーっ」


 うん。やる気があるのはいいけど、あんまり張り切っちゃダメだよムーリ。

 張り詰めたおっぱいがぶるるんっと揺れて、おっぱいのところの服が弾け飛びそうになってるからね?


「それで出来ればチャールとシーズ、そしてキュールさんにも同行してもらいたいんだけどいいかな?」

「「……え、ええええええええっ!?」」

「せっせせせ、聖域の樹海って侵食の森のことだよねっ!? 行くよ行くよっ! ダメって言っても連れてってもらうさっ!」


 驚きの声をあげるチャールとシーズとはこれまた対照的に、好奇心100%の眼差しで同行を受け入れてくれるキュールさん。

 だけどダメって言ったら諦めて欲しいんですよ。そこ強行されても困りますし?


「今回の目的は調査だからね。俺達とは違う着眼点を持っていそうな3人にも協力をお願いしたいんだ」

「おっ、俺達がダンに同行なんて、そんなの出来るはずないだろっ!? すす、直ぐに死ぬだけだってば!?」

「いやいや、シーズに戦わせるつもりはないっての。一旦落ち着いてくれる?」


 一旦話を切って、戸惑うチャールとシーズと、興奮するキュールさんに落ち着いてもらう。

 確かに突然の提案だったかもしれないけど、みんなを危険な目に遭わせる気なんてないってば。


「今回戦闘を担当するラトリアとエマは、スペルド王国最強と謳われた双竜の顎のメンバーだからね? 危険なんて無い無い。安心していいよ」

「こ、この場で王国最強って紹介されるの、微妙すぎるんですけどぉ……?」

「私達より遥かに強い人が、最低でも6人居る場ですからね。心中お察しいたいますよラトリア様……」


 困惑するラトリアと、それに同意するように肩を落としてしまうエマ。


 いやいや、ラトリアもエマももっと自信持っていいんだって。

 もうアウターエフェクトに遅れを取ることも無いだろうし、イントルーダー相手にも一方的に負ける事はないくらいの実力は既に身につけてるってば。


「チャールとシーズにはパワーレベリングみたいになっちゃうけど、2人の発想って独特だからさ。出来れば少なくともディロームの集落には同行して欲しいんだ」

「ええっとね……。みんながいいなら私達は構わないよ? でもあんまり期待されても、それに応えられるとは……」

「ははっ。勿論なにも分からなくたって怒らないよ。お試しみたいなものだと思ってくれればいいさ」


 緊張気味のチャールに、気にするなと笑ってやる。

 守人たちがずっと調査してるのに見つからない異常だからな。ダメで元々なんだよ。


「ねぇダン。3人を同行させるのは構わないんだけど、移動はどうするのかしらぁ?」


 今まで静かに会話を聞いていたティムルが、俺に向かって思案げな眼差しを向けてくる。


「ムーリもアウラも敏捷補正が増えてきて、今では移動速度がかなり上がっているわよね? この3人がそれについてこられるとはとても思えないわよ? まさかそれぞれを抱えて移動する気なの?」

「それについては造魔を使おうと思うんだ」


 あえて造魔と口に出してみたものの、キュールさんは特に反応しなかった。

 多分ノーリッテの造魔スキルのことは知っていると思うんだけど、鑑定が使えなければ造魔っていうスキル名を分かっていないのかもしれないな。


「マーダーグリズリーとナイトウルフ……はちょっと小さいか。ナイトゴートならいけるかな? まぁそんな感じで、騎乗出来そうな魔物を造魔召喚するつもり。現地で魔物を使役しても良いんだけどさ」

「……造魔を使うの? 造魔とか魔物の使役とかは隠すんじゃなかったの?」


 ニーナが首を傾げながら会話に参加してくる。


 責めるような口調ではなくて、単純に疑問に思っている顔だな。

 今まで造魔の事はひた隠しにしてきたわけだし、キュールさんやチャールたちの居るこの場で造魔や魔物使役を提案したのが意外だったんだろう。


「勿論、職業の情報は開示しないけどね?」


 魔物使いと召喚士の事は、仕合わせの暴君のみんなにすら開示していない情報だからな。

 みんな鑑定は使えるけど職業設定は使えないから、転職条件までは分かってないはずだ。


 大好きなみんなのことを信用していないわけじゃないけど……。

 ノーリッテを象徴するようなスキルだったせいか、なんとなくみんなには触れて欲しくない。


「でもこの3人には教会の旧本部施設にも同行してもらいたいと思ってるから、今のうちに色々試しておきたいんだよ。非戦闘員が同行している場合の立ち回りとかをね」

「……造魔に関しては今更な感じもしますよね。大規模な工事や掘削でも利用してきたわけですから。旦那様が良いと思ったのなら良いのではないでしょうか」

「竜王のサーヴァントやドレイク種なんかを呼び出さないのは3人に負担がかかりそうだから、だね? まぁ今まで相当数の魔物を討伐して来たダンなら、騎乗に適した魔物なんていくらでも呼び出せるだろうね」


 ヴァルゴとリーチェがウンウンと頷きながら賛成してくれる。

 しかしそんな真面目な空気を破ったのは、フラッタの元気な声だった。


「ダンよっ! 妾も騎乗してみたいのじゃっ! 魔物に乗って移動するなんて面白そうなのじゃーっ!」

「んー、フラッタが試してみたいなら構わないけど……。その場合はプレートメイルは脱いでもらわないとダメかなぁ? 鎧さえ着てなければナイトウルフにでも乗れそうだよね、フラッタなら」

「おーっ! ナイトウルフでもいいのじゃっ! モッフモフなのじゃーっ!」


 大喜びしているフラッタの可愛さに心臓を射抜かれる。

 なんだよこの可愛い生き物は。可愛いという概念を凝縮しすぎだよぉ。


 あんまりにも可愛すぎて、俺以上にニーナが口元を押さえてぷるぷる震えてるんですけどぉ?


「ダダダ、ダンさんって造魔召喚まで出来るの……!? アレってメナスだけのユニークジョブにしか使えないものだって思ってたんだけど……!」


 あれ? さっきは反応が無かったキュールさんが、今更過剰な反応を見せてきたな?

 もしかしてさっきはチャールとシーズの方に意識を割かれていて、俺達の話を一切聞いてなかったんだろうか?


「キュールさんこそ本当になんでも知ってるね。職業については教える気は無いけど、メナスが使ってたのと同じ能力だと思っていいよ」

「嘘でしょぉ……。魔物の召喚なんて能力が誰にでも使える可能性があるなんてぇ……」


 造魔の危険性を知っているためか頭を抱えてしまうキュールさんに、緊張気味のチャールとシーズ。

 戦闘を担当するメンバーは引き締まった表情を浮かべ、仕合わせの暴君メンバーは何の魔物に騎乗するか相談し合っている……。


 ってちょっと待って? フラッタだけじゃなくて全員騎乗希望なの?

 全員分の魔物を用意するには、召喚制限のある造魔だと都合が悪いかな? 現地で適当な魔物を使役する方が良さそうだ。


 さぁて、大分待たせちゃったけど、今日から聖域の樹海の調査開始だ。

 アルフェッカからアウターに侵入して、まずはディロームの集落を目指そうかな。そこでキュールさんの出身であるタラム族の話なんかも聞いておきたい。


 何気に忙しい日々が続きそうだねぇ。充実してるって言い換えた方がいいのかな?
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