異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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7章 家族みんなで冒険譚1 いつもと違うメンバーで

463 ギルド巡り (改)

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「邪魔してごめんね。探索を再開しよう」


 アウターブレイクの開発に成功した俺達は、すぐさま終焉の箱庭の探索を再開する。

 皆が魔物を狩り続ける中、俺は今まで通りドロップアイテムの回収に専念しながら、アウターブレイクで掴んだ魔力制御を訓練していく。


「蹴散らせぇ……破軍っ!!」


 昨日で感覚を掴んだのか、今日はラトリアが積極的に破軍を発動している。

 そしてラトリアの破軍の合間を縫うように、絶妙の間でサポートに入るエマがかっこいい。


 ターニアとムーリの槍使いコンビも本当に絵になる。みんな強くなったなぁ。


「う~ん……。本当にダンさんが居るだけで色々な物が全然違うなぁ」

「ん? どうしたのターニア。俺がどうしたって?」

「ダンさんが加わっただけで魔玉はあっさり光るし、レアドロップアイテムはポロポロ落ちるって言ってるのーっ」

「私達のやる気が出る以上の明確な差が現れている感じですね。ダンさん1人でもこんな状態じゃ、仕合わせの暴君全員が揃っていたらどうなるんでしょう?」


 油断なく魔物を貫きながら、ターニアとムーリがしきりに感心している。


 ほうほう? 俺としては魔玉の発光もレアドロップも少ない印象でしかなかったけど、みんなにとっては違いが分かるくらいに良くなってるわけかぁ。


 ……完全に色々麻痺しちゃってるな。

 神鉄装備素材やスキルジュエルも、普通はあんなにボロボロ落ちないんだろうなぁ。


「むむっ……まだ足りないか……! てりゃーっ!」


 そんな中、戦闘職が戦士しか浸透していなくて鋼鉄品質の武器を使用しているアウラが明らかに火力不足に陥っている。

 身体能力で言えばムーリどころかラトリアにも迫れるアウラだけど、対魔物戦では職業補正と武器の品質が物を言うからなぁ。


 ブレスを放てば火力は補えるけど、アウラがブレスを放つのは文字通り命懸けだから割に合わなすぎる。

 幸い武器の素材集めも魔玉の発光も順調に進んでいるから、材料が揃い次第ブルーメタルに更新してあげよう。


「別メンバーと行動を共にすることで見えてくる物も色々あるんだなぁ」


 一瞬でアウターブレイクを発動する練習や、チャージした魔力をキャンセルする練習をしながらみんなの戦闘を眺めているけど、結構奥の方まで来ているのに職業浸透の進み方がかなり遅く感じられる。

 竜人族と獣人族の4人は仕方ないとしても、人間族の特性を引き継いでいるはずのアウラも浸透が遅々として進まない印象だ。


 う~ん……。

 仕合わせの暴君の職業浸透が早いのは、やっぱり異種族混成パーティだからなのかなぁ?


 だけど俺とニーナの2人きりの時も、俺の職業浸透のほうが明らかに早かったはずだ。

 人間族の種族特性で経験値が増加するのは間違いないと思うんだけど……。アウラにその恩恵の影響が見られないのはどうしてだ?


 アウラの職業浸透速度に首を捻りながらも皆を見守り、アウラを含めた全員が現在の職業の浸透を終えた事を確認し、昨日よりも少し早めに帰還する事にした。


「全員間違いなく職業浸透が終わってるよ。帰る前に転職していこうね」


 本日の探索でムーリは兵士、ラトリアが行商人、エマが荷運び人、ターニアが狩人、アウラが僧兵の浸透を終えた。


 戦闘職の浸透数を増やしたいムーリはそのまま騎士を目指し、敏捷性と持久力補正を狙っているラトリアは荷運び人、エマは飛脚に転職するそうだ。

 そしてターニアは魔物察知が使えるようにと、斥候に転職を希望している。


「アウラはまず魔法使いルートを進めようと思ってたけど、先に兵士と騎士を進めよっか。流石に敏捷性補正無しでこのメンバーについていくのはしんどそうだからさ」

「うんっ。パパだけじゃなく、ママたちも全員凄いんだねーっ!? 私ねっ、カイメンからは世界サイキョーとか言われてたんだよっ? なのに全然追いつけないんだもんっ」

「流石にアウラと私達では浸透数が違いすぎますよ。戦闘経験にも差があります。これから少しずつみんなに追いつきましょうね?」


 ぶーっとほっぺを膨らませているアウラの頭を優しい手付きで撫でるエマ。どう見てもお母さんしてるわ。


 カイメンの言っていたことも間違いでは無いんだけどね。アウラの才能はずば抜けてるし。

 けれどカイメンの語った最強は、所詮戦えない者の理想、まさに机上の空論って奴だ。


 さてそんなことよりも、まずはアウラの職業を兵士に設定して、っと。



 兵士LV1
 補正 体力上昇- 敏捷性上昇- 装備品強度上昇-
 スキル 全体補正上昇-



 HPも装備品強度も敏捷性も上がり、全体補正上昇で僧兵の魔力補正も底上げされるはずだ。

 兵士の補正には今のアウラに不足しているものが全て詰まっていると言っていいだろう。


「ムーリの騎士とラトリアの荷運び人は職業ギルドがあるんだよね?」

「はい。どちらのギルドもスペルディアにありますよ。騎士ギルドだけならヴァルハールにもありますけどねっ」


 ラトリアがえっへん! とでも言いたげなドヤ顔で説明してくれる。

 流石は脳筋ルーナ竜爵家。戦闘職のギルドの誘致には熱心だった模様。


 ドヤ顔のラトリアを捕まえてちゅっちゅっとキスの雨を降らせていると、エマが話の続きを引き継いでくれた。


「ターニア様と私は少々面倒ですが、これからフォアーク神殿に行かなければいけませんね。幸い転職費用の心配が無いのがありがたいですけど」

「ああ、時間も早めだし、せっかくだから全員一緒に行こうか。俺もフォアーク神殿には興味があるしさ」

「え? いいんですかダンさん? ニーナさんと一緒の時に行かなくて」


 ムーリが心底意外そうに尋ねてくる。

 ムーリとは俺とニーナが2人きりの頃からの付き合いだからな。ニーナを待たずに俺が新たな場所を訪れるのが意外に見えたようだ。


「ニーナともまた一緒に来ればいいだけだよ。こんなことで怒るほどニーナは短気じゃないから大丈夫」


 ムーリのおっぱいを両手で鷲掴みにして、心配しないでとキスをする。


 割と合理的で冷めたところがあるニーナのことだ。

 自分が利用する予定の無い施設のことにはあまり興味が無い気がする。


 ……でも、俺と一緒だと何処に行っても喜んでくれるんだよなぁ。可愛すぎて参っちゃうよぉ。


 全員のおっぱいと唇の感触を軽く確かめた後、まずはスペルディアに転移して騎士ギルドと荷運び人ギルドに足を運ぶ。

 騎士ギルドの方は王城にかなり近い場所に建っており、荷運び人ギルドの方はスペルディアの入り口に程近いところに建てられているらしい。


 分かりやすく言えば、両者はかなり距離があるってことだね。

 エマがどっちのギルドにも顔を出した事があるから今回はポータルが使えたけど、徒歩で移動してたら日が暮れていたなぁ。


「スペルディアの騎士ギルドは少し特殊でして、王国騎士団の詰め所も兼ねているんですよーっ」


 率先して先頭に立ち、弾んだ声で案内してくれるラトリア。

 普段は抜けたところがあるラトリアだけど、流石に長年貴族として生きてきただけあって、まるで観光ガイドのようにスラスラと解説してくれる。


「王国騎士団は始まりの黒に潜って腕を磨くと言われていますから、王城に程近い場所にギルドが建設されたわけですね」

「王国騎士団かぁ。懐かしいな。俺が初めてこの地に降り立った時に助けてくれたのが王国騎士団の人だったんだ」


 あの時左腕を切りつけられたのは今でも怒ってるけど、アレのおかげで無事に開拓村を脱出できたんだ。

 あの時の男はフルプレートを着込んでいて顔を見ることも出来なかったけれど、いつか会う事があったらちゃんとお礼を言いたいなぁ。


「荷運び人ギルドがスペルディアの入り口側にあるのは、単純に利便性を考慮した結果ですね。荷運び人は移動魔法で運べない物の運搬を担う人達ですから、街の入り口側にギルドが無いと面倒なんですよ」

「それに加えて治安の問題もあります。荷運び人は基本的に王国中を走り回る人達ですから、スペルディアの人から見れば余所者です。なのであまり街の奥まで入ってきて欲しくないのです」


 ラトリアとエマの説明を、ほうほうと頷きながら熱心に聞いているアウラ。

 450年くらい眠っていたアウラにとって、未来の世界は何もかもが新鮮で驚きに満ちているんだろうね。


 まずはムーリの転職のために騎士ギルドに足を運ぶと、ラトリアがギルドに入った瞬間、ギルド内の空気が一変したように感じられた。

 この空気はアレだな。尊敬してるけど絶対に敵わない部活のOBが顔を出した時の空気だわ。


「ラトリア様とゴルディア様は王国騎士団の剣術指南役だった時もあるんです。なので王国騎士団員としては頭が上がらない存在なのだと思いますよ」


 ラトリアが次々に出てくる騎士ギルド職員の挨拶を受けている間に、エマが状況説明してくれた。

 竜爵家ってスペルディア王国最強って評判だったもんね。


 しかもラトリアの剣術って竜人族の身体能力に頼らない技術だったからな。他種族が学ぶ価値も大いにある。

 ソースはラトリアから剣術を盗んだ俺。


 ラトリアがいつもの倍くらいおすまし顔をしていた事を除けば、特になんの問題も無くムーリの転職は成功した。



 騎士LV1
 補正 体力上昇 魔力上昇- 物理攻撃力上昇 物理防御力上昇
    敏捷性上昇 身体操作性上昇 五感上昇 装備品強度上昇
 スキル 全体補正上昇 対人攻撃力上昇 対人防御力上昇



「あははっ。凄い人気ですね、ラトリアさんっ」


 ムーリの転職が済んでも、なんだかんだと引き止められているラトリア。

 恐れられているだけかと思ったけれど、ちゃんと人気もあるみたいだなぁ。


 ちなみにだけど、現在の王国騎士団の剣術指南役はソクトヴェルナ家が担当しているそうだ。

 ソクトヴェルナ家の現当主はラトリアの腹違いの弟だそうだけど、早くに家を出てソクトルーナ家に嫁いだラトリアとはあまり交流が無いらしい。


「ほいほいごめんなさいねー。俺達にはこのあとも予定があるんで失礼させてもらいますよーっ」

「あっ、そ、そういうことですので失礼しますねっ……!」


 エマからそんな解説を受けられるほど引き止められているラトリアを待っていても仕方ないので、強引に騎士団員の輪に割り込んで、ラトリアの手を引いてギルドを後にした。

 荷運び人ギルドに転移してから、助かりましたと微笑むラトリア。


「ディアに先立たれ、シルヴァがルーナ家を継いだことで、私が寂しい思いをしていると思っている人が多くて……。あんな場所で求婚されても応える女性なんていないと思いますけどねぇ」

「はぁ? あいつら俺のラトリアに手を出そうとしてたわけぇ? 自分の職場でなにしてんだよ」


 ラトリアに求婚した相手を片っ端からぶん殴ってやりたい衝動に駆られたけど、ラトリアに重ねられた柔らかい唇の感触のおかげで全部どうでも良くなった。

 ちゅっちゅっ。ラトリア大好きぃ。


「ふふ。王国騎士団員くらい自分でもどうとでも出来たんですけど……。やっぱり愛する人に守ってもらえるのって嬉しいものですねっ」

「世界一美人のラトリアに愛してもらえて光栄なんだけど、これ以上可愛いこと言うのは勘弁してくれるかな? 転職を後回しにして寝室に直行したくなっちゃうからさ」


 ああもうっ。スペルディアに来たついでに夢の一夜亭に皆を連れ込みたくて仕方ないよっ!

 カラソルさん、お風呂の設置は進めてくれているのかなぁ?


 コイツは俺の女だとアピールするように、ラトリアの腰を抱いて荷運び人ギルドに足を踏み入れる。

 そんな俺達は一瞬だけ好奇の視線に晒されたけど、それ以外には特に何の問題もなくラトリアの転職が完了した。



 荷運び人LV1
 補正 持久力上昇+ 
 スキル インベントリ 所持アイテム重量軽減+



「ふふ。流石に荷運び人ギルドで私に求婚してくるいませんでしたね。こうしてダンさんが守ってくれたおかげでしょうかっ」


 ……守ってるって言うか、独占してるだけだよなー俺の場合。

 ラトリアの転職を済ませてギルドを出た俺は、ラトリアの反対側に侍らせているエマのほっぺにキスをしてから問いかける。


「フォアーク神殿にも転移できる……んだよね? 竜騎士や聖騎士はフォアーク神殿じゃないとダメだった聞いた覚えがあるから」

「はい。ラトリア様も私も行ったことがあるので大丈夫ですよ。早く転職を済ませて寝室に直行しましょうね、ダンさん?」


 エルドパスタムには来たことがなかったエマも、フォアーク神殿には既に何度か足を運んだ事があるようだ。

 俺のほっぺにキスをしたエマのポータルで、ラトリアとエマを侍らせたままフォアーク神殿に転移した。




「おお……! ここはここでなかなかの景色だね……」


 転移先はグルトヴェーダ山岳地帯に似たような場所だった。

 ただし遠目に終焉の箱庭の、天まで届く魔力壁が見えた。


 ……間近で見た終焉の景色は圧巻だったけど、遠くから見てもこれはこれで違った良さがあるなぁ。


 別の視点から見た終焉の光景に感動を覚えていると、ツアーガイドラトリアのガイダンスが耳に届けられる。


「現在地は、スペルド王国東端の街であるエルドパスタムから見て北側になりますね。見ての通り、グルトヴェーダにも少し足を踏み入れているくらいには北に移動しています」


 エルドパスタムが王国の東端で、グルトヴェーダ山岳地帯が北端の都市ヴィアバタよりも更に北だから、スペルド王国の北東の端っこって感じの場所なのかな?

 そしてそんな場所からでも見える終焉の箱庭の広大さには舌を巻くね。


「そして、肝心のフォアーク神殿はあちらですよっ」


 ラトリアが示してくれた方向に視線を向けると、グルトヴェーダの岩肌にぽっかりと穴が空いていた。

 え? 岩山を刳り貫いて、その中を神殿として利用してるの? 洞窟住居的な?


 穴の大きさはかなり大きい。幅10メートル、高さ4メートルくらいはありそうかな?

 穴の両脇には武装した人間が6名ほど立っていて、厳しい表情で周囲を警戒しているようだ。


 でも、門番の人間以外には誰も居ないな?

 以前リーチェが混み合ってるって言ってた記憶があるんだけどな?


「それじゃ行こっかダンさんっ」

「わわっ? お、押されなくても歩くってばっ」

「あはっ。ニーナよりも先にダンさんと新しい場所に来れるなんて、なんだかすっごく嬉しいのっ」


 してやったりといった様子のターニア。

 ターニアとはガレルさんに会いに行ったりとか、ニーナよりも先に行動する機会が多い気がするなぁ。


 閑散としたフォアーク神殿の様子に戸惑っていた俺は、笑顔のターニアに背中を押されてフォアーク神殿に足を踏み入れるのだった。
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